漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「必ヒツ」<囲んでしめつける> と 「泌ヒツ」「柲ヒ」「秘ヒ」「密ミツ」 「蜜ミツ」「樒ミツ」「瑟シツ」

2024年04月05日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 ヒツ・かならず  心部 bì

上段が「必」下段が「戈(ほこ)」。金文・篆文の必は、戈の刃(一印)を省いた形にハをつけている。

①戈(ほこ)の全体図。②柲(ほこの柄)の構造図(中国湖北省博物館の展示解説パネルより)https://www.bilibili.com/read/cv6944622/
解字 金文・篆文は、「戈(ほこ)から刃先を省いた形+ハ(両側をはさみつける)」の象形。戈(ほこ)から刃先を省いた形とは、戈の柄を意味し、そこにハ印で柄を補強する形。柲(武器の柄)の原字。柲は芯となる木の棒に割竹を当て、籐(とう)や革紐でしっかり巻き付け漆を塗って補強したもの[図版参照]。これによって柄は柔軟性があり、かつ強靭性をもつ。ヒツは、柄の木芯を取り巻いて補強した形を表し、「しめつける」「まわりを囲む」イメージをもつ。しかし、仮借カシャ(当て字)され、「かならず」の意となった。現代の字形は、「心+ノ」に変化した。
意味 かならず(必ず)。きっと。「必然ヒツゼン」「必読ヒツドク」「必須ヒッス

イメージ 
 「仮借カシャ」
(必)
 「戈の柄」(柲)
 「しめつける」(泌)
 「まわりをかこむ」(秘・瑟・宓・蜜・密・樒・謐)
音の変化  ヒツ:必・泌・宓・謐  ヒ:秘・柲  ミツ:蜜・密・樒  シツ:瑟

戈(ほこ)の柄 
 ヒ  木部 bì・bié
解字 「木(き)+必(戈の柄)」の会意形声。必は戈の柄を描いた字。必が「かならず」の意に仮借されたので、木をつけて元の意味を表した。
意味 (1)武器の柄。にぎり。戈に装着した柄。「戈柲カヒ」(ほこの柄) (2)ゆだめ。弓にぴったりと当てがって締めつけ、ゆがみを直す道具。

しめつける
 ヒツ・ヒ  氵部 mì・bì
解字 「氵(水)+必(しめつける)」 の会意形声。しめつけて、中から汁がでること。
意味 (1)にじむ(泌む)。狭い隙間や穴から汁がでること。「分泌ブンピツ・ブンピ」「泌尿器ヒニョウキ」(尿の分泌と排泄をつかさどる器官)

まわりをかこむ 
[祕] ヒ・ひめる  禾部 mì・bì
解字 旧字は祕で「示(祭壇)+必(まわりをかこむ)」 の会意形声。入口を閉じ、なかが分からないようにしてひそかに神を祭ること。新字体は、旧字の示が禾(いね)に変化したが、これは神にささげる初穂で、これをひそかに祭る形。いずれも、ひそかに・ひめる意となる。
意味 (1)ひそか。「秘密ヒミツ」「神秘シンピ」(人知ではかり知れない秘密) (2)ひめる(秘める)。かくす。「秘事ヒジ」「秘蔵ヒゾウ」「秘宝ヒホウ」「秘訣ヒケツ」(奥の手)
 ヒツ・しずか  言部 mì
解字 「言(ことば)+必(まわりをかこむ)+皿(うつわ)」 の会意形声。器の中で言葉がまわりをかこまれて外に聞こえないこと。必ヒツは発音も表す。
意味 しずか(謐か)。やすらか。静かなさま。「静謐セイヒツ」(しずかであること。静も謐も、しずかの意)「謐然ヒツゼン」(しずかなさま)
 シツ  王部 sè

瑟(「瑟的歴史」より)
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1637196264554285330&wfr=spider&for=pc
解字 「王王(琴の略体)+必ヒツ⇒シツ(まわりをかこむ)」の会意形声。囲まれた空間の上に弦を張った琴のような弦楽器。琴より大形のものを言う。発音のシツはヒツ(必)の転音。
意味 (1)古代中国で使われた琴に似た楽器。おおごと。琴より大形で25弦ある。現在、復元されている。「琴瑟相和キンシツあいわす」(琴と瑟が合奏して音がよくあうこと。夫婦間の相い和して睦まじいこと) (2)(瑟の音色から)おごそかなさま。しずかなさま。さびしいさま。きよらかなさま。「瑟瑟シツシツ」(風のさびしく、きびしくふくさまの形容)「蕭瑟ショウシツ」(風のものさびしく吹くさま)
 ヒツ・フク  宀部 mì・fú
解字 「宀(いえ)+必(まわりをかこむ)」 の会意形声。家の戸や窓を閉めて中にこもること。やすらか・ひそかの意となる。また、蜜・密・樒の音符となる。
意味 (1)やすらか。「宓穆フクボク」(深く静かで安らかなさま) (2)ひそか。 (3)人名。「宓子フッシ」(孔子の弟子)「宓姫フクヒ」(洛水の精霊)
 ミツ  宀部 mì
解字 「虫(はち)+宓(家の中に閉じ込める)」 の会意。ハチが巣の中に閉じ込めた蜂のみつ。
意味 (1)みつ(蜜)。はちみつ。「蜜蜂ミツバチ」 (2)みつのように甘い。「蜜月ミツゲツ」「蜜柑ミカン」「甜言蜜語テンゲンミツゴ」(蜜のように甜い言葉。うまい話や勧誘の言葉)
 ミツ・ひそかに  宀部 mì  
解字 「山(やま)+宓(閉じこもる)」 の会意で、深く閉ざして人の近付けない山。木が密集してすきまがない・近づけない・ひそかに、の意となる。
意味 (1)すきまなく。「密集ミッシュウ」「密林ミツリン」 (2)外から近付けない。「密室ミッシツ」 (3)ひそかに(密かに)。「内密ナイミツ」「密告ミッコク
 ミツ・ビツ・しきみ  木部 mì
解字 「木(き)+密(=宓。とじこもる)」の会意形声。香りをとじこめている香の材料となる木。日本では、しきみを言う。
意味 (1)中国で古書上の香木。じんこう。沈香。ジンチョウゲ科の常緑高木。熱帯地方の香木。 (2)[国]しきみ(樒)。モクレン科の常緑小高木。香気があり仏壇に供える。葉や樹皮から抹香や線香を作る。
<紫色は常用漢字>

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2 コメント

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Unknown (井上郁敏)
2019-12-08 14:15:13
いいブログですね。
参考にさせていただきます。
Unknown (漢字の音符)
2019-12-08 20:09:10
コメントありがとうございます。参考になれば幸いです。

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