hiyamizu's blog

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クリスチャン・メルラン『オーケストラ』を読む

2020年11月21日 | 読書2

 

クリスチャン・メルラン著、藤本優子・山田浩之訳『オーケストラ 知りたかったことのすべて』(2020年2月17日みすず書房)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

有機的存在としてのオーケストラ一般というトピックは、これまで書ける人がいなかった。他にまったく類のないこの人間組織の核心にせまる画期的かつ最高に楽しい本を、ここに刊行する。
基本的問題からちょっと気になる小事まで、世界のオーケストラや楽団員や指揮者のあらゆる情報を満載。この600頁に及ぶ「事典的エッセイ」に、ファンは満喫できること間違いないだろう。
たとえば以下のような話題――楽団員はなぜその道を選んだのか、ソロ演奏家の挫折組なのか/オーケストラはどのように運営され、組織図や人間関係はどうなっているか/演奏中ほぼ弾きつづけているヴァイオリン奏者と演奏機会の少ないハープなどの楽器の演奏者の給料は同じなのか/定年までに450回も同じ曲を演奏するというのはどんな経験か/ヴィオラ奏者の思い/ティンパニの役割とは/オーケストラの配置はどのようにして決まるのか/ウィーン・フィルに女性が少ないのは/オーケストラによる響きの違い、にじみ出る国柄の原因は/なぜ指揮者が変わるとオーケストラの音も変わるのか……
巻末には「主要オーケストラ略歴」「世界の主要400オーケストラ、国別一覧」ほか、膨大な人名索引・楽団名索引付。
「オーケストラを支え、発展させることは、人類の幸福のためにも必要なことである。音楽とは民族間のコミュニケーションを促し、相互理解を深める存在なのだ」   (序文 リッカルド・ムーティ)

 

約600ページもの事典的大部。私は興味があるところ以外は流し読みしたことをお断りしておく。

 

オーケストラの組織と序列、指揮者と楽団員との関係、各パートの特性などを描く。そして構成する楽団員の採用・生活・生涯の道筋、社会階層と楽器との関係、女性受け入れまでの道のり、各楽器などすべてを事例豊かに、挿話も含め描いた本だ。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

実名入りで(ただし、仏独人中心)、事例・挿話が豊富で読み難くはないのだが、なにしろ600ページだ。最初から最後まで順に読んでいくのは大変だ。事典的に、興味あるところを潰していかざるを得ないのでは。

 

指揮者とオーケストラ団員の意見対立などトラブルの事例が実名入りで多く、小澤征爾とN響の例は出てこないが、普遍的問題だとわかる。

 

フランスのオーケストラの勝手気ままぶり(私語、準備不足、指揮者との対立など)には驚かされる。

 

楽器セクションごとの記述も単なる楽器紹介にとどまらず、著名な演奏者の挿話が豊富に盛り込まれる。

 

フランス国立管弦楽団の日本公演中に、演奏箇所が分からなくなった指揮者がヴィオラ奏者に小声で「今はどのあたりかな」と問いかけると、「ここは日本ですよ、先生」という答えが返ってきたなど笑える話も楽しめる。

 

 

クリスチャン・メルラン Christian Merlin

1964年生まれ。ドイツ語の教授資格者。文学博士。リール第3大学音楽学助教授。2000年から『フィガロ』紙の音楽批評家。

 

藤本優子(ふじもと・ゆうこ)

1964年東京都生まれ。翻訳家。桐朋女子高等学校音楽科卒業後に渡仏。マルセイユ音楽院、パリ国立高等音楽院ピアノ科卒。

訳書にヤスミナ・カドラ『テロル』『昼が夜に負うもの』(早川書房)、オリヴィエ・ベラミー『マルタ・アルゲリッチ~子供と魔法』(音楽之友社)他多数。

 

山田浩之(やまだ・ひろゆき)

1966年兵庫県生まれ。学習院大学文学部フランス文学科卒。

主訳書にジャン・カリエール『森の中のアシガン』(青山出版社)、クリスチャン・ジャック『太陽の王ラムセス』シリーズ(角川書店)、ニコラ・ブーヴィエ『世界の使い方』(英治出版)など。

 

以下、メモ

管楽器奏者は全員がソリスト。奏者一人一人に別個のパートが割り当てられる。ヴァイオリン奏者は例えば仲間15人は完全に同じ楽譜を演奏する。

 

フランスには常設のオーケストラが30ほどある。ドイツには公営の職業的オーケストラは133ある。イギリスの4大オーケストラは公営企業ではなく、楽団員に給与が支払われるのは演奏するときだけだ。

 

弦楽器奏者の42%が管理職か高度な知的職業の家庭の出身者で、金管楽器奏者の場合は15%、木管楽器奏者は28%。金管楽器奏者の27%が労働者層の出身者で、弦楽器奏者は10%。ヴァイオリンは5,6歳から始めなければならないが、管楽器は子供では無理だし、弦楽器より短い年月で一流になれる。

 

オーケストラの楽器別人数の数え方。コントラバスを数えてから、パートごとに楽器を音の高い方から低い方に2丁ずつ加えていく。例えば、コントラバスが8丁なら、チェロが10丁、ヴィオラが12丁、第二ヴァイオリンが14丁、第一ヴァイオリンが16丁となる。

 

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