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ぽかぽか春庭「メーデーわがや映画祭」

2017-05-07 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170507
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2017十七音日記 黄金週間(3)メーデーわがや映画祭
 
 5月1日。メーデー「五月の日」とは、メイポールを立てて囲み春の到来を祝ったことに由来します。争っていた人々も争いを一時停止して参加したことから、近代には雇い主と係争中の労働者が、争いではなく、主張を通して労働者の権利を拡充する活動の日となっていきました。

目つむりて居ても我を統ぶ五月の鷹(寺山修司)
独りでメーデー人使い得で阿諛もなし(香西照雄)

 今年2017年も、代々木公園などでは「国際労働者の日」としてのメーデーが開催されたと思いますが、我が家、労働者は私だけ。夫は自営だから、自分が雇用者で被雇用者。息子は「研究所の研究生」という不安定な身分の学生。メーデーに参加する所属先もない一家でした。個人で参加できるユニオンもあるのは、知っているけれど。

 連休の日々、娘息子と、無料ダウンロードのアニメ映画見て過ごしました。息子がなんちゃらというインターネットの会員になり、入会した4月と5月は、映画が無料ダウンロードできる。2ヶ月すぎてダウンロード有料になったら退会すると言っていますが、どうもネット商売を信用できない母は、「ほんとに無料なんでしょうね。あとで法外な退会費用とか請求されないんでしょうね」と念を押す。

 連休中に見たのは、息子娘が好きなディズニーとピクサーのアニメ映画。ズートピア、ファインディングドリー、カーズ2,プレーンズなど。

 ズートピアを見て、疑問に思ったこと。草食動物が果物や野菜を食べているシーンは出てきたけれど、肉食動物はいったい何を食べているのか。
 監督インタビュー記事を見つけました。「ズートピアの肉食動物たちは進化している。彼らは、進化しなかった昆虫などを材料とした料理や、大豆などの植物性タンパク質を食べている設定。しかし、食事シーンは出していない」

 なあるほど。「進化論を受け入れたキリスト教」の考え方なのね。会話ができ霊を持つようになった動物はエライ。だから、進化しなかった虫は食べてよい。仏教では一寸の虫にも五分の魂、ですからね。進化しようとしまいと、仏は平等に扱う。だからこそ他者の命をいただくことは、よほどの覚悟と感謝を持ってすべきこと。生きているってことでは、植物だって同じ。だから米一粒にも感謝する。熊を殺すことでしか生きる技を持たなかった、なめとこ山の小十郎の罪を、我らも共に負う。

 「神は自分に似せて人を造り、霊を与えた。霊のないものを食べることを、人に許した」という考え方、そういう考えもありとは思うが、それって、「人は優秀なので、他の優秀でないもの、霊を持たない自然を支配することができる」ということになるんじゃないかなあ。

 うさぎのジュディは、小さい体で差別を乗り越え、なりたかった警察官になって立派だったと思います。けれど、進化した動物社会とは異なり、人間社会から差別と選別はこれからもはなくならないだろう。優秀な者がエライのなら、優秀でない者を管理支配できる理屈になるのだから。

 ズートピアの警察交通センターには超スローペースで動くなまけものが勤務しています。人間社会なら、たちまちクビ。というか、なまけものは動かず働かないことがアイデンティティだから、木にぶら下がって、動かずにいてほしかった。なまけものの存在意義は、動かないことによって、エネルギー消費を抑え、一日に葉っぱ1枚8gを食べれば生きていけることにある。動かず働かない者の存在を認める社会であってほしい。

のんびり急がず仕事するズートピアのなまけもの


 NHKの「バリバラ(バリアフリーバラエティー)」が「すべての生きづらさを抱える人」対象になって、ときどき見ています。「生きづらいけれど頑張っている」とは行かない現実に対して、きっぱりモノ言う出演者たち、かっこいいです。がんばらなくても、働かなくても、この社会に存在してくれることに価値がある。

 「プレーンズ」飛行機が主人公です。
 農薬散布という地味で単調な仕事に飽き足らず、レースに憧れていた飛行機ダスティが、仲間の支援と高所恐怖症克服などの努力を経て成長していく物語。

 この映画にも、違和感は残る。農薬散布用のボディを改造し、しだいに体をレース用に改造していくダスティ。この進化が肯定形なら、整形美人をミスコンから排除すべきじゃないし、事故によって切断された足よりも高速が出せる義足をつけたランナーをオリンピックから閉め出すことはない。(2012年ロンドン・パラリンピックの陸上男子走り幅跳び金メダルの義足マルクス・レーム選手(ドイツ)は、「義足の性能が健常者の身体より有利ではない」という証明を自ら行え、という規約によりリオ五輪出場を断念)

 むろん、アニメを見ている間は、ズートピアもプレーンズも、楽しくハラハラドキドキ楽しんだのです。

 娘は、ファインディングドリーを見て涙ぐんでいました。行方不明になったままのドリーを両親は待ち続けます。ドリーが幼い日に知った「石の目印をたどっていけば我が家に辿り着く」を思い出してくれることに希望を託して、毎日せっせと石の目印をできるだけ遠くへと運んでつけています。

 子を思う親心。ありがたいものだけれど、親たる私、子を家から出してやることもできないまま、清く貧しく美しく老いていきます。あ、美しくはなかったか。

・五月祭労働せぬ子を背負い老ゆ(春庭)

<つづく>
コメント (2)
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