カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

中国に戻れない中国人のために   嘘つき中国共産党

2017-04-09 | 読書

嘘つき中国共産党/辣椒著(新潮社)

 作者は中国亡命漫画家。これも漫画。中国で反共産党的な漫画を描いてしまったために身の危険を感じ、日本に旅行中に妻と共に亡命を決意したという。
 内容的には題名にあるように、中国共産党の実態とは何か、ということを中心に描かれている。中国のネット事情。抗日の実態。国家権力者周近平とはどんな人か。また、その周辺の人々。民主主義と日本のことなども著者の視点から描かれている。漫画でデフォルメされているし、本人が中国共産党を憎んでいる現実(そうならざるを得なかった理由も描かれている)もあって、多少の悪意のこもった表現であることは確かだが、表面的にしか中国を知らない人には、かなり理解のしやすい内容ではないかと思う。
 日本人にとって中国や中国共産党体制というのは、きわめて分かりにくいものがあるように思う。さらに本当には関心が薄いというか。大衆が日本を嫌うことには敏感に嫌悪を覚えていると思うが、当然その背景やもとになっている諸悪の根元が、中国共産党であることは、なかなか考えが及ばないのではなかろうか。また、巨大すぎる国家を運営するという視点から、ある程度の独裁は致し方ないという見方もある。それは大衆の暴走を考えるとそういう場合もあるとは思うが、だからといって将来永劫、この体制のままでいいということにはならないだろう。処方箋は難しいにせよ、中国共産党をどのように体制変化させることができるのか。それは全世界的に重要なイシューではないかという気がする。
 ただ、日本には嫌中国(嫌韓国もだが)本というジャンルが人気があるという出版事情があって、とにかく中国を悪く書いている本が多すぎるとは思う。それが日本の自由さであることは間違いないが、それを大衆が欲しすぎているのは、やはりあまり健全とは言えない。あえて言うと、中国抗日思想が生んだ同類的な反応と言えるだろう。もう少し冷静になって、中国を嫌った方がいいと思う。
 もっともこの本を読んで、さらに中国が嫌になることは間違いない訳で、相手の理解をどうするのかというのは非常に難しい。しかしながら困る日本という視点だけでなく、本当に困らせられているのは、他ならぬ中国人自身だということに気づいてもらわない限り、かの国は変わりようがない。日本では外圧が重要だが、中国は中身から変わってもらうより無い。今のところ絶望的に見えるけれど、このような本を書きたいと思っている中国人自身は、それなりに少数ではないと思う。だからこそ、これは中国本土に住んでいる中国人にこそ読まれるべき本である。著者が帰省できる日が来るためにも、情報をどう伝えていくのか、これは大変に重要なことであろう。
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