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ガン細胞の栄養を絶つ化合物開発

2017-03-25 11:56:49 | 健康・医療
大阪大学の研究チームが、ガン細胞の栄養を絶ち「兵糧攻め」にする新たな化合物を開発し、増殖を抑えることに成功しました。

ガン細胞は表面のタンパク質の入り口から、栄養源のアミノ酸を取り込んで増殖するとされています。研究チームは、様々なガン細胞に共通して存在する「LAT1」と呼ばれる入り口を特定し、この入り口を塞ぎガン細胞へのアミノ酸の補給を阻む化合物を開発しました。

このガン細胞の栄養源の取り込みについては、非常に多くの研究がなされています。一般には細胞に糖やアミノ酸などが入るのは、単純な濃度差ではなく、細胞が積極的に取り込むとされており、これを能動輸送と呼んでいます。

これは細胞表面にある膜タンパク質が、細胞外にある栄養素を見つけると積極的に細胞内に引き込んでいるようです。ですからガン細胞だけでなく、通常細胞にもこの入り口とされているタンパク質は存在し、糖を取り込むものやアミノ酸を取り込むものが知られています。

ガン細胞は正常細胞に比べてはるかに頻繁に分裂増殖を行いますので、より多くの栄養源を取り入れる必要があります。これを比較してみると、糖については正常細胞もガン細胞も同じ入り口タンパク質を利用しています。ところがアミノ酸に対しては、正常細胞にはない特殊な入り口タンパク質が見つかりました。

その代表的なものがLAT1で、当初はこれをガンマーカーとして利用できないかの研究が進んでいました。つまりこのLAT1はガン細胞にのみ発現されますので、この量を調べればがんであるかどうかが判別できるわけです。LAT1はほとんどすべてのガン細胞に現れますので、理想的なマーカーとなりうるのですが、あまり血液中に出てくることがないようで、実用化に至っていません。

こういう物質をトランスポーターと呼んでいますが、LAT1は単にアミノ酸の取り込みに関わっているだけではないようです。ガン細胞中ではアミノ酸のトリプトファンを変化させ、これをLAT1から放出すると、周りにあるT細胞の活性化を抑え免疫反応を抑制していると言われています。

研究チームは、このLAT1の活動を抑える化学物質を見つけました。コード番号しかわかりませんので、どんな化合物化は分かりませんが、他のタンパク質抑制剤の親和性を高めた化合物のようです。この化合物を膵臓ガンや胃ガンなどの細胞に試験管内で添加したところ、ガン細胞の種類にかかわらず増殖を抑える効果が確認できたとしています。

また膵臓ガンのマウスに投与する実験でも、対照に比較して生存日数が延長しました。研究チームは、患者への負担の少ない経口薬として開発する方針で、治療が難しい患者に対する新しい薬になることを期待しています。