「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

独り言~「昔の記事」と「ちあきなおみ大全集」~

2011年10月25日 | 独り言

タイトルにある「昔の記事」と「ちあきなおみ大全集」が、いったいどう結びつくのか、この記事を読んだ後でもアタマをひねる向きがあるかもしれない。と、まず「予防線」を張っておこう。

1年ほど前の古い話だが
2010年の「文芸春秋」11月号の巻頭に女流ヴァイオリニストの「千住 真理子」(せんじゅ まりこ)さんのエッセイが登載されていた。

千住さんといえば、「デュランティ」(ストラディヴァリウス)というヴァイオリンの名器を愛用されている方としても有名である。

「自分の音に追われて」と題して、公演で地方のホテルを利用したときに館内のBGMで自分が昔、録音したCDを散々聴かされ、気が滅入ってしまう話である。もちろんホテル側は一流のヴァイオリニストがお客さんとしてお見えになったということで歓迎の意味で、まったくの善意からきたサービス行為の一環である。

千住さんはこう述べられている。(以下、引用)

「そのCDはかなり昔に録音したものであり、私は稚拙な過去の自分を突き付けられたような敗北感に襲われた。そもそも演奏家というのは、録音した自分の演奏は常に不満なものである。また、不満でなければ進歩はない。ましてや昔の録音となれば、前科を指摘された犯罪者の気分だ、きっと。~以下、略」

意外な気がした。演奏家とは自分が録音した演奏に愛着をもたないものなのか!

これは興味ある事柄である。千住さんほどの「生まれと育ち」に恵まれた、ごく”まっとうな”方がおっしゃるのだから、おそらくほかの演奏家たちに当てはめても大きく外れることはあるまい。

世に名演と称される録音は”ごまんと”あるが、高い評価の一方で、逆にご本人が”身のすくむ”ような思いをしている演奏だってきっとあるに違いない。ただし、すでに亡くなってしまった演奏家には無縁の話だが、もしかすると天国で歯ぎしりしている人がいるのかも。

これは演奏家どころか、作家や画家、映画監督、俳優など、自分の関係した作品が広く世の中に公開されている人たちに押しなべて当てはまりそうだ。

彼らが駆け出しの未熟なころに書いたり、描いたり、そして出演した作品に対して、後悔のあまり「早く消えてほしい」という思いを抱いているとすれば実にお気の毒。なぜなら、いったん公開された作品は消滅させる手立てもなく永遠に残って、もう取り返しがつかないわけだから。

これは精神衛生上、たいへんよろしくなかろう。

たとえば夏目漱石は、後年、「草枕」に言及されると古傷に触られたみたいに嫌な顔をしたというし、葛飾北斎(江戸時代の浮世絵師)は臨終の間際に「天があと5年の間、命を保つことを許してくれたら必ずやまさに本物といえる画工になりえただろう」と言い残して、これまでの膨大な作品に対してまるで”ノー”と言わんばかりだし、さらにはデヴュー時にくだらないB級映画に出演していた俳優などはよほどのタフな神経が必要だろう。

さて、レベルと質がまったく違うけれど自分が昔、投稿した記事についても時々同様の思いにとらわれることがある。

ブログを始めて、この10月21日でちょうど丸5年、2~3日おきのペースで更新する記事の数はおよそ700本前後(正確には738本)になるが、中には「こんなことを書かねばよかった」と後悔しているのがいくつもある。

自慢げに書いた記事、自分を実物大以上に見せようと欲張った記事、ことさら誰かに”あてつけた”と受け取られかねない記事など枚挙にいとまなし!

さらに悲惨なのは勘違いで明らかに間違ったことを書いてしまい、機会をみて訂正しておけばいいものを、どうせ過去の記事だからもう見る人もあるまいとズボラをきめこんでいたら、そういう記事に限ってバックナンバーとして閲覧する人がいるのには閉口する。

そういう記事は内容に関係なく、おそらく「グーグル」の検索などで出てくる羅列された項目の中ではじめの方に位置しているのだろうとおよそ想像がつく。

もちろんブログごときは「加除修正」が簡単なのでクリックひとつで”こと”は済むわけだが、一方では未熟なりにも自分の足跡みたいな存在だから、記事全体をまるっきり消去するのも何だか”もったいない”ような気がして複雑な気分である。

ここで、参考までに人気のある過去記事を上げると次のとおり。

ブログはご承知のとおり「アクセス解析」欄の「ページごとの閲覧数」によって前日にどういう記事がどのくらい閲覧されたのか簡単にわかる仕組みになっているので便利。

○ 「”ちあき なおみ”はなぜ歌わない?」

○ 「プリアンプはもう要らない」

○ 「オーケストラの経営学」

○ 「MLB:松井を甘く見過ぎたペドロ・マルティネス」


○ 「患者を殴る白衣の天使」

といったところ。

この中でとりわけ息が長く登場しているのが「”ちあき なおみ”はなぜ歌わない?」
である。

彼女が突然引退した理由について関係本をもとに勝手に類推した内容だが、いまだにアクセスが途絶えることがないので、それだけ彼女に興味のある方がたくさんいる証左だろう。

ちなみに「ちあき なおみ」の手持ちのCDは今のところ2枚だが、つい最近、高校の同窓のS君から「NHKのFM放送で聴いた彼女の”5番街のマリーへ”が実によかった。もし収録されていたら貸して欲しい」との連絡が入った。

残念なことに収録されていなかったのでその旨、連絡したところ、とうとうS君は我慢できなかったとみえて、この曲目が収録された「ちあき なおみ大全集」(CD2枚組)を購入してしまった。

バッハの「無伴奏チェロ組曲」を愛するS君だがクラシックから演歌までレパートリーは実に幅広い。この辺は包容力のある人柄とまったく一緒。

もちろん、たってのお願いでこの大全集を貸してもらうことになり4日ほど前に自宅に到着。

CDの宣伝文句に
伝説の歌姫 ちあきなおみ~彼女の代表作そして名曲の数々を厳選しました。胸を打つ名歌唱・・・・すごい歌手です」とあった。

             

全37曲をひととおり聴いてみたが、「ビブラート」のかけ方が抜群にうまくてやっぱり掛け値なしに「すごい歌手」である。

丁度、亡き母の法事で福岡から我が家に来ていた長兄に聴かせてあげると「”アカシヤの雨がやむとき”などは、オリジナルの西田佐知子よりも”ちあきなおみ”が歌った方がもっとヒットしただろうな」と、しみじみ述懐するほど。

当然のごとく、コピーを頼まれたが「昔、学校の先生をやってた人間が簡単に人に法律違反をやらせていいの」と言ってやった!?

一番気に入った曲目は初CD化された「逢わずに愛して」。

たしか、”前川 清”の持ち歌だったと思うがこれほど抒情味たっぷりに聴かされるともう完全にノックアウト。「長崎は今日も雨だった」も大好きなんだが、これもCD化できないかな。

ここ当分は「ちあきなおみ」で”秋の夜長”を楽しく過ごせそうだが、これもすべてS君のおかげだと感謝、感謝。

 

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