ID物語

書きなぐりSF小説

第49話。東京港ファミリー牧場。2. 海原博士、乗り出す

2011-10-31 | Weblog
 (不況なので、サイボーグ農場の話は聞くだけの企業が多い。でも、数社が乗ってきた。加工食品メーカーや、農機具のメーカー、などなど。かなり切実な話もあって、機械化農業の技術の修得のために、人まで送り込んで来る所もある。
 話を持っていったら、海原所長が驚いた。)

海原。こんな話に食いつく企業があるんだ。

奈良。ええ。この不況なのに。部下たちの手柄です。

海原。確かに、面白いし、暖かい話題ではあるの。東京湾ファミリー牧場じゃな。牛乳とか売るのか。

奈良。最初はニワトリの卵かな。数は飼わないので、直営の売店で売るくらいです。キャベツとかリンゴは作る。

海原。農業か。

奈良。どちらかというと、スタート時は農業が主体。

海原。奈良部長、楽しそうじゃの。

奈良。ええ。おかげさまで。しばらく、こちらに常駐することになる。

海原。自動人形を鍛えるために。…、奈良部長、少し待ってくれんか。こいつは大変な山のような気がしてきた。

奈良。農業ロボットは、一つの分野でした。

海原。その通り。政府はあらゆるチャンスを待ち構えているはずじゃ。話をつける。

奈良。話って、どこに。

海原。秘密じゃ。悪いようにはせん。しばらく黙って見ていてくれ。

奈良。はい。

 (さすがに、元国立大教授。政治の話が絡むと、がぜん強い。各省庁や自治体に話を持って行く。そして、あっと言う間に20億円もの資金を用意してしまった。当然、私は主任研究者ではなくなり、単なる顧問に。自分の農場が持てると思ったのに、何とも儚い夢だった。
 伊勢に悩みの相談。)

伊勢。そうなの。お金は出たけど、ついでに農場主の話も行っちゃった。

奈良。ああ、ちょっと虚脱感を味わっている。単にきっかけを提供するだけだった。自動人形は使って欲しいと。

伊勢。その農園で。

奈良。東京サイボーグ農園。東京都が土地を提供した。臨海副都心の近くに。

伊勢。でも、奈良さんは、そこで働くんでしょ?。

奈良。当初はな。ファミリー牧場はどうしてもやりたいらしい。人間も家畜も機械も相手にする。そんな業務ができるロボットなど、そんなにない。

伊勢。自動人形だけよ。サイボーグ研の位置付けは。

奈良。ロボット部分の開発の統括管理をする。農園の出資者の一部。

伊勢。海原博士が影響力を行使するために。

奈良。どちらかというと、自分が支配したいようだ。

伊勢。ついに正体を現したわね。

奈良。政治家だ。彼でないとできない。サイボーグ研は、博士の野望の第一歩に過ぎなかった。

伊勢。一番、望ましい姿か。やるじゃない。でも、この手の話は、早いとこ引いた方がいい。

奈良。そんな気がしてきた。志摩たちがいるから、あと1年間は付き合うが。

伊勢。うん。最後に大張り切りしましょう。

奈良。伊勢、元気が出てきたよ。ありがとう。

伊勢。どういたしまして。うふ。面白くなりそう。

奈良。何が?。

伊勢。さあ、どうなるのかなんて、私は予言者じゃない。

奈良。なるようにしかならないか。

 (都心のど真ん中に、広大な機械化農園を作る。各界からプロを集め、技術を集約するのだ。そのままでは、成果が国民に分かりにくいため、ファミリー牧場を隣接する、というもくろみ。私は体よく利用されているわけだが、作業内容は楽しい。
 ID社は自動人形を貸し出すわけだから、かなりの出資。海原博士、そのことはよく分かっていて、ID社の観測網や輸送網に使ってよいとの話を付けてしまった。
 農園の完成は、ゴールデンウィーク直前を目指す。突貫工事が始まった。ID社は、片隅を割り当てられ、簡易施設を組み立てる。田沼とA31を連れて、さっそく見学。)

田沼。広大な敷地。見ても、信じられない。ここが農園になる。

奈良。そのとおり。その一角に、ファミリー牧場を作る。最初はニワトリなどを飼い、卵を生産すると共に、馬を1頭飼って家族連れなどを集める。

田沼。でも、ほとんどは農場。

奈良。日本じゃ区別するけど、西洋では農園に家畜がいるのは当たり前。ここでも、ほぼ放し飼いにする。

田沼。そうか。参考になります。

奈良。経営に?。

田沼。もちろん。農業や畜産は我が国の主要産業の一つ。ここを見ると、何とか国際競争力を付けたいみたいだ。

奈良。だから、資金が集まったのか。

田沼。海原博士、よくやる。ロボットに、農業を手伝わせる。ここをその研究拠点の一つにする。

奈良。そうらしい。ロボットが絡むと、急に力がわくようだ。どんな分野でも。

田沼。完成予想図とか、ありますか?。

奈良。私には、いろいろと資料をくれる。これだ。

田沼。工場かな、温室かな。

奈良。温室風にするのは、塩害を防ぐためだ。なにせ、周りは海。工場のような感じがするのは、屋根が三角になっているから。太陽電池パネルを効率よく配置するのだ。もちろん、直接光も十分に必要。

田沼。20mの高さの屋根が、延々と続くのか。中は、畑と畜舎と、小さな林に池に。

奈良。こちらの当初の計画を、かなり取り入れてくれた。最初は、普通の農場だ。できるところから、ロボット化して行く。

田沼。巨大なはしけ上の農場の感じ。宇宙農場も、こんな感じかな。

奈良。あはは。夢があって良い。閉鎖空間にはしないけど、準備のための観測はしておこう。良いアイデアだ。ありがとう。

 (ただ、この東京サイボーグ農園の完成までには、多少の紆余曲折があるのだ。)

第49話。東京港ファミリー牧場。1. プロローグ

2011-10-30 | Weblog
 (日本ID社、東京支社は霞ヶ関のすぐ近くの1棟借りのビルにある。その1階に、情報収集部のオフィスがある。かつては、伊勢、志摩、鈴鹿がいたけど、今は私(奈良)と、営業から1人、窓口対応が交代で来るのみ。私の話し相手はA31と、夕方に来る学生の田沼くんくらい。もっとも、伊勢たちとはいつでもテレビ会議できるし、仕事は減ってない。
 今日は、大江山教授が来ている。ジロにお茶を用意させる。)

奈良。教授。わざわざこんなところに。呼びつけてくださればいいのに。

大江山。官庁に来るついでだ。ここは便利な場所にあるからな。用件というのは他でもない。1億円の研究費を使ってくれ。

奈良。私でいいんですか?。

大江山。来るの来ないの、さんざん待たせておいて、今ごろ来た。

奈良。いつものことでしょう?。昨年までは、どう使っていたんですか?。

大江山。大きな声では言えんがな…。何を言わせるんだ。ともかく、国民に役だつ使い道を探すのだ。

奈良。サイボーグ研で。

大江山。そう。

奈良。じゃあ、介護施設を作ってみたらいかがですか?。

大江山。本物の。

奈良。サイボーグ研のサイボーグは、元々は介護のためのもの。本物で鍛えないと。

大江山。本物…か。たしか、奈良部長は獣医だった。

奈良。本物です。みんな忘れているけど。

大江山。それいこう。たしか、A31は動物を飼って鍛えたんだ。

奈良。情報収集部に来る直前の話。ウマとか、ウシとか、ブタとか、ニワトリとか、アヒルとか。懐かしい。アン、覚えているか。

アン。覚えている。救護服のまま、馬の世話をした。何もできなかった私たちが役だった。

大江山。そうだろう。動物は意のままにはならぬ。実戦経験になる。

奈良。危険です。何をするか分からないところがある。

大江山。人間もな。動物とは、心の交流ができる。それも人間と同じ。

奈良。まあ、そうですけど。

大江山。職員の、憩いの場所になる。

奈良。トカマク基地の地上部に、ファミリー牧場を作れと。

大江山。作ってくれるか。

奈良。私の夢だ。今、実現するのか。

大江山。それはよかった。

奈良。ええと。維持費がかかる。スポンサー、付くんですか?。

大江山。それも含めて、丸投げだ。

奈良。ええええっ。大変な作業になる。

大江山。当然。すぐに取りかかれっ。

奈良。ははーっ。

 (大江山教授は、言うだけ言って、帰ってしまった。
 ともかく、志摩と鈴鹿を呼びつける。なぜか、虎之介と亜有とジーンまで来た。ついでに、羽鳥も。こいつら、暇らしい。)

羽鳥。ふーん。研究費って、こう使われるんだ。

ジーン。変な習慣。

羽鳥。お役所仕事とは、こういうものだ。

鈴鹿。で、用件はスポンサー探し。

奈良。初期費用は1億円。動物を手に入れ、畜舎とか整備したら、あっと言う間に使ってしまう。

羽鳥。しかし、維持費要は出ない。エサ代とか。

ジーン。そんな金なの?。金塊でも買っておけば?。

羽鳥。金塊が研究するのか。

ジーン。いろいろ役だつわよ。エサ代とか。

羽鳥。許さん。

奈良。そういうことだ。端的に言う。エサ代などを出してくれる企業探しをする。

鈴鹿。部長のつて、無いの?。

奈良。いざとなったら、自動人形の維持費用を使う。

鈴鹿。何だ。それでいいじゃない。

奈良。最後の手段。自動人形の調整が終わったら、理由がなくなる。予算は徐々に縮小して、ファミリー牧場は短期間で消滅。自分で稼ぐのがベスト。

鈴鹿。たしか、牧場部分のコンサルタントがいたんじゃなかったっけ。

奈良。伊勢と話をしていたな。名前は忘れた。

志摩。それと維持費は別だよ。

奈良。コンサルタントとは連絡するが、ID社に発注する予定だ。

羽鳥。秘密兵器を買うとか。

奈良。まあ、いろいろ。私が慣れているというのが、最大の理由。

羽鳥。本当は、競争入札。

奈良。見積もりは取る。しかし、どこが受注しようと、値段が決まっているから、そんなに変わらないはずだ。それにしたって、維持費は別。

鈴鹿。情報収集部の直営とか。

奈良。ID社がファミリー牧場の経営をするには、いろいろ手続きがいるし、まず、通らない。

鈴鹿。提案したら?。

奈良。もちろん。文章は出した。まず通らないと言ったのは私ではない。

羽鳥。だいたい分かった。トカマク基地のファミリー牧場に、その企業の名前を冠する代りに、エサ代などの維持費用を出してもらう。

奈良。そんな感じ。普通は、神社や寺みたいに、寄付してくれた企業や個人の名前を、目立つところに表示するだけ。命名は海原博士にやってもらおうと考えている。

鈴鹿。肖像とか銘板とか。

奈良。そんな話もあったな。今でもあるのかな。

羽鳥。ありますけど、特にお勧めはしない。

鈴鹿。設立の意義は。

奈良。やってくれるのか。

鈴鹿。乗りかかった船。とことん、やってみます。志摩、いいでしょ?。

志摩。もちろん。

清水。私たちも回っていいかな。

芦屋。私たちって、おれを含むのか。

清水。この手の仕事は、やってみるものよ。

芦屋。やってみる。

ジーン。私も応援する。

芦屋。余計なことを。

ジーン。猫の手よ。役だつって。

芦屋。員数は多い方がいい。たしかにそうだ。助かる。ありがとう。

 (テレビ会議で、伊勢と土本にも参加してもらい、計画を話す。外見はヨーロッパ風の田舎の農場。つまり、農業もやるし、動物も飼う。)

伊勢(通信)。そうか。初期費用は出るんだ。良かった。

土本。水族館なんかもいいな。

羽鳥。土本の立場なら、研究計画を立てられるだろう。これから、いやほど機会はあるはずだ。

土本。うん。楽しみに取っておく。

伊勢。確か、完成予定の図面は残っている。奈良さん、チェックしてください。

奈良。楽だな。利用させてもらう。

土本。目的は、サイボーグの開発に使う。

奈良。そのとおり。

土本。かっこいい。サイボーグが飼育する農場。飛びつくところ、出てきそう。私も、鈴鹿さんといっしょに回っていいかな。

奈良。勉強のつもりか。感心感心。

土本。サイボーグ農場。宣伝ビデオを作ろう。

奈良。A31とか使って。

土本。リリたちもいるし、ゴールドたちもいる。背景はCG合成で。

 (プロモーションビデオ作りは、私の最初の仕事になった。まずは、適当にスケッチを描いて、プレゼン用のスライドを作る。そう、A31との幸せな日々を思い出しながら。)

土本。自動人形の本来の使い方なんだ。

志摩。微妙なところ。軍でも馬は飼う。今でも。

鈴鹿。他の動物もね。最初は何を飼うのかな。

志摩。家禽と、大形動物1頭か2頭。部長はウマが欲しいみたい。でも、農場の整備が先。

鈴鹿。ウマか。東京湾で乗馬。悪くない。

志摩。流行るとは思えないけど。

第48話。サイボーグ第2世代。18. 海軍からの使者

2011-10-29 | Weblog
 (伊勢たちはとぼとぼと、モグとライジンで東京に戻る。伊勢はモグにいて、エスをだっこしている。なぜか、運転は関。)

関。よかった。またもやけが人なし。情報収集部、また得点です。

伊勢。目の前で、国賓のA国議員が誘拐されたのを見逃した。

関。あそこでとがめていたら、銃撃戦。初のサイボーグのけが人が出ていたかも。

伊勢。それはそうか。時々感じる、自動人形の冷徹な判断。まんまと乗せられたのかな。

関。形式上は、A国軍が非常事態として追いかけて、我が警察が制圧した。大岡裁きみたいな結果。

伊勢。偶然よ。

関。こちらのサイボーグの威力も分かった。

伊勢。トラックの道を空けただけ。

関。それがいいんです。役だつ自動人形。

伊勢。あなた、ずいぶん評価している。虎之介にそそのかされたのかな。

関。それはあるかもしれません。でも、嘘ではない。

伊勢。たしかに、作戦中に外骨格型自動人形が言うことを聞かなくなるのを恐れていた。それはなかった。

関。うん。いい子たち。

 (必要時には、平気で拳銃ぶっ放す関を、救護専門の自動人形が慕っているのも不思議。今は四郎が助手席にいて、要するに協力している。リリは、伊勢のそばでくつろいでいる。
 一方の、ライジン。運転しているのはつよし。エドはコンソールにかじりついて、自動人形たちの動きを、後追いで詳細に追跡している。)

風間。熱心だな。帰ってからでもできるのに。

エド。記憶が新鮮なときにできることもある。

風間。邪魔したみたいだ。すまない。

エド。気遣ってくれて、ありがとう。

 (エドは、鳥羽を呼んで、自動人形の動きを確認している。いおりは追いだされる格好になった。しかたがないので、カッパーと会話。)

風間。そちらは、なかなか活躍できない。すまない。配置か、使い方か。

カッパー。いつも、使っていただいています。活躍は、結果。今のままで構いません。

風間。たしかに、君たちがいるから、こちらは心置きなく動ける。

キネ。私とランスもそう。カッパーたちの存在は大きい。エドにはベルが付いているけど、実際に守るのはカッパーたち。伊勢さんも。

風間。複雑な反応だな。現状分析だから、いいのか。

キネ。あなたは、どう思うのよ。

風間。次は、サービスプログラムか。伊勢さんのマスコットが欲しい。ジーンのジョー、エドのベルのような。

キネ。ゴールドがいるわよ。人間の志摩さんと虎之介さんも。

風間。ゴールドは役だちそうだ。

キネ。今は、リリとエスとキネがいる。

風間。あれは、臨時だそうだ。

キネ。トカマク基地に動きがあるようよ。

 (トカマク基地。大江山教授が海原博士に呼ばれた。大学から、すっ飛んで来た。)

大江山。何のご用でしょうか。

海原。A国海軍から技術者が1人来る。

大江山。サイボーグの件で。

海原。その通りじゃ。直接のターゲットであるID社東京、情報収集部には、直接は接近しにくいからの。

大江山。エドワード・ベイツのような感じか。

海原。同じく、移動物体の技術者。ケント・ムーア。水上も海中も空中も、大型でも小型でも、要するに、何でも屋だ。

大江山。ええと、深海幽霊船を担当させる。

海原。興味はあるようだ。この前みたいに、自動人形で水深20mから連れ出されるのは危険だと。

大江山。脱出用のカプセルか何か。…、アンにだっこされた方が、いい感じと思うが。

海原。こほん。鼓膜が破れなかったのは、不幸中の幸い。非常事態でないと、使えん。

大江山。サイボーグ計画に役だつのかな。

海原。当然。じゃが、お主を呼んだ用件は、他にある。

大江山。はて、A国海軍、情報収集部、トカマク基地。三題噺だ。

海原。分からんかの。恒例のあれじゃ。

大江山。また、自動人形を増やすんですか?。

海原。正解じゃ。サンダーストーム基地は持て余しているがの。ここはイチとレイしかおらん。

大江山。他動人形はわんさかいる。

海原。乗り物3台と、五郎たちじゃの。とりあえず、リリ親子は招集したようじゃ。

大江山。ロボットヘビがここに駐在。

海原。何を確認しとる。新しい自動人形が来るまでの話じゃ。

大江山。その新しい自動人形を私が考える。その、新人ではなく。このくそ忙しい年度末に。

海原。サイボーグ研で買える値段ではない。せっかくのチャンスじゃ。便乗するのじゃ。行けー。

大江山。ははーっ。

 (大江山教授、血相変えて、第一機動隊本部に行く。)

志摩。教授、珍しい。

大江山。珍しい、ではない。きさまら、私の学生だろうが。

志摩。もうすぐ、最終学年。新年度の大学院生は来るんですか?。

大江山。もちろん。男2人。ここ、サイボーグ研に投入する。

鈴鹿。火本くんの抜けた穴は大きいもの。

志摩。おれたちは役立たずだ。

大江山。お前らも、今から役だつのだ。新しい自動人形を考えろ。

鈴鹿。教授、落ち着いて。はじめから話してください。

 (志摩がお茶を用意する。大江山教授は、理由を述べる。)

鈴鹿。確定した話でもなんでもない。

志摩。その、ケントさんが考えるんじゃないんですか?。

大江山。1機はな。エドのベルみたいに。

志摩。残りの3機とかを考える。

大江山。リリ親子の後埋めだ。

鈴鹿。数が合わない。実質、ここに増えるだけ。

大江山。エレキとマグネが欠員だ。

鈴鹿。亜有さん、いいの?。

清水。構わない。けど、ID物語としての話が持つのかな。

志摩。このところ、出番が少ない。サンダーストーム部隊に話を取られている。

鈴鹿。仕事はあるわよ。減ってない。

大江山。暗殺とか。

鈴鹿。そんなの、来ないわね。

芦屋。来たら、受けるのかよっ。

大江山。冗談が通じないやつら。ともかく、3機ほどの自動人形を考えろ。週末までに、スケッチを描け。

 (大江山教授、めちゃくちゃ忙しいらしく、お茶とお菓子を口に放り込んで、タクシーで大学に帰ってしまった。)

芦屋。自分の希望くらい、おっしゃってくださったらよかったのに。

清水。こちらの意見を尊重したいのよ。その技術者とは連絡できるのか、所長に聞いてみる。

 (亜有がメールアドレスを教えてもらい、ケントに連絡したら、最初はそちらで考えて欲しいとのこと。その後、自分で発注するから、参考になるものを、とのこと。)

清水。海原博士の直感、恐るべし。

鈴鹿。ただ者ではない。だから、ここの所長をしているんだけど。

志摩。考えようよ。海軍で役だつ自動人形かい?。

清水。海軍たって、地上の設備もあるし、航空もある。

芦屋。沿岸には、リュウグウとオトヒメ。深海は幽霊船。

清水。泳ぐのが得意な動物型は、六郎にリュウにエス。

鈴鹿。全部、爬虫類。

清水。哺乳類だったら、イルカにアシカにラッコ。鳥類だったら、カモメにペンギン。

芦屋。あとは軟体動物か。

清水。魚類が素っ飛んでるわよ。

鈴鹿。軟体動物って、イカにタコにウミウシに二枚貝に巻き貝。

志摩。魚類なら、サメにエイにサケにコイにマグロ。

鈴鹿。タツノオトシゴにフグにトビウオ。たしか、六郎はクロの乗り物だった。

清水。うん。メカイルカが、いつのまにか、メカカメになったのよ。

芦屋。じゃあ、水中は乗り物でもいいわけだ。

清水。まあね。イチたちのサーフボードみたいな。

芦屋。ヒトを乗せないカワセミ号。

清水。あはは。こういうことにかけては、虎之介さんは天才。ケントさんに、設計できるか聞いてみる。

 (張り切ってやる、と。その前に、皆さんと会いたいとの返事。)

 第48話。終了。

第48話。サイボーグ第2世代。17. 要人誘拐される

2011-10-28 | Weblog
 (博覧会は3日間の予定。最初の日は、企業や報道向きの公開。もうすぐ午前10時の開場時間。要人は正午に来る予定。会場にはモグを乗り入れ、いおりたちはサイボーグになって、モグの屋根のステージで演奏予定。駐車場にはライジンがいる。
 展示はすべて、ドーム内。晴れているので、屋根が部分的に開いている。内部は関係者ばかり。サンダーストーム楽団は軽く演奏している。ゴールドたちは、ライジンで待機。
 伊勢はエスとリリと四郎を率いている。帰国を延ばししたのだ。この博覧会の警護の仕事が終わったら、リリたちはY国ID本部に戻る予定。)

ジーン。これがすべて日本製。

エド。部品まで含めると、別の国のもあるけど、そのとおり、すべて日本製。

ジーン。強そう。

エド。技術は確か。実戦経験がほとんどないから、ちょっと疑問な設計もあるけど、2~3度も使えば、急速によくなりそうだ。

リリ。不気味なことを平気で言ってる。

エド。まあね。本格的に使われないことを祈るよ。こうして、展示しているだけで威嚇効果はある。

ジーン。軍事パレード相当か。でも、ミサイルは模型みたい。

エド。航空機などの大型兵器もそうだ。テントとか、食料とか、こまごました展示が目立つ。

 (でも、自動人形には、何に使われるかは容易に分かる。リリが警戒している。そして、詳細に分析しているようだ。)

ジーン。これか。自動人形の不気味な側面。軍事的脅威に敏感に反応する。

エド。我が軍が鍛えたんだ。念入りに。

リリ。これは本物。

ジーン。小型トラックだ。こんな山奥で役だちそう。

 (係の人に断って、ジーンとエドとリリが乗る。)

ジーン。かっこいい。日本車だ。アニメアイドルのラップが似合いそう。

係1。それ、いいかも。おーい、野郎ども、痛車にするぞ。

ジーン。冗談で言ったのに。

 (ほんの5分で軍用トラックは痛車に変身。お決まりのパターンのキャラクタに、派手な塗装。各種迷彩に瞬時に変わるのが売りの一つらしい。)

エド。これだ、ごく真面目。信じ難い趣味。

ジーン。でも、かわいい。キュートな格好している。

 (ライジンから連絡あり。A国海軍の車両が到着したと。1小隊の規模。会場周辺に展開して、機材を設置している。ベルをはるか上空に飛ばして、偵察。伊勢とエドとジーンはモグに入って、コンソールで追尾。)

エド。こりゃ本格的。なんで、ぼくたちが呼ばれたのかな。めくらましかな。

ジーン。多分、そう。派手だから、他が目立たないのよ。

伊勢。一杯食ったか。いいけど。

ジーン。ご協力、感謝しています。

伊勢。構わないわよ。いつもお世話になっているのは、こちらだから。

 (おそらく、大尉級の、もろに軍服着た士官が部下をひき連れ、会場内を丹念にチェック。さすがに、各ブースの販売員がびびっている。でも、回るだけ回ったら、すぐに会場すぐ外のバスに引き上げた。そのバスの隣には大型トラックがあって、屋根にレーダーが回っていたりする。物々しい警戒だ。)

伊勢。やれやれ、これじゃうっかりベルたちが飛び立ったら、撃墜されるかも。

エド。そんなの困ります。連絡しておきます。

 (ベルは安全に着陸できたが、要人の到着15分前から、送り出して15分後までは、離陸しないように言われてしまった。)

伊勢。要人って、誰よ。

ジーン。もうしゃべっていいかな。下院議員よ。

伊勢。国賓じゃない。何てこと。

ジーン。だから、万一のことがあってはいけないと。

伊勢。やれやれ、命懸け。

風間。日本政府は何してるんだ。

ジーン。軍や警察はだめ、と言い張るものだから、外務省の役人2人が付く。

伊勢。来たらしい。あんたたち、モグの屋根に行って、楽器を構えてちょうだい。私も、行く。

 (サンダーストーム楽団と、伊勢がモグの屋根に上る。うまく会場が見渡せる。リリとエスと四郎も、外に出る。ジーンとエドは、モグに入ったまま。
 議員のクルマは、ライジンが捉えた。大使館の頑丈なセダンだ。
 その後ろから、日本の公用車らしきのが来る。その外務省の役人が乗っているらしい。
 議員のクルマは、ドームの前に着き、シークレットサービスみたいなの2人が付く。日本のクルマから出てきたのは、何と、羽鳥と化けた関。)

ジーン。あら、羽鳥くんだ。女性になってる。

エド。もう一人が外務省か。

リリ(通信機)。関さんよ。財務省のGメン。

エド。2人とも、ニセモノ。よくやる。

 (議員が入ってきた。関が通訳している。主催者の挨拶が終わったので、ゆっくり会場を歩く。楽団が静かに演奏開始。)

ライジン(通信機)。航空機の音響検出。小型らしい。川下から、超低空で来る。おそらく、3機。

 (A国軍も音には気付いたが、高台なので、あわてて、川の見える場所に移動する。発見したらしい。)

ジーン。連絡が入った。模型のヘリ、3機らしい。

エド。そう来たか。

 (地対空ミサイルは間に合わない。A国軍は、自動小銃で撃ち落とす気だ。兵士が駆けつける。)

エド。撃ち落とせたら、ラッキー。

ジーン。難しいって事。

エド。うん。

 (ヘリの一機は、レーダーに接近して、金属の網を投下。レーダーが役だたなくなった。残る2機も銃撃では撃墜できず、残存した。ドームの上からなにやら投下。議員は伏せる。伊勢たちも。
 でも、普通の爆弾ではなかった。ものすごい勢いで、白い煙が吐き出され、あっと言う間にドーム内の視界は消えた。煙には、多少の刺激性があるらしく、あちこちで咳の音が聞こえる。でも、致死性はない。伊勢は、慌ててモグ内に入る。モグには機密性があるから、平気。音響で場内を探る。)

伊勢。A国軍が突破された。

エド。何が起こるんだ。

伊勢(通信機)。リリ、四郎、羽鳥くんと関さんをモグに誘導して。

リリ。了解。

 (自動人形にはソナーがあるから、近距離の様子は分かる。リリと四郎は、羽鳥らを説得して、白煙の中、モグに連れてきた。)

羽鳥。バカにしやがって。

関。どうなってるの。

伊勢。どうやら、スパイが潜り込んでいたみたい。2人、防毒マスクをして、議員に近づいている。

羽鳥。倒せるのか。

伊勢。簡単。でも、成り行きを見よう。

ジーン。そうして。

 (スパイどもは、議員を抱えて、展示していた軍用トラックに乗る。)

エド。なぜ方向が分かるのかな。

エス(通信機)。簡単なソナーを持っているみたい。

伊勢。いおり、つよし、鳥羽、だれかがトラックに轢かれないように、露払いして。

鳥羽。了解。

伊勢。エス、キネ。トラックに潜り込め。

エス。了解。

 (トラックは急発進。でも、エスとキネは間に合った。トラックは出入り口を突き破り、狭い駐車場を突っ切って、林の中に逃げ込む。あっと言う間で、A国軍は対応できず。
 とにかく、こちらはモグとライジンで追いかける。ランスを飛ばす。)

伊勢。我が軍の車両と見せかけて、逃走するつもりだな。

ジーン。それは無理よ。

伊勢。なぜ。

ジーン。痛車になってる。

伊勢。すっかり忘れていた。

 (派手な塗装をした軍用トラックは、そのまま逃走。山を越えて別の道に出た。)

ジーン。A国軍に知らせる。

伊勢。そうしないと、後で詰め寄られそう。

 (ヘリが来るのに、30分もかからない。トラックは、南を目指していたが、あっと言う間にA国軍は来るは、日本の警察は来るは。)

議員。失敗のようだな。

男21。それより先に、きさまの心配をするんだな。

男22。なぜ、ばれたんだ。このトラックが。

議員。まだ気付かんのか。

 (さすがに軍、警察よりはるかに荒っぽい。ヘリの機関砲でさんざん脅したあげく、装甲車で道をふさぐ。痛車トラックは停止。警察が追い付いた。)

ジーン。見て、男どもが出てくる。

エド。武器も持たずに、走って出てきたぞ。おまけに、警察に保護を求めている。何が起こったんだ。

 (キネを抱いた議員が、エスと共に出てきた。原因は、ニシキヘビらしい。)

伊勢。またやった。何度もやると、仕掛けがばれるのに。

エド。でも、力は本物と同じ。

伊勢。同じよ。本物より強くはない。

ジーン。恐っ。

 (ランスは、すぐ近くの海岸の沖に怪しい船を発見。単に、こちらを双眼鏡で見ていただけだけど。)

羽鳥。海上保安庁を向かわす。

ジーン。海軍に知らせちゃった。

 (A国海軍の艦船は、用心のために近くにいたから、あっと言う間に到着。その後、どうなったかは、羽鳥もジーンもエドも、何も言わない。ともかく、後日、A国から形式的な感謝の言葉は来た。
 博覧会は中止。会場と周辺は、軍関係者といっしょに警察が検分。羽鳥が説明のために残る。)

第48話。サイボーグ第2世代。16. 海軍からの依頼

2011-10-27 | Weblog
 (サンダーストーム基地に戻って、特訓。その甲斐あって、かなりの出来になった。サンダーストーム楽団で1時間持たすのは無理なので、伊勢が間奏などを受け持つ。
 ジーンやマイクが口コミで宣伝したため、当日は軍以外からも視察があったらしい。ともかく、ジーンのショーは成功。伊勢たちは、ちゃっかり、午後のプロのショーも楽しんだ。
 ジーンのショーは評判になり、予想通りプロの楽団とダンシングチームを率いて、時々いろんな国に慰問公演に行くことになった。リュウや六郎のガジェットは、普通に機械を使って、簡単に実現できたらしい。
 それでもなぜか、ジーンはサンダーストーム基地に出入りしている。)

風間。ジーンは海原博士の秘書じゃなかったのか。

ジーン。その通りよ。時々呼びつけられる。

風間。時々なのか。

ジーン。だって、普通の事務はID社からの派遣の人がやってくださる。私は、海原博士の護衛扱い。

風間。信頼されている。

ジーン。というか、サイボーグの性能調査。とっさの場合に私がどう動くのか、じっと観察している。だから、普段いても無駄なのよ。

風間。こちらは暇だ。

伊勢。そんなにたびたび出動要請なんかないわよ。これでも、かなり活躍している方。

風間。日常業務もあるしな。

伊勢。そちらも商売。

ジーン。伊勢さん、いいかしら。

伊勢。だめっ。また、ろくな依頼じゃないんでしょう。

ジーン。前回、うまく行ったじゃない。

伊勢。構えていたけど、何も起こらなかった。普通にミュージカルもどきしただけ。

ジーン。評判なのよ。世界中から依頼が舞い込む。

伊勢。それって、今やってるプロのダンスチームの話。全然迫力が違うって評判。当たり前よ。志摩と虎之介は全くの素人。ロボットは、それに反応して付き合っているだけだもの。

ジーン。オリジナルも、味わいがあっていいって評判。ビデオの貸し出しが相次いでいる。

伊勢。アンあたりが受けたのかな。

ジーン。それもあるけど、サンダーストーム楽団と、伊勢さんのキーボードよ。あんな音、他では聞けないって。

伊勢。当たり前よ。あんな演奏をプロがやったら、即、クビ。

風間。さんざんな言われ様だな。

雷電。しかたないじゃない。所詮はアマバンド。せっせと練習しなきゃ。

ジーン。楽団たって、いろいろある。勢いで流行しているだけのロックグループなんて、数知れず。

伊勢。ほめ言葉になってない。

ジーン。マイクが言ってたじゃない。ゲームの雰囲気がするって。

伊勢。それは、チープな音が似合っているということ。下手すると、けなしていることになる。

ジーン。鳥羽くん、伊勢さんを説得して。

鳥羽。なんでおれ。

ジーン。伊勢さん、何でも悪い方に連想する。

鳥羽。警戒しているんですよ。なにせそちらは、A国海軍。何かいちもつあるはずだと。

ジーン。そんなの、お互いさまでしょ。

鳥羽。もちろん。

伊勢。あんたっ、手の内ばらして、どうするのよ。

ジーン。タイガーといい、鳥羽くんといい、ここ、いい男が揃っている。

風間。奈良部長の趣味だろう。

雷電。とんでもない実力があるから、許せる行為。

ジーン。タイガーは分かる。素手でも恐い。

風間。武器の扱いも一流。

雷電。強引にチャンスを呼び込むのよ。手段は選ばない。

ジーン。志摩さんをそばに呼ぶとか。

風間。分かっているようだな。だから、志摩先輩にのこのこ付いて行くんだ。奈良部長にも。

雷電。志摩さんが活躍しそうになったら、呼ばれもしないのに出てくるのよ。

鳥羽。で、なんでおれなんだ。

風間。戦士としての実力は分かった。

雷電。いいやつ。今までなぜ活躍しなかったのかしら。

ジーン。技術者として優れているからでしょ。

伊勢。私の見立てでは、黄がいるから。自動人形を生かして、同時に守ろうとしている。

ジーン。でもそれじゃ、自動人形が戦士って事になる。

伊勢。あなた、ジョーがいるじゃない。いざとなったら、とことん闘うわよ。あなたのために。

ジーン。ジョー、無理しなくていい。

ジョー。そっちこそ、妙な我慢をするな。

ジーン。してないって。

ジョー。ふん、どうとでも言え。

ジーン。このニヒルな反応、ぐっと来る。

風間。それで、本題はどうなったのだ。

伊勢。もう、いいわよ。話は聞く。

 (任務依頼だった。海軍関連の要人にテロのうわさがあるのだ。ところが、その要人、とある博覧会に行くといって聞かない。それで、サンダーストーム部隊と伊勢に鳴り物をして警戒して欲しいとのこと。)

伊勢。あのね、私たちに海軍の代りができるわけないじゃない。それに、中央インテリジェンスとか、安全保証局とか、どうしているのよ。

ジーン。秘密。海軍の活動は、あらゆるルートから漏洩されていると言っていい。だから、特別に警備していると分かったら、テロ組織が来なくなるのよ。

伊勢。私たちが囮り。

ジーン。少なくとも、怪我しない。

伊勢。よーく分かった。そっちの攻撃を見てみぬふりせよと。

ジーン。相手はテロ組織。日本政府の敵でもある。協力して。

伊勢。どうなっても、しらない。

ジーン。それでいい。こちらからは、記録班をよこす。楽団と伊勢さんの演奏を記録するため。

伊勢。カモフラージュ。

ジーン。記録班よ。

風間。特殊訓練を受けた。

雷電。どうせ、一目見たら分かるわよ。

ジーン。そちらもプロであることは伝えておく。

伊勢。構わない。

 (その博覧会というのは、政府主催の軍需博覧会。博覧会と言っても、国際博覧会ではなく、普通の展示会。軍需展示会と言ってしまうと、なんだか軍拡気分になるので、博覧会の名称にしただけで、中身は同じ。東京都心から2時間ほどの、かなり田舎の、できたばかりの体育館を使う。周囲はほぼ山林。
 伊勢とサンダーストーム部隊とジーンとエドが、ライジンで下見に行く。)

ジーン。何よ、この田舎。

エド。こんなところに体育館があるの…、って、見えた。山の上?。

 (市街地からは3kmほども離れている。川沿いの道路脇の高台に公園があって、その一角に体育館がある。高台自身は、3方がくねった川に囲まれ、背後は山。)

エド。何で突然、体育館なんだー。

伊勢。どこから資金が出たのかしら。

雷電。補助金か何かかな。ものすごい、無駄。

風間。建物は良さそうだぞ。

 (何と、体育館というより、開閉式のドーム付き競技場だ。周囲の広場には、博覧会に備えて、駐車場として使うための線が引かれてある。競技場の駐車場は展示用の車両で埋まってしまうほど狭いからだ。)

伊勢。侵入車両は、一目瞭然。川沿いの谷の道しかない。あちらとこちら。

ジーン。山城だわ。

エド。海軍なら、容易に防衛できそうだ。都心から150kmほど。首都圏のレーダー網が覆っているし、海も近い。当然、艦艇は置くだろうから、空からも入りにくい。

伊勢。じゃあ、私たちの出番はないか。

エド。ほどんど万一に備えてだろう。

伊勢。特殊な攻撃とか。

エド。自動人形をだますのは容易ではない。

伊勢。それくらいしか、役だたないわ。

ジーン。それでいいんじゃないかな。楽しく演奏して終わりなら、さらにいいし。

第48話。サイボーグ第2世代。15. 秋葉原へ

2011-10-26 | Weblog
 (サンダーストーム基地。昼食を摂りながら。)

伊勢。本番はいつ。

ジーン。今度の金曜。

伊勢。じゃあ、今さっきできてなかったら、ボツ。

ジーン。まあそんなところ。この前のアドリブみたいなのでもよかったけど。

伊勢。2度も受けないわよ。

ジーン。多分ね。だから、マイクを呼んだ。

伊勢。理解できた。

 (マイクは、この前の乱闘寸前になった展示会の録画を見ている。どこが受けたかを分析しているのだ。)

マイク。昔のロックみたいだ。

伊勢。熱狂の渦巻きを起こしたやつ。

マイク。ああ。構成を考えてみる。見に来てくれた人の思い出に残るような。

伊勢。真剣。売り出しを考えているの?。

マイク。実はそうだ。ここで成功を重ねて、将来は商売にする。

 (食事をしながら、マイクとジーンが相談している。曲順を決めているらしい。でも、こんどはマイク、サンダーストームの音を直に聞きたくなったようだ。急遽、楽器を用意して、いつもやっている曲を3つほど披露する。)

マイク。ロックバンドと聞いていたが、ジャズみたいな編成。

ジーン。グループサウンズよ。

伊勢。ロックも、アニメソングのようなポップスもやるのがグループサウンズ。ジャズみたいに高度なテクニックは披露しない。

マイク。ゲーム音楽も。

伊勢。うん、そう。それらしいの、やってみてよ。

 (さらに一曲、演奏する。)

マイク。こういうの、何ていうんだ?。

伊勢。音楽から見て?。二部編成で、1分ほどのA部とB部が交代しながら無限に繰り返す。イントロが入る場合もある。私のようなクラシックの人間からみたら、音色はコラージュに聞こえる。

マイク。パソコンの合成音。

伊勢。そう。楽器の音なのに、バランスが無茶苦茶。それなりに聞けるけど。

マイク。それを真似しているんだ。

伊勢。高級そうに聞こえたら、ゲームにならない。わざとチープに聞こえるように作る。

マイク。チューン、チューン、ババババ、チューン、チューン、ドカーン…、ピロピロリー。

伊勢。あははは。うまいうまい。そうよ、それがなきゃ。

マイク。すごい。それしよう。ゲーム・アーケード・ショー。

伊勢。それしよう、って、こちらは構わないけど、ジーンはいいの?。

ジーン。かわいい格好で歌う。

伊勢。ゲームキャラクタの格好で。

ジーン。もち。

伊勢。まさか…。だとすると、次の展開は。

マイク。秋葉に行こう。

伊勢。やっぱり。

 (電車で行く。人間は全員。つまり、マイク、ジーン、エド、伊勢、鳥羽、いおり、つよし、亜有、虎之介、志摩、鈴鹿。自動人形は、ゴールド、シルバー、カッパー、リリとエス、キネとランスとジョーとベル。大所帯。アンドロイドは切符を買った。
 電車内でもじろじろ見られたけど、降りたらさらに大変。アンドロイドは派手な救護服を着ているし、エスやランスは目立つ。コスプレしている奴など珍しくもない。ばしばし写真に撮られる。)

ジーン。やったー、目立っている。

伊勢。やだ、私まで撮られてる。

マイク。こんな美人が、こんなところを歩いているからです。

伊勢。あなた、お上手。

ジーン。あの店かな。

鈴鹿。久しぶり。

 (本とかプラモには目もくれず、コスプレコーナーに直行。各種取り揃っている。コスプレの流行は、いまだ衰えないようだ。ジーンとマイクがハンガーにかかっている衣裳を物色していたら、係がすっ飛んで来た。)

係21。はいはい、まいどありー。今回のご用件はなんでしょうか。

清水。こんなときに説明のうまい人がいないわね。

風間。田沼がいたら、便利だったのに。

雷電。しかたがない。鳥羽くん、行ってくれる?。

鳥羽。しかたがないからおれなのか。

雷電。ほら、説明説明。

 (鳥羽が説明する。買うのは、主役のジーンと、ステージで踊る、志摩、虎之介とアンドロイドの衣裳だ。)

係21。じゃあ、RPG風。ジーンさん、なにかお好みは。

ジーン。もち、主人公に見えるやつ。

係21。こちらの男2人は、微妙に脇役に見えるやつ。

ジーン。できるかしら。

係21。任せてください。ええと、海軍の催し物。

ジーン。A国海軍の、家族連れが来る慰問会。オリジナル曲以外に、ゲーム風音楽メドレーをやる。午後は有名プロが来る。私は露払い。

係21。そりゃ大任。

ジーン。そうよ。ちゃちなの、お断り。

 (でまあ、即席にストーリを作る。虎之介が魔法帝国の総領。志摩が鉱工業連合の司令。ジーンは、隊商の娘。旅の途中で、最前線にひょっこり出てしまったとの想定。)

芦屋。おれは悪の総大将か。

志摩。こちらもそうらしい。

係21。もちろん、両方とも巨悪です。でないと、面白くない。

ジーン。私が弱小の正義の味方。

係21。そうです。巨大組織に翻弄される庶民。あなたは、それとは全然関係ない、通りすがりの隊商に付いてきた娘。でも、目の前で起きた両軍のあまりの横暴に怒り、少数精鋭部隊を集め、策略により両軍を闘わせて弱体化した上で、部隊が乗り込んでやっつけ、民衆を助ける役。

ジーン。かっこいい。

係21。両軍のボス、つまりこの2人を同時に誘惑して、争わせる。

ジーン。うわあ、うまく行くかしら。

芦屋。いいけど、どこがRPGだ。単なるB級映画ネタだ。

係21。だから、精鋭を集めるんですよ。そして、その過程で偉大な石を発見して、強国に対抗する力を得る。

芦屋。めちゃくちゃ。

風間。だからいいのだ。

雷電。不思議なところがないと、ゲームにならないわよ。

芦屋。●●ファンタジーってか。

清水。それ以上、言わない。

ジーン。ほどよく、いいストーリー。あまりに生々しかったら、会場からブーイングが飛ぶわよ。

芦屋。こちらは現実の当事者ってか。

清水。それも言わない方がいい。

マイク。どうしようかな。プロに演出させるか、アマ仕立てで行くか。

伊勢。やってみて、良い感触があるのなら、今後はプロに任せたらいいじゃない。自動人形を使う以上、必ず人間には負ける。

マイク。そうだな。今回は手作りの演芸会。

リリ。私が魔法使い。

係21。リリ、でしたか?、このロボット。

リリ。覚えてくださったの?。ありがと。

係21。こんなキュートなアンドロイド、忘れはしません。そう、あなたが魔法帝国の、おっかない魔法使い。あちらが鉱工業連合の屈強ロボット。

鳥羽。アンドロイドは、もう少し出ます。

清水。呼んだ方がいいみたい。私、サンダーストーム基地に迎えに行く。

鈴鹿。私も。

 (2人がアンたちを迎えに行く。その間に、人間組の衣裳を選ぶ。ジーンは、中東風の豪華なドレスだ。虎之介は、陸軍の制服風で、なぜかターバンみたいなヘルメットを付け、ごつい曲刀を装備している。志摩は、警察の冬の制服みたいな格好で、拳銃と短いサーベルを装備。ただし、色は明るいので、あまり恐くない。)

芦屋。無茶苦茶だ。こっちには飛び道具がない。

リリ。あるわよ。魔法攻撃。

芦屋。んな無茶な。

志摩。それにサーベルとレボルバで対応しろと。

ゴールド。大砲くらいはありそうです。

伊勢。隊商の娘が、こんな豪華ドレス、着ていたのかしら。ジーンさんが着ると、お姫様みたい。

ジーン。おほほほ、それでいいのよ。ちょっと舞って、歌うたうだけだから。

 (リリとゴールド兄弟の衣裳を選んでいるところに、他の自動人形たちがやってきた。アンと四郎と五郎、そして、動物型など。
 四郎と五郎は、魔法帝国の兵卒。エスとリュウと六郎は、リリに操られている。リリの格好は、なぜか西洋風の魔法使い。
 アンは鉱工業連合側の救護班、つまり、そのまんま。なぜか、ナース服を着る。クロとキネがお手伝い。
 メイとセイとベルは妖精役。村の人たちの不幸を憂いている。ジーンの要請で、妖精村の戦士、ランスを連れてくるのだ。そして、草原のはるか奥にある遺跡の賢者の石の力で、リリやアンなどの、強国の手下を次々に寝返らせて行く。)

芦屋。そんなうまく行くかよっ。

ジーン。どうどう。お話よ。これでいいかな、マイク。

マイク。訳分からなくて、いい。遠い世界の話だ。演出を考えてみる。

伊勢。衣装代は。

ジーン。今回は海軍から出る。心配しないで。

第48話。サイボーグ第2世代。14. ダンスの名手

2011-10-25 | Weblog
 (結局、内蔵型サイボーグは、ジーンと同様に活躍できることが証明できたらしく、その後は連絡なし。でも、A国海軍は、ジーンを撤退させる気配はない。不気味な意図の存在を感じながらも、表面上は楽しく時が過ぎる。本日も、ジーンはサンダーストーム基地に来ている。伊勢に相談があるらしい。)

伊勢。今度はA国海軍の慰問に付き合うの?、もうこりごりよ。軍関係の仕事では、いつも一悶着ある。我が軍でも、A国軍でも。

ジーン。そんなこと言わずに。受けたのよ。展示会の出し物が。だから、もっと多くの人に見せたいって。

伊勢。少佐が。

ジーン。その他、大勢。伊勢さんにだって、ファンがたくさんいるじゃない。

伊勢。いるじゃない、って本当なの?。

ジーン。あなたのような、吸い込まれるような黒髪の美人は受ける。男どもがイチコロよ。自覚あるでしょ?。

伊勢。それと音楽とは…。

ジーン。一粒で二度おいしい。

伊勢。よくそんな言葉知ってる。もう、いいわよ。熱意は分かった。で、おとなしくしてればいいの?、それとも余興を見てみたいとか。

ジーン。普通でいい。

伊勢。じゃあ、後者になってしまう。

ジーン。楽しみ。

伊勢。やれやれ。引き受けます。どうなっても、知らないっと。

 (場所は普通に東京のホール。A国海軍が1日中貸しきり。VIPも来れば、親子連れも来る。出し物は、主にA国から招いた歌手や芸人のショーなのだが、その前座にジーンのショーを持ってきたのだ。枠は1時間なので、歌い続けるのは、とても無理。だから、バンドだけの演奏もたっぷり聞かせられる。
 今度はジョージではなく、A国軍から直接、係が来た。それがまた、ごつい男。なぜ来たかというと、ダンスの名手。ほぼプロらしい。名前は、マイク・スネル。サンダーストーム基地にて。)

伊勢。サイボーグ関係者には、マイクが多いの?。

ジーン。彼はサイボーグには関係ない。こうした会の振り付けをしてくれるのよ。

マイク。はじめまして、マイク・スネルです。よろしく。

伊勢。私は伊勢陽子。はじめまして。あんたたち、挨拶なさい。

 (自己紹介して行く。)

マイク。ええと、カメは。

伊勢。六郎も出すの?。

ジーン。出して欲しい。本当は、ゴールドを飛ばしたいけど、普通の音楽ホール。

伊勢。なぜか、リリたちはまだいる。ヘビはいかがですか。

マイク。大蛇とか。

伊勢。体長2m、体重20kg。小型のインドニシキヘビ。ロボットだけど。

マイク。クールだ。出そう。

伊勢。飛ばすのは、ベルとメイとセイとランスにしましょう。会場は普通のホールだから、豪華に見える。

ジーン。リュウを入れたら、爬虫類大会。

伊勢。キネもジョーもクロもいるわよ。

 (言うだけでは、姿は分からないので、スクリーンに映す。自動人形と他動人形、全機だ。壮観だ。)

マイク。これが、全部日本にいる。驚きだ。

ジーン。我が国にはもっといるわよ。

伊勢。ここには名機はあるけど、古いのが多い。

マイク。使いこまれている。

伊勢。それはある。周知の機体。調整は、いくぶん楽。

ジーン。伊勢さんは、自動人形使いとして世界的に有名。動物型が揃ってダンスするだけで、大したもの。

マイク。じゃあ、やりがいがあるんだ。

ジーン。そうよ。よろしく。

 (ともかく、自動人形たちを集める。来てないのは、イチ、レイ、タロ、ジロだけ。コントローラの強化が必要なので、亜有にサンダーストーム基地に行くように指示する。うまく場を押さえてしまう志摩と、なぜかジーンご指名で虎之介も。)

芦屋。壮観だな。何が始まるんだ。

マイク。はいはい、みなさん。踊りのレッスンです。できるところまで、真似してください。シマ、タイガー、ほうらいっしょに。

 (伊勢は、マイクが持ってきた楽譜をキーボードで演奏する。まず、志摩と虎之介を動かしてみるのだ。ゴールド3兄弟と四郎と五郎に真似をさせる。エドと亜有が必死で調整。自動人形、真面目に付き合っている。
 その次は、マイクがジーンに指導して、アンとリリが真似する。
 アンドロイドが崩れると、動物型でフォローのしようがないので、マイクも自動人形も一生懸命。
 最低限は行けると感じたのか、マイクは複雑な動きをやってみる。わざわざ来るだけあって、見ているだけで目が回りそう。全員、あっけに取られる。とにかく、志摩と虎之介が真似てみるが、なかなか難しい。マイクが付きっ切りで指導。形は何とかできるようだ。)

芦屋。いいけど、一曲、持たせるんだろう?。

マイク。当然。

志摩。曲数は。

マイク。10曲できるかどうか。

ジーン。いつもそれくらいよ。

マイク。そんなに動きのない曲もある。4つくらい、面白いのを入れると、プロに見える。

芦屋。見えなくっていい。

ジーン。協力してよ。

芦屋。はいはい。

ジーン。いい男。

清水。ビデオか何かあります?。

マイク。持ってきた。

 (とにかく、その4曲というのを見てみる。)

清水。まさしく、エンターテインメント。

マイク。いいでしょう。

芦屋。あんなに動くのか。

志摩。でないと、決まらない。

伊勢。そんな感じ。プロを呼んだ方がいいかも。

清水。何とかなりそうな気がする。

伊勢。どういうことよ。

清水。ほとんど、さっきの練習でやったのと同じ。

芦屋。ええっ、そうなのか。

マイク。そうですよ。できる、できる。

清水。並べているだけよ。順番を覚えればいい。

マイク。あなた、天才。

伊勢。この娘は、天才数学者よ。

マイク。さすがです。

芦屋。能力を使ったな。

ジーン。何の話。

伊勢。清水さんは、過去に見た光景を頭の中で再現して、構成できるのよ。

ジーン。ビデオデッキみたいに。

伊勢。編集機能付き。

志摩。その順番も覚えられる。

マイク。やってみてください。

 (亜有が踊る。下手だけど、順番は合ってる。)

マイク。すごいものをみた。

ジーン。一回しか見てないのに。

清水。覚えただけよ。どうやって覚えたかは教えられる。それより、志摩さんたちの踊りの形はできているの?。

マイク。見られる水準にはなっている。プロには見えないけど、受けは取れる。

清水。あのままやっていいの?。

マイク。できるのか。

 (亜有は、レポート用紙に数字を並べて行く。譜面みたいなものだ。マイクは、すぐに理解した。)

マイク。動作には名前が付いている。書き込むよ。

芦屋。ダンスゲームみたいなものだな。

清水。極端に言えばそう。やれそう?。

芦屋。身体を動かしながら、覚える。

マイク。そうしましょう。

 (コツが分かったみたいで、どんどん覚えて行く。多少のアレンジもできるようになった。志摩たちも自動人形も楽しくなってきたらしく、陽気に踊っている。)

ジーン。いいじゃない。頼ってよかった。

マイク。残るは、動物型。

 (伊勢が解説しながら、基本的動作を確認して行く。マイク、天才肌を見せ始めた。何とか、それっぽくリュウたちが動作している。)

マイク。面白い。火を吹いたりできるの?。

伊勢。リュウには仕掛けをした。リュウ、火を吹いて。

 (リュウがすぐに消える煙を出して、LS砲の光を当てる。火を吹いているみたいだ。)

マイク。うわわわっ、怪獣出現。

ジーン。体重12kgの。

マイク。こりゃ恐ろしい。そのヘビも何か吹くとか。

エス。吹きません。

伊勢。壁づたいして跳んでみてよ。

 (エスは、するするっと家具の上に登り、ジャンプする。リュウが追いかける。ジョーとキネとクロも続く。)

マイク。人間じゃ相手にならない。

伊勢。エス以外は人間より速いわよ。

マイク。カメの秘密兵器は。

伊勢。六郎、クルマ出して。

 (六郎は車輪を出して、そのあたりを回る。)

マイク。時速80マイルほど出るとか。

伊勢。そんな感じだったか。

マイク。冗談で言ったのに。

ジーン。たしか、飛んだ。

伊勢。ベランダでやってみよう。

 (蒸気ロケットを吹かす。10mほど上昇して、着地。そして、のそのそと動く。)

マイク。このギャップが絶妙だ。何とかして、演出したい。

伊勢。清水さん、何ができるのか、教えて上げて。

 (簡単な講習会。マイク、ちょっと考えていたが…。)

マイク。お昼にしましょう。その方が、アイデアが沸く。

伊勢。もうっ。現金。鳥羽、用意しなさい。

鳥羽。すぐに作ります。

 (メニューから選んで注文。鳥羽と志摩と亜有が手分けして料理を作る。)

第48話。サイボーグ第2世代。13. 展示会での乱闘

2011-10-24 | Weblog
 (午前9時。展示会の開始。外骨格型自動人形の技術解説だ。いおりたちがサイボーグの姿で登場。鳥羽が、黄からでて、黄は空のままそのあたりを歩く。そして、合体。
 会場には学術関係者がちらほら。発表者は豪勢な陣容。お役人や政治家も少数、いるようだ。企業から派遣された技術者たちは社長の挨拶まで真剣に聞いている。熱心な学生も多数いる。
 まず、ID社の技術者が解説。学術系の発表者を意識してか、ものすごく詳しい。難解な解説だが、学者からの質問は鋭い。丁々発止とはこの事。スパイどもがあきれている。)

鈴鹿。何これ。今までの展示会とは大違い。

清水。難しい。数学、物理、化学、医学・生理学。何でもありだ。

鈴鹿。見かけ通りの複雑な装置。

清水。第2世代の外骨格自動人形では、外見をスマートにするために、組織が入り組んでいる。元は、まとまっていた器官を分散させたりしている。

鈴鹿。高価になったのかな。

清水。技術も発展してるわよ。これだけ露出すれば、知識が集まる。技術が結集する。

鈴鹿。多国籍企業の底力。

清水。うん。腐っても鯛。

 (日本人だけだったら、穏便に済みそうだが、会場は、ほとんど国際会議だ。ここぞとばかりに、細かいノウハウまで質問してくる。A国軍は優秀なのを派遣したらしい。すさまじい難しい英語で質問する。ID社の技術者が言葉に詰まることもしばしば。
 急遽、海原博士が壇上に立ち、交通整理する。風通しは良くなったが、詳しく解説したおかげで、あっと言う間に2時間。招いた出演者の講演はこれからだ。会場の興奮が醒めやらないので、息抜きに軽い演奏を開始する、サンダーストーム部隊で。)

志摩。何とか穏便に済んだ。

清水。マグマがぐらぐら。

鈴鹿。感じる。実用には程遠いのに。

芦屋。誰か分かってる奴がいるのか。

清水。少なくとも、海原博士は余裕みたい。A国軍から派遣された数人も。

芦屋。一対多か。不利だ。

清水。そうだけど、必ず1人はいるってのが我が国の強味よ。

鈴鹿。あれ、サイボーグじゃないのかな。

志摩。2人のマイクが出てきて踊っている。適当だけど。

鈴鹿。ついでに、四郎と五郎と六郎がでてきた。ありゃ、アンとクロも。

芦屋。おれたちも行くぞ、志摩。

志摩。おーっ。

 (壇上がにぎやかになった。サイボーグと、自動人形と、人間が踊っている。すぐに済んだ。海原博士が、簡単に紹介する。
 学術講演開始。一般的な解説だが、研究者自身の最先端の技術紹介。しかも、日本政府に近い人が多い。異様に受けている。質問をさえぎらないので、午後1時まで延々と続いてしまった。昼食の休憩に入る。午後の部は、2時から。スクリーンに資料映像を出す。例のテレビ番組の画像も。
 会場には、午後の展示目当ての観客が増えてきた。スパイどもは休憩だが、席から離れようとはしない。)

 (午後の部、開始。外骨格型サイボーグ技術紹介と、A国軍のサイボーグの簡単な紹介。内蔵型サイボーグの出現は意外だったらしく、会場がざわつき出した。そして、400m走から開始。もちろん、予想通りの結果。でも、会場からはブーイング。そして、いちゃもんを付けたのは、午前に学術講演をした学者。ちゃんと実力を見せろ。ってことだ。
 海原博士の指示で、もう一度開始。今度は、400m走ではなく、持久走だ。スタートで、キネとランスが飛び出す。ランスは飛んでいるから反則だが、もちろんめちゃ速い。キネの瞬発力はすばらしく、楽々内蔵型サイボーグを引き離す。1kmくらい走ったところで、内蔵型は速度が落ちた。そして、休憩が必要と、アンとクロが駆けつける。内蔵型サイボーグは脱落。キネのスピードも落ちたが、内蔵型に追い付かれることはなかった。外骨格型は、もちろん平気で走り続けている。拍手が沸く。
 つぎが水泳。内蔵型サイボーグは休んでいる。水温は10℃を切った。虎之介と志摩は何とか100mを泳ぎ切ったが、寒くて、すぐに退場。外骨格型は、余裕で泳ぎ続けている。)

清水。そろそろリアクションがあるはず。

鈴鹿。会場が不穏よ。

 (海原博士が、瞬発力では内蔵型が有利で、耐環境性と持久力では外骨格型が有利と解説したけど、収まる気配はない。内蔵型と外骨格型を直接闘わせろ、という要求だ。しかし、武器を持たせないのは現実的ではないし、銃器を持たせると、普通の人間とあまり代わり映えしない。いおりは普段から十手を持ち歩いている。つよしは、妙な手を平気で使いそうだ。
 ルールを少佐と海原博士が協議している間に、血気にはやった連中、軍用トラックを場内に乱入させる。別の軍関係者が会場に飛び込んで、トラックを制止する。観客同士で、にらみ合いになってしまった。)

ジーン。さあーっ、いってみよー。

 (サンダーストーム部隊が演奏を開始した。いおりたちは、ヘルメットを外している。そして、ジーンが歌い出す。前奏のような歌詞が終わったところで、ランス、ゴールドを乗せたチャリオ、イチとレイが会場内を飛び、ステージに降りる。そして、ダンス。以前に練習していたから、ちゃんと合ってる。雰囲気を察知したスニフとヘムロックは、志摩と虎之介を誘ってステージに登り、適当にダンス。
 ジーンはA国海軍では人気者。何かやる度に、やんやの声援が飛ぶ。並み居る男ども、乗ってしまい、小さないざこざなんか、どうでもよくなってしまったようだ。
 伊勢や亜有は、暴徒を何とか鎮圧しようと画策していたようだが、不発に終わった。
 機転の利くジョージは関係者に連絡しまくり、ジーンのワンマンショーで強引に締めてしまい、展示会はそのまま無事に終了。その後、2日目の出し物について協議したことは言うまでもない。サイボーグ同士の直接比較は避けて、お互いに有利な種目を、志摩と虎之介と軍の有志に相手させることにした。
 私は自動人形といっしょに、後片付けの手伝い。ゴミ集めをしながら、どこか壊れてないかの点検だ。)

タロ。どうなることかと、はらはらしました。

ジロ。ジーンさんがうまくまとめました。

奈良。指揮したのは、ジョージだろう。よくやる。感謝しなければ。

 (満月に近い月が昇ってきた。東京の空でもよく見える。
 翌日は、学生や親子連れが多い上に、プログラムを改良したため、騒ぎは起こらなかった。ジーンのワンマンショーは、前日同様にやった。)

 (ジーンが、主要メンバーを集めてのパーティーを提案した。善は急げで、その次の日に、サンダーストーム基地に集合する。少佐は出席せず、展示会成功の祝いの言葉が届いただけ。ジーンが代理だ。スニフとヘムロックは来た。サイボーグに全く抵抗のない、志摩、鈴鹿、虎之介と楽しく話している。ジーンには伊勢が接近。)

伊勢。ジーンさん、騒ぎを鎮めてくださって、ありがとうございます。感謝してます。

ジーン。やってないと、伊勢さんが無理矢理鎮圧するとか。

伊勢。計画はあった。

ジーン。そんなことだと思った。おそろしや。

伊勢。それはそれで、面白い展開になったんだけど、残念。

ジーン。今後の作戦に取っておけば?。

伊勢。そうする。展示会のチャンスもあるだろうし。で、反響はあったの?。

ジーン。私たち、サイボーグについて。今回は、当たりを見るための公開よ。原理しか言ってないから、軍関係者しか興味がなかったらしい。つまり、音沙汰なし。

伊勢。それも寂しいわ。

ジーン。医者を付きっ切りにするわけにも行かないし、やっぱりジョーみたいなのが必要かな、が、当面の結論。

伊勢。自動人形が売れる。

ジーン。サイボーグの数だけ。何だか、皮肉。

伊勢。どちらが優れているかの勝負だったのに。

ジーン。ジョーみたいに目立たなくするか、ベルみたいに目立ちまくるか。

伊勢。ベルは自動人形になりうる。

ジーン。あれ以上、軽くならないんだ。

伊勢。そう。独立した自動人形にするのなら、あれが今の限界らしい。でも、サイボーグの機構管理目的だけなら、もっと改良できるんじゃないかな。自動人形は、多機能すぎる。

ジーン。どこかで考えているかも。

伊勢。ええ。そのとおり。

第48話。サイボーグ第2世代。12. 展示会直前

2011-10-23 | Weblog
 (翌日早朝。展示会の1日目。競技場の駐車場には、スパイ車が集合。せっせと機材を会場に設置している。大使館周りと、大企業だ。我が国どころか、A国からも他の大国からもわんさか。
 もちろん目当てはID社の外骨格型自動人形。A国軍のサイボーグは、あまりに興味を持つと、ちょっかいを出されると警戒しているのか、ふつうに撮影するだけのようだ。アンに呼び出され、2人のマイクが駐車場を回る。クロもいっしょ。)

ヘムロック。本当だ。スパイだらけ。

アン。分かるんだ。

ヘムロック。誘ったのは、アンだ。

アン。経験がある。

ヘムロック。それにしても、美人だ。これが人間なら、すぐさま求婚しているところだ。

アン。うれしく思って、いいのかな。

ヘムロック。もちろん。ほめてるんだぜ、目一杯。

アン。ありがと。

ヘムロック。なんで、我が軍がこんな美人ロボットを手放したのかな。

アン。役立たずの評価。

ヘムロック。こちらもだ。うわさによると、予算が絞られる寸前らしい。

アン。不況だから。

ヘムロック。そうだ。議会がうるさいらしい。何の役に立つのかって。だがな、俺は誰にも何の恨みもない。単に命令を聞くだけだ。

アン。そちらのマイクさんも。

スニフ。おれか。ご同様。上司が生かしきれないのが大きい。これじゃ、いつまでたっても試験段階。こんな展示会、くそ喰らえだ。

アン。真剣にやらなくちゃ、不利になるよ。

スニフ。分かってら。ちゃんとやるよ。ただ、無駄だって言いたいわけだ。

クロ(会話装置)。誰か来た。

スニフ。海軍少佐様だ。何かな。

海軍少佐。調子は良さそうだな。

スニフ。おかげさまで、2人とも絶好調です。

海軍少佐。君たちの出番は、午後からだ。伝わっているか。

スニフ。もちろん。しっかりやります。

海軍少佐。ああ、がんばってくれ。指揮系統は異なるが、同軍。仲良くやろうじゃないか。

スニフ。そちらのスタッフもたくさん来ている。

海軍少佐。見たい連中が多いのでな。

スニフ。何の役に立つのか。

海軍少佐。率直に言えば、そうなる。海軍が遅れを取っているとの認識だ。

スニフ。ほっとしているとか。

海軍少佐。そう、皮肉を言うでない。実は、こちらのサイボーグが役だっているのだ。

スニフ。ジーンだったか。女性。少佐の秘書。

海軍少佐。そう。全くのお荷物だったのが、何となく活躍している。ここ日本で。

スニフ。なのでおれたちが呼ばれたのか。

海軍少佐。日本ID社、情報収集部。日本の自動人形を統括している。もちろん、外骨格型も。

スニフ。役だっているんですか?。

海軍少佐。意外なことに役だちそうな感じなのだ。テロ組織を壊滅させた。だが、まだ、例は少ない。偶然かも知れぬ。

ヘムロック。情報収集部は、どんな組織。

海軍少佐。他社の企業活動の調査隊だ。スパイ活動もする。

ヘムロック。わざわざそれらしい名前をつけて。

海軍少佐。で、この目立つロボットを引き連れて。

アン。それって、私。

海軍少佐。この愛らしい反応を仕組んだ奴。奈良部長。ジーンが警戒している。

スニフ。そいつを倒す。

アン。奈良部長を殺っても、ID社には損害ゼロ。

海軍少佐。そのとおり。すでに、自動人形の操縦のノウハウは、何人にも伝授された。単に指令をこなすだけのロボットが、まるで生きているように動いている。

ヘムロック。考えてみれば不気味だ。

海軍少佐。このネコもな。救護ロボットだから、親しみやすい外見をしているうえに、仕草までかわいい。奈良部長の仕掛けだ。

スニフ。我々に何をしろと。

海軍少佐。端的に言う。本日、何が起こっても驚くな。日本ID社が仕掛けてくるはずだ。

スニフ。その、奈良部長。

海軍少佐。違う。部下の伊勢陽子。世界一の、魔女。

 (ライジン内。)

伊勢。ぶわっくしょん。ついに私もインフルエンザか。

イチ。はずれ。うわさみたい。

海原。仕掛けを考えたのか。

伊勢。何のことかしら。

海原。昨日言っとったじゃろうが。A国軍のサイボーグを活躍させるのじゃ。

伊勢。秘密。というか、これから考える。

海原。テロ組織をこちらに注目させる。

伊勢。考えたけど、A国軍がたちまち制圧。終了。サイボーグは関係なし。

海原。やり様じゃろう。

伊勢。エクササイザー、乱入。

海原。相手になるかっ。

伊勢。ゴリアテの話もある。

海原。競技用の槍でやっつける。絵にはなるの。

伊勢。いいでしょ。

海原。なぜ槍攻撃でエクササイザが倒れるかの説明は必要じゃの。

イチ。計画の肝だよ。

伊勢。バズーカ砲とか、遊園地の遊びであったわ。懐かし。

海原。腹の的に当たったら、鬼ががおーって、叫ぶやつじゃな。わしは何度もやった。

イチ。サイボーグなんか、手づかみだ。

海原。それで終わりそうじゃの。

伊勢。アンを手づかみして、それを助けに槍攻撃。

海原。対戦車砲をぶちかませられそうじゃの。

伊勢。そうなのよ。普通じゃ、サイボーグの意味がない。

海原。さすがのA国軍でもてこずったようじゃ。

伊勢。瞬間のスピードと力しかないもの。

イチ。頭脳はあるよ。本物の人間だ。

伊勢。ええ、もちろんそれは自動人形に対する優位性。その代わり、あなたたちのような、耐環境性はない。ふむ、等身大の敵か。

海原。トラとか。

伊勢。タイガー。虎之介なら何とかしてしまいそう。

イチ。ドラゴン。

海原。鳥羽くんか。相手してくれるかの。

伊勢。いおりたちじゃ、多分サイボーグを倒してしまう。鳥羽くんに何かさせよう。

 (急遽、手品を用意する。伊勢ならではの速攻。発砲スチロールのような人形を瞬間に作るのだ。準備はできた。)

第48話。サイボーグ第2世代。11. 展示会の予行演習

2011-10-22 | Weblog
 (金曜日。当日に何かの間違いがあっては大変と、念入りに予行演習。といっても、やることはトラックの走り具合や、急ごしらえの100m簡易プールの調子などを見るだけ。)

鈴鹿。寒い。こんなので水泳、大丈夫かな。

志摩。そのための予行演習だろう。

鈴鹿。A国軍のサイボーグがトラックを走っている。速い。

志摩。瞬間的には、時速60kmくらいかな。キネに負けている。

鈴鹿。でも、つよしの方がずっと遅い。

志摩。しかたないよ。短距離には向いてない。あちらは、カーブでも速度が落ちない。大したものだ。

鈴鹿。よく研究されている。

志摩。うん。だから、公表する気になったんだ。

 (走り幅跳びだ。着地の砂場の距離が足らないので、その先に臨時の砂場を作っている。マットの上に、砂を敷き詰めたものだ。)

鈴鹿。10mくらい飛んでる。予想よりよく跳ぶ。

志摩。でも、それ以上は無理な感じ。

鈴鹿。こっちは5mほどか。

志摩。いおりは選手じゃない。リリは同じくらい跳んだ。

鈴鹿。あれは、ブーツに細工したんだっけ。

志摩。うん。跳躍とクライミング用に。でも、そんなに跳べるのは秘密。

鈴鹿。今回の対抗手段は、蒸気ロケットだけ?。赤たちも細工すりゃいいのに。

志摩。要らないよ。リリの跳躍はほとんど役立たずで、結局、ジェットで飛ばした。蒸気ロケットは大活躍。

 (やり投げは、飛びすぎて危ないので、対向面には観客を入れず、幕を張っている。もちろん、いおりもつよしも届かない。普通に、フィールドに刺さる。)

鈴鹿。うわあ、さすが内蔵型サイボーグ。幕に当たっている。どれくらい飛ぶのかな。

志摩。あのようすだと、300mには達しない感じ。

鈴鹿。まったく、あちらに有利な競技をして。

志摩。エドが対抗手段を埋め込んだらしい。クライミング用の鉤爪がちょっと伸びる。投石器になるんだ。槍も飛ばせる。

鈴鹿。それすごい。

志摩。向こうも簡単な道具で対抗できる。装備したら、五分五分だろう。

鈴鹿。少なくとも、一方的な勝負では無くなるんだ。

志摩。そう。

 (最後は水泳。寒いので、先方は厚いガウンを羽織っている。水温は快適らしく、楽しそうに泳いでいる。そして、速い。)

鈴鹿。うわあ。こりゃ大変。すごい。

志摩。うん。大したものだ。あれ、伊勢さんに呼ばれた。

 (何の用かと言うと、普通の人間と比較したいのだと。なので、志摩と虎之介がいっしょに走ったり泳いだりすることに。走る、泳ぐはいいとして、やり投げなどはほとんどしたことは無いから、練習する。
 競技してみると、この4種目ではいおりたちより生身の志摩たちの方が優れている。)

伊勢。やっぱり外骨格型は耐環境性が優位なだけか。

鈴鹿。この競技種目では。テレビ番組でやった、クライミングやアーチェリーでは勝てっこない。

伊勢。あの画像は、当日もスクリーンに出すそうよ。観客の反応が面白そう。ところで、あいつらに勝てそう?。

鈴鹿。こうやって、機能が分かってしまえば、何とでも対抗できる。よく開示する。

伊勢。当然、見返りを狙っているはず。何だろ。

鈴鹿。本当は、いおりたちと闘わせたいんだろうな。でも、それすると、大変なことになりそうだから、止めとく。

伊勢。自動小銃とか持ち出したら、何の戦いか分からないもの。

鈴鹿。私だって、互角よ。そんな用途では、内蔵型サイボーグの特性は生きない。

伊勢。生きる用途を探しに来たのかな。

鈴鹿。その思いつくのが、この4競技。

伊勢。短距離走、跳躍、投擲、短距離の水泳。そう言や、Q国ID社にサイボーグを見学に行ったときも、要するに先方の予算獲得に利用されたんだった。

鈴鹿。今回もそんな感じ。たしかに、何に役だつんだって感じ。

伊勢。ふむ。こんな時に最適なのは…、奈良さんと海原博士。どうやって誘うかな。

鈴鹿。悪巧みですか?。

伊勢。単に余興よ。

 (伊勢のいたずらだ。ともかく、私は伊勢に誘われて、モグに。)

奈良。何だ。作戦会議か。

伊勢。そうよ。A国軍のサイボーグ。このままでは赤っ恥で終わる。何とかしなくちゃ。

奈良。競技では、圧倒的優位。

伊勢。他、全然だめ。観客にばれてしまう。

海原。で、強さをアピールしたい、ということじゃな。

伊勢。海原博士、参加していただいて、ありがとうございます。

海原。後で毒でも盛られては、たまらんからのう。

奈良。こほん。海原博士も、何か裏をお感じで。

海原。当然。これだけ開示するということは、きな臭い動きが背後にあるはずじゃ。下手すると、思いっ切り挑発される。

奈良。こちらのサイボーグの実力がばれてしまうか。

海原。おちゃらけの範囲では、許してくれんじゃろうな。

奈良。ジーンが、こちらに付いてくれることはよくあるけど、結局ブラフ役のみ。

海原。彼女は素人じゃろ。

奈良。こちらが守る立場。彼女は、賢いし、勇気もある。実にグッドタイミングで、ブラフをかけるから、こちらのやりやすいこと。

海原。利用されているともいう。

伊勢。奈良さんのお人好し。

海原。使い道のなかった、自動人形、外骨格型を活躍させた。ジーンも。

伊勢。なあんだ。何か事を起こして、奈良さんに指揮させればいいんだ。

奈良。何だそれは。

伊勢。そうと分かれば簡単。仕掛けをしようっと。

奈良。何を企んでいる。

伊勢。秘密。というか、これから考える。

 (まずは、相手側のサイボーグの解析。内蔵型は、一人ずつ特性が異なる。伊勢は、志摩と虎之介に、近づくように指示。戦士同士だ。話は合う。
 どちらも陸軍の少尉で、実戦の経験あり。名前は、どちらもマイク。偶然だそうだ。なので、あだ名のスニフとヘムロックと呼ばれている。両人とも訓練中の事故で手足の機能を失い、内蔵型サイボーグになったようだ。戦闘で失ったわけではない。だから、特段、恨みのようなものはない。
 スニフは動物好きで、ヘムロックは女性にはまんざらでもなさそう。なので、クロとアンを差し向ける。うむ、私もスパイ稼業が身に付いている。自動人形の検出能力は周知だ。実力は、ジョーで分かっているはず。なのに、すぐに引き剥がされないところを見ると、向こうは想定内のようだ。だから、そうさせていただく。ジーンでの経験があるから、ほどなく相手さんの実力は分かった。もちろん、推測だけど。)

伊勢。結局、ジーンと大差無いみたい。何かモデルがあるんだ。

奈良。伊勢、よくやった。

伊勢。あらあ、本番はこれからよ。どうやって、役だたせようかしら。

奈良。また、自動人形と組み合わせる。

伊勢。ジーンのように。それだけじゃ、面白くない。うーん。

 (必死で考えている。この状況は止めようがないので、勝手にさせる。ともかく、クロとアンのパートナーは、展示会終了まで3日間、維持することにした。)

第48話。サイボーグ第2世代。10. テロ集団の基地

2011-10-21 | Weblog
 (どこからか監視していたらしい。挟み込むように、上流と下流から、いかにも怪しい2人ずつの男がやってきた。威嚇のつもりらしい。そして、いつにまにやら橋の上に黒いクルマがいる。)

伊勢。どこから監視していたのかしら。

奈良。あちらの建物だな。小さなビルの4階。こちらを狙っているカメラが見える。

雷電。行ってくる。

 (つよしは、川を渡り、対岸の壁を器用に登り、ビルに侵入。)

山門。なんかすごい。壁をするすると登っていった。川の底も、つるつるのはずだ。

奈良。改良はうまく行ったようだ。

 (いおりと鳥羽は囲いに飛び込んで、自動小銃を装備。よく知られている型のものだ。自動人形の管制機能を起動する。いおりがこちらに駆けてきて、追い抜く。そして、叫ぶ。)

風間。伏せろー。

 (私と伊勢は山門助教授を押し倒す。鳥羽は上流の2人に向かって発砲。銃声が響き渡る。いおりは下流の2人に発砲。相手は伏せる。橋の上のクルマの窓が開き、ライフルがこちらを狙う。いおりが振り向いて、3発発砲。クルマの窓ガラスが派手に割れる。逃げ出した。ランスが上空から追いかける。私は通信機で警察に知らせる。トカマク基地の羽鳥にも。
 鳥羽といおりはそれぞれの2人組に近づく。相手は素直に手を上げている。
 つよしは、アジトを発見。書類や武器はあったが、人はいない。川に出た4人とクルマがすべてだったらしい。
 キネは、水路の途中で、多量の土木機材を発見。なにかの企みだったようだ。
 警察が来た。説明する。そのうち、羽鳥から知らせが入ったらしい。扱いが急に柔らかくなり、状況を聞くだけ聞いて、解放。敬礼までしてくれた。
 ゴールドたちが残っているライジンを呼び寄せる。しばらくしたら、来た。)

山門。私も行きたい。

伊勢。いいですけど、邪魔しないように。

 (全員、乗り込んで、怪しいクルマを追いかけているランスを追いかける。
 クルマは、裏道を抜け、北部に向かう。)

山門。発砲した。

奈良。軍用のライフルが置いてあった。多分、闇市場経由。

山門。何のために。

奈良。何か、トンネルを利用して、工作する途中だったんでしょう。

山門。こんなところで。

奈良。大企業がいくつかあったようだ。

山門。都心を避けて、こちらにほとんどのオフィス機能を移しているところもある。

奈良。黒のクルマはどうなった。

伊勢。北部に向かっている。どんどん田舎になる。

奈良。道の先には何がある。

伊勢。行き止まり。砂防ダムのメンテ用の道らしい。

山門。自動車の行ける道は無くても、歩きなら峠を超えられるだろう。

伊勢。クルマを捨てて、逃げるのかしら。

 (でも違った。クルマは、道路脇の狭い広場に到着。古そうに見えるプレハブ小屋がある。クルマはシートで覆われる。乗っていた3人の男全員が、中に入った。
 ライジンは、一本道になる手前が見える場所に駐車。プレハブ小屋は、約1km先。キネといおりと鳥羽とシルバーとカッパーを派遣する。キネは、先にとっとこ登って行く。ランスは、近くの木に着陸して小屋を監視。)

ランス(通信機)。人の気配が消えた。

伊勢。入ったきり。

ランス。うん。どうする。

伊勢。小屋にはキネを侵入させる。ランスは、周囲の林を分析。螺旋状に範囲を拡大して。

ランス。了解。

 (キネはほどなく小屋に着いた。小屋の周りを探る。トンネルを検出。その先は…。)

キネ(通信機)。砂防ダムの下に入っている。

伊勢。土砂だから、簡単にトンネルを作れそう。

鳥羽。武器はある?。

キネ。クルマにも小屋の中にも、ない。鍵はかかってない。侵入する。

 (小屋の中は、もぬけのから。ついでに、監視カメラやセンサーもない。しかし、送風音はする。地下への扉も見つけた。中から鍵がかかっているようだが、簡単に破壊できそうだ。)

伊勢。もともと谷川だから、水は簡単に確保できる。あとは、電力。ランス、重点的に探って。

 (ランスは電力ケーブルを発見。たどって行くと、送電線に達した。盗電している模様。戻って行くと、分岐していて、いくつかの途中のダムの中に引き込まれている。そして、そばに似たような小屋がある。)

伊勢。やれやれ、大がかり。

奈良。政府に知らせて、引き上げようか。

伊勢。もう少し。相手の規模が分かってから。

 (人の気配を探りながらいおりとシルバーが侵入する。上の2つは、倉庫だった。間抜けにも、センサーも何もない。入るとすぐに真っ暗だから、大丈夫と思ったのだろう。中身は小銃や手榴弾などの兵器。もろにテロ用。
 3番目は男どもの入ったところ。地上から探るが、部屋はそんなに無いもよう。消費電力は少ないから、数はいないはず。
 そして、一番ふもとのダム。鳥羽とカッパーが入る。暗いままだ。ソナーで探る。)

鳥羽(通信機)。軽自動車を改造している。かなりの装甲。

伊勢。出口があるはずよ。

鳥羽。ダムのど真ん中。スロープがある。

山門。クルマがらせん状に並んでないか。

鳥羽。そういえば、向きがバラバラだと思った。そちらに画像が出るかな。

伊勢。ええと、こうか。

 (伊勢が操作すると、モニタに内部の様子が浮かんで来た。)

山門。これは、自動車を専用の船で運ぶときの配置だ。

鳥羽。ちょっと知ってる。順番に詰めて行くんだ。

山門。ぎゅうぎゅう詰めだから、その逆にしか出ない。

鳥羽。最初に出るクルマに細工しておく。

伊勢。武器庫は、土砂で入り口を塞いで。

鳥羽。了解。

伊勢。では、政府に知らせましょう。

 (羽鳥に知らせる。
 まず、地元警察が、機動部隊を組んで出撃。男どもの入った小屋を取り囲み、入り口から投降するように説得。地下の男どもは、応援を呼んだようだ。
 しばらくしたら、ワゴン車が何台かやってきて、半分は武器庫に向かう。そして、半分は、軽自動車の駐車場に入る。
 うむ、グッドタイミングで、軍がやってきた。そして、羽鳥が現場に乗り込む。ジーンとジョーの操るカワセミ号でやってきた。現場の指揮にいろいろ説明している。一網打尽とは、このこと。)

山門。やったな。テロ集団め、一網打尽だ。

伊勢。喜んでいる場合ではない。相手は嵌められたことが分かったはず。報復があるかも。

 (いおりたちを周囲の森に配置し、ゴールドを飛ばす。ランスはライジンに戻して、燃料補給。)

山門。なにを警戒しているんだ。

伊勢。戦闘ヘリが来るか、装甲車が来るか。全く来ないかも。

 (何と、地上攻撃機が接近。つよしをフウジンに入れて、発進させる。無論、相手は視認した。フウジンを戦闘機と誤解したらしく、相手にならないと、逃げて行く。フウジンが追いかける。途中で、スクランブルした空軍に交代。
 地上では、どこから出したのか、自走砲1基が接近。最寄りの鳥羽が狭い道路に細工。自走砲は転覆して、沢に転落。乗員が脱出しようとしたところを我が軍の一班が取り囲む。)

伊勢。こんなところかな。

山門。こんなところかなっ、ではない。いったい、どうやったんだ。

伊勢。見たとおりよ。

山門。軍事攻撃をかわした。

伊勢。相手は単なるテロ集団。統率された軍じゃない。

山門。慣れているな。

伊勢。ふん、どうとでも考えなさい。引き上げるわよ。

 (いおりたちを回収。フウジンも戻ってきた。全員集合。山門助教授、じわっと恐くなってきたようだ。)

山門。これが、みなさんの仕事。

伊勢。ちょっと派手かな。

山門。あれが、ちょっとか。さらに報復は。

伊勢。戦争する気じゃなかったら、相手さんは、いまから検討に入る。こちらも同様。

山門。政府、つまり我が軍が何とかする。

伊勢。できなかったら、大変。

山門。恐くなってきた。

伊勢。あなたは関係ない。心配しなくていい。

山門。それはそうだろうが…。

 (大学に戻る。山門助教授は、教授に何があったかを報告。教授はふんふんと聞くのみ。結局、山門助教授は、サイボーグ研に4月から合流することになった。勇気がある。)

第48話。サイボーグ第2世代。9. 学術講演お願い

2011-10-20 | Weblog
 (テレビの反響は大きく、もっとよく解説してくれとの要望がID社に殺到。ホームページを充実させるものの、サイボーグ技術は難しい。海原博士に相談したら、全国から各分野に強い人を集めて、展示会で説明させると。6人。あまりに学問的なので、土曜の午前の部をそちらに当てることにした。大げさになってきた。
 私はいおりたちを連れ、伊勢といっしょに、解説してくれる人に挨拶に行く。企業の一人を除けば、すべて大学教授か、国立研究所の部長クラス。たいていは、30分ほどの表敬訪問なのだが、中には関心を持つ人もいる。関西の大学にて。)

清原(教授)。ほほう。外骨格型の自動人形が、ついに日本に来たのか。

奈良。つい最近、完成しました。ID社としては、第2世代のサイボーグです。

清原。完成度が高そうだ。大学院生に見せていいでしょうか。

奈良。差し支えありません。

 (教授が声をかけるが、会議室に来たのは、院生2人と、たまたまいた学生1人と、助教授1人。ともかく、鳥羽がサイボーグ技術について解説。)

清原。うまいじゃないですか。とてもいい解説だ。これに付け加えろと。

奈良。どうかひとつ、よろしくお願いします。

清原。では、こちらからは、世界の研究動向の話をしましょう。ご参考になるかどうか。

山門(助教授)。その、外骨格型自動人形を見せてもらえますか?。

鳥羽。どうぞ。

 (鳥羽はリュウグウに行き、黄に着替えて、やってくる。内部も見たいというので、脱いでみる。教授も、学生も覗き込む。)

山門。よくできている。ふつうの開発費じゃないはずだ。

伊勢。我が社の技術がふんだんに注ぎ込まれている。外骨格部分だけでも、何年もの技術の蓄積。

山門。Q国ID社の。

伊勢。よくご存じ。宇宙服の技術はF国のもの。完成後の改良にはG国が深く関与したらしい。

山門。開発の目的は。

伊勢。ええと、さっきの技術の話ではなく。

山門。何を狙っているかです。これで、計測するとか。

伊勢。それはあるでしょう。今までなら、設置したり調整するのが難しい、悪い環境でも入って行ける。

山門。でも、たいていは、別の、もっと安い解決法があるはず。

伊勢。その通りです。よく、我が社に、この第2世代機を作る余裕があったと思います。

山門。何に役だつのかな。それによって、改良点は違う。

清原。関心があるのなら、しばらくID社に行ってみるか。

山門。目下の改良の重点はどこですか?。

奈良。自動人形全般なら、信頼性の向上。今はしょっちゅう修理している。アンドロイド型は少数は売れているけど、維持費が高いので、なかなか広まらない。製作費は下降しつつあるけど、維持費は一向に下がらない。

山門。具体的には。

 (鳥羽が解説する。サイボーグ研に研究を依頼していることも。)

山門。サイボーグ研に行けるかな。

清原。海原博士に言っておく。

伊勢。多分、大歓迎です。生産技術に関心がおあり。

山門。そんなところです。私も、ロボットを作りたい。だが、部品の段階で苦労している。この状況を何とかしなければ。

清原。その話の方が面白そうだ。海原博士とすり合わせておく。

伊勢。お願いします。

 (山門助教授、もう少し観察したいというので、いおりたちもサイボーグにして、いっしょにキャンパス内を歩く。)

山門。うまく動く。よく調整されている。

鳥羽。通常の動きは、かなり解析された。今は、無理させたときに何が起こるかに関心がある。

山門。どうしようかな。街に行くか、山沿いに行くか。

雷電。街に行きたい。

山門。そうしましょう。

 (てくてく歩いて行く。普通の地方都市の繁華街の感じだ。それなりに、人の行き来がある。すぐ隣の通りが、オフィス街。都心とつながる駅までやってきた。小さな地下街に入る。)

山門。ここじゃ、サイボーグの能力は発揮できない。

鳥羽。人間だって、よくできている。

雷電。山沿いに行った方が、よかったかしら。

山門。じゃあ、川沿いを通って、大学に戻りましょう。

 (繁華街からすぐのところに幅5mほどの小さな川がある。川は低くて、遊歩道がある。そこに降りて、大学の方向に向かう。汚くはないが、清流でもない。
 車道の橋の下に近づく。橋の下には、段ボール箱でできた区画がある。)

伊勢。こんなところにもホームレスがいる。

山門。そんな感じ。

 (でも、自動人形が警告を発した。銃器が隠されていると。助教授を止め、キネを放つ。)

山門。何かあるんですか?。

奈良。自動人形が危険を検出した。今から詳しく分析する。

山門。どんな危険。

奈良。すぐに解析は終了します。

 (キネは人の気配を検出せず。区画の中に入る。ホームレスの小屋を擬装しているようだが、近々に人が生活していた感じは無い。隠されていた武器は2丁の自動小銃だった。恐ろしや。
 区画に隠された壁には、人が入れるくらいの穴が開いている。本来は排水口のようだが、今は水は流れていない。代りに、電気のケーブルが引かれていて、何やら怪しい装置につながっている。ケーブルは、橋の下にも延びている。ランスを飛ばして、どうなっているか探る。橋の上に出た。道路脇に、さりげなく鉄の小箱があって、そこで止まっている。
 キネをトンネルの奥に行かせ、いおりと鳥羽を段ボールに近づかせる。)

山門。何をしているんですか?。

伊勢。調査よ。怪しい。

山門。だから、何があったんだ。

伊勢。しーっ。どうやら、不穏な動き。

第48話。サイボーグ第2世代。8. 収録

2011-10-19 | Weblog
 (伊勢がOKの知らせをしたら、5分もしないうちに、返事。迎えに行くと。カメラさんと、その助手と、レポーターと、プロデューサーがセットで来た。
 エドも関心を持ったので、いっしょに回る。まずは、インドアクライミング。都内の、大きめの施設に行く。エドと鳥羽がアナライザーでチェック。エド設計の鉤爪で登れそうだと判断。
 いおりたち、インストラクターにちょっと教えてもらって、素手で登って感触を確かめる。次に、サイボーグになって、調整。すぐに慣れた。ものすごい速度で、とっとこ壁を登って行く。)

レポーター(女性)。うわわーっ。どうなってるのー。

報道11。今の表情、いい。もう一回、やってくれ。カメラ、行くぞ。

 (インストラクターと勝負させるが、もちろん、いおりたちの方がめちゃくちゃ速い。でも、器具を使っているから、ルール違反だ。インストラクターがあきれている。)

インストラクター。こんな装置があるとは、知らなかった。

レポーター。人間でも使えそうですか?。

インストラクター。使えそうだけど、あの速度で登るのは無理。

レポート。ロボットだからできる。

インストラクター。普通の崖なら、楽々と突破できそうだ。大変なことになった。

 (次は、プール。屋内ではなく、遊園地の屋外プール。もちろん、めちゃ寒い。でも、サイボーグなら大丈夫。うねうね曲がった周回コースを、水中スクーターで、ものすごい速度で回って行く。私は、いっしょにプールサイドを走るが、全く追い付けない。
 カメラは、ウォータースライダーのスタート台から撮影。駆り出されたのは、遊園地の園長さん。)

園長。何か、すごいものを見た。

レポーター。寒いんでしょう?。

園長。0℃近い。人間なら、5分と持たない。動けなくなる。

レポーター。今回は特別に水を張ってもらいました。みなさん、真似しちゃだめですよ。

園長。なぜ、壁にぶつからないんだ。

レポーター。ソナーを使っているそうですよ。

園長。いや、それにしたって、あの速度。イルカみたいだ。

 (次は、アーチェリー。射的場に行き、器具の扱いを指導員に教わる。鳥羽が即席でサイボーグを調整。つよしが放つ。精度はアマチュアのトップクラスと同程度とか。でも、指示すると、文字通り矢継ぎ早に矢を放つ。)

指導。おわーっ。こりゃたまらん。何だこれはー。

レポーター。速いんですか?。

指導。めちゃ速い。それに見なさいよ、的。真ん中付近に当たっている。

レポーター。外れているのもある。

指導。器具は完璧ではない。ぶれはある。待ってください、クロスボウを用意します。

 (指導員が持ってきて、クロスボウ用の的に撃ってみる。弓を引くのは大変。弓矢のように、すぐに継ぐことはできない。でも、サイボーグは別。いおりたち、女性としては筋力がある上に、2倍の力になっている。そのままの姿勢で、クロスボウを扱っている。)

指導。こりゃ大変。

レポーター。クロスボウって、威力あるんですか?。

指導。鎧を貫通する。それが、あんなに次々と発射されたら、騎馬隊すら近づけない。

レポーター。ええと、1000年くらい前の話。

指導。ずっと新しい。500年くらい前です。

 (クロスボウの場面は、ボツになった。
 最後は、スカッシュ。これも都内の練習場に行く。ラケットとボールは借りる。
 しばらく、係員に付いてぽんぽんと気軽に練習していたが、次第に慣れてきたらしい。速度が上がって行く。自動人形の制御能力を試すため、ボールを3つに増やす。何とか打ち返している。)

レポーター。何が何だか。何やってるんでしょうか。

係員。よくあんなこと、思いつく。

レポーター。やったことないんですか?。

係員。不可能です。ロボットだからできるのかな?。それにしても、普通じゃないでしょう。

 (サンダーストーム基地に戻る。サイボーグのまま、楽器演奏だ。キネとランスも加わる。)

レポーター。いい演奏。ここに来れば、聞けるんだ。

伊勢。ここは、我が社のVIP専用の宿泊施設です。パーティーにも使うけど、多分、普通では申し込めない。

レポーター。じゃあ、いい機会なんだ。あら、キツネのぬいぐるみがある。あのロボットのかな。

伊勢。そうです。

レポーター。これもここでしか手に入らない。

伊勢。下で売っています。

レポーター。下って、どこ。

 (ワークショップに移動。当然ながら、山羊座のケーキをいち早く見つけた。)

レポーター。ここなら気軽に来れる。いおりさんたちも、出てるんですか?。

伊勢。土日には、交代で。

レポーター。そうですか。会えるんだ。

伊勢。彼女らは、別の仕事もあるから、常時いるわけではない。

レポーター。普段はいるんでしょ?。

伊勢。そうです。

 (撮るだけ撮ったら、さっさと帰っていった。どうなるのかと思ったら、次の日の昼のバラエティー番組の中で、紹介。要するに、穴埋めだ。でも、前回の短時間の紹介と違って、大半の時間を割いて紹介してくれている。大江山教授の、ちょっと学問的な解説もある。いおりたちが、若くて元気な女性のためか、好意的な解説。ついでに鳥羽も受けている。展示会の宣伝までしてくれた。)

第48話。サイボーグ第2世代。7. 報道関係者

2011-10-18 | Weblog
 (ID社のサイボーグ、つまり、外骨格型自動人形の開発は、1年以上前のことになる。ID社としては枯れた技術に入りつつあるので、新たな展開を模索するために、サンダーストーム部隊に装着させる、くらいのつもりだったのだ。元々は救護ロボットなので、内部の人間を守りながら、直接指示を受けて、観察や運び出しをする。
 私(奈良)の所属する情報収集部の活動は、疑義のある企業や団体を調査して、警察などに知らせること。しかし、政府や軍による直接介入のきっかけを作ることも多い。今までは、なぜか自動人形たちは私の指示に従っていた。だが、外骨格型となるとどうか。未知の部分が多い。
 その調整中、目立つ格好のためか、うわさが弘まり、日本とA国の軍が注目してしまい、展示会をすることに。さらに、事前打ち合わせで、潜在能力の高さに驚いたA国軍が、動きを開始したのだ。その次は、当然、雰囲気を嗅ぎ取った報道の出番。オフィスに来たのは、一昨年の秋に、派手なサイボーグの紹介をしてくれたテレビ局のプロデューサ。)

報道11。そうですか。サイボーグに新たな展開がある。

奈良。今までは、本当に意図通り動くかどうかの試験的な意味が強かった。特に問題は出てこないので、いよいよ、現場に本格的に導入して、実際に働いてくれるかどうかを見極めているのです。

報道11。それで、役だちそうなのですか?。

奈良。まだ、来たばかりで、一度も活躍していない。なのに、展示会をすることになってしまった。

報道11。公表は早い方がいい。でないと、想像だけが広がってしまう。

奈良。しかし、こちらも本当の実力は知らない。調査中です。

報道11。A国軍が注目したとの情報がある。我が軍も。

奈良。そうなんですよ。目立つデモをしてしまった。結果的に。

報道11。どのような。

 (大学で起こったことを話す。)

報道11。それそれ。あちこちのブログで評判です。中身は大学生。

奈良。2人の女性は。もう一人の男性は、我が社の技術者。

報道11。大学の体育学部の掲示板にも出ていました。

奈良。秘密ではない。

報道11。ますます、興味が湧いてきた。どこで会えます?。

奈良。連絡してみます。

 (サンダーストーム基地に移動。)

伊勢。奈良さんっ。今度はテレビ局。

報道11。おはようございます。伊勢陽子さん。相変わらず、お美しい。

伊勢。おほほ、お上手。で、またサイボーグの誇大広告を。前回は大変な目に会った。

報道11。多少の演出は、必要悪です。ご不満なら、撤退します。

伊勢。ふん、でもって、悪い方に報道されたら、たまったものじゃない。前回同様、正確にお願いします。

報道11。任せてください。

 (鳥羽がサイボーグの技術解説と、今後の展開の予想を説明する。)

報道11。今度は、忍者にする。

鳥羽。政治的意図はないけれど、相手にしっぽを出させるのは、謀略と同じこと。

報道11。あなた技術者。また、正直な物言い。

鳥羽。言ったらだめだったんですか?。

伊勢。秘密ではない。構わない。そのためのサンダーストーム部隊よ。

報道11。その筋には知られているとか。

伊勢。自動人形は派手な服を着ているので、目立つ。知っている人は知っている。

報道11。もろに警戒されたとか。

伊勢。そんなこともあったわ。ねえ、奈良さん。

奈良。自動人形のセンサーは、軍事用に調整されている。その検出能力は、たしかに悪事を働く者にとっては、脅威だ。

報道11。それが、サイボーグにもある。

奈良。当然。

報道11。解説をお願いします。

 (鳥羽に説明させる。周知のことだと思っていたが、新鮮に聞こえたらしい。)

報道11。じゃあ、サイボーグになったら、夜でも見える。

奈良。完全な暗黒にならない限り。

鳥羽。暗黒でも、ソナーがありますから、50m先くらいまでなら見えるのと同じ。

奈良。そうだった。水中でも同じだ。

報道11。聴力もよくなる。

鳥羽。人間の耳の感度は、すごくいいですよ。ピアノの音域なら、同じ程度。でも、自動人形は超音波も聞けるし、フィルタも優れているから、検出能力は超えている部分がある。

報道11。磁気や電波が分かる。

鳥羽。分からないと、危険です。でも、軍隊なら、その程度は当然…。

報道11。それを常時働かせていることになる。

鳥羽。そうです。

報道11。力は2倍。

鳥羽。その程度。速度が増したわけではないから、走る速さとか、物を直接投げるとかでは、人間とは差が出ない。

報道11。でも、てことか使えば、速度も増すはずだ。

鳥羽。もちろん。今、その活用法を探っている。すでに成果も出始めている。

報道11。すばらしい。外骨格型って、何の役に立つのかと思っていたけど、すごいじゃないですか。

伊勢。あなた、昨年の番組でさんざん…。

報道11。あれは、想像が半分。今回は現実だ。大変。さっそく構想を練らなくちゃ。

 (何か思い出したのか、さっさと帰ってしまった。)

奈良。どうなるんだ?。

伊勢。さあ。

 (3時間後、メールが来た。スポーツ大会をやりたいと。どうしても、展示会前に放映したいので、すぐに選んで、次々にこなしてほしいだと。)

伊勢。メールが来た。技術解説に続いて、スポーツをしてほしいだって。楽器演奏で、締め。

奈良。種目は。

伊勢。いっぱいある。射撃と格闘技はだめね。

奈良。ああ。

伊勢。水中バイクに、スカッシュに、クライミングに、アーチェリー。

奈良。今度は一転して、こちらに有利なものばかりだ。

伊勢。アピールしようってんだから、当然。

奈良。またもや、目立たせるんだな。

伊勢。OKと返事する。

第48話。サイボーグ第2世代。6. 事前視察

2011-10-17 | Weblog
 (てなことで、A国軍から何人かがやってきて、いおりたちの大学に行く。日本政府も負けていない。羽鳥と関が同行。危ないので、志摩と鈴鹿を付ける。アンとタロも。モグ内で。)

エド。いおりたちは宇宙服のまま、泳ぐの?。

清水。そうらしい。泳法をいろいろ試している。そちらからは、どんな人が来るの?。

エド。海軍と陸軍の技術者とサイボーグ本人。

清水。へえー。事前に見られるのか。

エド。頼み込んだ。事故の確率をいくぶんでも下げるため。あらかじめ面会しておく。

清水。ありがとう、エド。頼りになる。

エド。礼を言うのはこちらだ。自動人形の恐ろしさを、あまり理解してない連中のようだ。軍事コードは、決着がつくまで止まらない。自動人形の人工知能は、我が軍で鍛えられている。危険極まりない。

 (大学に着いた。体育学部の会議室で、面会。学部長が来ている。)

エド。はじめまして。国立研究所のエドワード・ベイツといいます。こちらは、海軍秘書のジーン・アイクマン。

ジーン。よろしく。

エド。こちらが、日本国財務省の調査部隊のメンバー。関霞と、羽鳥隼人。こちらの羽鳥は男性です。ID社から、情報収集部付きの清水亜有、芦屋虎之介と志摩弘。

海軍少佐。私はジーンの上司の海軍少佐だ。お世話になっている。こちらは、我が軍の技術者。一人は、陸軍所属だ。そして、サイボーグ部隊の2人。

兵士1、兵士2。よろしく。

 (表敬訪問のつもりらしく、陸軍の礼服を着ている。屈強な白人男性。)

エド。いおりたちはどこですか?。

体育学部長。今は室内プールで練習中です。行ってみましょう。

 (学部長に引率されて、プール棟に移動。建物の外は結構寒い。)

清水。屋外の仮設プールでしょう?。温水でも入れるのかな。

海軍少佐。そちらは冷えてても泳げるはずだ。

清水。0℃なら大丈夫。長時間活動できる。

海軍少佐。こちらは見ての通り、生身の人間だ。

ジーン。25℃に保つらしい。ヒーターを用意する。

 (プールに着いた。室内は暖かい。体育系の学生に混じって、いおりたちが外骨格型自動人形をまとったまま泳いでいる。通常の着衣泳と異なり、うつぶせでも息ができるから、潜水で平泳ぎして、浮かんで酸素補給してを繰り返している。)

技術1。しっかり泳いでいる。

技術2。0℃でもあの調子で泳げるんだな。

清水。そうです。でも、こんな感じで泳ぐのは、あくまで、緊急事態です。普通は、水中スクーターを使う。

海軍少佐。その水中スクーターを見せてくれ。

清水。取り寄せます。30分待ってください。

海軍少佐。30分で届くのか。大したものだ。

 (技術の人が、いろいろ注文して、水中での動きを確かめる。エドが指示して、鳥羽が詳細に報告する。)

海軍少佐。あいつは、技術者か。

技術1。そのようです。やたら詳しい。

清水。鳥羽龍王。そのおり、我が社の航空機の技術者。

 (水中スクータを運んでいる無人オートジャイロが近づいたので、志摩と鈴鹿が出て行く。気付いた少佐以下全員が追いかける。キャンパス内の無人の運動場、オートジャイロが器用に着陸。志摩と鈴鹿が、さっさと水中スクーターを取り出す。オートジャイロは、すうっと飛んでいった。)

海軍少佐。何か、すごいものを見た。

技術1。我が軍にもあります。それに、こんなのなら、ヘリから投下すればおしまい。

海軍少佐。君、音を聞いたか。ほとんどしなかったぞ。

技術1。そういえばそうだ。推進装置は何。

鈴鹿。進行波ジェット。ID社の開発。

技術1。ジェット推進なのか。プロペラでなく。

鈴鹿。そうです。騒音がほとんどしないから、市街地でも心置きなく使える。

技術1。ついでに、高速とか。

海軍少佐。最高速度は。

鈴鹿。850km/h。でも、今はそんなに出さなかったはず。

海軍少佐。余計なことは言わなくて良い。売っているのか。

鈴鹿。手に入るはず。営業を紹介します。

海軍少佐。ジーンに伝えてくれ。

鈴鹿。了解。

 (水中スクータを持って行く。危険なので、学生たちは、プールから出させるが、帰ろうとしない。何が起こるのかと興味津々。
 まず、鳥羽が、水中スクーターの動作を確認する。元々、人間用の装置で、観測用だ。赤たちは初めてだが、アンやタロは知っている。情報交換して、すぐに表示の意味などは把握できたようだ。安全と分かったので、いおりとつよしも加わる。こいつら、恐い物知らず。ものすごい速度で、競泳用プール内を泳ぎ回る。歓声が上がる。見ている方も若い連中、何かやる度に、いちいち、わーわーきゃーきゃー。)

海軍少佐。これじゃ相手にならん。

エド。あの水中スクータは、人間用です。試してみます?。

海軍少佐。スキューバとか、いるだろうがっ。

エド。そうだった。動きがあまりにもすばらしいので、忘れていた。

海軍少佐。何という技術。壁は、ソナーで把握しているのか。

技術1。他の可能性はありません。

エド。その通りです。

海軍少佐。もういい。次いってくれ。

エド。400m走。

 (水中訓練は中止。競技用トラックに行く。学生が入り込むので、A国軍のサイボーグのご披露は延期。いおりたちだけ、走らせる。速めだけど、スポーツ選手より速いわけではない。)

海軍少佐。ふん、この程度か。

技術1。外骨格型は、こんなものですよ。ちゃんと走っている。立派。

技術2。オートバイと同じです。長時間走れる。

 (学生が面白がって、伴走する。でも、すぐに疲れて、脱落。1人、トラックにしゃがみ込んでいる。キネとランスが駆けつける。単に疲れただけだとの報告。トラック脇に移動させる。)

海軍少佐。うわわわっ。あれは何だ。

エド。ロボットです。

海軍少佐。そりゃそうだ。キツネって、あんなに速かったか。

エド。時速70km。人間は追い付けません。

海軍少佐。もう一人は小人か。しかも、翼で飛んでいったぞ。

エド。翼は単なるデザインです。ジェット推進。

海軍少佐。850km/hで飛ぶとか。

エド。そんなのとても無理。300km/hくらいが限界。

海軍少佐。冗談で言ったのに。

エド。ランスはぼくの会心作。いいでしょう。

技術1。よすぎる。

技術2。戦術が変わる。

エド。戦いには役だちません。調査と後始末に使えるかどうか。それすらも難しい。

海軍少佐。宇宙服は、まだ走っている。こちらもできるんだろうな。

兵士1。できません。あんなに走ったら、数日休むことになる。

海軍少佐。なんだと。

技術1。瞬発には役だちます。

エド。戦闘では、数秒で勝負が決まる。そのためのサイボーグ。それに、外骨格型は我が軍も研究している。大丈夫です。

海軍少佐。次いってみよう。

 (いおりたち、とても快適、との感想。鳥羽はさすがに少し疲れたようだ。でも、若いから、すぐに回復。
 走り幅跳びに挑戦。いおりが一番よく飛べて、5mほど。学生が挑戦すると、もう少し飛ぶやつがいる。さすが、体育学部。)

海軍少佐。こちらはどうなんだ。

兵士1。この条件なら、8mほど。オリンピック並みです。

海軍少佐。やっと勝てるか。

エド。負けてませんよ。全部こちらが勝ってる。

海軍少佐。しかし、簡単な道具を使えば、簡単に引き離されるではないか。飛ぶための道具はあるのか。

エド。蒸気ロケットを使います。あのサイボーグはあんな使い方を想定していない。

海軍少佐。30分で手に入るのか。

エド。5分で。(通信機)ライジン、来てくれ。

海軍少佐。ライジンって何だ。

エド。来た来た。あのクルマですよ。

 (ライジンは駐車場から無人でやってきた。)

ライジン。ご用でしょうか。

エド。よく来てくれた。赤たちの蒸気ロケットを試す。

海軍少佐。何が起こった。もう、驚かんぞ。

エド。このロボットリムジンに命令しただけですよ。

海軍少佐。ロボットが自分で走ったのか。

エド。完全自律ではありません。残念です。

海軍少佐。しかし、今、無人で…。

エド。私が付きっ切りでないと動かない。

海軍少佐。無線操縦みたいなものか。

エド。その通り、高級な。…、準備できたようです。鳥羽、飛んでみてくれ。

 (鳥羽の入った黄が、蒸気ロケットを装着。轟音と光を発して浮いたかと思うと、近くの学部棟の屋上に着陸した。そして、戻ってくる。充電のために、蒸気ロケットをライジンに戻す。)

海軍少佐。あんなものがあるのか。見たことないぞ。

エド。実用かどうか、微妙な装置です。あの距離と高さだと、充電しないと、3回しか飛べません。それに、危険なので、人間は装着不可。

海軍少佐。今、飛んだ。

エド。外骨格自動人形が姿勢を保持したからです。乗り物に乗っているようなもの。

海軍少佐。本体だけで5mしか飛べなくても、困らないんだ。

エド。ちっとも困りません。

海軍少佐。次。

 (やり投げだ。学部長が倉庫から投擲の槍を持って来させる。練習用だが、バランスなど、それなりによくできているようだ。さすが、体育学部。
 鳥羽が試してみる。タイミングを黄と調整しているのだ。行けそうだ、ということで、つよしに交代。おもいっきり投げる。60mほど飛んだ。)

海軍少佐。女性の世界記録は。

学部長。70mと少し。

海軍少佐。なるほど。ん、待てよ。赤、だったか。

つよし。赤です。中身はつよしといいます。

海軍少佐。つよしくん、さっきの槍と同じ場所にもう一本飛ばしてみてくれ。

つよし。はい。

 (ねらいを定めて、振りかぶって、投げる。50cmほどの近くに刺さる。よくやる。)

海軍少佐。まさか…。もう一度やれ。

つよし。はい。

 (今度はニアミス。ものすごい精度。もう一本、投げさせる。今度は、元の槍に当たってしまった。)

つよし。まぐれ、まぐれ。

エド。当たったのはまぐれだけど、ニアミスはまぐれではない。

海軍少佐。これがID社のサイボーグの威力か。

エド。その通りです。

海軍少佐。よーく分かった。

エド。まだ、性能の一端を見ただけ。

海軍少佐。十分だ。帰って検討する。

エド。何を。

海軍少佐。買い取るかどうかだ。

エド。実用でも何でもない。それに、とてつもない高額。

海軍少佐。君、研究したいか。

技術1。恐るべき相手。研究しないと、我が軍が危ない。

技術2。役だった途端に、大変なことになる。本国の研究所では自動人形自体は研究しているらしいが、外骨格型も必要。

海軍少佐。帰るぞ。

 (さっさと帰ってしまった。ジーンは残る。)

ジーン。大丈夫かな。

エド。誰でも初めて見たら、びっくりする。

ジーン。あなた、慣れすぎよ。

エド。そうかもしれない。やれることをやるまでだ。