hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

東野圭吾『回廊亭殺人事件』を読む

2020年11月13日 | 読書2

 

東野圭吾著『回廊亭殺人事件 新装版』(光文社文庫ひ6-22、2020年10月20日)

 

裏表紙にはこうある。

一ヶ原高顕(いちがはらたかあき)が亡くなった。妻子のない高顕の莫大な遺産を巡り、一族が「回廊亭」に集まった。「回廊亭」は、半年前に心中事件が起こり火事が発生したいわくつきの旅館だ。誰もが高顕の遺産を狙うなか、そこには相続関係にない菊代(きくよ)という老婆の姿が。彼女の目的は、心中事件の真相を明らかにすること、そして――真犯人を殺すことだった。事件に隠された衝撃の事実とは⁉

 

70歳の女性を老婆と表現するのは30年前の作品でもいけません!

 

旅館・回廊亭には、一ヶ原の一族と一人の年とった女性が集まっていて、莫大な資産を持つ一ヶ原高顕の遺言状が公開されようとしていた。

半年前に回廊亭で放火により恋人・里中二郎を失い自身も大火傷を負った桐生枝梨子は偽装自殺して、70歳の本間菊代に変装し、一ヶ原一族に加わって回廊亭に宿泊する。彼女は恋人を殺した犯人を探し出して復讐したいという一念で潜入したのだった。しかし、そこで遺産を巡る新たに殺人が起こり、枝梨子は警察の目をかいくぐり、本当に犯人を見つけ出し、復讐することができるのか?

 

本作品は、1991年7月カッパ・ノベルス『回廊亭の殺人』を改題、1994年11月光文社文庫

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:お好みで)(最大は五つ星)

東野圭吾の約30年前の作品で、話に膨らみが無く、面白さが限定される。舞台は旅館に限られほぼ密室状態で、登場人物も10数人に限られ、楽しみは謎解きだけに限られる。

32歳の女性が70歳に化けるのは可能ではあるが、まじかでジロジロ見られる環境では現実的とは思えない。その他、多少現実味に疑問を抱く点もあり、「仮想環境での謎解き」といった小説に近く、私には面白味が少なかった。

 

東野圭吾の略歴&既読本リスト

 

桐生枝梨子:主人公。高顕の秘書、32歳。不美人。火事で顔に火傷し、病院から脱出し偽装自殺した。殺された恋人・里中二郎の復讐のため、70歳の本間菊代に化けて回廊亭を訪れる。

里中二郎:桐生枝梨子の8歳下の恋人。自動車修理サービス会社の社員。里中は枝梨子の首を絞め心中しようとし、火事で焼死したと考えられている。
一ヶ原高顕(いちがはら・たかあき):実業家。故人。莫大な遺産についての遺言書を回廊亭で公表するよう指示していた。
一ヶ原蒼介(そうすけ):高顕の弟。大学教授。選挙出馬を狙う。息子は演劇関係の仕事をしている一ヶ原健彦。
一ヶ原直之(なおゆき):高顕の異母弟で、高顕の事業を継ぐ。40歳間近。なかなかの慧眼。
一ヶ原紀代美(きよみ):高顕の弟(故人)の妻。尊大な女性。娘は由香

藤森曜子:高顕の異母妹。40歳過ぎ。夫は不動産業。娘は加奈江
本間重太郎:高顕の親友。本間菊代の夫。

古木:弁護士。助手は鯵沢弘美。
小林真穂:回廊亭の女将。元々は高顕の愛人。
矢崎:警部。50歳前。若い相棒は高野


スキットル:ウイスキーなどを入れる小型の携帯用水筒。外国映画などで胸の内ポケットから水筒を出して酒を飲むシーンがある。

 

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絲山秋子の略歴と既読本リスト

2020年11月12日 | 読書2

絲山秋子(いとやま あきこ)

1966年東京生まれ。早大・政治経済学部卒後INAXに入社し、営業職で数度転勤。
1998年に双極性障害(躁鬱病)を患い休職、入院。入院中に小説の執筆を始め、2001年退職。
2003年『イッツ・オンリー・トーク』で文學界新人賞を受賞。芥川賞候補。
2004年『袋小路の男』で川端康成文学賞受賞。
2005年『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。『逃亡くそたわけ』で直木賞候補。
2006年『沖で待つ』で芥川賞受賞。
2016年『薄情』で谷崎潤一郎賞受賞。

他に、『エスケイプ/アブセント』『妻の超然』『末裔』『不愉快な本の続編』『離陸』『夢も見ずに眠った。』『ばかもの』、『北緯14度』、『忘れられたワルツ』、『小松とうさぎちゃん』、『御社のチャラ男』『まっとうな人生』など。

エッセイ『絲敵メイソウ』『絲的サバイバル』『絲的ココロエ「気の持ちよう」では治せない』など。

女性17人との共著『妹たちへ2

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絲山秋子『御社のチャラ男』を読む

2020年11月11日 | 読書2

絲山秋子著『御社のチャラ男』(2020年1月21日講談社発行)を読んだ。

 

社内でひそかにチャラ男と呼ばれる三芳部長。彼のまわりの人びとが、それぞれの見方で、彼及び社内の人について語る全16話の連作短篇。

 

舞台は地方にある料理用オイルを販売する中小企業の「ジョルジュ食品」。社長の親族ということで中途入社したのが三芳道造部長44歳で、陰でチャラ男と呼ばれる。三芳部長は情報収集には熱心だけれど、仕事はしないし、責任もすぐ部下に押し付ける。偉そうに説教を垂れ、意見されたら逆ギレする。一方で日ごろのノリは軽く、外車に乗って高級時計を、いいスーツを着て夜でも襟元にサングラスをぶら下げる。

 

当社のチャラ男   岡野茂夫(32歳)による

三芳部長は軽いしちょっと変わっているけれど、そんなに悪い人ではない。俺なんかが気がつかない、お客様の誕生日とか創立記念日とか、そういうことをちゃんと押えているので偉いと思う。見栄っ張りだけれど、お洒落が似合うルックスでもある。

 

わが社のチャラ男   池田かな子(24歳)による

かな子は総務課だが社長秘書兼なんでも屋だ。一昨年の入社歓迎会で二人になった三芳部長はうざすぎた。「ツィターとかは? 裏垢あるんでしょ?」 ほんと無理と思った。
かな子は「次からはもうやりません」とドキドキしながら言うと、チャラ男は「君ってすごいね。笑っちゃうね。てか僕なんか笑うしかないよね」と首筋の血管がぴくぴくした。
休職してしまった伊藤雪菜さんは、「一生懸命なのはわかるけど不器用きわまりない。それで過労とかどうなのと(言わないけれど)思う。心の病とか甘くね? と(言わないけれど)思う。」

 

弊社のチャラ男   樋口裕紀(24歳)による

売上を達成すれば利益率を言われ、利益率を達成すれば売上が足りないという。遊びじゃないんだぞ言われるが、遊びならもっと真剣にやる。こんなつまらないことが遊びだったら絶対に手を出さない。

 

社外のチャラ男   一色素子(33歳)による

チャラ男と一時不倫していた一色素子は言う。

チャラ男はいやなやつです。小物だし、キレやすいし、ひとを傷つけるようなことも平気で言う。……あんなに嫌われているのに、もしかしたらチャラ男は全世界、全人類に片思いをしているのかもしれないとすら思えることがあるのです。

 

以下、略

 

初出:2018年5月号~2019年8月号

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?)(最大は五つ星)

題名の「御社のチャラ男」にひかれて読んだ。「御社」という固い言葉と、「チャラ男」とのアンバランス。しかも書いたのが絲山秋子。これじゃ読まずにいられない。

しかし、裏切られた。このため評価が厳しくなった。
チャラ男はあまりチャラチャラしていないし、他の社員もキャラが立っていない。

 

おまけに、チャラ男が中心でなく、社員のあれやこれやに話が飛ぶので、焦点がない。社長も良くわからない曲者で、万引きをやめられない人、心を病んでいたが復職する人など、バラバラな話になってしまう。

特定の人の視点、語りで成り立つ単一的小説と違う小説もありとは思うのだが、チャラ男に対し、社員のそれぞれが異なる見方を持っているので、余計バラバラな印象になる。

完全に良い人も、完璧な悪人もいないし、会社を多面的に俯瞰するためには複眼の視点も必要なのだろうが、小説はわかりにくくなってしまっている。

 

絲山秋子の略歴と既読本リスト

 

 

カタカナの難しい言葉が好きな人のことを、「石北会計事務所」って呼ぶ。「意識高い系」のこと。

 

「降る雪や明治は遠くなりにけり」という句を作った中村草田男って、変な名前って思っていたが、親戚の人に「腐った男」と面と向かって言われて、「おおそうかい」と名乗った名前だそうだ。二葉亭四迷を思い出す。

 

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(十何年前の)最後から2回目の引越し

2020年11月10日 | 個人的記録

 

東京谷中で生まれ、3歳で代々木上原へ移り27年住みついた。所沢などを経て、横須賀、横浜で30年足らず、東京に戻って15年程になる。この間の引越は8回になる。
引越しがとくに多い方ではないと思うが、オーストラリアやカナダで1、2ヶ月のロングステイを繰り返すうちに、浮き草生活が身について、常に仮の住まいという感覚が抜けなくなった。引っ越しに伴う住所変更手続きなどの手間は気が重いが、新しい環境はいまや変化の乏しい日常の中でワクワクするものがある。

 

前々回の横浜の一軒家から東京の狭いマンションへの引越しは大変だった。子どもが家を出て二人だけになると、二階はいらないし、庭の手入れも面倒だ。最近のマンションはバリアフリーになっているし、年取ったらマンションに限ると引っ越すことにした。

しかし、一軒家には長年詰め込んだ荷物が一杯ある。昔、父母が亡くなったあとの荷物整理が恐ろしく大変だったことを思い出す。こんなものまでと思うほど大量の荷物が戸棚の奥から出てきた。かといって、あれこれ昔を思い出すと、やみくもに捨てるのはためらわれた。残された荷物の整理、破棄は大変な労力を要し、精神的にもタフな仕事だった。我々は引越しを機会に、いずれ遺される子どものためにも思い切って荷物を整理することにした。

 

大きな家具は有料の粗大ゴミで出したが、部屋から外に持ち出すために分解しなくてはならない物もあった。久しぶりの肉体労働だ。7個の木製家具をハンマーで壊し部屋中を木屑だらけにした。3個の鉄製家具の数え切れないほどのネジをはずして分解した。

衣類、本、その他、まだ使えるもの、未使用なものなどただでも誰かに使って欲しいものもたくさんあった。外国ならガレージセールをやるところだ。リサイクル店にも何回か通ったが、大半の物は目をつぶって処分した。自分ではもっと価値あるものと思っているのに、見た目のきれいさだけで評価されるのには抵抗があるが、この際、従うほかない。

各部屋にある戸棚の中には空のダンボールを詰めておいてやたらと荷物が増えないようにしていたのだが、徐々に荷物を詰め込み、高密度実装してしまうことになっていた。連日の肉体労働で、本番の引越しが始まるころには疲れのピークになってしまった。あらかじめ荷物は大幅に破棄したにもかかわらず、ダンボールは75個。とりあえずそのまま運んで引越し後に整理する予定の物もけっこうあった。
引越し自体は、残りの荷物のダンボールへの詰め込み、ダンボールから取り出して棚などへの収納を業者に依頼したので、細かな作業だけで大きな苦労はなかった。

 

参考:身の周りの整理 (1)考え方(2)本、書類、アルバム、(3)その他、 子どもは3歳までに親孝行を終える(アルバムの整理)

 

一年後、女房の実家近くに引越したが、同程度に狭いマンションだったので、引越しは簡単だった。引越し日の朝8時に引越屋さんの箱詰め部隊5名が我家に来て、どんどん箱を車に詰め込み、11時前には積み込み終了。途中、奥様は余裕をこいて病院へ出かけるしまつ。1時過ぎには完了した。
一年前に75個あったダンボールが今回は45個。引越し終了の翌日にはほぼ空になり、ともかくどこかに押し込んだ。当分、「あれはどこ?」「前はあそこにあったんだが」などが続いたが、部屋を使いやすい状態にするのは、急がずのんびり進めた。

 

やはり断捨離は元気なうちに実施し、年とったら物欲と思い出の品は抑制し、シンプルな生活を心がけるべきだと思う。

 

次の9回目の引越し先は多分6畳程の老人ホームの一室となるだろう。つまり、今回が最後から2回目の引越しだったのだ。

 

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天藤真『大誘拐』を読む

2020年11月09日 | 読書2

 

天藤真著『日本推理作家協会賞受賞作全集 37  大誘拐』(双葉文庫て02-1、1996年5月20日双葉社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

紀州随一の超大富豪・柳川家の女主人とし子刀自が、「虹の童子」と名乗るものに誘拐された。要求された身代金はなんと百億円! しかも犯人は、金と引換えの場面をテレビで中継せよと捜査陣を煙に巻く。いよいよ身代金受渡しの場面となるが、前代未聞の大事件はさてどんな結末に?

 

スリ師・戸並健次は足を洗い社会復帰を果たすために誘拐して身代金を得ようと、雑居房で知り合った大柄な秋葉正義と、オッチョコチョイの三宅平太を仲間にして、現地に乗り込んだ。

狙いを定めたのは紀州一の大富豪・柳川家の当主で、地域の住民に敬愛されている82歳の女主人・柳川とし子刀自(とじは敬称)。とし子は小間使い役の吉村紀美をお供を連れて毎日持山をあちらこちら山歩きしていた。

事件を追う県警本部長の捜査一課長は鎌田浩一で、本部長の井狩大五郎は大奥様とし子を大恩人としていた。

 

柳川国二郎:とし子の家兄(長男)63歳/  可奈子:次女/  大作:四男49歳、画家/  英子:末娘、牧師の妻/  串田孫兵衛:老執事/  安西:運転手/ 

くーちゃん:柳川家のメードを通算20数年勤めた。今は畑と山林を経営。時々隣村の邦子が手伝いにくる。

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

書かれた年が1979年、40年前だ。古めかしいところも当然あり、いかにも時代がかった感じを受ける場面も多いのだが、それにしては面白く読めた。誘拐のチャンスを伺う様子からしっかり描きもまれているし、身代金の受け取りの仕組みも多少しつこいが面白い。

漢字カタカナ文が4頁にわたって続く部分があり、とてもきちんと読めない。

100億円の身代金、全国へのTV中継など大掛かりな話だが、絵空事感がたっぷりで芝居がかっているのは、いいような、悪いような。

登場人物に真の悪者がいないので、全体にゆるめの話で、牧歌的だ。ユーモア・ミステリーと言ったところか。

 

天藤真(てんどう・しん)

1915年~1983年。東京生れ。東大国文科卒業後、同盟通信記者。満州より帰国後、農業の傍ら執筆。
1962年、旧〈宝石〉誌に投じた「親友記」が宝石賞に佳作入選、作家活動を開始する。
同年『陽気な容疑者たち』が第8回江戸川乱歩賞候補
1964年『鷲と鳶』で宝石賞受賞
1979年本書『大誘拐』で第32回日本推理作家協会賞受賞。

その他、『皆殺しパーティ』『殺しへの招待』

寡作ながらユーモアと機智に富んだ文章、状況設定の妙と意表を衝く展開が身上。

 

 

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Bo-peep(ボーピープ)で3度目のランチ

2020年11月08日 | 食べ物

 

コーヒーとケーキのカフェ Bo-peep(ボーピープ)でランチした。

1回目2回目だ続き、3ヶ月で3回目だ。コーヒー音痴で違いも判らないはずなのに本物の味がして、料理もおいしいのでつい来てしまう。

 

武蔵野市吉祥寺本町1-35-17 吉祥寺ビル1F

Bo-peepとはマザーグースの『Little Bo-peep』という唄に出てくる羊飼いの女の子の名前で、「いないいないばあ」のこと。

 

私が頼んだのはミニサラダと、

トマトグラタン。

相方は、「キッシュ+ミニサラダ」と、コーヒーのブレンド。

ここまで書いて気がついた。頼んだものも前回と全く同じ。比べてもらえばわかるが写真は違っているからまあいいか。

コーヒーはストレート、やわらか130cc、深煎り コロンビアで、相方(右)はブレンド。

 

また近々おとずれるだろう、そのときこそ違う物を頼もう。

 

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南杏子『ステージ・ドクター菜々子が熱くなる瞬間』を読む

2020年11月07日 | 読書2

南杏子著『ステージ・ドクター菜々子が熱くなる瞬間』(2019年9月17日講談社発行)を読んだ。

 

講談社の内容紹介は以下。

ある医療事故をきっかけに都心の大病院を飛び出した女医・菜々子は、兄が経営する東京近郊の個人病院で働き始める。それから間もなく、中学時代の同級生に誘われ地元の市民会館で、ステージに立つ出演者たちの医療サポートを請け負うことになってしまう。最初に担当したのは高齢のお笑い芸人。転倒による大腿骨骨折を疑われたが、予定のステージにどうしても立たなければならないという。だが検査の結果、ほかの病気が見つかる。菜々子は彼をステージに立たせてあげられるのか!

 

主要登場人物

葉村菜々子:赤坂の権医会中央病院勤務医だったときに、担当した影浦梨花が自殺し、病院を追われて玉手市の兄が院長の葉村病院で働いている。
熊田久満:クマやん。菜々子の中学の同級生。玉手市役所勤務。

「赤黒あげて、白とらない」

末期癌のお笑い芸人平目将之介ヒラメ師匠、妻は蝶子)が、人生最後の演芸会を企画。菜々子医師が、市民会館のステージに立つ出演者を医療支援するステージ・ドクターとなる。

 

「屋根まで飛んで」

長尾涼子が主宰する音楽教室の発表会に、白血病の少年・木場大地(弟は歩夢、友人剛太)がどうしても出たいとハンストする。

 

「転ばぬ先の、その先に」

玩具メーカー社長で70歳の朝倉悦子は歩行困難だが、創業記念祝賀会の壇上で是非とも挨拶したいと、リハビリに頑張る。副社長の息子・朝倉誠と専務・仙波は引退させるつもり。

 

「春歌う」

人気の演歌歌手・川瀬春馬のコンサートが市民会館で行われる。招待客は全員75歳以上の後期高齢者で病を抱える者が多く集まる。

「届けたい音がある」

和太鼓サークル「万世(まんせい)太鼓」のメンバー12人は慢性疾患持ちぞろい。今年こそはなんとしても夏祭りのステージで演奏したいと願う。代表は橋口美和で、リーダーは潰瘍性大腸炎を持つ夫の瑛太で、娘はエリ

 

「風呂出(い)で詩へ寝る」

菜々子は平均年齢70歳を超える120人の市民合唱団の医療支援を頼まれる。団長は松崎幸正で、指導者は丹羽竜也。メンバーには梨花の母・影浦祥子がいた。なんと指揮者の丹羽はアルコール依存症だった。



初出:「小説現代」2017年6月号~2018年10月号、「風呂出で、詩へ寝る」は書き下ろし

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

なんでもかんでも結局は上手くいくというご都合主義の展開。著者だけが楽しんで書いている。

 

菜々子は医者ながら「絶対」ということばを度々口にする。そのために、裏切られたとして患者が自殺し、前の病院を辞めなければならなかったにもかかわらず。医者には治療にかかわることで「絶対」はない。それなのに強い意志を示すための「絶対」と言ってしまう。そして著者もそれを肯定する書き方をしている。
物語とはいえ、けしからんと思う。

 

 

南杏子(みなみ・きょうこ)の略歴と既読本リスト

 

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10月の散歩花

2020年11月06日 | 散歩

10月の散歩で見かけた花々

 

エンジェル・トランペット(キダチチョウセンアサガオ属)(10月20日)

花の形はまさにトランペット

もっともっと豪華なエンジェル・トランペット(2012年11月3日)

びっくりするほど大きなキンモクセイ(10月5日)

塀から顔を出す白いヒガンバナ。長く跳ね上がっためしべが見事。(9月29日)

 

大きく豊満なピラカンサ(10月7日)

 

高密度に実ったピラカンサ。道路際で鳥が食べないのだろう。(2019年12月18日)

 

アメジストセージ・学名サルビア・レウカンサ(多分)(10月27日)

 

散歩の足を伸ばした先で見つけた大規模造成地3900平米。3階だてのマンションが建設されるらしい。

 

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岡嶋二人『99%の誘拐』を読む

2020年11月05日 | 読書2

 

岡嶋二人『99%の誘拐』(講談社文庫お35-27、2004年6月15日講談社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには八年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして十二年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。第十回吉川英治文学新人賞受賞作!

生駒洋一郎:イコマ電子工業を創立。のち吸収されたリカード社の事業部長の昭和50年胃がんで死亡。
生駒慎吾:洋一郎の息子。昭和43年5歳の時、誘拐される。のちリカード社に入社しコンピューター技術者に。
間宮富士夫:洋一郎の片腕。後にリカード社の中央研究所所長。
堀内:刑事。課長。

長沼栄三:福山市鞆(とも)で喫茶店経営。釣り好き。
武藤為明:リカード社の三代目社長。妻は照枝。
葛原久高:武藤の娘婿。リカード社の専務取締役。妻は苑子。
葛原兼介:久高の中二の息子。パソコン通信のゲーム「アスカ」に夢中。
馬場:警視庁捜査一課特殊捜査班。雪村刑事は部下。

 

岡嶋二人(おかじま・ふたり)

1950年生まれの井上泉(現・井上夢人)と、1943年生まれの徳山諄一(現・田奈純一)の共作筆名。
1982年『焦茶色のパステル』で江戸川乱歩賞受賞
1986年『チョコレートゲーム』で日本推理作家協会賞受賞
1989年本書『99%の誘拐』で吉川英治文学新人賞受賞
1989年『クラインの壺』刊行と同時にコンビを解消

この作品は、1988年10月に徳間書店より刊行され、1990年8月徳間文庫に収録。

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

ミステリーファンなら、歴史的通過点として抑えておくべき一冊だろう。

誘拐小説の最高傑作のひとつと聞いて読んでみたのだが、30年以上前に書かれたのに、コンピューターを駆使したほぼ完全誘拐犯罪の話とは確かにすごい。もちろん現在の技術水準からみるともっとスマートにできることばかりなのだが。

「ひとさらいの岡嶋」の異名があったという著者の最高傑作との評判。なにしろ、誘拐犯自身が身代金の運搬役となったり、誘拐された本人が誘拐犯になるという設定なのだ。

からくり、謎解きを中心とするミステリーは、絵空事感が否めないので、面白いが、熱中はできない。「フムフム、どんな仕組みかな? お手並み拝見といきますか」と冷めた目で読んでしまう。それでいいのだが。

 

 

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ジャンクフードを食す

2020年11月04日 | 食べ物

 

我家では、食事はほぼ決まった時間の朝昼晩の3食と、15時のケーキかフルーツだけで、それ以上の間食はほとんどしない。これは私も、女房も昔からの習慣だ。したがって、我々が若く、子どもも幼かったときから、ジャンクフードを、まったくではないが、ほとんど食べることがなかった。アルコールを飲まないのも原因のひとつなのかも。

 

我が相方は、ジャンクフードが目の前にあっても決して口にしない癖に、最近何故か、ごく少量、若干高価なポテトチップスを時々買ってくる。どうもこれは、本人の判断ではジャンクフードには分類されないらしい。


確かに、「オホーツクの塩と岩塩の合わせ塩味  厚切りひとくちカット」とか、「生のじゃがいもを、その日その日に吟味し、贅沢な厚さにスライスして香り豊かに揚げたポテトチックス。……」という説明は高級品そうな響きがあり、ジャンクっぽくない。

 

これが中味。確かに通常より厚くて脂っぽくない。

 

私が成城石井で買物をしていて、レジの前で「お一人様1個限定」との掲示を見かけた。日ごろから「限定品というとつい手を伸ばすのは、情けない」とバカにしている私だが、残り1個しかないのを見て、おまけに「Black Truffle」の文字を見て、これはあの噂に聞く「トリュフ」というやつではないだろうかと、つい手を伸ばしてしまった。値段も¥190とびっくりするほどではない金額だ。
“HAND COOKED POTATO CHIPS”って、手作り? 本当?

 

裏面の左中央には「黒トリュフの香りは熱せられても消滅することなく、さらに強くさえなるのです」と書いてあり、黒トリュフらしき切片の写真もある。この写真に乗せられ、期待は高まった。

さっそくご購入。

帰宅して、どれどれと、裏面の白い小さな日本語表示を見ると、「黒トリュフ香料使用」と記載してある。「うっ! 香料だけ?」 曇り空となり、一面暗雲が立ち込める。いや、トリュフなんて、もともと香りだけのようなもんだと自ら慰める。


原産国名は、なんと「アラブ首長国連邦」! しまった! パレスチナを裏切り、トランプの仲介でイスラエルと国交を結ぶことに合意した国だ。大枚190円も支払ってしまった。申し訳ない、同志諸君!。

 

中味は何のことない普通のポテトチップス。ただし、ちょっと癖のある香り(匂い)がする。何のことない、トリュフ(らしき)香り、というより臭みがするだけだ。

表の左下には、

Gluten Free(小麦粉などグルテンなし)
MSG Free(グルタミン酸ナトリウムなし)
Non GMO(遺伝子組換でない)
Vegan(乳製品も使わない完全菜食主義)
No artificial Colours(人口着色料なし)
No Artificial Preservatives(人口保存料なし)
とある。ご苦労様です。

そして、お騒がせしました。

 

 

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佐藤優・香山リカ『不条理を生きるチカラ』を読む

2020年11月03日 | 読書2

佐藤優・香山リカ著『不条理を生きるチカラ』(2020年6月21日ビジネス社発行)を読んだ。

 

表紙裏にはこうある。

 私がこの対談を通して畏友・佐藤優さんに訊きたかったことは、次の問いに集約される。「この世の不条理、人生の不条理は普遍的、本質的なものか。それとも社会的、政治的なものなのか」(中略)「事態をできるだけ世界の中で、歴史の中で、理性の鏡に照らしながらとらえてみる」という佐藤さんに教えられた基本は忘れず、「今の自分にできることは何か」を考えている。    (香山「あとがき」より)

 

裏表紙にはこうある。

 現下の日本の状況は危機的だ。(中略)そこから脱出するのに有効なイデオロギーも啓蒙の詩想かナショナリズムしかないのではないかという仮説を私は持っている、この点について、ポストモダン思想に通暁し、この思想の「伝道者」の一人である香山リカ氏と私は以前から掘り下げて話をしてみたいと思っていた。      (佐藤「はじめに」より)

 目に見えないものによって生命や日常生活を送るための経済的基盤も脅かされる。そんな不安が募った今、疾病が歴史的に克服されつつあるという話は、「幻想」にすぎない。  (佐藤「序章」より)

 

はじめに 佐藤優

序章◇「コロナ禍」という不条理
第1章◇私たちのポストモダン体験
第2章◇不条理に向き合わない「ポストモダン」
第3章◇なぜ不条理が不条理のままに放置されるのか
第4章◇不条理に染まるメディアと社会
第5章◇カルト、スピリチュアルをめぐる不条理
第6章◇言語と身体をめぐる不条理
第7章◇不条理の視点からポストモダンを検証する
第8章◇ナショナリズムか啓蒙の思想か
最終章◇不条理の克服へ向けて

あとがき 神の声を求めるヨブのように 香山リカ

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?)(最大は五つ星)

香山さんと佐藤さんという個性豊かな二人の対談だが、哲学的?なテーマでのやり取りが多く、付いていけない。こちとら、そもそも「ポストモダン」と言われてもかろうじて浅田彰を思い出すくらいで、チンプンカンプン。

私には、「ポストモダンの欠点は、価値相対主義により「面白ければよい」「それぞれ好なようにすればよい」と、自己愛を満たすことに集中して、世の中の不条理に目を背けることらしい」と読めた。

 

イスラエルの歴史学者ハラリのベストセラー『ホモ・デウス』の話などされても読み飛ばすしかない。

 

香山さんがネットで叩かれ、ぼやきながら、反論し、一方で精神科医としてネトウヨに同情するのは、読んでいて興味がわく。佐藤さんは、なんでもあまり関係ないソビエトの話と神学論の自分の庭に話を持って行くので、話が深まらない。

 

香山リカの略歴と既読本リスト

 

佐藤優(さとう・まさる)
1960年東京生まれ。作家・元外務省主任分析官。
同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。
2002年背任と偽計業務妨害容疑で逮捕され、2009年最高裁で有罪確定し外務省失職。
2005年『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』で毎日出版文化賞特別賞
2006年『自壊する帝国』で大宅壮一ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞受賞

その他、『獄中記』『交渉術』『十五の夏』、米原万里著、佐藤優編『偉くない「私」が一番自由』など。

 

ヘーゲルが言った言葉「ミネルヴァの梟(フクロウ)は黄昏(たそがれ)に飛び立つ」とは、一つの時代の哲学というのは、日暮れてみないとわからないということ。時代の転換期にならないと、その時代精神は読めない。読めるというのは、その時代が終わることを意味する。「ミネルバの梟」は哲学とか知恵という意味。by佐藤

 

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日曜日の井の頭公園

2020年11月02日 | 散歩

 

今日11月1日は日曜日。土日など込み合う日には出かけないことにしているのだが、所要があって吉祥寺へ出て、足を伸ばして井の頭公園へ行った。

七井橋から東を見ると、さすが日曜日、午前10時半なのに既にボートが一杯。

西のかなたのマンションを改めてじっくり見ると、羽を広げたようなマンションが確かに3棟に分かれていることが分かる。

ボート乗り場近くのベンチで一休み。七井橋のたもとの灌木の葉に白いペンキ?  良く見ると、手前の看板に「鳥のフンが落ちてきます」とあった。

見上げると高くそびえる木が。どこかに巣があるのだろう。

七井橋の南側のたもとのポールの上に置物?? 近づくと、子どもをおんぶしたイグアナだった。

イグアナというとタモリの形態模写を思い出すのは年寄の証拠?

人だかりの中心で飼い主が自慢気に説明している。二匹は血縁関係にはないとのこと。パラパラとしか人影がない平日より、土日の方が人込み目当ての人がいて面白い。

井の頭恩賜公園は今年開園103年を迎えるが、昔の写真を見ると、七井橋は木製だったが、今と同じ形をしている。

コロナ禍の散歩であっても、人気のないのより適度に人がいる方が暖かい気持ちになる。

子連れのパパが多い日曜日の井の頭公園でした。

 

 

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宮部みゆき『火車』を読む

2020年11月01日 | 読書2

 

宮部みゆき著『火車(かしゃ)』(新潮文庫み22-8、1998年2月1日新潮社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。

 

刑事・本間俊介は、犯人確保時に足を撃たれて休職中、親戚の栗坂和也から婚約者・関根彰子(しょうこ)を探して欲しいと依頼され、探索の3週間が始まる。

和也が彰子にクレジットカードを作るように言ったところ、審査結果は彼女が自己破産経験者だと判明した。翌日彰子は職場も住まいからも失踪した。

本間は彰子の勤め先を訪ねて履歴書の写真から、彰子が品のある美人だと分かった。次に自己破産手続きに関わった弁護士・溝口を訪ね、関根彰子は会社勤めの傍ら水商売していて、八重歯だったと聞き、違和感を覚えた。

本間は和也の婚約者だった「関根彰子」は、本物の関根彰子に成りすました偽者ではないのかと疑いを持ち、徐々に偽物の実像に迫っていく。

冒頭に「火車」の説明がある。「火がもえている車。生前に悪事をした亡者をのせて地獄に運ぶという。ひのくるま。」

 

登場人物

本間俊介:42歳。捜査一課刑事。休職中。息子は(さとる)10歳。妻・千鶴子は3年前に事故死。

井坂恒男:本間家の隣人。妻は久恵。智の面倒をよく見る。

栗坂和也:俊介の親戚。29歳。銀行員。関根彰子の婚約者。

関根彰子(しょうこ):和也の婚約者。失踪中。スナック勤務や自己破産の経験あり。

今井四郎:今井事務機の社長。みっちゃんは事務員。

溝口悟郎:関根彰子の破産手続きをした弁護士。

碇貞夫:俊介の同僚刑事。42歳。

 

作中、「溝口悟郎弁護士」は、都知事候補者の宇都宮健児がモデルで、宮部みゆきが多重債務問題を取材した。溝口のセリフは、取材時の宇都宮健児のもの。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

本間が休職中で警察手帳の提示もできなかなかで、偽彰子の関係者に会って、徐々にそのベールを剥いでいく過程がリアルで面白い。重厚な筆力には感心させられる。

 

多重債務問題が大きく取り上げられた当時が過ぎ去って、犯人が借金の取り立てから逃れるために、本当に無関係な人を殺さねばならなかったのかが、今では納得できかねる。

 

 

宮部みゆき 略歴と既読本リスト

 

 

以下、ネタバレ気味。

関根淑子:彰子の母。宇都宮市在住で、転落死し、事故か事件かが問われる。

本多保:彰子の幼なじみで彼女をしいちゃんと言う。妻は郁美。

北村真知子:本間のリハビリの理学療法士。智は「マチコ先生」と言う。

片瀬秀樹:下着通販会社「ローズライン」の管理課課長補佐。新城喬子と交際していた。

新城喬子:偽の関根彰子。美人。失踪中。父親の借金による取り立て屋に追われる。

倉田康司:喬子の別れた夫。伊勢市の不動産会社社長の息子。

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