(早朝、目が醒める。外はまだ暗いようだ。五郎が運転席で当直してくれている。)
五郎。おはようございます。
奈良。おはよう。異常はあったか。
五郎。異常は検知されません。探索しましょうか。
奈良。したいのか。
五郎。できれば。
奈良。イチと六郎に行かせよう。それでいいか。
五郎。了解。
(イチは上空に出発。六郎は周囲の地上と水中を観測する。朝もやと言うか、雲が出て来ているので、イチはまず、高空に出るらしい。モニタで追いかける。)
鈴鹿。ずいぶん高空に出る。
奈良。鈴鹿。起きてたのか。
鈴鹿。今起きたばかり。キキの時も感じたけど、よく訓練されている。
奈良。イチはF国ID社にいた機体だ。どちらのノウハウかな。
(調べると、どうやらB国でのプログラムが動作しているらしい。キキとその兄弟のためにプログラムされたものだ。)
鈴鹿。飛行機に乗せられたんだ。
奈良。そうだろうな。こんなところで経験が活きている。Y国でリリたちが活躍し始めたころから、各国でいろいろな場面に駆り出されたようだ。
鈴鹿。その成果が自律パラメータ。
奈良。まだ正しい方向かどうか、分からない。
鈴鹿。ここでは成功している。
奈良。人間が使われている。耐えきれるかどうかだ。
鈴鹿。成功しているうちはいいけど、失敗するとフォローが大変。
奈良。そのとおり。
鈴鹿。亜有はうまく使っているように見える。予想が付くのかな。
奈良。ある状況での人間の行動パターンを知っていれば。今のところ、納得できる動作ばかりだ。
鈴鹿。ふーん。
(興味が湧いてきたようだ。たまたま、近くにいたレイを捕まえて、こんな場合どうするとか聞いている。鈴鹿が話し込んでいるので、朝食を作ろうとしたら、伊勢が先にキッチンに立っていた。)
伊勢。あら、ちょっと待ってて。朝食の用意しているから。
奈良。めずらし。
伊勢。一人暮らしだから、毎日やっているわよ。
奈良。野暮な質問だった。失礼。
(ソファに座る。狭い車内、キッチンはすぐそこ。伊勢がふと見せる女性的な仕草。ちょっと見とれていたら、たちまち鈴鹿とレイに絡まれてしまった。)
レイ。奈良さーん、そんなことしてていいの?。
鈴鹿。危ない視線。私の時は不安そうに見ていただけなのに。
レイ。成り行きによっては、恋人になっていたのかな。
鈴鹿。もう無理だけど、何かの偶然でそうなっていたかも。
(ふと、鈴鹿の言葉で、伊勢との出会いを思い出した。そう、変わった女だった。研究者の冷徹な目だった。今、目の前にいる伊勢は、別人のようだ。でも、どこかに共通点がある。本人だから当たり前か。)
レイ。またまたまたっ。何ぼーっとしているの。
鈴鹿。こりゃだめだ。よほど気に入っているんだ。
レイ。ねえ、どこが魅力的なの?。参考にしたいから聞かせて。
奈良。全部…。かな。
鈴鹿。こりゃ大変。奥さんや娘さんには聞かせられない。
奈良。別に構わない。
伊勢。全部な訳ないわよ。研究者同士で、通じるものがあるのよ。学問に対する真摯な態度。努力しなければ、たちまち崩れてしまう。
レイ。それを、魅力一杯の美しい女性がやっている。
鈴鹿。うらやましい。そんな純愛のような出会い。
伊勢。ほらほら、食事ができたわよ。
(なぜか5人分ある、いや、3人分プラス2機分か。イチも加わって食事する。私ですら、伊勢の手料理は初めてというのに。)
奈良。いただきます。
イチ。おいしい。
伊勢。あなた、いい子。
レイ。すかさずサービスするわね。でも、おいしい。
鈴鹿。ロボットに分かるのか。
伊勢。誰かが調整したんでしょう。
イチ。校正するから、誰か感想を言ってよ。
奈良。トーストの焼き具合がいい。サラダの野菜の切れ具合がいい。ハムエッグも絶妙な焼き加減。
鈴鹿。私は全部だめって聞こえる。
奈良。言ってない。
伊勢。食材の選択は志摩と亜有なのよね。ちょっと悔しい。
イチ。食材選びは一番大事だけど、アレンジと見た目も大切。
レイ。あんた、どこまでもわざとらしい。
イチ。レイもちゃんとほめろよ。
レイ。新婚の味ってとこかな。
(私と伊勢の顔が赤くなる。)
イチ。子沢山の味だよ。
レイ。3人の子供ってか。
イチ。8機と3端末と、あとたくさん。
伊勢。奈良さーん、これが私たちの子供。
奈良。一人を除いて。
レイ。さしずめ、奈良さんがゼウス神。
鈴鹿。じゃあ、伊勢さんが…、やべ。
伊勢。私がヘラ。
イチ。本場ではへーラーと発音するらしい。
伊勢。同じだわよっ。
イチ。ゼウスは女にだらしなかったはずだ。
伊勢。それは作者よ。
鈴鹿。言っちゃだめよ。
奈良。あくまで、物語上だ。
レイ。話がずれたわ。
鈴鹿。自動人形が言ってる。
伊勢。あんたたち、私と奈良さんを両親と思っているの?。
イチ。ちょっと違う。
伊勢。そりゃそうだ。
レイ。よくしてくれる人。親子に匹敵する。
伊勢。どこが。
奈良。何となく分かる。動物では、単に親しい仲と親子は明らかに行動が違う。
鈴鹿。どのように。
奈良。表現しにくいな。具体的な行動を見れば直ちに分かる。人間も動物だから、見ればすぐに分かる。ああ、これかと誰でも思い当たるはず。
鈴鹿。多分…、それが私には足りないんだ。
イチ。今は十分なはずだ。
鈴鹿。うん、いやほど分かる。
伊勢。何よ、しんみりして。さあさ、さっさと朝食を摂りなさい。
鈴鹿。うん。
(この手の話題になると、鈴鹿は急にしんみりとなる。でも、立ち直るのも早かった。)
鈴鹿。フィールドは決まった?。
伊勢。ええ。背の高い木をロープで結んで、三角形でメッシュを作る。そこからぶら下がるの。
鈴鹿。イチとレイが。
伊勢。交代で。空中からアナライザーで観察。
鈴鹿。そんなので分かるの?。
伊勢。分かるかどうかから研究課題よ。
奈良。ついでに、地上をエレキ、マグネのどちらかと歩く。地表部の様子を観察する。
鈴鹿。ダニも。
奈良。参考データにはなるかな。直接の課題ではない。
鈴鹿。私もいっしょに行っていい?。
奈良。ご自由に。
五郎。おはようございます。
奈良。おはよう。異常はあったか。
五郎。異常は検知されません。探索しましょうか。
奈良。したいのか。
五郎。できれば。
奈良。イチと六郎に行かせよう。それでいいか。
五郎。了解。
(イチは上空に出発。六郎は周囲の地上と水中を観測する。朝もやと言うか、雲が出て来ているので、イチはまず、高空に出るらしい。モニタで追いかける。)
鈴鹿。ずいぶん高空に出る。
奈良。鈴鹿。起きてたのか。
鈴鹿。今起きたばかり。キキの時も感じたけど、よく訓練されている。
奈良。イチはF国ID社にいた機体だ。どちらのノウハウかな。
(調べると、どうやらB国でのプログラムが動作しているらしい。キキとその兄弟のためにプログラムされたものだ。)
鈴鹿。飛行機に乗せられたんだ。
奈良。そうだろうな。こんなところで経験が活きている。Y国でリリたちが活躍し始めたころから、各国でいろいろな場面に駆り出されたようだ。
鈴鹿。その成果が自律パラメータ。
奈良。まだ正しい方向かどうか、分からない。
鈴鹿。ここでは成功している。
奈良。人間が使われている。耐えきれるかどうかだ。
鈴鹿。成功しているうちはいいけど、失敗するとフォローが大変。
奈良。そのとおり。
鈴鹿。亜有はうまく使っているように見える。予想が付くのかな。
奈良。ある状況での人間の行動パターンを知っていれば。今のところ、納得できる動作ばかりだ。
鈴鹿。ふーん。
(興味が湧いてきたようだ。たまたま、近くにいたレイを捕まえて、こんな場合どうするとか聞いている。鈴鹿が話し込んでいるので、朝食を作ろうとしたら、伊勢が先にキッチンに立っていた。)
伊勢。あら、ちょっと待ってて。朝食の用意しているから。
奈良。めずらし。
伊勢。一人暮らしだから、毎日やっているわよ。
奈良。野暮な質問だった。失礼。
(ソファに座る。狭い車内、キッチンはすぐそこ。伊勢がふと見せる女性的な仕草。ちょっと見とれていたら、たちまち鈴鹿とレイに絡まれてしまった。)
レイ。奈良さーん、そんなことしてていいの?。
鈴鹿。危ない視線。私の時は不安そうに見ていただけなのに。
レイ。成り行きによっては、恋人になっていたのかな。
鈴鹿。もう無理だけど、何かの偶然でそうなっていたかも。
(ふと、鈴鹿の言葉で、伊勢との出会いを思い出した。そう、変わった女だった。研究者の冷徹な目だった。今、目の前にいる伊勢は、別人のようだ。でも、どこかに共通点がある。本人だから当たり前か。)
レイ。またまたまたっ。何ぼーっとしているの。
鈴鹿。こりゃだめだ。よほど気に入っているんだ。
レイ。ねえ、どこが魅力的なの?。参考にしたいから聞かせて。
奈良。全部…。かな。
鈴鹿。こりゃ大変。奥さんや娘さんには聞かせられない。
奈良。別に構わない。
伊勢。全部な訳ないわよ。研究者同士で、通じるものがあるのよ。学問に対する真摯な態度。努力しなければ、たちまち崩れてしまう。
レイ。それを、魅力一杯の美しい女性がやっている。
鈴鹿。うらやましい。そんな純愛のような出会い。
伊勢。ほらほら、食事ができたわよ。
(なぜか5人分ある、いや、3人分プラス2機分か。イチも加わって食事する。私ですら、伊勢の手料理は初めてというのに。)
奈良。いただきます。
イチ。おいしい。
伊勢。あなた、いい子。
レイ。すかさずサービスするわね。でも、おいしい。
鈴鹿。ロボットに分かるのか。
伊勢。誰かが調整したんでしょう。
イチ。校正するから、誰か感想を言ってよ。
奈良。トーストの焼き具合がいい。サラダの野菜の切れ具合がいい。ハムエッグも絶妙な焼き加減。
鈴鹿。私は全部だめって聞こえる。
奈良。言ってない。
伊勢。食材の選択は志摩と亜有なのよね。ちょっと悔しい。
イチ。食材選びは一番大事だけど、アレンジと見た目も大切。
レイ。あんた、どこまでもわざとらしい。
イチ。レイもちゃんとほめろよ。
レイ。新婚の味ってとこかな。
(私と伊勢の顔が赤くなる。)
イチ。子沢山の味だよ。
レイ。3人の子供ってか。
イチ。8機と3端末と、あとたくさん。
伊勢。奈良さーん、これが私たちの子供。
奈良。一人を除いて。
レイ。さしずめ、奈良さんがゼウス神。
鈴鹿。じゃあ、伊勢さんが…、やべ。
伊勢。私がヘラ。
イチ。本場ではへーラーと発音するらしい。
伊勢。同じだわよっ。
イチ。ゼウスは女にだらしなかったはずだ。
伊勢。それは作者よ。
鈴鹿。言っちゃだめよ。
奈良。あくまで、物語上だ。
レイ。話がずれたわ。
鈴鹿。自動人形が言ってる。
伊勢。あんたたち、私と奈良さんを両親と思っているの?。
イチ。ちょっと違う。
伊勢。そりゃそうだ。
レイ。よくしてくれる人。親子に匹敵する。
伊勢。どこが。
奈良。何となく分かる。動物では、単に親しい仲と親子は明らかに行動が違う。
鈴鹿。どのように。
奈良。表現しにくいな。具体的な行動を見れば直ちに分かる。人間も動物だから、見ればすぐに分かる。ああ、これかと誰でも思い当たるはず。
鈴鹿。多分…、それが私には足りないんだ。
イチ。今は十分なはずだ。
鈴鹿。うん、いやほど分かる。
伊勢。何よ、しんみりして。さあさ、さっさと朝食を摂りなさい。
鈴鹿。うん。
(この手の話題になると、鈴鹿は急にしんみりとなる。でも、立ち直るのも早かった。)
鈴鹿。フィールドは決まった?。
伊勢。ええ。背の高い木をロープで結んで、三角形でメッシュを作る。そこからぶら下がるの。
鈴鹿。イチとレイが。
伊勢。交代で。空中からアナライザーで観察。
鈴鹿。そんなので分かるの?。
伊勢。分かるかどうかから研究課題よ。
奈良。ついでに、地上をエレキ、マグネのどちらかと歩く。地表部の様子を観察する。
鈴鹿。ダニも。
奈良。参考データにはなるかな。直接の課題ではない。
鈴鹿。私もいっしょに行っていい?。
奈良。ご自由に。