ID物語

書きなぐりSF小説

第33話。夏立つ頃。14. 怪しいトラック

2010-11-30 | Weblog
 (エレキは疑義のあるクルマを特定したらしい。小型トラックだ。遠巻きにしている。)

清水。ふむ。どうするか。

芦屋。取りあえず、近づこう。

 (虎之介がすすっとクルマに近づく。エレキと亜有が続く。止せばいいのに、運転席のドアをノックする。)

芦屋。もしもし、どなたかいませんか。

 (返事はない。虎之介が、回ってみると、人が近づいてきた。どうやら拳銃を所持しているようだ。)

男1。何だお前は。このトラックがどうかしたか。

芦屋。このトラックはあなたのもの。

男1。答える必要は無い。さっさとどきな。

芦屋。面白そうなトラックだ。

男1。この平凡な小型トラックのどこが面白い。

芦屋。荷台かな。何が入っているんだ。

男1。怪しい。お前、何だ。

男2。おーい、どうしたんだ。

男1。早くしやがれ。変なやつに絡まれている。

男2。出発しよう。

男1。あばよ。

芦屋。てめえっ、やっぱりお前のだな。嘘つきやがって。

男1。だから、どうでもいいだろう。

 (虎之介が漫才している間に、亜有は後部に近づく。)

エレキ。荷台に誰かいるようだ。

清水。もう少し証拠が欲しい。少なくとも、追跡する理由が。

 (手を出した。わざとらしい演技をする。)

清水。クロ、どこに行ったの?。ここにいるの?。クロー。

 (返事無し。なので、開ける。)

男3。何だ、お前。今、取り込み中だ。

清水。クロ、入らなかった?。

男3。クロってなんだ。

清水。黒猫。

男3。なもん、こねえよ。さっさと行きな。

清水。入ったと思ったんだけど。これくらいの猫。

男3。だから、こねえってっだろ。

清水。箱がある。あの中かな。

男3。聞いてないな。さっさと立ち去れ。

清水。ちょっと入っていいかな。

男3。バカやろ。だめだ。こらっ、手をかけるな。

清水。いいじゃない。猫を探すだけよ。

 (こともあろうに、男は亜有をおもいっきり払おうとする。とっさに避ける。男がバランスを崩した隙に、侵入。箱のふたを開ける。粉の入った袋。センサーが反応した。大量の非合法物質。)

男3。甘く見やがって、この女ー。

 (男は亜有をつかもうとするが、するりと抜けて、飛び出す。逃げようとしたら、拳銃を取り出して、一発発砲。当たらなかった。)

芦屋。何だ今の。銃の音か。あっ。

 (男が虎之介を思いっ切り突き飛ばす。トラックは急発進。逃げる。
 亜有と虎之介とエレキは、バイクに駆け寄って、追跡開始。私(奈良)に連絡があった。イチとレイをID社東京の屋上から飛ばす。
 一部始終を遠くから見ていた山田氏。不審に思いながらも、興味が勝ってしまったらしい。自分のバイクに乗って、さらに追いかける。)

男1。変装した査察官か何かだ。やばかった。

男3。物を見られた。見られただけだが。

男2。バイクが追いかけてくるぞ。

男1。なめやがって。あいつらどこにいる。

男2。連絡する。

 (山田氏がずっと後方から追いかけていると、6台のオートバイが追い抜いていった。そして、エレキとマグネのバイクに絡んできた。暴走族に擬装している。鉄パイプなどを振り回す。エレキとマグネは必死で逃げる。)

芦屋◎。うわあ、こんな仕掛けがあった。

清水◎。こいつら、プロ。

芦屋◎。当たり前だ。警察はどうした。

清水◎。さっき連絡したばかり。しばらくは凌がなきゃ。

 (山田氏、助けなきゃと思ったようだ。警笛を鳴らしなから、集団に突っ込む。)

男2。ありゃりゃ、増えたぞ、仲間か。

男3。見た感じは素人の助っ人だ。ヤンキーが族に絡まれたと勘違いして、助けに行った感じだ。

男2。厄介だな。けが人が出たら、根掘り葉掘り事情聴取される。

男1。逃げるぞ。

 (トラックは速度をぐんぐん上げる。エレキとマグネは集団を抜け出して、追跡する。猛烈な速度。擬装暴走族ははるか後方に取り残された。さすがに、山田氏のバイクは付いてくる。)

男3。追ってきやがる。なんてやつらだ。

男2。畜生、こっちが族を振り切ってしまった格好になる。

男1。しかたあるまい。このまま行くぞ。

 (クルマは料金所などお構いなしで、首都高を抜け、北へ向かう。イチとレイはすぐに追い付いた。クルマの屋根にマーキングする。警察のヘリがやってきた。引き継ぐ。こちらは追跡中止。普通の速度に戻す。山田氏が追い付いてきた。道路脇に停車する。)

山田。大丈夫か。

清水。山田さん、来てくださったの?。私、ふらふら。

山田。当たり前だ、あんなに暴走して。何があった。

芦屋。隠しても無駄なようだな。追跡していた。さっきの小型トラックを。警察が来たから、こちらは用済み。それで、停車した。

山田。追跡の引き継ぎをしたのか。さっきのヘリは警察か。

芦屋。その通り。

山田。何てこと。あなたたち警察か。いや、政府の調査隊か。

清水。言わぬが華。

山田。命懸けの追跡だった。ああ、ご配慮に甘えることにするよ。

 (連絡を受けた高速隊がやってきた。事情が伝わっていたらしく、簡単に説明するだけで、去っていった。)

山田。やはりあなたたち、政府関係者か。

清水。警察などとは常時連絡している。仕事は隠してない。

山田。企業の調査。時に怪しい行動の。それで、訓練しにきたのか。偶然、何か怪しい動きをつかんだ。それで、追いかけた。それにしても…。

 (安心したのか、亜有は道路脇にへたりこんでいる。エレキが慰めている。)

山田。ロボットが人間を慰めている。救護ロボットだから、当然か。

芦屋。いつものことだ。お嬢さんなのに付いてくるからこうなる。

山田。はは、気丈そうだな。顔色はいい。

 (山田氏は練習場までいっしょに走ってくれた。ワンボックスカーは、虎之介が運転してID社に帰る。ID社のバイクは、空中バイクが来るまで、借りることにした。)