(伊勢と交代するように、モグに加藤氏がやってきた。)
高橋。おとつい昨日は慌てていて気付かなかったけど、奈良さんも伊勢さんも、2人とも変。
加藤。そうですね。
高橋。あんたっ、あんたが言えるのか。
加藤。失礼しました。
高橋。こいつとは漫才できそう。
加藤。ありがとうございます。
高橋。あなたはどう思う?。二人のこと。
加藤。奈良さんと伊勢さん。いいコンビだ。どちらかというと、伊勢さんが奈良さんを接近させて、利用している感じ。
高橋。地位的には逆。
加藤。ですけど、情報収集部結成時の人選は上がやって、奈良さんは了承しただけ。むろん、伊勢さんにも情報が行ってたのだから、彼女も選べる立場にいた。
高橋。魔女を受け入れてくれる上司だと、ピンと来た。
加藤。そして、現実に大活躍している。見たとおり。
高橋。奈良部長。平凡に見えるのに。
加藤。なんたって、国際企業の部長。度胸があるし、動かしているお金も天文学的。そして、万が一、部下が逆らっても、実力行使の手段を持っている。
高橋。今はアンだ。
加藤。その通り。自分の力が2倍になる。
高橋。最初から狙っていたのか。
加藤。聞いたところでは、利用方法がなかなか見いだせなかった自動人形を、家畜の飼育に役立てられないかと引き取ったのが最初らしい。
高橋。奈良さんは獣医さんだった。馬のエサを用意させたり、畜舎を掃除させたり。なんとなく分かる。
加藤。普通の機械じゃなくて、動物の調子が分析できる。
高橋。なるほど。そう仕込まれたんだ。
加藤。もともと救護ロボットだから、人間を扱うために、慎重に調整されていた。そこに、奈良さんの知識が加わった。当時の改良は決定的だった。さっき、アンが奈良さんの行動を心配した。
高橋。会場には武器を持った連中がいる。そこに、自分の主人がのこのこと出かける。何とかしなくちゃ。
加藤。誰かを付けないといけない。クロじゃ威嚇にならない。ジロでもいいけど、付いてきた感じを出すには女性の方がいい。万一の時、逃げ道を指示して従う確率が高い。
高橋。こっちに逃げて、お願い。なんちゃって。
加藤。自動人形は、いざというとき、とんでもない勇気を見せるらしい。アンは見かけ通り屈強。判断力は人間には負けるけど、人間のように混乱はしない。
高橋。ところで、もうそろそろ時間じゃないの?。
加藤。だから、呼びに来たんです。
高橋。あんた。全然役立ってない。
加藤。お粗末さまでした。
(個々の計画の説明に入った。エクササイザーの紹介では、学生も子供も大喜び。
トースター号にはエレキとマグネを乗せ、土本が運転。運動性能をデモしたあと、走りながらオリヅル号を発射。ステージ上では水本がプロポを持ってオリヅル号を操縦する。練習していたらしい。ふわふわとよく飛ぶこと。そして、走っているトースター号ではマグネが立って、オリヅル号をキャッチ。拍手が沸く。
小休憩に入る。)
関。オリヅル号だって。
永田。カメの六郎と対抗させたんだろう。ロケット点火時は派手な音と光が出るけど、あとは滑空したままだ。
関。グライダーって、意外に自由に操縦できる。
永田。ああ。水本がうまいんだろうけど、設計も大したものだ。
関。スパイどもがびっくりしていた。
永田。今は単なる模型飛行機だけど、あれだけでも使い方しだいでは大変なことになる。垂直発射で、発射準備の時間はゼロ。時速200kmくらいは軽く出るだろう。
関。その上、センサーを付けてある程度の自律飛行を目指している。必要なら、途中で着陸して、また飛び立つ。
永田。巡航グライダー。発案はおれたちか。
関。軍拡競争に加担。あーあ。何でこうなるのよ。
永田。ん、会場がざわついてきたぞ。
関。人気役者が出るからよ。高橋小鹿さん。
永田。聞いたことがあるようなないような。
関。ここでは大変な人気。関東ではさっぱり受けないから、放映されないだけ。
永田。どんな劇なんだ。
関。くれぐれもストーリで怒り出さないようにと釘を刺された。
永田。ふむ、楽しみだな。
(スクリーンに背景が映し出され、そこにステージ上の人物がスーパーインポーズされるという仕掛けだ。短い劇なのに、場面が数回変わるので、工夫されたのだ。
大阪の人はうるさい。場面でいちいち反応する。小鹿氏が出てきただけで、やんやの拍手。最後に小鹿氏扮する怪盗が派手に去ると、歓声が湧いて、しばらく続いた。)
永田。たしかにとんでもないストーリーだな。ん、関、どうした。
関。許さん、あの怪盗。
永田。歌の前座だよ。
関。まねする奴が出たら、どうするのよ。
永田。そんなやつは、エレキとマグネでお縄ちょうだいだ。
関。苦しんだ人はどうなるのよ。
永田。単なる事故だ。
関。だめ、そんなことじゃ。何も解決していないじゃない。
永田。もしもーし。
関。御曹司を落ちぶれさせて、納得させようなんて、とんでもないことだわ。
永田。だから、単なる人情もの。
関。納得できん。だれよ、あの話を書いたの。
永田。なるほど、関東で受けないわけだ。ひょっとしたら、放映禁止になるかも。
関。抗議にいきましょう。楽屋に。
永田。自動拳銃持って?。
関。あなた、誰の味方なのよ。
永田。あっ、また出てきた。今度は綺麗な着物着て。
関。ごまかす気ね。
永田。まあ待て。歌を聴いてからだ。
(小鹿氏が歌う。背景では、自動人形と火本らが演奏し、六郎と鈴鹿、志摩、虎之介が踊っている。歌い終わったら、大変な拍手。)
永田。ほら、受けている。民衆にアピールするんだ。
関。くく、ここではあれでいいのか。
永田。後で誰かに感想を聞いてみよう。
(もちろん、あれはおとぎ話のようなもので、現実ではない。どこかの事件を参考にしたようではあるが、そちらはちゃんと解決している。といった感じだった。話が面白くて、グロさがなければ、内容は気にならないようだ。
机を並べて、チャリティーのために、自動人形が色紙に絵とサインを書く。小鹿氏は参加しないけど、後ろに立ってくださった。ファンからのサイン要求には、当然、応じる。
スタッフをねぎらって、解散。翌日も同様に事が進んだ。トースター号は、その場で小鹿氏に納入。東京に帰る。)
高橋。おとつい昨日は慌てていて気付かなかったけど、奈良さんも伊勢さんも、2人とも変。
加藤。そうですね。
高橋。あんたっ、あんたが言えるのか。
加藤。失礼しました。
高橋。こいつとは漫才できそう。
加藤。ありがとうございます。
高橋。あなたはどう思う?。二人のこと。
加藤。奈良さんと伊勢さん。いいコンビだ。どちらかというと、伊勢さんが奈良さんを接近させて、利用している感じ。
高橋。地位的には逆。
加藤。ですけど、情報収集部結成時の人選は上がやって、奈良さんは了承しただけ。むろん、伊勢さんにも情報が行ってたのだから、彼女も選べる立場にいた。
高橋。魔女を受け入れてくれる上司だと、ピンと来た。
加藤。そして、現実に大活躍している。見たとおり。
高橋。奈良部長。平凡に見えるのに。
加藤。なんたって、国際企業の部長。度胸があるし、動かしているお金も天文学的。そして、万が一、部下が逆らっても、実力行使の手段を持っている。
高橋。今はアンだ。
加藤。その通り。自分の力が2倍になる。
高橋。最初から狙っていたのか。
加藤。聞いたところでは、利用方法がなかなか見いだせなかった自動人形を、家畜の飼育に役立てられないかと引き取ったのが最初らしい。
高橋。奈良さんは獣医さんだった。馬のエサを用意させたり、畜舎を掃除させたり。なんとなく分かる。
加藤。普通の機械じゃなくて、動物の調子が分析できる。
高橋。なるほど。そう仕込まれたんだ。
加藤。もともと救護ロボットだから、人間を扱うために、慎重に調整されていた。そこに、奈良さんの知識が加わった。当時の改良は決定的だった。さっき、アンが奈良さんの行動を心配した。
高橋。会場には武器を持った連中がいる。そこに、自分の主人がのこのこと出かける。何とかしなくちゃ。
加藤。誰かを付けないといけない。クロじゃ威嚇にならない。ジロでもいいけど、付いてきた感じを出すには女性の方がいい。万一の時、逃げ道を指示して従う確率が高い。
高橋。こっちに逃げて、お願い。なんちゃって。
加藤。自動人形は、いざというとき、とんでもない勇気を見せるらしい。アンは見かけ通り屈強。判断力は人間には負けるけど、人間のように混乱はしない。
高橋。ところで、もうそろそろ時間じゃないの?。
加藤。だから、呼びに来たんです。
高橋。あんた。全然役立ってない。
加藤。お粗末さまでした。
(個々の計画の説明に入った。エクササイザーの紹介では、学生も子供も大喜び。
トースター号にはエレキとマグネを乗せ、土本が運転。運動性能をデモしたあと、走りながらオリヅル号を発射。ステージ上では水本がプロポを持ってオリヅル号を操縦する。練習していたらしい。ふわふわとよく飛ぶこと。そして、走っているトースター号ではマグネが立って、オリヅル号をキャッチ。拍手が沸く。
小休憩に入る。)
関。オリヅル号だって。
永田。カメの六郎と対抗させたんだろう。ロケット点火時は派手な音と光が出るけど、あとは滑空したままだ。
関。グライダーって、意外に自由に操縦できる。
永田。ああ。水本がうまいんだろうけど、設計も大したものだ。
関。スパイどもがびっくりしていた。
永田。今は単なる模型飛行機だけど、あれだけでも使い方しだいでは大変なことになる。垂直発射で、発射準備の時間はゼロ。時速200kmくらいは軽く出るだろう。
関。その上、センサーを付けてある程度の自律飛行を目指している。必要なら、途中で着陸して、また飛び立つ。
永田。巡航グライダー。発案はおれたちか。
関。軍拡競争に加担。あーあ。何でこうなるのよ。
永田。ん、会場がざわついてきたぞ。
関。人気役者が出るからよ。高橋小鹿さん。
永田。聞いたことがあるようなないような。
関。ここでは大変な人気。関東ではさっぱり受けないから、放映されないだけ。
永田。どんな劇なんだ。
関。くれぐれもストーリで怒り出さないようにと釘を刺された。
永田。ふむ、楽しみだな。
(スクリーンに背景が映し出され、そこにステージ上の人物がスーパーインポーズされるという仕掛けだ。短い劇なのに、場面が数回変わるので、工夫されたのだ。
大阪の人はうるさい。場面でいちいち反応する。小鹿氏が出てきただけで、やんやの拍手。最後に小鹿氏扮する怪盗が派手に去ると、歓声が湧いて、しばらく続いた。)
永田。たしかにとんでもないストーリーだな。ん、関、どうした。
関。許さん、あの怪盗。
永田。歌の前座だよ。
関。まねする奴が出たら、どうするのよ。
永田。そんなやつは、エレキとマグネでお縄ちょうだいだ。
関。苦しんだ人はどうなるのよ。
永田。単なる事故だ。
関。だめ、そんなことじゃ。何も解決していないじゃない。
永田。もしもーし。
関。御曹司を落ちぶれさせて、納得させようなんて、とんでもないことだわ。
永田。だから、単なる人情もの。
関。納得できん。だれよ、あの話を書いたの。
永田。なるほど、関東で受けないわけだ。ひょっとしたら、放映禁止になるかも。
関。抗議にいきましょう。楽屋に。
永田。自動拳銃持って?。
関。あなた、誰の味方なのよ。
永田。あっ、また出てきた。今度は綺麗な着物着て。
関。ごまかす気ね。
永田。まあ待て。歌を聴いてからだ。
(小鹿氏が歌う。背景では、自動人形と火本らが演奏し、六郎と鈴鹿、志摩、虎之介が踊っている。歌い終わったら、大変な拍手。)
永田。ほら、受けている。民衆にアピールするんだ。
関。くく、ここではあれでいいのか。
永田。後で誰かに感想を聞いてみよう。
(もちろん、あれはおとぎ話のようなもので、現実ではない。どこかの事件を参考にしたようではあるが、そちらはちゃんと解決している。といった感じだった。話が面白くて、グロさがなければ、内容は気にならないようだ。
机を並べて、チャリティーのために、自動人形が色紙に絵とサインを書く。小鹿氏は参加しないけど、後ろに立ってくださった。ファンからのサイン要求には、当然、応じる。
スタッフをねぎらって、解散。翌日も同様に事が進んだ。トースター号は、その場で小鹿氏に納入。東京に帰る。)