犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(230)春の花

2013年12月28日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【二月二十七日】放映分
春の花 今は盛りに にほふらむ 折りて插頭かざさむ 手力たぢからもがも
《春花は 今を盛りと 咲いとるが 折ってかみす 力も出んわ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十七・三九六五)


【万葉歌みじかものがたり】手力たぢからもがも

やまいの苦しみは 十日余り続き
ようやく 小康しょうこう得たものの
足腰え 身体からだはだるく
 は 家持をすっかり 気弱にしていた
こころだのみは おぬしばかりと 
大伴池主いけぬしへ 文を

春の花 今は盛りに にほふらむ 折りて插頭かざさむ 手力たぢからもがも
《春花は 今を盛りと 咲いとるが 折ってかみす 力も出んわ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十七・三九六五)
うぐひすの 鳴き散らすらむ 春の花 何時しか君と 手折たを插頭かざさむ
《鶯が 鳴き散らしとる 春の花 池主あんた髪挿かざし 何時いつ出来るやろ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十七・三九六六)

(困った 国守かみ殿じゃ
  これしきの病 吹き飛ばせぬか
 坊ちゃま育ち 致し方いか)

 主から 見舞いの文が届く
 お手紙拝見 見事な文章感じ入ります
  添えられし歌 これも素晴らしく
 口ずさむたび 心洗われます
  春 そう 今 春たけなわ
 春宵くれおもむき 桃の花 飛び交う蝶 
 緑なすやなぎ 葉隠はがくれにさえずる鶯
 これを たたえずして なんの人生でしょう
  二人しての 楽しみ
  これを 病が裂き 悔しくてなりません
  私の春は
 琴もし 酒も無し 友も無し で
 過ぎる のでしょうか》
(少し 嫌味かるが 良しとするか)
  
山峽やまがひに 咲ける桜を ただひと目 君に見せてば 何をか思はむ
山合やまあいに 咲いた桜を 一目でも 見せられたなら 言うこといで》
                         ―大伴池主おおとものいけぬし―(巻十七・三九六七)
うぐひすの 鳴く山吹 うたがたも 君が触れず 花散らめやも
《鶯の 鳴き来る山吹はなは あんたの手 れへんままで 散るもんかいな》
                         ―大伴池主おおとものいけぬし―(巻十七・三九六八)




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■日めくり万葉集Vol・2(229)焼き大刀の

2013年12月18日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【二月二十四日】放映分
やき大刀たちの かど打ちはなち 大夫ますらをの 寿とよ御酒みきに 我れひにけり
大刀たち振って しのぎ打ち付け いのりした 祝いの酒に わしうて仕舞た》
                         ―湯原王ゆはらのおおきみ―(巻六・九八九)


【万葉歌みじかものがたり】《》
今日けふ降る雨に
騒ぎふざける うたげがあれば
 深い 集いもあるぞ

安貴王あきおうの 誕生祝賀いわい
息子市原王いちはら 寿ことほぎ詠う
市原王いちはら叔父の 湯原王ゆはらのおう
大刀 舞踊り 賀の歌添える

春草は のちは移ろふ いはほなす 常磐ときはにいませ たふとが君
《春草は 若々しけど 枯れて仕舞う 岩でってや 父君ちちぎみ様よ》
                         ―市原王いちはらのおおきみ―(巻六・九八八)
やき大刀たちの かど打ちはなち 大夫ますらをの 寿とよ御酒みきに 我れひにけり
大刀たち振って しのぎ打ち付け いのりした 祝いの酒に わしうて仕舞た》
                         ―湯原王ゆはらのおおきみ―(巻六・九八九)

明日香豊浦よゆらの 尼寺集い
行く秋思い 萩花はぎはな偲ぶ

明日香川 行きる岡の 秋萩は 今日けふ降る雨に 散りか過ぎなむ
《明日香川 めぐ岡辺おかべの 秋萩は ってる雨で 散るのんやろか》
                         ―丹比国人たじひのくにひと―(巻八・一五五七)
うづら鳴く りにし里の 秋萩を おもふ人どち 相見あひみつるかも
《この古い 昔の里の 秋萩を 心の友と ながめたんやで》
                         ―沙弥尼さみに―(巻八・一五五八)
秋萩は さかり過ぐるを いたづらに 插頭かざしにさず 帰りなむとや
《秋萩は 盛り短い そやうに しもせんと 帰るて言うか》
                         ―沙弥尼さみに―(巻八・一五五九)

歌舞かぶ音曲おんぎょくを つかさどる おうや役人 集い来て
暮れのこの日を 楽しもと 葛井ふじい広成ひろなり 辞を述べる
近時きんじ思うに 古舞盛ん 年もふるなり 暮れんとす
そこでいにしえ 偲びつつ 古歌を皆して 唱うべし
ここに二つの古い歌 わしが披露に 及ぶゆえ
集う風雅ふうがの 皆々は 一念発起ほっき 唱うべし」

我がやどの 梅咲きたりと らば と言ふに似たり 散りぬともよし
うちの庭 梅咲いたでと たら やな 散ってもえか》
                          ―作者未詳―(巻六・一〇一一)
春されば ををりにををり うぐひすの 鳴く我が山斎しまぞ まずかよはせ
《春来たら 梅咲きほこり 鶯も 鳴く庭やから どうぞおしを》
                          ―作者未詳―(巻六・一〇一二)

天平十一年(739)十月 光明皇后宮にて維摩ゆいま
大唐・高麗こま音曲おんぎょくかなで この歌唱う 
琴弾き 市原王いちはらおう 忍坂王おさかおう
歌人うたびと 田口家守たぐちやかもり 河辺東人かわべあずまひと 置始長谷おきそめはつせら十数人

時雨しぐれの雨 なくな降りそ くれなゐに にほへる山の 散らまくしも
時雨しぐれ雨 そんなしっぽり 降りないな あか黄葉もみじの 散るのんしで》
                          ―作者未詳―(巻八・一五九四)



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■日めくり万葉集Vol・2(228)籠もよ

2013年12月04日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【二月二十三日】放映分
もよ みち くしもよ みくしち この岡に ます児 家聞かな 名らさね 
かごさげて 良えくし持って みしておる そこなる娘 何処どこじゃ 名はなんちゅうか》
そらみつ 大和やまとくに おしなべて 我れこそ しきなべて 我れこそませ 我れこそはらめ 家をも名をも
《ここのうるわし 大和の国を おさめおるんは このわしなるぞ  仕切っておるは わしこそなるぞ  わしも名告るぞ 名前も家も   (お前も名告れ 名前と家を)》

【万葉歌みじかものがたり】もよ み持ち

 は 春
芽吹きの時期とき
場所は 泊瀬はつせ小国おぐに
陽光ようこう降り注ぐ 野の原
若菜 が芽を出している

娘子おとめご 登場
若菜 摘みを 始める
楽しげ な 摘む手の動き
げのかごに 春風揺れる
手の掘り串に 春日はるひが光る

若者  登場
娘子おとめごに 語りかける
「むすめよ むすめ みのむすめ
 どこ に住むのじゃ そなたの家は 
 わし を 誰かと 問い尋ねるか
 この 国仕切る 王こそ わしじゃ
 わしも 教える と 名前」

春の催し 奉納ほうのう舞台
豊作祈る 歌謡うたいの劇は
笑い を誘う 求婚舞踊
伝え伝えて  民謡風に

もよ みち 
  くしもよ みくしち 
    この岡に ます児 
      家聞かな 名らさね 
かごさげて 良えくし持って
   みしておる そこなる娘 
     何処どこじゃ 
        名はなんちゅうか》
そらみつ 大和やまとくに
  おしなべて 我れこそ
    しきなべて 我れこそませ
      我れこそはらめ 家をも名をも
《ここのうるわし 大和の国を
  おさめおるんは このわしなるぞ
      仕切っておるは わしこそなるぞ
         わしも名告るぞ 名前も家も
         (お前も名告れ 名前と家を)》
                         ―雄略天皇ゆうりゃくてんのう―(巻一・一)

舞台に 繰り広げられる 滑稽こっけい仕草しぐさ
笑いに満ちる 茣蓙ござ桟敷さじき
豊作 祈願の 芝居は 続く



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