尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「籠池証言」をどう考えるか②中身編-森友学園問題⑦

2017年03月27日 21時35分39秒 | 政治
 籠池証言をめぐっては、一方では「まったく何も出なかった」という人もあれば、「驚くべき証言が相次いだ」という人もいる。どっちも、ある意味では正しいのだと思うけど、「国有地払下げの経緯は明確にならなかった」などという人がいるのは理解できない。一方(買った側)しか呼ばないで、問題を解明できるわけがない。近畿財務局関係の人も喚問して、さらに追及するべきだろう。

 ただ、とにかくはっきりしたことはいくつかある。今まで「疑惑」と呼ばれるスキャンダルはいろいろあったが、受益者側が政官界に「広義のわいろ」を贈るのが普通である。「わいろ」でなくても、政治献金とかパーティー券を買うとか、なんらかの「金のつながり」がある。その見返りとして、政治家や官僚が影響力を発揮するというのが、疑惑の構図である。

 今回もそうなのかと当初は思っていた人が多いだろう。籠池理事長が政治家の誰かに、多額の政治献金を行っていたとか。ところが、今回はどうもそうではない。証言がどれほど正しいか、自分からわいろや闇献金を暴露する人はいないかも知れないけど、合法的な政治献金という話も聞かれない。森友学園にはそれほど資金的余裕がなく、むしろ「安倍昭恵名誉校長」とか「安倍晋三記念小学校」の旗印で金集めをしたかったという方が近いようだ。いつもと逆である。

 そうすると、国有地問題も「忖度」(そんたく)の有無ということになる。「忖度」という言葉は今回有名になってしまったけど、意味は「他人の気持ちをおしはかること」である。おしはかって相手に有利なように取り計らうことまでは、本来の意味には入ってない。だけど、まあそういうことがあったかどうか。

 今回、証言冒頭で「安倍首相夫人付きのファックス」が出てきた。この「夫人付き」という職員は経産省からの出向で、夫人側の表現では「秘書」となる。公務員の秘書がいるんだから、首相夫人が純粋な私人というのは無理がある。ファックスによれば、「夫人付き」が関係省庁に問い合わせをして、その結果を学園側に報告している。ただし、「ゼロ解答」だと首相は主張している。そういう風にも読めるけど、「今後も見守っていく」と明記している。また「夫人にも報告している」と明記している。

 これを「完全なゼロ解答」と取るのは、ちょっと無理がある。というか、ナイーブすぎる理解だろう。「政界中枢とつながりができた」と考えたとしても不思議ではない。ただし、そのファックスの段階(2015年11月)には、国有地売却の話はない。実際の売却は2016年6月のことである。

 安倍首相は「私や妻、事務所を含めて、国有地の売却に関わっていたとするなら、総理大臣も国会議員もやめる」と明言してきた。常識的に考えるならば、ここまで明確に言い切るのは、「実際に関与がなかったから」なんだろうと思う。(「首相の力で隠ぺいできる」という意味だと考えるのは、ちょっと無理だろう。)つまり、首相は元々、「国有地売却以前には関わっている」とする余地を残していたわけである。首相夫人付きの「問い合わせ」以後、何があったのか。それは財務省内部の問題である。

 首相側からすれば、「国有地売却に首相側が関わっていなかったことが証明された」というのが籠池証言なんだろうと思う。ど真ん中の直球ストライクかとも見えたものだけど、多分「ストライクゾーンぎりぎりのボール」だとされるだろう。国民側がそれでは納得できないと、内閣支持率が激減すれば状況は変わるだろう。だけど、各調査の傾向を見れば、確かに微減はしているけれど、まだ圧倒的に支持が多い。首相の説明に納得しているかという問いになると、納得していないという人が多いんだけど、支持率には激変が見られない。それが現実である。

 もう一つ、大きな問題として、「首相側の寄付金」問題がある。100万円を出したという例の話である。安倍首相側は「密室の中の話で、信ぴょう性がない」とするけれど、そういう風に言うのなら、安倍昭恵氏が国会で証言するべきだろう。自分から国会で証言したいというべきだ。そうじゃないんだから、現時点では「籠池証言の方が信ぴょう性がある」と認めざるを得ない。刑事罰のリスクを負っての証言なんだから。事実でないというならば、偽証罪で告発しなければならない。

 この問題はなんだかよく判らない。事実だとしても、それ自体は「以前は応援していた」という周知のことを改めて証明するだけである。だから、わざわざウソを言うとも思えないのだが、籠池証言はかなり詳細にわたっている。(しかし、そういうのが冤罪事件では怪しいんだけれど。)籠池証言が正しいのなら、「首相が国会で虚偽答弁を行った」ことになる。そうなると、これは国有地問題以上の大問題である。国会で国民の代表に対してウソ答弁を繰り返したとするならば、今後他の法案審議を行うことはできない。内閣提出法案の提出責任者が、堂々とウソをつくならば、国会で審議できない。
 
 今回聞いていて、籠池氏の「逆恨み」の対象は大阪府知事に向かっている。それはどうしてだろう。よほど、松井知事、あるいは「大阪維新」に引き立ててもらってきたのだろう。そうなると、安倍内閣の方針も、もしかすると「維新対応」だったのかもしれない。憲法改正を目指す安倍内閣は、IR(カジノ解禁)法案、あるいは2025年大阪万博への支持など、「維新対応」を積み上げてきている。もしかすると、その一環として、大坂で知事が支持している「森友」には配慮してやれということもあったのかと思う。
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