杜撰か精妙かは問わず、偽史、偽伝も、観光に資する面があれば前向きに許容されるとする高説は、学芸員の科学的知見、学術的誠実が、かえって地域振興などの邪魔になるとする分別と根が繋がっている。そのような立派な分別は、知識・知能は大目的である実利追求のために機能的に使用するものであって、故なく実利を見下すややこしい理念、理想に専心扈従させるものではないという、賢人の文明思想から派生したのである。
気味の悪い時代はなくならないと古老が怯えるのは、賢人の思想を調法な拠り所にして、野望・欲望の実現のためには非道をためらってはならないと牽強附会する我々自身が、競って気味の悪い情念を内に育てているからだろうか。
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