◉デシメーシヨン
デシメーシヨンとは一の罰法にして、罪人を輪形に並べ置き順次計へて毎n番目に当るものを処刑し、余は之を免除するの法なり、
ヘジシパス氏は其著書中に此法を利用して、死を免されたる猶太人ヨセフアスの逸事を載す、今之を左に摘記せん、
ヨセフアス外四十人の猶太人は、一旦羅馬人の羈絆を脱し、山中に潜伏せしが逮捕の難の免れざるを知り、此に一同協議の上再び敵手に落んよりは寧ろ潔く自刃して果るに如かずと議決せり、然るにヨセフアス外一人のものは心に此議を賛せずと雖ども、今之に反対するの不可なるを知るを以て、ヨセフアス此に一工夫を案出し以て衆に告げて曰く、「我等一同今や死に就かんとす、此際各自屠腹せんよりは、友情として順次互に劊するに如かざるべし、去れば一同圏状に列び、第三番目に当る人毎より死に就かん、斯くて最後に残れる一人のみ独り自殺を遂ぐることにせんと」、衆皆な之を諾しければ、ヨセフアスは乃ち自身外同志のもの一人は、三十一番目と十六番目の位置に起立し、以て無事に死を免かれたりといふ、
(「數學遊戯」 ロースボール氏著 竹貫直人譯)