ID物語

書きなぐりSF小説

第32話。アクロニム。9. 関の合流

2010-11-01 | Weblog
 (政府からの使者として、関がやってきた。緊急対策会議を開く。といっても、事が事だけに、出席者は社長と秘書と総務部長と技術部長と亜有だけ。イチとマグネもいる。社長室にて。)

関。状況は分かりました。現場はあとで見るとして、今夜、監視のためにここに居させていだきたい。

社長。来賓用の宿泊施設はある。しかし、ここからは遠いな。

関。展望台があるとお聞きしました。

社長。行ってみるか。

 (全員で展望台に行く。社長が関に敷地内を説明している。秘書が亜有に話しかけてきた。)

秘書。あなた、関さんを知っているの?。

清水。はい。永田さんのパートナー。

秘書。画策したわね。

清水。何のこと。

秘書。社長好みの美人。その手の実力もありそう。

清水。大変な実力と聞いています。

秘書。色仕掛け作戦。社長はあの手の女にイチコロなのよ。立案者は誰よ。

清水。もちろん、永田さんの上司でしょう。永田さんたちに決定権はないはず。

秘書。じゃあ、最初から政府が絡んでいる。

清水。そんな感じ。

秘書。あなた。ただ者ではない。

清水。そちらこそ。ただの秘書じゃないわ。少なくともボディーガードができる。

秘書。うふふ。あとで打ち合わせしておいた方が、安全なようね。

 (で、社長が説明している目の前で、模型ビルに何やら運んでいるやつがいる。)

関。誰かが模型ビルに入る。

社長。え、どれだ。

関。あれですよ。

総務部長。社長、そこの観光用双眼鏡を使わないと見えません。

秘書。恐るべき視力。

清水。ええ。油断も隙もない。

社長。我が社の社員らしいな。技術系の感じだ。

技術部長。代わってください。あれは、第三技術課の課長ですよ。

社長。わざとやっているのか、知らずにやっているのか。

総務部長。あとで調査します。

関。怪しいです。鍵の開け方が分からないと、入れないんでしょう?。

総務部長。じゃあ、我々の動きは当分隠さないといけないな。

社長。やれやれ。監督責任は免れないか。

関。そうですけど、早い時点での通報、大助かりです。社長の決断力には敬服しました。悪いようにはしません。私のできる限りですけど。

社長。ああ、この際だ。心行くまで調査してくれ。

 (関は展望台で夜を過ごすことにした。ブラインドを下ろし、さらにカーテンの代りに暗幕を垂れて、明かりが漏れないようにする。社長が食事を運ばせる。)

社長。監視はどうするんですか。

関。自動人形にさせます。

秘書。イチとマグネ。

関。ええ。彼らは危険の検出に長けている。

秘書。他に仲間は?。

関。いますけど、詳細は明かせません。ことがあれば、警察といっしょに踏み込むはず。

 (マグネを、さっきの高性能建設機械に乗せ、微妙に離れた位置から模型ビルを観察させる。
 関と秘書と亜有は、展望台の一角で警備の打ち合わせ。イチを立ち会わせる。)

秘書。あなた、武器は持ってるの?。

関。ええと、鈴木御影さん。悪いけど、調べさせていただきました。流しの警備員。特定の企業団体とのつながりはない。今も雇われているだけ。

秘書。お見知りおきを。

関。今持っているのは、この拳銃だけ。

秘書。小型の自動拳銃。護身用だ。

関。ええ。あと、政府専用通信機。でも、事が起こったら、仲間がいろいろ持ってくるはず。

秘書。それはそうか。

関。清水さん。あなたの装備を見せなさい。

清水。これです。

秘書。ID社製の通信機に懐中電灯に、これ何。

清水。分析機です。望遠鏡機能があって、さらに狙った対象の分析ができる。

秘書。ややこしいもの持ってるわね。さすが計測機のID社。

清水。マグネは自動小銃を持っていっちゃった。A国の制式のやつ。入手経路は不明。

関。うむむ、見てみぬふりはできぬ。作戦が終わったら、没収。

秘書。しかたないわね。私の武器はこれ。

関。妙な伸縮警棒。先が曲がる。

秘書。フレイルと呼んでいる。

関。見せていただけます?。

秘書。いいけど、危ないわよ。

関。何が。

秘書。スタンガンになっている。打撃時に使う。

関。もういいです。何て恐ろしい武器。よく、平気で携帯している。

秘書。ふん。拳銃持っている女に言われたくない。

清水。よく明かした。私たちを信用しているの?。

秘書。信用していなくても、見せている。

関。大した自信。

清水。強そう。

秘書。関さんも大変な実力と伺っています。

清水。国際的VIPの警護をすることがある。

関。ごくまれによ。

秘書。大変なこと。特殊部隊相当か。目の前で見るのは初めて。肩書きは?。

関。これが私の身分証。

秘書。財務省専門情報調査課。脱税調査か何か。

関。そうです。

秘書。時として、刃向かってくる。

清水。たいてい逆上して向かってくるはず。半端な額の調査ではない。

秘書。だから、こちらは軍の身分証か。海軍中尉。ご大層な。どっちが本物よ。

関。どちらも本物。いつも居るのは、財務省。

秘書。今現在は財務省の臨検。

関。そうです。ご協力を。

秘書。その分だと、今回の相手はご大層な組織。やれやれ、乗りかかった船。とことん見学させていただくわ。多分、こちらは社長を守るだけで手一杯。

関。そうしてください。よろしく。

 (関は亜有に連れられて、主要箇所を巡る。)