春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

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のはらうた春の散歩2011年4月

2010-09-08 06:35:00 | 日記
2011/04/23
ぽかぽか春庭十一慈悲心鳥日記2011年4月>さんぽ(3)のはらうた

 まだ部屋の中がぐちゃぐちゃだったころ、ダンスも何回かレッスンを休んでしまいました。文化とはほど遠い生活をしていたのですが、博士号授与式には何としても出席しようと出かけました。授与式が終わり、学士会館手前で信号待ちしている短い間に、博士論文の副査の先生にお話していただいたことばが心にしみました。信号が変わる間のほんのひとときですが、私だけに語っていただいた、博士号取得への何よりの餞です。

 先生は、計画停電の影響などで博士号授与祝賀会が中止になったことにふれ、「戦争や震災があると、当初は興奮もあり、国民みんなで団結しましょう、国難に耐えましょう、なんていう勇ましい声が大きくなる。それがみんなの心をひとつにしている間はいいけれど、ひょっとかすると、当初の興奮が過ぎたあとも、この非常時に音楽なんて、この国難に楽しみ事なんて、というような、文化や楽しみを排斥する声になってしまうのはとても危険だ。こんなときにこそ日常生活を心豊かに過ごすことが必要で、そのために文化というものがある」というお話をなさいました。私が学んできた「カルチュラルコミュニケーション・スタディーズ」という学問分野も、人の心を豊かにするために役立ててこそと思っています。

 ダンスサークルの仲間は、ミュージカルや合唱など、歌うことも大好きです。いくちゃんは港区のミュージカルサークルの一員だし、よさこいソーランのグループにも参加しています。ともさんとかずさんみきさんは豊島区の混声合唱団に所属。こずさんとていさんも女性合唱団でうたっています。

 3月の終わりに、こずさんとていさんの合唱サークルの発表会に誘われました。100人ほど収容のカナリアホールという小さな会場での合唱発表です。震災のあと中止するかどうかメンバーで話し合った結果「やっぱりやりましょう」ということになって開催した、という「北女声合唱団」の会長さんからの挨拶がありました。副査の先生がお話になった「こんなときだからこそ文化を!」の言葉通りです。

 まだ部屋の中が全然片付いていないままで、「合唱を楽しむ気持ちにはなれないかも」と思いながらも会場へ入りました。
 メンバーの年齢50代から70代、という感じの「北女声合唱団」。保育園小学生くらいの、お孫さんにあたる世代もおばあちゃんの応援に来ているけれど、聞きに来ている人の平均年齢も高い。合唱メンバーのうちのふたりは、舞台に椅子を用意し、座って歌いました。私のダンス仲間、ていさんはソプラノ、こずさんはメゾソプラノ。

 ステージは、最初と最後に合唱があり、中にピアノ担当のふたりのピアニスト(黒木祐美、遠藤和歌子)による連弾と、合唱指導の先生の独唱がありました。先生はバスバリトン歌手の宇野徹哉さん。あちこちの合唱団の指導を続け、北女声合唱団の指導は22年続けているそうです。
 宇野さんは、三木稔作曲の「のはらうた」のなかから6曲を披露しました。すてきな歌声を聞いて、元気出てきました。

 「のはらうた」は、私も大好きな工藤直子さんの詩です。詩集の著者名のところに「くどうなおこ と のはらみんな」と書かれています。
 「のはらみんな」っていうのは、この詩をつぶやいている野原に暮らす「あげはゆりこ」さんや「かえるたくお」くんや「のぎくみちこ」さんたちです。ひとりひとりのつぶやきをくどうなおこさんが書き留めた、という体裁の詩集なのです。小学校の国語教科書にもたくさん採用されているので、誰でもひとつふたつは、知っている詩があるかもしれません。群読指導の教材にもなっており、国語科教材研究の題材のひとつとして人気の作品です。

<つづく>
07:43 コメント(2) ページのトップへ
2011年04月24日


ぽかぽか春庭「さんぽbyありんこたくじ」
2011/04/24
ぽかぽか春庭十一慈悲心鳥日記2011年4月>さんぽ(4)さんぽbyありんこたくじ

 詩集「のはらうた」冒頭にくどうさんの前書きがあります。
 『あるひ のはらむらを さんぽしていますと、かぜみつるくんが みみもとを とおりぬけていきました。とおりぬけながら はなしてくれたことばが、うたのようでした。
 「まるで うたみたい」 「そうかいそうかい」 「かきとめておこうか」「たのむぜ」 かぜは そういって、やまのほうへ はしっていきました。
 あるひ やぶのなかで こしをおろしていますと、だれかが スカートをひっぱるので、だれかとおもったら こねずみしゅんくんです。どんぐりをかかえて、うたを うたってくれます。
 「かきとめておこうか」「うん、おねがい」
 こねずみは そういって、やぶのなかを はしっていきました。
 のはらむらのみんなが しゃべるたびに、うたうたびに、わたしは それを かきとめました。そのうたが たまって ほんになったのが、「のはらうた」です。のはらむらのみんなは、ひとり1さつずつ このほんをもっています。へびいちのすけくんは、さんぽのまえに このほんをよむと ぐあいがいいそうです。みのむしせつこさんは、よいゆめが みられるそうです。
 わたしは、せんたくをするとき のはらうたをうたいながらやると、ちょうしがでます。あなたもいかがですか? のはらみんなのだいりにん くどうなおこ』

 宇野徹哉さんは、「ことばを伝えたい」という前置きをして美しいバスバリトンで歌ってくれました。「ありんこたくじ」さんの歌のときはありんこになりきって、「かえるたくお」さんの歌のときはかえるになりきって、詩を伝えてくれました。
 かまきりりゅうじの歌は『おれはかまきり』です。            

 ♪おう なつだぜ おれは げんきだぜ  
 ♪あまり ちかよるなおれの こころも かまも  
 ♪どきどきするほど ひかってるぜ  
 ♪おう あついぜ  おれは がんばるぜ
 ♪もえる ひをあびて かまを ふりかざす すがた  
 ♪わくわくするほど  きまってるぜ

 いいですよねえ。夏の光の中、暑さも自分のエネルギーにして、かまきりりゅうじさんはがんばっています。自分の鎌に誇りを持って「わくわくするほど きまってるぜ」と鎌を振り上げています。
 私もね、自分の鎌を「わくわくするほどきまってるぜ」と思いながら、ふりあげていたいと思っているのだけれど、どうにも、刃こぼれ錆び付きが目立ちます。

くどうなおこによる朗読「おれはかまきり」
http://www.youtube.com/watch?v=tPiLXu0YOlc

 宇野徹哉さん歌唱の中、私が一番気に入った歌は「ありんこたくじ」さんの「さんぽ」です。     
♪とおくまで あるいた あまいあじ さがして
♪ぼくのひげ ぷるぷる ぼくのあし しゃかしゃか
♪あそこにも ここにも あまいあじ いろいろ
♪ぼくのひげ いそいそ ぼくのあし あちこち
♪おうちまで かえろう あまいあじ たっぷり
♪ぼくのひげ ぴんぴん ぼくのあし どんどん

 ありんこたくじさん、ひげ(触覚)をぷるぷる振り立てて、あちこちあちこちさんぽです。でもこのさんぽはブラプラ気ままのようでいて、どっこい生きるための真剣な散歩。生きる糧の甘い味さがして、しゃかしゃか忙しい。
 私も、あまいあじさがして、とおくまであるいていきたいです。さあ、元気出して「さんぽ」!!
 元気を失っていたとき、ありんこたくじさんの歌にも、かえるたくおさんの歌にも、大いに励まされました。

<つづく>
01:02 コメント(2) ページのトップへ
2011年04月26日


ぽかぽか春庭「歩こう、あるこう、私は元気」
2011/04/26
ぽかぽか春庭十一慈悲心鳥日記2011年4月>さんぽ(5)歩こう、あるこう、私は元気

 震災で通常番組が軒並み中止され、CMも「AC」の公共広告ばかりになっていたとき、「こんなときだからこそ、心ほっこりするのを見たい人もいるのにね」と、いいながら、わが家はこれまでに撮り貯めておいた映画を見てすごしました。

 田中麗奈主演の『がんばっていきまっしょい』。録画したまま長いこと見ないでいたのは、テレビドラマ『がんばっていきまっしょい』鈴木杏主演のを全話見ており、「ストーリーは同じだから、急いでみなくてもよい」と、あとまわしにしてきたから。
 ドラマもよかったけれど、映画も楽しめました。松山ロケの光景も心なごみました。たった一人で女子ボート部を立ち上げたものの、腰を痛めて試合にも出られなくなった悦子が、それでも再び立ち上がっていく姿に、部屋中に本が散乱した中で無気力に寝続けていた私も、ようやく本を片付ける気になりました。

 柳楽優弥と石原さとみ出演の『包帯クラブ』。これも録画したまま見ないでいました。娘は「心の傷を癒すために、いろいろな場所に包帯を巻いていくクラブ」の話、という概要は知っていたものの、天童荒太の原作イメージから、こちらがつらくなるような「心の傷」シーンが出てきたらいやだな、っていう気分があり、「家族一同、心の傷に耐えられるテンションのとき見よう」と申し合わせていたのですが、見るビデオも底をついたので、見ました。

 『包帯クラブ』の冒頭、高崎観音が映ります。「あれっ?高崎観音だ。これって高崎ロケの映画なの?」と、内容についてまったく予備知識がなかった私が聞きました。小学校4年生の遠足のとき、巨大な観音様の足下でお弁当を食べた百衣観音。高崎市のそして群馬県のシンボルともいえる大観音なので、一目みればわかります。『包帯クラブ』は、セットを使わず全編高崎ロケの映画でした。

 イジメにあったりレイプを受けたりする「心の傷」描写のストーリーも、予想よりエグいことはなかった。
 「心に傷を受けたときの場所に包帯をまいた写真」をネットの中に見いだして立ち直ろうと決意する人々に対し、「そんな写真くらいで立ち直ってしまう心の傷はもともとたいしたことないんだ」と揶揄する投稿メールも「包帯クラブ」のサイトに届きます。でも、心の傷の大きさを乗り越えて立ち上がろうとする気持ちは、目には見えないのです。目に見えないことを信じるのは、「たいしたことあるかないか」という外部の評価ではなく、自分の心の持ちようひとつ。
 震災後に見ていてもつらくならず、心ほっこりできました。
 震災でつらい思いをした人々、たくさんいると思います。心に包帯を巻くように、ことばがひとりひとりの胸に届きますように。

 いよいよビデオの撮り貯めがなくなって、もう何度もみているジブリのどれかを見ようということになり、結局いちばんほっこりできるのは『トトロ』と意見一致して、何回目に見るのだかわからないくらい見ている「トトロ」をまた見て、また楽しめました。古典作品です。
 そして、3月21日、日本テレビ放映の「スタジオジブリ物語」を見ました。トトロの主役は、最初はさつきだけでメイはあとから付け足された、なんていうメイキング裏話を知りました。

 『隣のトトロ』の画面に流れる歌、「♪トットロトットロ、トットロトットロ」の歌もいいですし、「猫バス」も「風のとおり道」も、何度聞いてもいいですが、いちばん元気が出るのは、やはり「さんぽ」です。

作詞:中川李枝子
♪あるこう あるこう わたしは げんき あるくの だいすき どんどん いこう
さかみち トンネル くさっぱら いっぽんばしに でこぼこ じゃりみち
くものす くぐって くだりみち
♪あるこう あるこう わたしは げんき あるくの だいすき どんどん いこう
みつばち ブンブン はなばたけ ひなたに とかげ へびは ひるね
ばったが とんで まがりみち 
♪あるこう あるこう わたしは げんき あるくの だいすき どんどん いこう
きつねも たぬきも でておいで たんけん しよう はやしの おくまで
ともだち たくさん うれしいな ともだち たくさん うれしいな
 http://www.youtube.com/watch?v=NNGoROe9CXM&feature=related

 うん、元気出てきた。
 私の先生がおっしゃった通り、文学も音楽も絵画も、つらいときに元気出したり心慰めるために役にたつものだと思います。むろん、芸術の存在価値はそれだけじゃないですけれど、こんなときは「元気だすための歌」もいいと思うよ。

<つづく>

<文蛇(もんじゃ)の足跡>
 文章中に必要な引用文としての歌詞引用は「文章全体の三分の一より長くないこと」という著作権法の目安があるみたいです。今回の「さんぽ」シリーズは、4/20から27日までと続くので、全体の長さから言えば、「のはらうた」&「トトロのさんぽ」の引用は三分の一を超えていないと思います。
07:20 コメント(3) ページのトップへ
2011年04月27日


ぽかぽか春庭「桜あるき」
2011/04/27
ぽかぽか春庭十一慈悲心鳥日記2011年4月>さんぽ(6)桜あるき

 ぽかぽか春庭童謡集「春庭の五十音・日本語音声学のための発声練習ハ行」より
「ぽかぽか春庭のさんぽ」
 ♪春の庭をあるく いちにのさんぽ 
  春の光 sun サン のぼる
  春の髪 ぽらぽら さんぽ
  たんぽぽのわたげ ぽあぽあ 
  春の小鳥 ぽぴぽぴ
 ♪春の庭をあるく いちにのさんぽ 
 春の命 燦燦 もえる
  春の背を ぽりぽり さんぽ
  かげろうのゆらぎ ぽゆぽゆ 
  春の池は ぽちゃぽちゃ 
 ♪春の庭をあるく いちにのさんぽ
  春に拍手 三々 七つ
  春の足 ぽくぽく さんぽ
  夕づつはきらり ぽつぽつ
  春のお庭 ぽかぽか

 春のお庭。4月5日に歩いたのは駒込六義園です。ぽかぽか天気の暖かい日でした。
 六義園は、元禄時代、徳川五代将軍綱吉の側用人柳沢吉保が、2万7千坪を拝領し、下屋敷として造営した大名庭園。中心に池を掘った、回遊式築山泉水庭園です。
 六義園に入ってすぐ、枝垂れ桜の古木があり、毎年この桜を楽しみにしてきました。上野公園はじめ、今年は花見イベントが中止になったところが多いですが、六義園はもともと園内の宴会は禁止ですし、毎年静かに花を愛でる花見客のみです。

 園内北側の築山には地震で崩れた所があって、「これより奥、立ち入り禁止」と書いた立て札もありましたが、池には緋鯉真鯉が泳ぎ、いつもの年と変わらぬ見事なしだれ桜の満開を見ることができました。
 桜の満開の花は、秋の豊作やら西方浄土やらこの世の極楽やら、ほんとに何をいろいろ思い浮かべても、春を迎えた人々の心をとらえて、毎年みごとに咲き誇る。

 東京の染井吉野は、6日に満開になりましたが、8日には強風、9日には雨で、桜はだいぶ散ってしまいました。10日は、なごりの桜を眺めながら、団地の桜、十条倉庫周辺の桜、中央公園の桜を見て自転車で一回りしました。

 ぽかぽか春庭童謡集「春庭の五十音・日本語音声学のための発声練習ハ行」より
「花よ笑えハハハハハ」
 ♪花よ花よ。命の花よ
 春咲く花の花の命を
 日がないちにち 笑えわらえ
 ははは、ひひひ、ふふふ
 ははは、へへへ、ほほほ
 ♪花咲く春に 平和をねがい ふるえる心を
 炎(ほむら)たつ日に 不安を忘れ 人の心を 
 部屋を経て 花の野に 放てば 笑い出す 
 ホホホホフフフフハハハハハ

 不安なく、春の光の中で、大きな口をあけて安心して笑える日常が、早くはやく取り戻せますように。
 歌いながら泣きながら笑いながら、私は歩き続けることにします。

<おわり>

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