◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

10月11日~20日

2017-10-11 13:19:12 | Weblog

10月20日(3名)

小口泰與
新そばの細き仕上り古暖簾★★★★
今日の昼、信州の新蕎麦を封を切って食べたが、驚いたことに蕎麦はこれまでになく「細き仕上がり」なのだ。老鋪の新そばは、切れがあって、格別であろう。(高橋正子)

木道の果たて小沼の鴫の声★★★
日矢差すや雨後の黄菊の水玉へ★★★

廣田洋一
取り置きし豆腐を前に生姜摺る★★★
葉生姜やいつも買ひ置き酒の友(原句)
葉生姜や買ひ置きたりて酒の友★★★★
「いつも買ひ置き」では、季節感が薄れます。俳句は「今」を読みます。「ただ、今」が勝負です。
葉生姜のみずみずしさと、とくとくと汲まれる酒。いい風趣がある。「葉生姜や手に取るからに酒の事/白雄」の句もある(高橋正子)

豚肉の味を引き締め生姜焼★★★

桑本栄太郎
雨降るや坂道蔽う萩は実に★★★
天辺の雨に色づく庭の柿★★★
殊更に雨に明るし泡立草★★★★
泡立草の黄色は目立つ色なのだが、雨が降ると辺りの草色の中でひときわ黄色が目立つ。「雨に明るし」は言い得た。(高橋正子)

10月19日(4名)

●廣田洋一
塀越しに香り流れる松手入★★★★
松手入の句に「松手入せし家あらむ闇にほふ/中村草田男」がある。嘗て四国松山の郊外に住んでいた頃は、百坪を少し超える敷地に住んでいたので、門脇には、松を植えていた。そこで二人の子供達を育てた。季節の「松手入」が」懐かしい。(高橋信之)

枝ぶりをためつ眇めつ松手入★★★
思い切り切って落とせり松手入★★★

●小口泰與
秋晴や感謝で終る商談会★★★
葉末にて蟷螂の斧たてており★★★★
端近の我を呼びけり金木犀★★★

●多田有花
秋曇まっすぐ城と向かい合う★★★★
城は姫路城なのかと思う。晴れの日なら城は陽の光を反射して輝いている。見るというより眩くて眺める。曇っていると、城の陰影までも見届けられる。だから、「まっすぐ城と向かい合う」となる。面白い気づきだ。(高橋正子)

熟れし田に秋の長雨容赦なく★★★
背高泡立草長雨に濡れて★★★

●桑本栄太郎
水匂う雨の匂いや秋湿り★★★
秋雨やこの道ゆかば故郷へ★★★
バスを待つ間も匂い来る金木犀★★★★

10月18日(4名)

●小口泰與
朝刊のバイクの音や金木犀★★★
爽やかや小沼の端というところ★★★★
つとつうと鴫の嘴より雫かな★★★

●廣田洋一
雨吸ひて香り失せたる金木犀★★★
金木犀散りては墓を明るくす★★★★
親の墓、先祖の墓が明るい。死者を弔う子や孫らの優しい心情が嬉しい。(高橋信之)

金木犀香りゆかしきクラス会★★★

●多田有花
雨やめば鵙の高鳴き響きけり★★★
新米の粒が光りし夕餉かな★★★★
昔の話になったが、終戦前後の都会生活を思い出した。大阪生まれで、中国大陸(旧満州大連)育ちの私にとっての
終戦前後の生活は、厳しかった。米を食べることはできなかった。それでも、旧制中学2年の私は、同学年の250人あまりの生徒の指揮を執って行進をした。その中には東大に進学した者も何人か居た。妻の又従弟もその中の一人である。(高橋信之)

秋雨の止み間すかさずテニスする★★★

●桑本栄太郎
天辺の紅葉し初めり雨の木々★★★★
何処からか木犀の香や建仁寺★★★
辻に出で何方へ行かん刈田道★★★

10月17日(5名)

●小口泰與
渡り鳥妙義山(みょうぎ)の美しき奇岩かな★★★
湧窟の水澄みにけり橅の森★★★★
木木の中被さって来ぬ鵯の声★★★

●廣田洋一
白蛇神てふ真白き蛇や穴惑ひ★★★
ちょろちょろと舌を出しつつ穴惑★★★
蛇穴に乾ききったる遊水池★★★★

●多田有花
馬の耳蛙の面が欲しき秋★★★
今週は雨つづきなり冬用意★★★★
秋霖や家に籠もりてよしなしごと★★★

●桑本栄太郎
みどりなる中に紅葉やアメリカ楓★★★
船頭の竿の捌きやもみじ川★★★★
竿差して保津川下る紅葉かな★★★

●川名ますみ
秋晴の風にふくらむラッパ袖★★★★
ラッパ袖は、今年の流行らしくよく見かける。袖口がラッパのように開いてやわらかく波打って女性らしいデザインだ。秋晴れの日、袖が風にふくらんで爽やかだ。流行りの服であることも、楽しさを呼んでいる。(高橋正子)

早朝に酔芙蓉提げ人来る★★★
来客の遠き庭より酔芙蓉★★★

10月16日(4名)

●小口泰與
紅葉の便りへ羽搏つ我が髪膚★★★
逆光の薄を刷きし川の風★★★★
落鮎の鍍金剥げたる魚籠の中★★★

●多田有花
鳥取から今年最後の梨売りに★★★★
明快な一句だ。リズムがいい。上五、中七、下五それぞれのイメージが平明で、作者の思いが直に伝わってくる。嬉しい句だ。(高橋信之)

男ならヤッサかきたし秋祭★★★
秋霖のゴミ出し場に二羽の鴉★★★

●廣田洋一
体育は稲刈りですよ六年生★★★★
小学生の子どもにもわかる句だが、大人が読んでも秀句だ。(高橋信之)

陛下の稲刈りされる匂ひかな★★★
稲刈機刈り残したる四隅かな★★★

●桑本栄太郎
雨降れば雨に明るき泡立草★★★
いみじくも鬼の貌なり芙蓉の実★★★
稲架並び子等の遊びやかくれんぼ★★★★
懐かしい風景だ。昔は、誰もが体験したことであろうと思う。(高橋信之)

10月15日(4名)

●多田有花
晩秋の森に熊注意の看板★★★
俳句には長すぎる名よ背高泡立草★★★
秋の雨静かに降りて静かにやむ★★★

●廣田洋一
咲き残る花に末期の秋の雨★★★
音もなく色もなく降る秋の雨★★★
街灯の照らす細糸秋の雨★★★★

●小口泰與
一斉に団栗落つる音したり★★★★
団栗が何事が起ったかのように、一斉にぱらぱらと落ちる音に出会うことがある。風のせいかもしれないが、驚くことである。(高橋正子)

石仏の定かに見ゆる刈田かな★★★
末枯や魚下りし魚野川★★★

●桑本栄太郎
秋愁や咽に小骨の病院へ★★★
雨降れど香り確たり金木犀★★★★
金木犀の香りは、遠くからでも匂ってくる。確かに金木犀が匂ってくる。正に「確たり」であって、いい言葉だ。(高橋信之)

鳴くものの終いとなりて秋深む★★★

10月14日(4名)

●小口泰與
稲掛けて夕映えの浅間望みけり★★★★
稲掛けを終えて一息いれたところに浅間山の美しい夕映えが眼に映った。夕映え景色に今日一日が和むひと時。(高橋正子)

登校の列の伸ぶとこ金木犀★★★
紅葉追い写真に執し放下せず★★★

●廣田洋一
大鯉や池を横切る秋の昼★★★★
逆さ富士静まり返る秋の水★★★
墓の名を探して歩く秋の昼★★★

●多田有花
放置することに決まりし秋の雨★★★
秋雨の病院へ続く車の列★★★
石橋のかかる流れに杜鵑草★★★★
石橋、流れ、杜鵑草が互いに響きあって、静かな秋の透明感が出ている。(高橋正子)

●桑本栄太郎
赤き羽根胸に選挙や演説人★★★
山里の昼の鎮まり添水鳴る★★★★
いみじくも貌の鬼なり芙蓉の実★★★

10月13日(4名)

●谷口博望(満天星)
木に登る冬瓜いつか豚となり★★★
目を奪ふブラシの赤や狂花★★★
日の方へ黄色濃くなる楝の実★★★★
楝(おうち)は栴檀の古い言葉。秋に実が熟れて丸く薄い黄色の実を花火のようにつける。晴れた青空のなかで、日に輝いている様子は特に美しい。「日の方へ」でこの句が生きた。(高橋正子)

●小口泰與
きざはしの何処か幽かきりぎりす★★★
風に乗る木犀の香の身のほとり★★★★
下り鮎見ゆるほどなり鳶の笛★★★

●多田有花
快晴や隣家の柿の日ごと熟れ★★★
新しきガラス戸越しに秋陽さす★★★★
ガラスはいつも同じように思えるが、新しいガラス戸がはまり、住まいがリフレッシュされた。秋の陽差しをよく通してうれしい限りだ。冬に向かってガラス戸越の陽差しが楽しめる。(高橋正子)
秋霖となる週末の天気予報★★★

●廣田洋一
多国籍の屋台連なるお会式かな★★★
尾びれ振り水面揺るがす秋の鯉★★★★
万灯は鯛提灯や勝浦講★★★

●桑本栄太郎
朝顔の咲き継ぐ青の盛りかな★★★★
西洋朝顔などは秋になってよく咲く。沢山の青い花を咲かせて朝顔自体も咲くことを楽しんでいるようだ。「青の盛り」に詩心がある。(高橋正子)

金木犀光り茂みの香りけり★★★
秋雲の影の走るや天王山★★★

10月12日(4名)

●多田有花
どんぐりを拾いつ山を登りけり★★★★
楽しい句だ。山を登り、どんぐりを拾い、読み手も楽しくなる。詠み手が楽しくて、読み手も楽しくなる。いい句だ。(高橋信之)

頂に蜻蛉たっぷり群れて飛ぶ★★★
澄む秋の久美浜湾と日本海★★★

●小口泰與
合点のゆかぬ話や桐一葉★★★
散歩圏伸ばして刈田五六枚★★★★
散歩をする範囲をいつもより伸ばした。刈田が五六枚ある。田んぼのある所に出たのだ。よい気候となったこと、体調がよいこと、秋が深まり、景色が改まったこと。健やかな句だ。(高橋正子)
弓を引く作法や美しき雁の列★★★

●廣田洋一
松茸のエセンス加へ飯を炊く★★★
茸飯天地を返し椀に盛る★★★
茸飯炊けるを待ちて子ら座る★★★★
「子ら座る」家族の姿が眼に浮かんでくる。読み手の眼にありありと浮かんできて、嬉しくなってくる。(高橋信之)

●桑本栄太郎
信号を待つて眩しき秋日かな★★★
おもかげのすでに遠のく芙蓉の実★★★
爽籟や樟の大樹の医科大に★★★★
樟の大樹と医科大の取り合わせがいい。大樹の樟を吹いてくる爽籟に、身が清まる思いがする。(高橋正子)

10月11日(3名)

●小口泰與
大沼へなだれ咲きたる薄かな★★★★
巨大なる吾の影を立つ稲雀★★★
蟋蟀のうすうす聞こゆ眠りかな★★★

●桑本栄太郎
 <秋の四条大橋>
大橋や今朝の鞍馬は秋霞★★★
水底の魚影きらめき秋高し★★★
鴨川の土手に語らう秋うらら★★★★
「秋うらら」の嬉しい時間だ。読み手もまた嬉しくなる時間だ。(高橋信之)

●廣田洋一
新米や今年も生れし特A米★★★★
特Aとランクづけされた新米ができた。「今年も生れし」とあるので、「よくぞ、おいしい米を作ってくれた」と農家への感謝も。(高橋正子)

今年米山菜漬けの封を切る★★★
今年また新米炊きし老いの夕★★★


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自由な投句箱 (小口泰與)
2017-10-11 13:28:26
★大沼へなだれ咲きたる薄かな
★巨大なる吾の影を立つ稲雀
★蟋蟀のうすうす聞こゆ眠りかな
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