春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「ボストン美術館展in東京都美術館」

2017-10-19 00:00:01 | エッセイ、コラム

ボストン美術館展

20171019
ぽかぽか春庭アート散歩>2017秋のアート(1)ボストン美術館展in東京都美術館

 ボストン美術館展に2度行きました。1度目はひとりで。来年からの仕事の打ち合わせがあいにくと第3水曜日になってしまい、「私のお楽しみの第3水曜日に打ち合わせ日に設定して欲しくないなあ」と文句をいいながら東京都美術館に向かい、閉館までの1時間くらい見ることができました。
 2度目はミサイルママが行くという日に「じゃ、私ももう一度行く。水曜日は1時間くらいしか見られなかったから」とおつきあいすることにしました。
 9月の第3水曜日20日は、65歳以上は無料の日。そしてミサイルママといっしょの9月30日土曜日は、夫が「僕は行かないから招待券あげる」というのをもらって行ったのです。
 タダじゃなければ2度も見ない。

1度目のとき撮ったルーラン夫妻のパネルと私


 ボストン美術館は、アメリカのさまざまなコレクターからの寄付によって収集作品を充実させてきました。今回の展示は、その「コレクター」に焦点を当てた展示になっています。ボストン美術館は、国や政府機関の経済的援助を受けず、ボストン市民、個人コレクターや企業の寄付によって運営されている、という市民の美術館なのです。

 コレクターの収集意志というのは大事だなあ、と私も思っています。例えば、伊藤若冲が注目されるずっと前から収集を続けていたプライス夫妻とか、現代美術の収集をしてきたヴォーゲル夫妻とか。
 夫ハーブは郵便局員、妻ドロシーは図書館員というヴォーゲル夫妻。30年間に渡ってつましい暮らしの中、アパートの部屋に納まる大きさの手頃な値段の現代美術を買い集め、5000点をナショナルギャラリーに寄付しました。ヴォーゲル夫妻を追ったドキュメンタリー「ハーブ&ドロシー」を見ました。
 収集も、創作と同じほどの情熱を込められる創造的な行為なのだと感じました。

 しかし、一般的には展覧会で画家や彫刻家にスポットがあたることはあっても、収集家に焦点があることはめったにありません。王室コレクションや大富豪コレクションを中心に美術館が設立されてきた西欧の美術館が多い中、アメリカ市民のアートへの心意気を示している展示なのだと思います。
 私も、へぇ、こういう人が作品収集をしてきたのか、と、初めて知るコレクダーの名前が多かったです。知っていたのは、日本美術収集のモース、フェノロサ、岡倉天心くらい。コレクターの紹介を読みながら展示を見ていったのですが、名前覚えられませんでした。ほんとにコレクターは縁の下の力持ちです。

 今回の目玉作品のひとつ。英一蝶の「涅槃図」。 


 「涅槃図」は、170年前に日本からアメリカに渡って以来、今回が初めての里帰り展示なのです。大規模修復が2016年に済んで、ようようの里帰り。

 英一蝶(1652-1724)は、江戸時代元禄期の画家です。伊勢亀山藩の侍医の子として生まれ、父の江戸詰に従って江戸で成長し、画家として名を上げていきます。吉原通いのあげく、幇間としてお座敷も務めたなど、奔放な逸話が多いのですが、奔放が過ぎてお上風刺の咎を受け、島流しの刑に処せられました。将軍綱吉が出した「生類憐れみのおふれ」を風刺した絵のために、10年間綱吉が亡くなるまで三宅島に流されていたのです。一蝶は、さまざまに名前を変えてきたのですが、将軍代替わり恩赦によって江戸に戻ってからは英一蝶と名乗りました。

 「涅槃図」は、高さ約2.9m、幅約1.7mの大作。フェノロサが1886(明治19)年以前に購入し、アメリカへ持ち帰ったものの、劣化が進み、公開ができなくなっていました。1年間の公開修復作業を終えての里帰り。今後はボストン美術館の日本美術展示室で公開されていくことでしょうが、ボストンまで行けない私にとっては、今回見ることができて、良かったです。

 日本美術の傑作、ほかにも、酒井抱一「花魁図」など。

喜多川歌麿「三味線を弾く美人図」。


 第二の目玉作品は、ゴッホの「郵便配達人ジョゼフ・ルーラン」と「子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人」が、ふたつ並べて展示がされていること。

 郵便配達人ルーランは、アルル在住時代のゴッホにとって、数少ない友人でした。友人といっても、ゴッホが一方的にルーラン夫妻の世話になった、という関係ですけれど。
 ルーラン夫妻も、このように自分たち夫婦の絵が世界中の人に知られる名画になったとは、天国でびっくりでしょう。

ルーラン夫妻と私、2度目


 古代エジプトの発掘品やアメリカ絵画草創期の作品など、見所はたくさんあったのですが、私は、やはり西欧近代絵画の部屋が一番なじみの感じで、2度目の観覧でもこの部屋を中心に見ていました。

ミレー「編み物の稽古」


 ボストン美術館は、ほとんどすべての収蔵作品をアーカイブ公開していて、インターネットで画像を見ることができ、非商業利用なら、引用自由です。日本の私立美術館も見習ってほしいです。
 
 5時半の閉館まで見ていて、ルーラン夫妻パネルといっしょの写真撮影コーナーでミサイルママといっしょに仲良しポーズで撮りました。


  6時過ぎからアメ横の店で晩ご飯。肉が安くておいしいという触れ込みの大衆食堂。ミサイルママはこの店が気に入り、新ボーイフレンドとのデートに使いたいそうです。草食系の彼らしいけれど。
 いい絵を見て、友達の恋バナ聞いて、生ビール大ジョッキ飲み干して、よい秋の一日になりました。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする