(不況なので、サイボーグ農場の話は聞くだけの企業が多い。でも、数社が乗ってきた。加工食品メーカーや、農機具のメーカー、などなど。かなり切実な話もあって、機械化農業の技術の修得のために、人まで送り込んで来る所もある。
話を持っていったら、海原所長が驚いた。)
海原。こんな話に食いつく企業があるんだ。
奈良。ええ。この不況なのに。部下たちの手柄です。
海原。確かに、面白いし、暖かい話題ではあるの。東京湾ファミリー牧場じゃな。牛乳とか売るのか。
奈良。最初はニワトリの卵かな。数は飼わないので、直営の売店で売るくらいです。キャベツとかリンゴは作る。
海原。農業か。
奈良。どちらかというと、スタート時は農業が主体。
海原。奈良部長、楽しそうじゃの。
奈良。ええ。おかげさまで。しばらく、こちらに常駐することになる。
海原。自動人形を鍛えるために。…、奈良部長、少し待ってくれんか。こいつは大変な山のような気がしてきた。
奈良。農業ロボットは、一つの分野でした。
海原。その通り。政府はあらゆるチャンスを待ち構えているはずじゃ。話をつける。
奈良。話って、どこに。
海原。秘密じゃ。悪いようにはせん。しばらく黙って見ていてくれ。
奈良。はい。
(さすがに、元国立大教授。政治の話が絡むと、がぜん強い。各省庁や自治体に話を持って行く。そして、あっと言う間に20億円もの資金を用意してしまった。当然、私は主任研究者ではなくなり、単なる顧問に。自分の農場が持てると思ったのに、何とも儚い夢だった。
伊勢に悩みの相談。)
伊勢。そうなの。お金は出たけど、ついでに農場主の話も行っちゃった。
奈良。ああ、ちょっと虚脱感を味わっている。単にきっかけを提供するだけだった。自動人形は使って欲しいと。
伊勢。その農園で。
奈良。東京サイボーグ農園。東京都が土地を提供した。臨海副都心の近くに。
伊勢。でも、奈良さんは、そこで働くんでしょ?。
奈良。当初はな。ファミリー牧場はどうしてもやりたいらしい。人間も家畜も機械も相手にする。そんな業務ができるロボットなど、そんなにない。
伊勢。自動人形だけよ。サイボーグ研の位置付けは。
奈良。ロボット部分の開発の統括管理をする。農園の出資者の一部。
伊勢。海原博士が影響力を行使するために。
奈良。どちらかというと、自分が支配したいようだ。
伊勢。ついに正体を現したわね。
奈良。政治家だ。彼でないとできない。サイボーグ研は、博士の野望の第一歩に過ぎなかった。
伊勢。一番、望ましい姿か。やるじゃない。でも、この手の話は、早いとこ引いた方がいい。
奈良。そんな気がしてきた。志摩たちがいるから、あと1年間は付き合うが。
伊勢。うん。最後に大張り切りしましょう。
奈良。伊勢、元気が出てきたよ。ありがとう。
伊勢。どういたしまして。うふ。面白くなりそう。
奈良。何が?。
伊勢。さあ、どうなるのかなんて、私は予言者じゃない。
奈良。なるようにしかならないか。
(都心のど真ん中に、広大な機械化農園を作る。各界からプロを集め、技術を集約するのだ。そのままでは、成果が国民に分かりにくいため、ファミリー牧場を隣接する、というもくろみ。私は体よく利用されているわけだが、作業内容は楽しい。
ID社は自動人形を貸し出すわけだから、かなりの出資。海原博士、そのことはよく分かっていて、ID社の観測網や輸送網に使ってよいとの話を付けてしまった。
農園の完成は、ゴールデンウィーク直前を目指す。突貫工事が始まった。ID社は、片隅を割り当てられ、簡易施設を組み立てる。田沼とA31を連れて、さっそく見学。)
田沼。広大な敷地。見ても、信じられない。ここが農園になる。
奈良。そのとおり。その一角に、ファミリー牧場を作る。最初はニワトリなどを飼い、卵を生産すると共に、馬を1頭飼って家族連れなどを集める。
田沼。でも、ほとんどは農場。
奈良。日本じゃ区別するけど、西洋では農園に家畜がいるのは当たり前。ここでも、ほぼ放し飼いにする。
田沼。そうか。参考になります。
奈良。経営に?。
田沼。もちろん。農業や畜産は我が国の主要産業の一つ。ここを見ると、何とか国際競争力を付けたいみたいだ。
奈良。だから、資金が集まったのか。
田沼。海原博士、よくやる。ロボットに、農業を手伝わせる。ここをその研究拠点の一つにする。
奈良。そうらしい。ロボットが絡むと、急に力がわくようだ。どんな分野でも。
田沼。完成予想図とか、ありますか?。
奈良。私には、いろいろと資料をくれる。これだ。
田沼。工場かな、温室かな。
奈良。温室風にするのは、塩害を防ぐためだ。なにせ、周りは海。工場のような感じがするのは、屋根が三角になっているから。太陽電池パネルを効率よく配置するのだ。もちろん、直接光も十分に必要。
田沼。20mの高さの屋根が、延々と続くのか。中は、畑と畜舎と、小さな林に池に。
奈良。こちらの当初の計画を、かなり取り入れてくれた。最初は、普通の農場だ。できるところから、ロボット化して行く。
田沼。巨大なはしけ上の農場の感じ。宇宙農場も、こんな感じかな。
奈良。あはは。夢があって良い。閉鎖空間にはしないけど、準備のための観測はしておこう。良いアイデアだ。ありがとう。
(ただ、この東京サイボーグ農園の完成までには、多少の紆余曲折があるのだ。)
話を持っていったら、海原所長が驚いた。)
海原。こんな話に食いつく企業があるんだ。
奈良。ええ。この不況なのに。部下たちの手柄です。
海原。確かに、面白いし、暖かい話題ではあるの。東京湾ファミリー牧場じゃな。牛乳とか売るのか。
奈良。最初はニワトリの卵かな。数は飼わないので、直営の売店で売るくらいです。キャベツとかリンゴは作る。
海原。農業か。
奈良。どちらかというと、スタート時は農業が主体。
海原。奈良部長、楽しそうじゃの。
奈良。ええ。おかげさまで。しばらく、こちらに常駐することになる。
海原。自動人形を鍛えるために。…、奈良部長、少し待ってくれんか。こいつは大変な山のような気がしてきた。
奈良。農業ロボットは、一つの分野でした。
海原。その通り。政府はあらゆるチャンスを待ち構えているはずじゃ。話をつける。
奈良。話って、どこに。
海原。秘密じゃ。悪いようにはせん。しばらく黙って見ていてくれ。
奈良。はい。
(さすがに、元国立大教授。政治の話が絡むと、がぜん強い。各省庁や自治体に話を持って行く。そして、あっと言う間に20億円もの資金を用意してしまった。当然、私は主任研究者ではなくなり、単なる顧問に。自分の農場が持てると思ったのに、何とも儚い夢だった。
伊勢に悩みの相談。)
伊勢。そうなの。お金は出たけど、ついでに農場主の話も行っちゃった。
奈良。ああ、ちょっと虚脱感を味わっている。単にきっかけを提供するだけだった。自動人形は使って欲しいと。
伊勢。その農園で。
奈良。東京サイボーグ農園。東京都が土地を提供した。臨海副都心の近くに。
伊勢。でも、奈良さんは、そこで働くんでしょ?。
奈良。当初はな。ファミリー牧場はどうしてもやりたいらしい。人間も家畜も機械も相手にする。そんな業務ができるロボットなど、そんなにない。
伊勢。自動人形だけよ。サイボーグ研の位置付けは。
奈良。ロボット部分の開発の統括管理をする。農園の出資者の一部。
伊勢。海原博士が影響力を行使するために。
奈良。どちらかというと、自分が支配したいようだ。
伊勢。ついに正体を現したわね。
奈良。政治家だ。彼でないとできない。サイボーグ研は、博士の野望の第一歩に過ぎなかった。
伊勢。一番、望ましい姿か。やるじゃない。でも、この手の話は、早いとこ引いた方がいい。
奈良。そんな気がしてきた。志摩たちがいるから、あと1年間は付き合うが。
伊勢。うん。最後に大張り切りしましょう。
奈良。伊勢、元気が出てきたよ。ありがとう。
伊勢。どういたしまして。うふ。面白くなりそう。
奈良。何が?。
伊勢。さあ、どうなるのかなんて、私は予言者じゃない。
奈良。なるようにしかならないか。
(都心のど真ん中に、広大な機械化農園を作る。各界からプロを集め、技術を集約するのだ。そのままでは、成果が国民に分かりにくいため、ファミリー牧場を隣接する、というもくろみ。私は体よく利用されているわけだが、作業内容は楽しい。
ID社は自動人形を貸し出すわけだから、かなりの出資。海原博士、そのことはよく分かっていて、ID社の観測網や輸送網に使ってよいとの話を付けてしまった。
農園の完成は、ゴールデンウィーク直前を目指す。突貫工事が始まった。ID社は、片隅を割り当てられ、簡易施設を組み立てる。田沼とA31を連れて、さっそく見学。)
田沼。広大な敷地。見ても、信じられない。ここが農園になる。
奈良。そのとおり。その一角に、ファミリー牧場を作る。最初はニワトリなどを飼い、卵を生産すると共に、馬を1頭飼って家族連れなどを集める。
田沼。でも、ほとんどは農場。
奈良。日本じゃ区別するけど、西洋では農園に家畜がいるのは当たり前。ここでも、ほぼ放し飼いにする。
田沼。そうか。参考になります。
奈良。経営に?。
田沼。もちろん。農業や畜産は我が国の主要産業の一つ。ここを見ると、何とか国際競争力を付けたいみたいだ。
奈良。だから、資金が集まったのか。
田沼。海原博士、よくやる。ロボットに、農業を手伝わせる。ここをその研究拠点の一つにする。
奈良。そうらしい。ロボットが絡むと、急に力がわくようだ。どんな分野でも。
田沼。完成予想図とか、ありますか?。
奈良。私には、いろいろと資料をくれる。これだ。
田沼。工場かな、温室かな。
奈良。温室風にするのは、塩害を防ぐためだ。なにせ、周りは海。工場のような感じがするのは、屋根が三角になっているから。太陽電池パネルを効率よく配置するのだ。もちろん、直接光も十分に必要。
田沼。20mの高さの屋根が、延々と続くのか。中は、畑と畜舎と、小さな林に池に。
奈良。こちらの当初の計画を、かなり取り入れてくれた。最初は、普通の農場だ。できるところから、ロボット化して行く。
田沼。巨大なはしけ上の農場の感じ。宇宙農場も、こんな感じかな。
奈良。あはは。夢があって良い。閉鎖空間にはしないけど、準備のための観測はしておこう。良いアイデアだ。ありがとう。
(ただ、この東京サイボーグ農園の完成までには、多少の紆余曲折があるのだ。)