ID物語

書きなぐりSF小説

第32話。アクロニム。16. 出発

2010-11-08 | Weblog
 (道具は後で送るからと、モグで出発。久しぶりの生物学の研究だ。鈴鹿が運転。私と伊勢がいる。自動人形はイチ、レイ、エレキ、マグネ。そして、五郎、六郎。高速道を西に向かう。)

鈴鹿。木の上に居るダニの研究。よく気味悪くないです。

伊勢。ダニが?。線虫の方がよかった?。

鈴鹿。ぐえ。なんで生物の先生って、気味悪いのかしら。

伊勢。亜有さんでさえ、そんな感想持ってたわ。偏見よ。

鈴鹿。瓶に入ったヘビとかカエルとか思い出す。

奈良。ホルマリン漬けのことか。

鈴鹿。うあ、聞かなきゃよかった。

伊勢。そのままだと、乾燥するか腐るかだから、しかたないわよ。

奈良。飼っているイヌとかヒツジとかならいいんだろう?。

鈴鹿。うん。かわいい。奈良さんの専門だった。

奈良。蛋白とかでんぷんの話なら平気だ。

鈴鹿。そこまではいい。

伊勢。昆虫は?。

鈴鹿。きれいなのも多い。気味悪いのも多い。

伊勢。拡大すると、たしかに気味悪いわ。

鈴鹿。でも、興味の方が勝つ。

伊勢。そうね。そう表現できる。多様性。同じ原理で動いているはずなのに、こうも違うのかとあきれる。

鈴鹿。それに、巧妙。

伊勢。分かってるじゃない。そこに注目するのよ。姿のグロテスクさなんて、すぐ忘れる。

鈴鹿。そこが分れ目か。

 (サービスエリアで普通に食事。伊勢と鈴鹿が会話している。私は、エレキとマグネを連れて、公園みたいなところを散歩。辺りを観察させる。クローンとは言え、普通に自動人形だ。全く変わらないように見える。)

鈴鹿。奈良さん、行っちゃった。女性と話するのは嫌なのかな。

伊勢。そんなことないわよ。単に自動人形の世話をしているだけ。

鈴鹿。イヌやウシの世話をするようなもの。

伊勢。そんな感じで付き合ってる。自動人形も自動人形で、奈良さんが操縦すると、ほっとするみたい。これで安心だ、みたいな。

鈴鹿。亜有も慕われている。先日のイチとマグネの動きにはびっくりした。関さんも驚いていた。

伊勢。自動小銃持った男に飛びかかったことでしょう?。私もびっくり。あれができるのは、奈良さんだけと思っていた。

鈴鹿。何かつかんだのかな。

伊勢。そうかもしれない。奈良さんと違って、今ごろ正式なレポートにしているはず。

鈴鹿。何なのかな。

伊勢。さあ、あまり関心ない。ふー。よかったわ。久しぶりにゆったりした。あなたが企画したんだってね。ありがと。

鈴鹿。この旅行のこと。志摩たちが賛成してくれた。どうかゆっくり研究に打ち込んでください。料理とかは私が作るから。

伊勢。うん。週末は忙しくなるし。

鈴鹿。なんだったっけ。

伊勢。やだ、自動人形の展示会よ。大阪の大型展示場で。

鈴鹿。すっかり忘れていた。

伊勢。金曜日にリハーサル。土曜と日曜に展示会。

鈴鹿。また加藤くんが来るの?。

伊勢。そうよ。張り切っていた。

鈴鹿。ここ数カ月で、登場人物が大幅に増えた。

伊勢。ついでに自動人形も。

鈴鹿。結局、火本と水本はオブザーバか。亜有ほどの迫力はない。

伊勢。ちょっと期待外れ。サイボーグ研では活躍しそうだけど。

鈴鹿。話がそっちにシフトするのかな。

伊勢。ええと。もともと、このID物語はあなたと志摩が活躍する話なのよ。自動人形は端役のはずだった。

鈴鹿。なぜか、今は亜有と虎之介が大活躍。おいしいところかっさらってる。

伊勢。あんたっ、しっかりしなさい。作者に気に入られているのはあなたと私よ。

鈴鹿。とはいっても、読者受けしないと意味がない。

伊勢。たしかに、コアなファンにしか受けないような気がする。

奈良。何のことだ。

鈴鹿。戻られたんですか。私たちの出番が少なくなった、てこと。

奈良。あれだけ各方面に衝撃与えておいて…。

伊勢。行きましょうか。

奈良。ああ。

 (代わろうかと言ったのだが、鈴鹿は自分が運転すると言って聞かない。タフなやつ。)