つい先日の日本経済新聞に「60歳からの手ぶら人生」というベストセラーが紹介してあった。日経新聞は論調が自分の波長に合うのだろうか、共感できる記事がとても多い。
記事の趣旨は「定年後は人生の縮小期だから持ち物や人間関係を整理し、身軽に人生を楽しもう」ということで、根が信じ込みやすい性質(たち)なので、自分もこれから見習わねばと素直に思った。
もちろんオーディオだって「持ち物」の一環だから例外ではなく、これから「縮小期」に向かわねばと内心決意していたところ、その矢先にたいへんな誘惑が待ち受けていた。
オーディオ仲間のMさん(大分市)から「Kさんが素晴らしいウッドホーンを持ってますよ。昔、自作されたそうでテクニクスの大型ドライバー付きです。現在遊んでいるし、置き場所にも難儀されているようなので一度試聴してみませんか。」
「ウッドホーンですか・・・。チャレンジしてみるのも面白そうですね。」
「縮小期」に向かって進むはずなのに、舌の根も乾かないうちにこの有様だからまったくどうしようもない人間だ~(笑)。
とはいえ、「まだ枯れるのは早過ぎる、もう一花咲かせてみたい。」という山っ気が心のどこかにあるのかもしれない。いずれにしろ、こちらから持ちかけた話ではないので首尾よくいくかどうかはその時点では半信半疑だった。
実はウッドホーンには苦い経験があった。
その昔、JBLの「375ドライバー + ウッドホーン」をメインに使ってマルチ・チャンネル・システムを試みたことがあり、しばし甘い夢を見させてもらったが長期的には失敗に終わり、375やウッドホーンがあっさりオークションの露と消えたのはまだ記憶に新しい。
敗因の第一はウェストミンスター独特のフロント・ホーンが邪魔して、どうしても低音域と中高音域とのユニットの繋がりが滑らかにいかなかったことにある。
とはいえ、今回は当時と状況が相当変わっている。何といっても「LCネットワーク」から「2ウェイ・チャンデバ」に変身しているし、駆動するアンプだってかなり質的に向上している。
スピーカーシステムの編成にあたり「LCネットワーク」がいいのか、「チャンデバ」がいいのか、いまだに論争があるところだが我が家の置かれた環境では明らかにチャンデバの方が好みである。
中低音域のスッキリ感というか明瞭さにその根拠があるが、そうはいっても実際にやってみなくちゃわからんというのが正直なところだ。
MさんとKさんが大型のウッドホーンを持参されたのはご連絡があってから数日後のことだった。
一目見て自作にもかかわらずその精巧なツクリに驚いたが、テクニクスのドライバーの大きさと重量にもビックリ。とても自分の腕力では無理なので加勢してもらってようやくウェストミンスターの上に載せた。
なかなかピッタリ収まって、まるでわざわざ誂えたみたいだ。見かけ上では、まず合格(笑)。
現在はチャンデバ3号機を使ってクロスオーバー「5000ヘルツ」の2ウェイで聴いているが、いくらなんでもこんな大きなホーンを5000ヘルツ以上で使っても意味がないので、とりあえずチャンデバ1号機に代えてクロス「500ヘルツ」で試聴することにした。
その後で、今度はチャンデバ2号機を使ってクロス2000ヘルツでも実験してみることにしよう。ウェストミンスターの箱はそもそもクロス1000ヘルツを前提にして作られているのでこちらの方がマッチングする可能性は高い。
アンプは「~500ヘルツ」に「WE300Bシングル」をあてがい、「500ヘルツ~」を小出力の「6SN7プッシュプル」を充ててみた。
さあ、いよいよ音出し~。
一同、固唾を呑んで耳を澄ましたところ・・・・。
以下続く。