でも実話。
「失踪日記」
「吾妻ひでお」という漫画家がいる。
中学校時代、目にする事が多かった漫画家だ。
色々な雑誌に漫画を書き、小説や週刊誌にイラストを書いたりしていた。
今でも絵を見たら一発で解る。
実は彼は失踪していた。
そしてそれを漫画にしたのだ。
あまりにも重たいところは省き、カッコ悪いところは笑い飛ばし、見栄も虚構もない、プチリアルな体験談。
このバツグンの距離感。
とにかく読み出すと止まらない。
そこには見たことのない世界が広がっている。
彼の一見して想像できる「オタクが好きそうな」丸い絵も、こうして悲壮な話を書いてみると実に中和されていい。
絵のデフォルメ感は、リアルティーのデフォルメにも成功している。
自分のいる世界と紙一重にある「不条理」のスパイラル。
その不条理感を
「ホームレスをやってると仕事をしたくなる、仕事をしていると芸術がしたくなる、よせばいいのに漫画を描いて送ってしまう」
という2コマで書ききってしまう文学性。
警察に捕まり、ファンの警官からサインを求められ、色紙に「夢」と書いて下さいと頼まれるところなど喜劇以外の何物でもない。
もはや漫画というジャンルに囚われることが出来ない「作品」だ。