京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

二兎を追うもの?

2024年05月04日 | こんなところ訪ねて
【飛鳥から現代へ-時代を超えて技を伝えた匠たちの千四百年を描く技能時代小説】 
『金剛の塔』(木下昌輝)を読んだのは一昨年の秋だった。


聖徳太子の命で百済から3人の工匠が招かれ、日本仏法最初の官寺である四天王寺の建立(593)に携わった。そのうちの一人が金剛組の初代の金剛重光で、金剛一族は「魂剛」と名を変え、1400年余にわたって匠の技を今に受け継いでいるという。

心柱は倒れないように塔とつながってはいるが、塔の何かを支えているわけではない。1本目2本目3本目と「貝の口の継ぎ手」の工法で心柱を継いでいく。5層目から突き出た心柱の上に相輪を…。
最後まで馴染めない語り口と物語の構成だったが、〈五重塔の「心柱構造」の誕生と継承の物語〉は気になりながら読み進んだ。

現在の塔は鉄筋コンクリ―ト造り( 昭和34年8度目の再建)だと知って、内心では(なあんだ…)と思いながら、以来頭のどこかでは一度拝観したいとも思ってはきた。
四天王寺の境内で古本祭が開催中だとテレビが報じていた。これで気持ちが動いたみたいだ。
阪急梅田駅に出て、御堂筋線で天王寺下車。歩いて10分。このルートで行こうと予習して、きのう四天王寺に向かった。

谷町筋に沿って真っ直ぐ進むと、右手になんと石の鳥居が目に入った。ここか!?って思いだった。



もともと木造だったのを1294年に忍性上人が勅を奉じて石造に改めたのだそうで、扁額には「釈迦如来 転法輪処 当極楽土 東門中心」とあり、裏に「嘉暦元年(1326)」の銘があるという。

京都のように会場にマイクでさまざまな案内が繰り返されることがなく、古本まつりは静かで落ち着いていた。古書の蒐集癖はないし、乱読でありながら結構間口が狭い本読みなのだな。ま、いいか。買い求めたものはなかった。





屋根は本瓦葺で、飛鳥時代創建当時の姿を再現しているという。
塔内部は壁画が描かれているが、目が薄暗がりにいつまでも慣れなくて、よくわからずじまい。
上に行くほど狭くなる螺旋階段で5層まで上がってみた。当の高さは39.2m、相輪の長さは12.3mだそうな。十分高く、境内を眼下にし、右も左もわからない市内が広がっていた。
中心の伽藍には回廊が巡らされ、地図を見ると境内地はさらに周辺広範囲に及ぶ。こんなに広いとは思ってもおらず、ただ一つ五重塔拝観ばかりが念頭にあった。

二兎を追うもの…、だったかな。それでも再読してみようという思いになっている。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 古書市 | トップ | 日本版・マザーテレサ »

コメントを投稿

こんなところ訪ねて」カテゴリの最新記事