犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(155)なかなかに

2012年10月31日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十月三十一日】放映分

なかなかに 人とあらずは さかつぼに 成りにてしかも 酒にみなむ
《酒壺に 成って仕舞しもうて 酒にも 鳴かず飛ばずの 人生よりか》
                          ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四三)

【万葉歌みじかものがたり】にごれる酒を》

(わしは 酒に逃げてるのではない
  それにしても しらっと 中座しおって・・・)
 まだき 奥の座敷 
文机ふづくえを前に 端座たんざする旅人たびとがいる
 の上 大徳利 
なみなみと注がれた酒坏さかづき
 人は どうして 酒を飲むのか
 たのしきにつけ 悲しきにつけ
 一杯目 これが また美味うま
  一杯の酒が 次の酒を呼ぶ・・・
  また一杯 もう一杯 さらに一杯・・・
  やがて 酔いつぶれて・・・
 もう 金輪際こんりんざいとの 二日酔い・・・
 めぬうちの 酒坏さかづき・・・
 性懲しょうこりもなくの 繰り返し・・・)
 酒に 罪があろうか
 酒は 飲むべきもの むべきもの)

しるしなき 物をおもはずは 一坏ひとつきの にごれる酒を 飲むべくあるらし
仕様しょうもない 考えせんと 一杯の どぶろく酒を 飲むえで》
                          ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三三八)
酒の名を ひじりおほせし いにしへの おほひじりの ことのよろしさ
《酒のこと ひじりやなんて 適切うまいこと 言うたもんやな 昔の聖人ひとは》
                          ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三三九)
いにしへの ななさかしき 人どもも りせしものは 酒にしあるらし
《名ぁ高い なな賢人けんじんも 人並みに 欲しがったんは 酒やでやっぱ》
                          ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四〇)
さかしみと 物言ふよりは 酒飲みて ゑひ泣きするし まさりたるらし
えらぶって 講釈ものゆうよりは 酒飲んで 泣いてる方が えんとちゃうか》
                          ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四一)
言はむすべ むすべ知らず きはまりて たふときものは 酒にしあるらし
《なんやかや たりおもたり てみても 行きつくとこは やっぱり酒や》
                          ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四二)
なかなかに 人とあらずは さかつぼに 成りにてしかも 酒にみなむ
《酒壺に 成って仕舞しもうて 酒にも 鳴かず飛ばずの 人生よりか》
                          ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四三)

(わしが 真面まともなのか
 あやつが 正当まともなのか・・・)
き合いの悪い 相手と
ついつい 酒におぼれる 自分
忸怩じくじたる思いの 旅人がいる



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■日めくり万葉集Vol・2(154)梅柳

2012年10月27日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【十月二十八日】放映分

うめやなぎ 過ぐらくしみ 佐保さほの内に 遊びしことを 宮もとどろに
《宮かで あそぶんやった うめやなぎ 見とて出かけて えらい目うた》
                            ―作者未詳―(巻六・九四九)

【万葉歌みじかものがたり】 ばむものを》

 は正月 陽はうらら
ひま持て余し 仕事抜け
浮かれ 揃うて 春日野へ
蹴鞠けまりうたげと ほうけるに
一天いってんにわか かき曇り
驟雨しゅうう降り来る 雷も
稲妻走り 宮中みやなか
上を下への 大童おおわらわ
したが宮人みやびと 蛻殻もぬけから
叱責しっせき受けた 者みな
足止め 喰らい 閉じ籠もり
折から 晴れて 陽が射すに
悔しまぎれに 歌作る

くずふ 春日かすがの山は うちなびく 春さりゆくと 山のうへに 霞棚引き 高円たかまとに うぐひす鳴きぬ 
春日かすがの山に 春来たら 山に霞が 棚引いて 鶯鳴くよ 高円たかまどに》
物部もののふの 八十やそともは 雁が音の ぐこの頃 かくぎて 常にありせば 
《宮づかひと みなろて かりが北行く 春の日の うららが続く 平時いつもなら》 
めて 遊ばむものを 馬めて 行かまし里を 待ちかてに 我がする春を 
《友れどうて 遊ぶのに 馬をつらねて 里行くに 待ちに待ってた 春やのに》
けまくも あやにかしこく 言はまくも ゆゆしくあらむと あらかじめ かねて知りせば 
おもただけでも くやしいて わけするん はばかるが 先にわかって ったなら》 
千鳥鳴く その佐保さほがはに 岩にふる すがの根採りて 偲ふ草 はらへてましを 行く水に みそぎてましを 
佐保川さほがわ行って 菅根すがねり おはらいのり たのんに 水できよめを たやろに》
大君おほきみの みことかしこみ 百磯城ももしきの 大宮人おほみやひとの 玉桙たまほこの 道にもでず 恋ふるこの頃
処罰しょばつを受けて 仕様無しょうなしに わしら一同いちどう 打ちそろい 足止あしどろて 謹慎きんしんや 春の野山が 呼んでるうに》
                            ―作者未詳―(巻六・九四八)
うめやなぎ 過ぐらくしみ 佐保さほの内に 遊びしことを 宮もとどろに
《宮かで あそぶんやった うめやなぎ 見とて出かけて えらい目うた》
                            ―作者未詳―(巻六・九四九)




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■日めくり万葉集Vol・2(153)もみち葉を

2012年10月24日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【十月二十七日】放映分

黄葉もみちばを 散らす時雨しぐれに 濡れて来て 君が黄葉もみちを かざしつるかも
《もみじを 散らす時雨しぐれに 濡れ来たが その甲斐あって もみじ髪挿かざせた》
                         ―久米女王くめのおおきみ―(巻八・一五八三)

【万葉歌みじかものがたり】明けず もあらぬか》

相楽さがら別荘での 酒宴二ヶ月のち
若手官人が つどうていた
天平 十年(738)十月
場所は橘諸兄もろえ旧宅
黄葉もみじうたげ
主催者は 橘諸兄もろえ長子 奈良麻呂
この年うち舎人とねりとなった 家持も れっしていた

手折たをらずて 散りなば惜しと が思ひし 秋の黄葉もみちを かざしつるかも
手折らんまま 散らすんしと 思うてた 秋のもみじを 髪挿かざしに出来でけた》
                         ―橘奈良麻呂たちばなのならまろ―(巻八・一五八一)
めづらしき 人に見せむと 黄葉もみちばを 手折たをりぞし 雨の降らくに
《珍客に 見せよとおもて もみじ葉を 手折たおってきたで 雨降る中を》
                         ―橘奈良麻呂たちばなのならまろ―(巻八・一五八二)
黄葉もみちばを 散らす時雨しぐれに 濡れて来て 君が黄葉もみちを かざしつるかも
《もみじを 散らす時雨しぐれに 濡れ来たが その甲斐あって もみじ髪挿かざせた》
                          ―久米女王くめのおおきみ―(巻八・一五八三)
めづらしと ふ君は 秋山の 初黄葉はつもみちばに 似てこそありけれ
したわしい 奈良麻呂あんた似てるは 秋山の 初もみじ葉に 初々ういういしいて》
                         ―長忌寸娘ながのいみきのおとめ―(巻八・一五八四)
平城なら山の 峯の黄葉もみちば 取れば散る 時雨しぐれの雨し 無く降るらし
平城なら山の 折取ったもみじ葉 すぐに散る 時雨しぐれずうっと 降ってるからや》
                         ―縣犬養吉男あがたいぬかいのよしお―(巻八・一五八五)
黄葉もみちばを 散らまく惜しみ 手折たをり来て 今夜こよひかざしつ 何か思はむ
《もみじ葉を 散らすんして ってきて 髪挿かざせたよって もう悔いいで》
                        ―縣犬養持男あがたいぬかいのもちお―(巻八・一五八六)
あしひきの 山の黄葉もみちば 今夜こよひもか 浮かび行くらむ 山川やまがはの瀬に
《山もみじ 今晩あたり 散って仕舞て 流れ行くんか 山の川瀬を》
                         ―大伴書持おおとものふみもち―(巻八・一五八七)
平城山を にほはす黄葉もみち 手折たをり来て 今夜こよひかざしつ 散らば散るとも
《平城山を いろどるもみじ ってきて 髪挿かざせたよって 散ってもえな》
                         ―三手代人名みてしろのひとな―(巻八・一五八八)
露霜つゆしもに あへる黄葉もみちを 手折たをり来て 妹にかざしつ のちは散るとも
霜露しもつゆで 色くもみじ ってきて 貴女あんた髪挿せた もう散ってええ》
                         ―秦許遍麿はだのへこまろ―(巻八・一五八九)
十月かむなづき 時雨しぐれに逢へる 黄葉もみちばの 吹かば散りなむ 風のまにまに
十月じゅうがつの 時雨しぐれうた もみじ葉は 散って仕舞うやろ 風吹くままに》
                         ―大伴池主おおとものいけぬし―(巻八・一五九〇)
黄葉もみちばの 過ぎまく惜しみ 思ふどち 遊ぶ今夜こよひは 明けずもあらぬか
《もみじ葉の 散るのしんで 友同士 遊ぶこのよる 明けんで欲しな》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一五九一)






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■日めくり万葉集Vol・2(152)奈良山の

2012年10月20日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【十月二十六日】放映分

奈良山ならやまの 児手このてかしはの 両面ふたおもに かにもかくにも 侫人こびひととも
へつろうて あっちこっちに え顔し 始末しまつの悪い おべっか者め》
                         ―消奈行文せなのこうぶん―(巻十六・三八三六)

【万葉歌みじかものがたり】まなぶたれて》

 時代変われど 小役人
 ずるいけども 憎みもならず》

奈良山ならやまの 児手このてかしはの 両面ふたおもに かにもかくにも 侫人こびひととも
へつろうて あっちこっちに え顔し 始末しまつの悪い おべっか者め》
                         ―消奈行文せなのこうぶん―(巻十六・三八三六)

かんつかえは 気楽なものさ 
一度いたら もう好都合しめたもの
早出眠いが  昼まで勤め 
居眠いねむりする 時過ぎわる 
扶持ふちは安いが 月々はいる 
日照り 雨風 関係なしに

ざうけふに ひおほとれる くそかづら 絶ゆることなく みやつかへせむ
《サイカチに からみついてる クソカズラ わしずううっと 役人でろ》
                         ―高宮王たかみやのおおきみ―(巻十六・三八五五)
  
波羅門ばらもんの 作れる小田をだを からす まなぶたれて はたほこ
《バラモンが お作りの田ぁ 喰うからす 寝惚ねぼまなこで 旗竿はたざおるで》
                         ―高宮王たかみやのおおきみ―(巻十六・三八五六)
                     婆羅門」=宮廷
                     カラス」=役人
                     食む」=勤めを食い物にする
                    「まなぶたれて」=満腹で眠い 

《坊主かもうて しっぺが返る》

坊主ぼうず綺麗ぎれい 常のこと 頭もるし ひげ
したが坊主ぼうずは 忙しい 朝の読経どきょうに 昼掃除そうじ 
檀家だんか回りに 托鉢たくはつに 時に法要ほうよう 葬儀そうぎあり
休む間なしの 毎日は ひげり残す 仕方しかたなし 

法師ほふしらが ひげくひ 馬つなぎ いたくな引きそ 法師ほふしは泣かむ
んさんの ぞこないの ひげくいに 馬つなぎなや 引いたら泣くで》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八四六)
壇越だにをちや しかもな言ひそ 里長さとおさが 課役えだちはたらば いましも泣かむ
檀家だんかはん そらい過ぎや 里長さとおさの 税取り立て来たら お前が泣くで(坊主税金免除やで)》
                         ―ほうし―(巻十六・三八四七)




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■日めくり万葉集Vol・2(151)物皆は

2012年10月17日 | 日めくり万葉集
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【十月二十五日】放映分

ものみなは あらたしきよし ただしくも 人はりにし よろしかるべし
何事なにごとも 新しえで そはうが 人は古いが えのんちゃうか》
                          ―作者未詳―(巻十・一八八五)
  

【万葉歌みじかものがたり】《人はりにし》

年が明ければ よわいが増える
よわいさかなに 年寄り茶化ちゃか
しとしと雨が 春趣おもむき深め
 のときめき 春こそなれば

冬過ぎて 春しきたれば 年月としつきは 新たなれども 人はりゆく
《冬過ぎて 春になったら 新年や でも人だけは ふるなってくで》
                          ―作者未詳―(巻十・一八八四)
  
ものみなは あらたしきよし ただしくも 人はりにし よろしかるべし
何事なにごとも 新しえで そはうが 人は古いが えのんちゃうか》
                          ―作者未詳―(巻十・一八八五)
  
春の雨に ありけるものを 立ちかくり いも家道いへぢに この日暮らしつ
う程の こと無い春雨あめを けとって たずね行く道 日ィ暮れて仕舞た》
                          ―作者未詳―(巻十・一八七七)
  
今行きて 聞くものにもが 明日香あすかがは 春雨はるさめ降りて たぎつ瀬の
《すぐ行って 聞きたいもんや 春雨あめ降って 流れ激しい 明日香川あすか瀬音せおと
                          ―作者未詳―(巻十・一八七八)
  
住吉すみのえの 里行きしかば 春花はるはなの いやめづらしき 君に逢へるかも
住吉すみのえの 里行ったとき 春花はなの様な あの人にうち 出うたのんや》
                          ―作者未詳―(巻十・一八八六)

 旋頭歌】
春日かすがなる 御笠みかさの山に 月もでぬかも
  佐紀さきやまに 咲ける桜の 花の見ゆべく
春日かすがある 御笠みかさの山に 月しな
 佐紀山さきで咲く 桜の花を 見てみたいんで》
                          ―作者未詳―(巻十・一八八七)
  
白雪の つねく冬は 過ぎにけらしも
  はるかすみ たなびく野辺のへの 鴬鳴くも
《白雪が 積もり降る冬 ったらしいな
 春霞はるがすみ 棚引たなびく野ぉで 鳴く鶯や》
                          ―作者未詳―(巻十・一八八八)

 比喩歌】
我がやどの ももの下に 月夜つくよさし 下心したごころよし うたてこのころ
《庭にある もも木の下 月照らし なんや知らんが 楽し心や》
うち童女むすめ やっと大人に なったんや 月のしるしや 目出度めでたいことに)
                          ―作者未詳―(巻十・一八八九)



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■日めくり万葉集Vol・2(150)うるはしと

2012年10月13日 | 日めくり万葉集
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【十月二十四日】放映分 

うつくしと 我がいもは 早も死なぬか
 けりとも 我れに寄るべしと 人の言はなくに

いとしいと わしの思う児 早よ死なんかな
 生きてても わしに靡くん 滅多めったいんで》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三五五)

【万葉歌みじかものがたり】《笠にもまぬ》

思い通わぬ  恋路は辛い
けどもあきらめ 出来できんと嘆く

 男哀れや 諦め悪い】
うつくしと 我がいもは 早も死なぬか
 けりとも 我れに寄るべしと 人の言はなくに

いとしいと わしの思う児 早よ死なんかな
 生きてても わしに靡くん 滅多めったいんで》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三五五)
何せむに 命をもとな 長くりせむ
 けりとも いもに やすく逢はなくに

《何でまた 命ごにと 思うんやろか
 生きてても あの児に逢える 確証はず無いのんに》
                     ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三五八)
 良えとこ行ったが 詰め甘かった】
はしたての くらはしかはの 川のしづすげ
 我が刈りて 笠にもまぬ 川のしづすげ

はしたての 倉橋川の かわしずすげ
 刈ったまま 笠まなんだ かわしずすげよ》
                     ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二八四)
                           (菅を刈る=契る 笠に編む=結婚する)
さかいなしの 恋路は損や】
うちひさす みやを行くに 我がれぬ
 玉のの 思ひ乱れて 家にあらましを

《逢いとうて 大通とおり行ったら ぉ破れたで
 つらいけど 家で待ったら かったやろか》
                     ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二八〇)
他人ひと見られんと 風なら逢える】
いきに 我れは思へど 人目おほみこそ
  吹く風に あらばしばしば 逢ふべきものを

《命け うち思てるに 五月蝿うるそて逢えん
 もし風に 成れたとしたら 常時しょっちゅ逢えるに》
                     
                     ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三五九)
【小胸おどらせ 垣間見したに】
人の親 娘子児をとめごゑて もる山辺から 
 あさな かよひし君が ねば悲しも
《親が子を 守る守山もりやま あたりを通り
 朝たんび てたあんたが んのん悲し》
                     ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三六〇)
 恋の切り株 またまた芽吹く】
あられり 遠江とほつあふみの かはやなぎ 
 刈れども またもふといふ かはやなぎ
あられる 遠江とおつおおみの かわ
 刈ったかて またえるう かわ柳》
                     ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二九三)
 負けてたまるか 年寄りするな】
はしたての 倉橋川くらはしかはの いはの橋はも 
 男盛をざかりに 我が渡りてし いはの橋はも
はしたての 倉橋川の あの石の橋
  若い時 わしも渡った あの石の橋》
                     ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二八三)




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■日めくり万葉集Vol・2(149)蓮葉は

2012年10月10日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【十月二十一日】放映分

蓮葉はちすばは かくこそあるもの 意吉おき麻呂まろが いえなるものは うもの葉にあらし
はすの葉は まあこんなにも えもんか うちるんは さしずめ芋葉いもや》
                       ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八二六)

【万葉歌みじかものがたり】たふにな寄りそ》

次々に出される 歌題うただい
間髪かんぱつ入れずの 意吉麻呂歌作り

(次は 行縢むかばき 青菜あおな 食薦すごも はり じゃ)
食薦すごも敷き 青菜む うつはりに むかばきけて 休むこの君
食薦すごも敷き 青菜あおな煮るんで はり上に 行縢むかばき懸けて お待ちのほどを》
                        ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八二五)

(さあさ お次は 膳上ぜんうえ蓮葉はちすばと行こう)
蓮葉はちすばは かくこそあるもの 意吉おき麻呂まろが いえなるものは うもの葉にあらし
はすの葉は まあこんなにも えもんか うちるんは さしずめ芋葉いもや》
                       ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八二六)

 さすが意吉麻呂
 では 先ほどまで遊びしさいの目はどうじゃ)
一二いちにの目 のみにはあらず 五六ごろくさむ さへありけり 双六すごろくさい
双六すごろくの さいの目見たら 一二いちにほか 五六ごろくもあって 三四さんしもあるで》
                       ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八二七)

 吉麻呂歌は 果てるを知らず
矢継ぎ歌題うただい 発止はっしと返す

こう 塔 かわや くそ やっこ
かうれる たふにな寄りそ かはくまの くそぶなめる いたきやっこ
こうりの とう近づくな 便所そば くそふなを やっこめ》
                       ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八二八)

 ひしお ひる たい 水葱なぎ
ひしほに ひるてて たひ願ふ 我れにな見えそ 水葱なぎあつもの
ひしお ひる掛けた 鯛しに 見とうもないで 水葱ねぎ吸物すいなんか》
                       ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八二九)

たまばはき 鎌 むろ なつめ
たまばはき 刈りかま麻呂まろ むろの木と なつめもとと かきかむため
かま麻呂まろよ 玉掃ばはき苅りい むろの木と なつめ根本ねもと 掃除そうじするんや》
                       ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八三〇)

白鷺しらさぎが木をくわえてる絵を見て)
池神いけがみの 力士りきじまひかも 白鷺しらさぎの ほこひ持ちて 飛び渡るらむ
池神寺いけがみの 力士りきしまいやで 白鷺しらさぎが ほこくちくわえ 飛んでん見たら》
                       ―長意吉麻呂ながのおきまろ―(巻十六・三八三一)
                       (力士舞=呉の美女を襲う悪党崑崙こんろんを力士が征伐し
                            その象徴を振り回し口に咥えて舞う技楽)
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【即興歌作りの巧者・右兵衛任じのなにがし
(とある酒宴 盛付け容器の蓮葉はちすばに掛けて)
ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉はちすばに まれる水の 玉に似たる見む
《空からの 雨降らんかな はすの葉に 結ぶ水玉みずたま 真珠たまやと見たい》
                           ―作者未詳―(巻十六・三八三七)



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■日めくり万葉集Vol・2(148)しなが鳥

2012年10月06日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十月二十日】放映分
しなが鳥 安房あはぎたる 梓弓あずさゆみ 周淮すゑ珠名たまなは 胸別むなわけの 広き我妹わぎも 腰細こしぼその すがる娘子をとめ その姿かほの 端正きらきらしきに 花のごと みて立てれば

【万葉歌みじかものがたり】周淮すゑ珠名たまなは》

しなが鳥 安房あはぎたる 梓弓あずさゆみ 周淮すゑ珠名たまなは 胸別むなわけの 広き我妹わぎも 腰細こしぼその すがる娘子をとめ
《安房の隣の 周淮すえくに そこになさる 珠名ちゃん 胸大きいて 腰細い》
その姿かほの 端正きらきらしきに 花のごと みて立てれば 玉桙たまほこの 道行く人は おのが行く 道は行かずて ばなくに かどに至りぬ
端正きれえな顔で 微笑ほほえむと 通る人らは 用忘れ 呼びもせんのに 門くぐる》
さしならぶ 隣の君は あらかじめ 己妻おのづまれて はなくに かぎさへまつ
《隣のおやじ よめ帰し 言われもせんに 鍵渡す》
人皆の かくまどへれば かほきに 寄りてぞいもは たはれてありける
《男がみんな まどうから 美貌きれえ自慢の 珠名ちゃん 増長のぼせ上がって 調子乗る》
                       ―高橋蟲麻呂たかはしのむしまろ歌集―(巻九・一七三八)

金門かなとにし 人のてば 夜中にも 身はたな知らず でてぞひける
門口かどぐちに 男立ったら 引き入れる 気にもけんと 夜昼なしに》
                       ―高橋蟲麻呂たかはしのむしまろ歌集―(巻九・一七三九)

今日 の 収穫は上々だわい
もっとも ここは上総かずさ 
常陸ひたちの風土記には 載せられはせぬが 
噂に聞いて 来た甲斐かいがあった
この話 宇合うまかい様 大喜びに違いない
あの 方 なかなかの 物分かりじゃで

それ にしても
なんと 自堕落じだらくな女 
それ でいて みんなに好かれる女 
近くの婦女おうなたちにも 好意こういされる女

(浮名 流さずに済むなら わしもおとのうてみたいものだわい)
周淮すえちまたに 夕闇明かり
その 気もなしに 独り思いをする 蟲麻呂がいた



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■日めくり万葉集Vol・2(147)言問はぬ

2012年10月03日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十月十九日】放映分

ことはぬ 木すらいもと ありといふを ただひとり子に あるが苦しさ
《物わん 木かておすめす 有るうに わし独り子や なんでやろうか》
                         ―市原王いちはらのおおきみ―(巻六・一〇〇七)

【万葉歌みじかものがたり】一つ 松》

「おお 恭仁くにみやこが一望だ」
うたげは この一本松の場所が良い」
天平 十六年(744)新春
展望良い丘に うたげは張られた

聖武帝が 東国行幸みゆきたれ
諸国 を巡り
ここ恭仁京くにきょうに都され 足掛け五年を数える

帝の御心みこころは 如何いかがであったろうか
 咲く花のにおうがごとき」
たたえられた平城ならの都
宮廷は爛熟らんじゅく頽廃たいはいの度を加え
貴族の権謀けんぼう術数じゅっすうは極に向かい
社会 不安は増すばかり
加えて 
悪疫あくえき流行 
藤原氏四 兄弟の死 
藤原広嗣ひろつぐ九州挙兵
乱平定待たずの行幸みゆき
不安 募る平城帝都には とても戻れぬと
 青く水清い この地に留まられた・・・か

市原王おおきみ 
この眺め 新たな年に相応ふさわしいではありませぬか
ぜひ ともの 一首を」
家持は 市原王いちはらおうに 歌をうた

一つ松 幾代かぬる 吹く風の おときよきは 年深みかも
《風の音 さわやかなんも もっともや この一本松まつのきの 年輪とし見た分かる》
                         ―市原王いちはらのおおきみ―(巻六・一〇四二)

「これは お見事な寿ことほ
では 私も みやこ永遠とわを願って」

 玉きはる 命は知らず 松が枝を 結ぶ心は 長くとぞ思ふ
《限りある 人の命は 分からんが 枝結ぶんは 永遠とわ思うから》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻六・一〇四三)

たび重なる 紫香楽しがらき離宮への行幸みゆき
昨年十月には 紫香楽の地での大仏造立ぞうりゅうみことのり
追う かの様に 
十二月 恭仁造作ぞうさく停止の令
 仁宮の前途に 暗雲立ち込める
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 市原王の歌】
ことはぬ 木すらいもと ありといふを ただひとり子に あるが苦しさ
《物わん 木かておすめす 有るうに わし独り子や なんでやろうか》
                         ―市原王いちはらのおおきみ―(巻六・一〇〇七)




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