犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(042)難波人

2011年08月31日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【五月二四日】放映分

難波なにはひと 葦火あしひの してあれど おのが妻こそ つねめづらしき

 《葦火あしびく 小屋すすけてる わしの妻 すすけ古いが まだ若々し》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六五一)



【万葉歌みじかものがたり】童言わらはごとする》

糟糠そうこう妻が いとして可愛い
ながの年月 過ごしはしたが
こぼす笑顔が 初々ういういしいて
わし の人生 満足限り

くれなゐの 八入やしほころも あさな 馴れはすれども いやめづらしも
あかいろの かさね染めふく 朝晩に れたけども まだ新しで》
(朝晩に したしんだ お前やが 変わりんとに 初々ういういしいで)【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六二三)
  
難波なにはひと 葦火あしひの してあれど おのが妻こそ つねめづらしき
葦火あしびく 小屋すすけてる わしの妻 すすけ古いが まだ若々し》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六五一)

老いて 恋する 恥ずかし言うが
成るか成らんか 二の次いて
気持ち 若うて 元気な証拠
あやかりしたい うらやましいで

あづきなく 何の狂言たはこと 今さらに 童言わらはごとする 老人おいひとにして
《この老齢としで 子供じみてる 戯言たわごとを 今更いまさらうか ええあほらしい》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五八二)
  
朝露の やすきが身 老いぬとも またちかへり 君をし待たむ
いくばくの のこいのちか わからんが わこもどって あんたとかな》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六八九)
  
昔に待った あの人んわ
共寝ともねした人 もう逢われへん
一緒共寝る夜が うなり久し
別れしたのか うなったのか

ゆふされば 君まさむと 待ちしの なごりぞ今も ねかてにする
日暮ひぐれには あんた来るかと 待ったんが 今もくせなり 寝付ねつけんままや》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五八八)
  
今さらに 君が手枕たまくら まきめや 我がひもの けつつもとな
《もうあんた ともすること いのんに うちの下紐 ほどけてならん》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六一一)
  
敷栲しきたへの 枕をまきて いもれと はなくて 年ぞにける
《おまえわし 一緒いっしょ寝るが いままに 年月ごに って仕舞しもたで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六一五)


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■日めくり万葉集Vol・2(041)移り行く

2011年08月27日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【五月二三日】放映分

うつり行く 時見るごとに 心痛く 昔の人し 思ほゆるかも

 《時うつり 世うつたびに 胸痛い うなった人 思い出される》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四四八三)



【万葉歌みじかものがたり】 の人し》

目まぐるしい  状況変化の中
六月二十三日 三形みかたおう屋敷にての うたげ
家持 詠いし心 何処いずれ

うつり行く 時見るごとに 心痛く 昔の人し 思ほゆるかも
《時うつり 世うつたびに 胸痛い うなった人 思い出される》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四四八三)

昔の人は 橘諸兄もろえなりや
こうしんかなめを偲び 橘諸兄もろえ有りせばか・・・

六月二十九日 最終謀議ぼうぎ 塩汁すすり 蜂起ほうき誓い
七月 二日 夕刻を期し
田村藤原仲麻呂なかまろ邸襲撃
仲麻呂 殺害 
皇太子・皇太后・孝謙帝退しりぞけ 
王位 交替実現

六月末より 密告しき
山背王やましろおう巨勢堺麻呂こせのさかいまろ上道かみつみちの・犬養佐美麻呂・佐味さみの宮守みやもり
蜂起ほうき計画 筒抜け

二日 より 逮捕相次ぐ
拷問ごうもん撲殺ぼくさつ
黄文きぶみおう道祖王ふなどおう・大伴古麻呂・丹比たじひの犢養うしかい・小野東人あずまひと賀茂かものつのたり
 流罪】
安宿あすかべおう夫妻・佐伯さえきの大成おおなり・大伴古慈斐こじひ丹比国人たじひのくにひと・大伴駿河麻呂・答本たほの忠節ちゅうせつ
 失脚・投獄・獄死?】
丹比たじひのいや麻呂まろ・大伴池主・丹比鷹主たじひのたかぬし・大伴兄人えひと

再三誘い受けし 佐伯さえきの全成またなり 自白後自害
くわだて知りし 右大臣藤原ふじわらのとよなり・三男乙縄おとただ 左遷
記録 は触れない 首謀者奈良麻呂
おそらくは 極刑きょっけい免れ得ず

騒然そうぜんたる 変後の 内裏だいり内外
一人  家持は 身を振り返っていた

咲く花は うつろふ時あり あしひきの やますがの根し 長くはありけり
《美しに 咲く花何時いつか おとろえて 菅の根だけは 長う伸びとる》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四四八四)

時の花 いやめづらしも かくしこそ あきらめめ 秋立つごとに
《秋の花 見事咲いてる 秋ごとに 花見て心 晴らされてたな》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四四八五)

 花も移ろい 時も移ろい 人もまた・・・
 伴造とものみやつこ役目の心決め 悔いはせぬが・・・
 独り 残って仕舞しもうた
  あの人も この人も
  花見ての 心晴らし されていたに
  見ても 晴れぬわ)



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■日めくり万葉集Vol・2(040)蓮葉(はちすば)は

2011年08月24日 | 日めくり万葉集
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【五月二十日】放映分

蓮葉はちすばは かくこそあるもの 意吉おき麻呂まろが いえなるものは うもの葉にあらし

 《はすの葉は まあこんなにも えもんか うちるんは さしずめ芋葉いもや》
                         ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八二六)



【万葉歌みじかものがたり】たふにな寄りそ》

次々に出される 歌題うただい
間髪かんぱつ入れずの 意吉麻呂歌作り

(次は 行縢むかばき 青菜あおな 食薦すごも はり じゃ)
食薦すごも敷き 青菜む うつはりに むかばきけて 休むこの君
食薦すごも敷き 青菜あおな煮るんで はり上に 行縢むかばき懸けて お待ちのほどを》
                         ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八二五)

(さあさ お次は 膳上ぜんうえ蓮葉はちすばと行こう)
蓮葉はちすばは かくこそあるもの 意吉おき麻呂まろが いえなるものは うもの葉にあらし
はすの葉は まあこんなにも えもんか うちるんは さしずめ芋葉いもや》
                         ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八二六)

 さすが意吉麻呂
 では 先ほどまで遊びしさいの目はどうじゃ)
一二いちにの目 のみにはあらず 五六ごろくさむ さへありけり 双六すごろくさい
双六すごろくの さいの目見たら 一二いちにほか 五六ごろくもあって 三四さんしもあるで》
                         ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八二七)

 吉麻呂歌は 果てるを知らず
矢継ぎ歌題うただい 発止はっしと返す

こう 塔 かわや くそ やっこ
かうれる たふにな寄りそ かはくまの くそぶなめる いたきやっこ
こうりの とう近づくな 便所そば くそふなを やっこめ》
                         ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八二八)

 ひしお ひる たい 水葱なぎ
ひしほに ひるてて たひ願ふ 我れにな見えそ 水葱なぎあつもの
ひしお ひる掛けた 鯛しに 見とうもないで 水葱ねぎ吸物すいなんか》
                         ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八二九)

たまばはき 鎌 むろ なつめ
たまばはき 刈りかま麻呂まろ むろの木と なつめもとと かきかむため
かま麻呂まろよ 玉掃ばはき苅りい むろの木と なつめ根本ねもと 掃除そうじするんや》
                         ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八三〇)

白鷺しらさぎが木をくわえてる絵を見て)
池神いけがみの 力士りきじまひかも 白鷺しらさぎの ほこひ持ちて 飛び渡るらむ
池神寺いけがみの 力士りきしまいやで 白鷺しらさぎが ほこくちくわえ 飛んでん見たら》
                         ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八三一)
                         (力士舞=呉の美女を襲う悪党崑崙こんろんを力士が征伐し
                           その象徴を振り回し口に咥えて舞う技楽)
           ――――――――――――――
【即興歌作りの巧者・右兵衛任じのなにがし
(とある酒宴 盛付け容器の蓮葉はちすばに掛けて)
ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉はちすばに まれる水の 玉に似たる見む
《空からの 雨降らんかな はすの葉に 結ぶ水玉みずたま 真珠たまやと見たい》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八三七)


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■日めくり万葉集Vol・2(039)香久山は

2011年08月20日 | 日めくり万葉集
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【五月十九日】放映分

香久山かぐやまは 畝傍うねびしと
  耳梨みみなしと あひあらそひき
    神代かみよより かくにあるらし
      古昔いにしへも しかにあれこそ
        うつせみもつまを あらそふらしき


 《香久山は 畝傍うねびのお山 可愛かいらしと 耳成さんと 喧嘩けんかした ようあるこっちゃ 昔から 今もするんや 妻あらそいを》 
                         ―天智天皇てんちてんのう―(巻一・一三)



【万葉歌みじかものがたり】印南いなみ国原くにはら

さいめい天皇七年(661)一月
大和軍は 難波なにわを船出
海路かいろ 西を目指す
半島情勢 不安の最中さなか
同盟 百済 救援のための 新羅征討軍である

中大兄皇子なかのおおえのおうじは 船上にいた
播磨の国 印南郡いなみのこおり沖合に差しかかる

 おお あれが 印南国原か
 そう言えば 昔語むかしがたりに あったぞ
 大海人皇子おおあまおうじ 知っておるか」
「たしか 出雲の阿菩大神あぼのおおかみとか 申しました
 三山さんざん争いのうわさ聞き 仲裁に 駆けつけたのは
 中止 と知って 引き返したのが ここ印南の国です」

香久山かぐやまと 耳梨山みみなしやまと ひしとき 立ちて見にし 印南国原いなみくにはら
《香久山と 耳成山が めたとき ここに来たんや 印南いなみの地まで》
                         ―天智天皇てんちてんのう―(巻一・一四)

 昔は 山でも取りあいか
   『妻』取りあいするも 仕方なしか」

香久山かぐやまは 畝傍うねびしと 耳梨みみなしと あひあらそひき 神代かみよより かくにあるらし 古昔いにしへも しかにあれこそ うつせみもつまを あらそふらしき
《香久山は 畝傍うねびのお山 可愛かいらしと 耳成さんと 喧嘩けんかした ようあるこっちゃ 昔から 今もするんや 妻あらそいを》 
                         ―天智天皇てんちてんのう―(巻一・一三)

中大兄皇子なかのおおえは 大海人おおあまをチラと見て にがく笑った
大海人皇子おおあまおうじは 入日に映える雲を見ていた
「兄上 あの雲 我らの 前途のえを見るようですぞ 一首 されませ」

海神わたつみの 豊旗雲とよはたぐもに 入日し 今夜こよひ月夜つくよ さやけかりこそ
なびぐも 夕日射し込み 輝いて え月照るで 間違いなしに》
                         ―天智天皇てんちてんのう―(巻一・一五)

 は 何事もなく 夕日を追って 一路西へ



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■日めくり万葉集Vol・2(038)落ち激(たぎ)ち

2011年08月17日 | 日めくり万葉集
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【五月十八日】放映分

落ちたぎち 流るる水の いはれ よどめる淀に 月のかげ見ゆ

 《ほとばしり 流れる水が いわ当たり 作ったよどみ 月うつってる》
                           ―作者未詳―(巻九・一七一四)



【万葉歌みじかものがたり】《ねもころ見れど》

旅に出たなら 日暮れがさみ
月がせめても なぐさの友か
吉野川水かわみず たぎちて澄みて
常時いつもも見飽きん うた旅心

 筑波山に登りて月を詠む】
あまはら 雲なきよひに ぬばたまの 渡る月の らまくしも
《見上げたら 雲い空が 広がるに 月しずむがな しいでほんま》
                           ―作者未詳―(巻九・一七一二)
 吉野離宮行幸時の歌】
たぎうへの 三船みふねの山ゆ 秋津あきづに 鳴き渡るは 呼子鳥よぶこどり
三船山みふねやま 秋津あきつこうて 飛ぶ鳥は だれ呼ぶんやろ あの呼子鳥よぶこどり
                           ―作者未詳―(巻九・一七一三)
落ちたぎち 流るる水の いはれ よどめる淀に 月のかげ見ゆ
ほとばしり 流れる水が いわ当たり 作ったよどみ 月うつってる》
                           ―作者未詳―(巻九・一七一四)
 近江の川?】
三川みつかはの ふちもおちず 小網さでさすに 衣手ころもで濡れぬ す児はしに
みつかわの ふちにもにも 叉手網あみ張って 袖らしたで す児らんに》
                         ―春日蔵首老かすがのくらおびとおゆ―(巻九・一七一七)
 近江?】
照る月を 雲なかくしそ 島陰しまかげに 我が舟てむ とまり知らずも
《照る月を 雲かくしなや 島陰しまかげに 船めるんに 場所わからんぞ》
                         ―春日蔵首老かすがのくらおびとおゆ―(巻九・一七一九)
 吉野の歌】
めて うちれ越え 今日けふ見つる 吉野の川を 何時いつかへり見む
《馬ならべ みなて いま見てる この吉野川かわ見るん 次ぎ何時いつやろか》
                         ―元仁がんにん―(巻九・一七二〇)
苦しくも れゆく日かも 吉野川 清き川原かはらを 見れどかなくに
《ああ今日きょうが れて仕舞しまうで 吉野川 んだ川原かわはら まだ見飽みあきんに》
                         ―元仁がんにん―(巻九・一七二一)
吉野川 川波高み たぎの浦を 見ずかなりなむ 恋しけまくに
《吉野川 波高いんで 滝の浦 見られへんがな くやしいことに》
                         ―元仁がんにん―(巻九・一七二二)
かはづ鳴く 六田むつたの川の かはやなぎの ねもころ見れど かぬ川かも
河鹿かじか鳴く 六田むつたの川の 川柳やなぎの (ねんごろ見ても)なんぼ見てても けへん川や》
                         ―きぬ―(巻九・一七二三)
見まくり しくもしるく 吉野川 おとさやけさ 見るにともしく
是非ぜひ見とて たらほんまや 吉野川 瀬音せおとよらや 見て見飽みあきんわ》
                         ―嶋足しまたり―(巻九・一七二四)
いにしへの さかしき人の 遊びけむ 吉野の川原かはら 見れどかぬかも
《そのむかし えらいおかたが 遊ばれた 吉野川原かわらは なんと見事みごとや》
                         ―麻呂まろ―(巻九・一七二五)



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■日めくり万葉集Vol・2(037)世間(よのなか)を

2011年08月13日 | 日めくり万葉集
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【五月十七日】放映分

世間よのなかを しとやさしと 思へども 飛び立ちかねつ 鳥にしあらねば

 《世の中は つろうとまし 思うけど 逃げん 鳥ちゃうよって》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八九三)

【万葉歌みじかものがたり】 びしびしに》

貧者ひんじゃに代わりて 世相せそうを申し上げる(山上憶良やまのうえのおくら

まじり 雨降るの 雨まじり 雪降るは すべもなく 寒くしあれば 
《雨風吹いて 雪までじり 我慢もできん 寒さの夜は》
堅塩かたしほを りつづしろひ 糟湯酒かすゆざけ うちすすろひて しはぶかひ 鼻びしびしに しかとあらぬ ひげかき撫でて 
《塩をつまんで うす酒すすり せきし鼻たれ 無いひげでて》
あれきて 人は在らじと ほころへど 
《ワシは偉いと うてはみても》
寒くしあれば 麻衾あさぶすま 引きかがふり ぬのかたぎぬ 有りのことごと 服襲きそへども 寒き夜すらを
《寒いよってに 安布団ふとんかぶり 有るもん全部 重ねて着ても それでもさむて たまらんよるを》
われよりも 貧しき人の 父母ちちははは さむからむ 妻子めこどもは ふ泣くらむ この時は 如何いかにしつつか が世は渡る
《もっと貧乏びんぼな お前の家は 父母おやは飢えてて 妻や子泣いて 毎日どない 過ごしてるんや》
天地あめつちは 広しといへど ためは くやなりぬる 日月ひつきは あかしといへど ためは 照りや給はぬ 
世間せけんひろても わしには狭い 明るい日月ひつき わしには照らん》 
人皆か のみや然る わくらばに 人とはあるを 人並ひとなみに れもれるを 
みんなそやろか ワシだけやろか ワシも人間ひとやで 人並みやのに》
綿も無き 布肩衣ぬのかたぎぬの 海松みるごと わわけさがれる 襤褸かかふのみ 肩にうち懸け 
《綿なし服は 海のみたい 肩に掛けたら びらびら垂れる》
伏廬ふせいほの 曲廬まげいほの内に 直土ひたつちに わら解き敷きて 父母ちちははは まくらかたに 妻子めこどもは あとかたに かくて うれさまよひ 
《傾く家の 土間どまわら敷いて 父母おやは枕に 妻子つまこは足に 固まりうて うれいて嘆く》
かまどには 火気ほけ吹き立てず こしきには 蜘蛛くもの巣きて いひかしく 事も忘れて ぬえどりの 呻吟のどよるに 
《釜に蜘蛛くも 火のない釜戸かまど めしき忘れ うめいてばかり》
いとのきて 短き物を はしると へるが如く しもと取る 里長さとをさが声は 寝屋処ねやどまで 立ちばひぬ かくばかり すべ無きものか 世間よのなかの道
《更にその上 追い打ち掛けて むち持つ役人やつが 手加減なしに 寝てるとこ来て がなって叫ぶ 世の中これで えんか ほんま》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八九二)
世間よのなかを しとやさしと 思へども 飛び立ちかねつ 鳥にしあらねば
《世の中は つろうとまし 思うけど 逃げん 鳥ちゃうよって》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八九三)



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■日めくり万葉集Vol・2(036)あみの浦に

2011年08月10日 | 日めくり万葉集
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【五月十六日】放映分

鳴呼うらに 船乗ふなのりすらむ 娘子をとめらが 玉裳たまもすそに 潮つらむか

  あみの浦 船遊びする あの児らの 裾濡らすかな 潮満ちてきて》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻一・四〇)



【万葉歌みじかものがたり】鳴呼うらに》

 統天皇六年(692)三月
伊勢行幸みゆき
多く の官女たちを連れての 行幸であった
中納言三輪朝臣高市麿みわのあそみたけちまろ
 春の農作業を目前にして なんたる・・・」
とのいさめを 無視して
しかも 通過地の国造くにのみやつこらに 冠位を授け 調ちょうえき免除する といった大判振る舞い
ともの 騎兵や荷担ぎ達の 調役ちょうえきまでも免除

留守居るすいの人麻呂は 思いやっていた
たみの気持の 在りどころを お忘れかも
 いや 言うまい 言うまい わしは 歌
 海では 官女どもは 楽しんで るだろう
 帰った なら
  人麻呂さま 見ていたのですか」
  言わせてやろう)

静かに 瞑目めいもくすれば 波の音がする

鳴呼うらに 船乗ふなのりすらむ 娘子をとめらが 玉裳たまもすそに 潮つらむか
 あみの浦 船遊びする あの児らの 裾濡らすかな 潮満ちてきて》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻一・四〇)
くしろ  答志たふしさきに 今日けふもかも 大宮人おおみやひとの たまるらむ
《喜々として とおみさきで 綺麗きれえな藻 ってるやろか 今日もあの児ら》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻一・四一)
潮騒しほさゐに 伊良虞いらご島辺しまへ 漕ぐ船に 妹乗るらむか 荒き島廻しまみ
 波荒い 伊良湖の島の 島巡り 喜んでるか あの児も乗って》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻一・四二)
  
 満つ浜辺・・・ 
ゆれる 玉藻・・・ 
潮騒 のとどろ・・・ 
事は知らず 人麻呂は 歌心にひた


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■日めくり万葉集Vol・2(035)君待つと

2011年08月06日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【五月十三日】放映分

君待つと が恋ひをれば わがやどの すだれ動かし 秋の風吹く

《あっすだれ 揺れたおもたら 風やんか あんまりうちが 焦がれるよって》
                  ―額田王ぬかたのおおきみ―(巻四・四八八、巻八・一六〇六)



【万葉歌みじかものがたり】すだれ 動かし》

天智八年(669)中臣鎌足なかとみのかまたり 死去
中大兄皇子なかのおおえおうじ 天皇おおきみ即位の 翌年であった

大化改新以来の盟友めいゆう
自分のきさき 鏡王女かがみのおおきみを 正妻として下げ渡し
采女うねめ 安見児やすみこを 与えて優遇した
その 死にあたって
最高冠位 大職冠たいしょくかんに任じ
大臣おおおみの位 藤原の姓を授けた

信頼 すべき 相談相手を亡くし
天皇おおきみは 近江大津宮での 政務に掛かりっきりであった

久しく  お越しはない
額田王ぬかたのおおきみは 張りのない日々を 送っていた
 空は澄み 山は 赤や黄にもみちしている
 みち狩りの お誘いでもあれば 気も晴れように
そう いえば 昔 前触れなしの突然のお越しがあった もしや そんなことも・・・)

君待つと が恋ひをれば わがやどの すだれ動かし 秋の風吹く
《あっすだれ 揺れたおもたら 風やんか あんまりうちが 焦がれるよって》
                  ―額田王ぬかたのおおきみ―(巻四・四八八、巻八・一六〇六)

「えっ 風の所為せいと間違えたの 額田王おおきみ

風をだに 恋ふるはともし 風をだに むとし待たば 何かなげかむ
うらやまし 風と間違まちごて うちなんか 待つ人うて なげかれへんわ》
                  ―鏡王女かがみのおおきみ―(巻四・四八九、巻八・一六〇七)
 鎌足公は 亡くなられたもの」
鏡王女かがみのおおきみは さびしく つぶやく 



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■日めくり万葉集Vol・2(034)天ざかる

2011年08月03日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【五月十二日】放映分

天離あまざかる ひな長道ながぢゆ 恋ひれば 明石のより 大和島やまとしま見ゆ

 《長い道 恋し恋しと 明石来た 海峡かいきょうこに 大和の山や》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五五)



【万葉歌みじかものがたり】大和島 見ゆ》

長門をた 人麻呂の公務旅たび
大宰府 への 副次報告を終え
の津からの船は 難波なにわの津を目指していた
時化しけの怖さはあるが 沿岸伝いの船旅ふなたび
陸路の難渋なんじゅうを思えば 安全 この上ない
久方ぶり の 大和の地
はやる 心の 人麻呂

 まだ 見えぬのか 大和は)
稲日野いなびのも 行きぎかてに 思へれば 心こほしき 可古かこしま
《退屈な 印南野いなみの続く おお見えた 加古の港や 待ってたんやで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五三)

 淡路島 大きゅうなってきた おお 賑やか 賑やか)
笥飯けひの海の にはくあらし 刈薦かりこもの みだづ見ゆ 海人あまの釣船
うみは いだみたいや 釣り船が いっぱい出てる こら大漁や》 
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五六)

 うわぁ 大和や 大和や)
天離あまざかる ひな長道ながぢゆ 恋ひれば 明石のより 大和島やまとしま見ゆ
《長い道 恋し恋しと 明石来た 海峡かいきょうこに 大和の山や》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五五)

小躍こおどりしたい気持ち
それとは 裏腹うらはら
人麻呂の胸に 苦いしるが わだかまる

(このまま 地方の官吏かんりで終わるのか
 あの ほまれは 夢だったのか
 天武帝に召され「大王おおきみは 神にしあれば」とうたったのは わしだ
  統帝の覚えは 目出たかった
 吉野行幸みゆき「山川も依りてつかふる」は絶賛を得た
 皇子達への き歌の数々
 宮めの 寿ことほぎ歌・・・
 あれ は 真のわしであったのであろうか
 時移り 世は変わり 宮廷一の歌人うたびと 柿本人麻呂は どこへ行ったのじゃ
 友もいない ぶん不相応な扱いを受けた わしに 誰も寄りはしなかった
 もう  大和はわしの住むところではないのだ)

石見いわみは い あそこは 人が住んでいる
 依羅娘子よさみのおとめが待っている・・・)

人麻呂の目に 大和島山が にじ



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