ID物語

書きなぐりSF小説

第51話。東京サイボーグ農園、始動。1. プロローグ

2011-12-06 | Weblog
○ 登場人物

▼東京サイボーグ農園

▽奈良治(なら おさむ。IFF)。本物語の語り手の設定。男性。30代後半。日本ID社、情報収集部の部長。獣医。専門は動物行動学。A31部隊と呼ばれる、4機の自動人形を引き連れている。東京湾に新しくできた、農業ロボット開発のための国と都が建てた東京サイボーグ農園の一角、東京港ファミリー牧場にいる。
 もといた、霞ヶ関に近い、ID社東京のビルの1階の情報収集部オフィスには、端末が置いてあるだけで誰もいない。
▽芦屋虎之介(あしや とらのすけ。IFF)。25才くらいの男性。志摩と同期でIFFではトップの成績の戦士。本部からトカマク基地の防衛のために派遣されたはずだが、なぜかA国海軍などが来ている東京サイボーグ農園の護衛に当たっている。今は奈良部長の指揮下にある。実直で真面目なナイスガイ。ストレートすぎて、しばしば騒ぎを起こす。
▽キャスリーン・リー(キャシー。IFF)。女性。年齢は虎之介と同程度。A国ID社から突然派遣された、自動人形の操縦者。奈良部長の秘書。慌て者を装っているが、作戦時には冷静沈着で、ちょっと恐い。秘密指令を受けている。多分、日本政府やA国海軍に対する鞘当て。自動人形のケイコが付くことが多い。

▽御船美保子(みふね みほこ)。東京サイボーグ農園の初代園長。50才くらいの女性。海原博士の数多い弟子の一人。農業ロボット研究の第一人者。学者として一流なのに加えて、政治的にも辣腕。下積みが長かったせいか、かなりえげつないことを平気でする、頼もしい園長。ツンとした感じだが、性格は明るくて、部下には親切。
▽三笠千斗(みかさ せんと)。男性。東京港ファミリー牧場の飼育係。畜産の研究者で、各国の事情に詳しい。
▽四条千賀(しじょう ちか)。女性。同じく飼育係。科学分析担当だが、動物の扱いはうまい。
 飼育は、この2人の指示で、協賛企業から来た研修者やA31が行う。

▽松井邦夫(まつい くにお)。某トップの国立大学の工学研究科、大江山教室の大学院一年生。男性。志摩たちの1年後輩。ハードに詳しい。
▽渡辺一郎(わたなべ いちろう)。大学院生。男性。松井と同級。ソフトに詳しい。

▽ケント・ムーア。A国海軍から来た飛翔体の技術者。農業ロボットの研修が名目だが、正体はスパイ。形式上は、国立サイボーグ研究所に所属している。農園の一角で、高速艇や航空機などを作って運用している。屈強な男で、どこかコミカル。
 農園の岸壁には、A国海軍の哨戒艇が常駐していて、常に連絡を取っている。農園の出資者の一部が、なぜかA国海軍なので、企業秘密を護る名目らしい。

▽関霞(せき かすみ)。30才弱の女性。財務省大臣官房専門情報収集課(註: フィクション)のGメン。スパイだらけの農園の警護にあたっている。護身用の小型の自動拳銃を携帯している。実力抜群。形式的に海軍にも属していて、必要なら大型の兵器まで動員できる、おっかないエリート役人。虎之介の恋人。
▽田沼善行(たぬま よしゆき)。風間の同級の大学生。男性。民間人。経済学部経済学科所属。情報収集部と、時に行動を共にする。作戦時には、奈良部長にくっついている。

▼サンダーストーム基地

▽伊勢陽子(いせ ようこ。IFF)。ID社東京、情報収集部の副部長格。女性。30代前半。第二機動部隊である、サンダーストーム部隊の司令。科学者で、専門は何と生物・化学兵器。強力な武器をいつも携帯しているので、部下たちは、彼女の暴走を押さえるのに必死。
▽風間小庵(かざま しょうあん。愛称、いおり。IFF)。サンダーストーム部隊の戦士。小柄な女性。20才程度。鉤付きの金属棒を持っていて、十手と呼んでいる。とつとつとしゃべるのでボケ役を装っているが、頭はいいし、行動も素早い。某巨大私立総合大学の文学部アジア史科の学生(3年生)でもある。
▽雷電強(らいでん つよし。IFF)。サンダーストーム部隊の魔法使い。大柄な女性。いおりと同期。爆発などに見せかける、5種のかんしゃく玉を持っている。おっとりしたしゃべりだが、こいつも行動は素早く、すぐに手を出す。突っ込み役。某巨大私立総合大学の工学部宇宙航空学科の学生でもある。
▽鳥羽龍王(とば たつお。IFF)。サンダーストーム部隊お付きのID社の技術者。航空機が専門だが、ほかもいろいろこなしてしまう器用なやつ。20代後半。メカを世話し、救護ロボットである自動人形を操り、料理も作る、便利な男。軍事に関する知識は豊富だが、戦士としては見習い。

▽エドワード・ベイツ(エド)。A国空軍系の国立研究所から、情報収集部に自動人形の研修に来たまま居座っている、航空機の技術者。めちゃくちゃ優秀。サンダーストーム部隊の、主なメカは彼の設計。生粋の技術者で、軍事の知識は通り一遍。

 サンダーストーム部隊は、新宿に近い高層マンションの最上階の来賓用施設、つまりサンダーストーム基地と、1階のメカのワークショップにいる。普段は普通にエレベータを使うが、秘密の通路があったりする。
 ワークショップの一角に、チェーン店「洋風菓子 山羊座」の販売コーナーがある。そこに、サンダーストーム部隊のぬいぐるみや、ID社のグッズが置いてある。人気はそこそこ。

▼国立サイボーグ研究所
 サイボーグ研は、千葉市に近い東京湾沿岸のトカマク第二基地と呼ばれる地下施設にある。ちなみに、トカマク第一基地は存在しないから、トカマク基地といえば、ここを指す。

▽情報収集部、第一機動部隊
▽志摩弘(しま ひろし。IFF)。男性。忍者。奈良部長の直属の部下。
▽鈴鹿恵(すずか けい。IFF)。女性。くの一。奈良部長の直属の部下。
▽清水亜有(しみず あゆう)。女性。軍師。Y国ID社本部から派遣された、連絡係。
 志摩と鈴鹿は、サイボーグ研を設立した大江山教授の大学院生でもある。2年生。全員、トカマク第二基地に住み込んでいる。

▽海原四方(うなばら よも)。所長。男性。元国立大教授。ロボット工学の権威。
▽大江山秀範(おおえやま ひでのり)。現役の国立大工学部教授。サイボーグ研の設立者で、計画推進本部の本部長。颯爽としたかっこいい教授。普段は、大学にいる。
▽土本五香(つちもと いつか)。女性。国立海洋気象研究所の大学院生だが、故あってサイボーグ研、つまり、トカマク第二基地に住み込んでいる。海原所長の懐刀。
▽羽鳥隼人(はとり はやと)。財務省大臣官房専門情報調査課所属のGメン。海軍にも所属している。男性で、女形。小柄だが強い。

▽ジーン・アイクマン。A国海軍の少佐の秘書の身分はそのままに、国立サイボーグ研究所の海原四方所長の秘書をしている。要するにA国のスパイ。本物のサイボーグだが、訓練はそこそこなので、弱い。
 海原博士の秘書なので、普段はトカマク基地にいる。しかし、ことある毎に、サンダーストーム基地や東京サイボーグ農園にカワセミ号ですっ飛んで来る。
▽少佐。東京湾にあるA国海軍基地にいる、多分、諜報機関の局長か何か。アレックス・サンダース少佐と名乗るが、明らかに偽名。ジーンの上司。時々、ストーリに絡んでくる。

▼ ID社。ヨーロッパの小国に本部を置く多国籍企業。実験機材メーカーで、筆記具の製造・販売から宇宙開発の請負までする。正体は、約150年前に結成された平和維持のための地下組織、DTMの窓口会社。DTMは第二次大戦後に、独自の秘密軍事組織IFFを編成。主要登場人物はIFFの経験があり、階級も持つ。

▼ID社情報部員
 DTMの指示で、疑義のある企業・団体に接近する。合法的、かつ手に負える範囲なら、自ら解決。できないときは、本来なら警察、政府機関、IFFに処理を任すべきだが、奈良の部下たちは、ほとんどいつも行きすぎてしまう。
 情報部員としての共通の装備があり、ID物語のSF部分である。

▼自動人形たち
 核事故等の救援のために構想された救護用の自律ロボット、大学が構想したために「自動人形(automaton)」というマニア向けの呼称が付いている。アンドロイドと動物型がある。さらに、センサーはそのままだが、頭脳がなく、自動人形の配下でのみ動く他動人形(peripheral)がある。操縦者は、奈良、伊勢、亜有、エド、鳥羽、キャシー。最終責任者は、奈良部長。

▽東京サイボーグ農園
 クロ(A01)。オスの黒猫型
 アン(A02)。女性アンドロイド
 タロ(A0P)。男性アンドロイド
 ジロ(A0N)。男性アンドロイド
  この4機はA31部隊と総称されている。奈良部長専用
  タロとジロは二卵性双生児の設定
 イチ(F01)。少年アンドロイド。空中活動用
 レイ(E02)。少女アンドロイド。空中活動用
  トカマク基地にいたが、動物の扱いのために、海原博士が派遣した。
 サム(ゴールデン・イーグル・サム。10AJ)。青年イヌワシ型自動人形。ハクトウワシに化けられる。羽ばたいて飛べる。
 ジャグ(ティーンエイジ・ジャガー。10AK)。少年ジャガー型自動人形。普段は美しい豹紋だが、黒ジャガーに化けることができる。幼獣なので姿はかわいい。
 ジョーンズ(大江戸ジョーンズ。10AL)。タフガイ型、男性アンドロイド。30才程度の学者風。
 トーキョー(キャプテン東京。10AM)。スーパーヒーロー型、男性アンドロイド。30才程度の、やたらかっこいい筋肉男。
 ケイコ(B04)。女性アンドロイド。小型で、翼を背負って飛べる
 セイリュウ(アズール・ドラゴン。10W05)(他)。水上バスを小型にしたような、平たい船。水中翼や、飛び上がるための蒸気ロケットを装備。専用の水中モーターで、50mまで潜れる。
 ホワイト(10W03)(他)。自動人形専用航空機。セイリュウの中に入っていて、50mまでの深度なら泳ぐことができる。
 ブラック(10W04)(他)。ホワイトと同じ性能の自動人形専用航空機。
  ジョーンズたち4機と他動人形3機は、A国海軍の参考のためにケントの要望で作られた。ベテランアンドロイドのケイコを含め、キャシーが操縦。
▽トカマク基地
 ジャック(W01)。南アジア風家族の父親役。
 クィーン(W02)。母親役。
 リリ(W03)。娘役。
 エス(W04)。インドニシキヘビ型。リリと仲良し。
 四郎(08A2)(他)。男性アンドロイド。リリの兄役。
  Y国本部から借りている。海原博士や亜有が使う
 ジョー(09J)。オスのジャッカル型。ジーンのパートナー
 モグ(08W2)(他)。キャンピングカー。水中活動もできる
  五郎(08A3)(他)。男性アンドロイド
  六郎(08A4)(他)。オスのメカカメ
 リュウグウ(09W02)(他)。潜水キャンピングカー。地上も高速で走る
  オトヒメ(09W01)(他)。水中調査船。リュウグウの先端に付いている高速艇
  メイ(09W03)(他)。妖精型。80cmの女性アンドロイド
  セイ(09W04)(他)。妖精型。80cmの女性アンドロイド
  リュウ(09W05)(他)。小型のオスの竜型
▽サンダーストーム基地
 ゴールド(B01)。男性アンドロイド。金将
 シルバー(B02)。男性アンドロイド。銀将
 カッパー(B03)。男性アンドロイド。銅将
 キネ(09L)。雌ギツネ型
 ランス(09M)。イカロス型。1mの翼付き少年。香車
 フライング・チャリオット(チャリオ)(09W07)(他)
  ゴールドが使う、小型の航空機。飛車
 ベル(09W06)(他)。妖精型。60cmの女性アンドロイド。エドが使う
 フウジン(10W01)(他)。3人乗りの垂直離着陸機。前席が自動人形専用のカワセミ号(3号)。いつもは翼をたたんで、ライジンの上に乗っている。ライジンから、カタパルトで発射、着陸できる。
 ライジン(10W02)(他)。平たいバスの感じのフウジンの母艦。水陸両用だが、フウジンが乗っていると、ほとんど水没状態。

 (サンダーストーム基地にて。)

伊勢。何よー、これは。

鳥羽。何かあったんですか。

伊勢。登場人物紹介で、私が数カ月間トップだったのに、ずいぶん下げられた。虎之介や新人のキャシーより、下よ。

鳥羽。どれどれ。多いなあ。自動人形を含めると50人を超えている。作者、ちゃんと覚えているんですかね。

伊勢。そんなこと、知るか。ともかく、あちらが当面の主人公格らしい。

風間。そんなの、嫌だぞ。せっかく来てやったというのに。

雷電。そうよ。絶対美少女の私を出しておいて、ほとんどスルーじゃない。

鳥羽。学校はどうなっているの?。

雷電。なに嫌な攻撃するのよ、あんた。

伊勢。勉強はしなさい。ちゃんと卒業するのよ。

雷電。分かりました。でもって、就職してどこかの企業に入り込む。

伊勢。そんな展開になるわけないじゃない。現にID社の社員よ、あんたたち。

雷電。そうだった。

鳥羽。こちらは遊撃部隊。神出鬼没でないと。空軍系だし。

雷電。いおりとランスとゴールドは。私のライジンは、大型バスよ。

鳥羽。そんな感じだ。陸を走る空母。

雷電。そんなかっこいい設定だったの?。

鳥羽。そうだよ。走る大型司令室。本物は、もっと超大型だろうけど、ライジンにも片鱗はある。公道を走らせるために、スリム化したんだ。

風間。もっと活躍したいぞ。

伊勢。焦らない。確か、農園の開園行事に招かれていたっけ。

雷電。そうです。サンダーストーム楽団が演奏する。一部ですけど。

風間。全体の企画は、A国ID社がやってしまった。

伊勢。何考えているのかしらね。東京で鞘当てして。

 (トカマク基地でも同じような会話。第一機動部隊本部にて。)

鈴鹿。はあー。ますます話の本流から離れる感じ。

清水。なんだかんだ言っても、あなたたちと伊勢さんが主人公よ。

鈴鹿。いつのまにか、虎之介も。

清水。微妙な線。彼を主人公にすると、戦争物になってしまう。

鈴鹿。そうなりそうな勢い。誰が止めるのよ。

清水。多分、A31とケイコ。

志摩。主人公格は、おれたちと同じような出自者の9人のはずだ。

鈴鹿。ここには私と志摩で2人。

羽鳥。亜有は入らないのか。

鈴鹿。軍事訓練を受けてないもの。秘書として役だつ程度の訓練は受けている。

羽鳥。数が合わない。後は誰だ。

志摩。トカマク基地には、伊勢さんと、いおりとつよしと鳥羽だから、4人。

鈴鹿。東京サイボーグ農園には、奈良部長と虎之介とキャシーの、3人。

羽鳥。キャシーが仲間だと?、おまえたちの。

鈴鹿。そうよ。何だと思った?。

羽鳥。亜有と同じような人物。

鈴鹿。そうか。普通の人には見分けがつかないものね。

羽鳥。付くのか。

清水。付くみたい。ちょっとした仕草とかで。私は客人扱いよ。

羽鳥。どうなっているんだ?。キャシーはこちらを警戒しているし、こちらもキャシーを警戒している。

鈴鹿。どう説明したらいいのかしら。縦割りと言ったらいいのかも。

羽鳥。それなら分かる。軍事機構だ。完全にピラミッド型。情報交換はするけど、お互いにライバル同士。

鈴鹿。その理解でいいと思う。

羽鳥。つまりは、A国ID社が、日本ID社に面当てしてきたんだ。

鈴鹿。少なくとも、監視役。

羽鳥。おれといっしょだな。A国海軍とかと、妙な取引をしないように。

志摩。うん。何としてでも介入したいようだ。

羽鳥。自動人形という危険なものを持っている。世界のどこかで、秘密が伝わったら、大変なこと。

志摩。そんなところかな。

羽鳥。違うのか?。

清水。正確には違う。でも、外れてはいない。自動人形はほんの一部よ。

羽鳥。きさまらには、何かあるな。

清水。だから、羽鳥さんがここにいるんじゃないの?。

羽鳥。その通りだ。そして、関の派遣。政府の考えていることが分かった。おそろしく、警戒しているんだ。何かを。

鈴鹿。そんな感じ。

羽鳥。ところで、その自動人形は何だ。

清水。ジャック親子。Y国本部で、航空機の開発などに使われていた機体。イチとレイが農園に出張中なので、借りた。しばらくここにいる。

羽鳥。ヘビだな。

エス。エスと言います。また来ました。よろしく。

羽鳥。こちらこそ、よろしく。こいつも探索するのか。

清水。当然。

リリ。面白い人。この前から、ずっと女性の格好している。

羽鳥。面白いことが分かるのか。

清水。分からないけど、リリは、いつもこんな表現をする。いい機体よ。リリ、こちらは、羽鳥隼人さん。日本政府から来ている精鋭。協力して、このトカマク基地を護るのよ。

リリ。うん。全力でがんばる。

ジャック、クィーン。よろしく。

 (でもって、東京サイボーグ農園。私(奈良)は御船園長に呼び出された。)

御船。結局どうなっているのよ、ここ。

奈良。ええと、私たちやA国海軍がいること。

御船。分かりやすく説明してください。あなたがその適任と思ったの。

奈良。どこからはじめましょうか。日本ID社が海原博士に接近しているところから。

御船。その前からよ。日本政府と結託している、あなたたち。

奈良。財務省大臣官房専門情報収集課。あそことは、業務が似ている。だから、上層部が連絡を取り合っているらしい。

御船。怪しい企業や団体の調査をすること。

奈良。ええ、そうです。秘密ではありません。

御船。でも、潜入調査はやりすぎよ。灰色の領域。

奈良。しっぽを出させるのが、私たちの仕事。対応は、警察や政府に任せます。

御船。だから、武器持った連中がいる。

奈良。そのことが気がかりで。

御船。当然。危ない連中が、跋扈している。

奈良。警察のパトロールと同じですよ。ここは、我が国の最重要研究施設の一つの位置付けなんでしょう。

御船。うまく言う。

奈良。だから、何かとこじつけて、A国軍が入ってきた。というのも、B国とかC国とかの関係者がいるからです。妙なことをしないように、にらみを利かせるため。

御船。国立サイボーグ研究所の研究員として。

奈良。特に、B国は関心があるらしく、優秀なのを投入している。

御船。自動人形の技術を盗みに。

奈良。自動人形の技術は、公開されています。そうではなくて、国立サイボーグ研究所。自動人形のコストを5年で100分の1にしようとしている。大変なこと。

御船。軍事技術が、一気に広まってしまうかも。

奈良。そして、この農園は、そのロボットの応用先、第一号。

御船。軍でさえも、いったん見放した自動人形が、調査で活躍した上に、今度は生産に投入されようとしている。

奈良。さすが、お見通しで。

御船。分かったわよ。なんとなく。もしも、知能ロボットが隔絶された農園で、少人数の管理の下で生産するとしたら、それが、大型のタンカーみたいなところで。日本の経済水域は広い。領土が何倍にもなる。

奈良。耕作地が、一気に増える。猫の額ほどの耕作可能地で、芸術的な農業をしていた我が国が。

御船。世界の農業の構造を一変しかねない。

奈良。無論、日本に限ったことではないでしょう。

御船。不毛の土地に、同様の技術を持ち込む。

奈良。A国は、現にやってきたのです。自国内で砂漠を開拓。

御船。それが、さらに洗練された形で実現されようとしている。確かに、各国の関心を呼ぶかも。

奈良。その通りです。だから、警戒を。

御船。望むところ、ということか。分かった。だったら、私の警護も必要。それがあなた方なの?。

奈良。財務省の専門情報収集課が一人付けてきた。関霞。私たちはよく知っている。何かあったら、彼女が指揮を取るはずです。

御船。あの、精悍そうな女。

奈良。その時があったとして、こちらで動くのは虎之介とキャシー。

御船。頑強そうな青年と、A国ID社から来た秘書。

奈良。キャシーは自動人形を操ります。その自動人形は、軍で開発された救護ロボット。軍事的意図を見抜いて、素早く対応する。

御船。こんなの初めて。レクチャーか何か受けたい。可能かしら。

奈良。虎之介を呼びましょうか。軍事用語がお嫌いでないなら、適任です。

御船。うーん、いきなりは恐いかも。奈良部長、あなたからお願い。


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