ID物語

書きなぐりSF小説

第45話。サンダーストーム部隊、始動。21. 扇動者の追跡

2011-08-31 | Weblog
 (リュウグウで追いかける。ジーンまで付いてきた。ジョーもいる。)

ジーン。やりすぎじゃないの?。

伊勢。そう思うけど、政府からの要請。

 (クルマは、近くのビルの駐車場に入る。こちらは路上に駐車。)

ジーン。駐車場に行ってくる。ジョー、匂いで追跡よ。

伊勢。ありがと。

 (ジーンは、ビルの玄関から、エレベータで地下駐車場に行く。セイがいた。)

セイ。あそこのクルマ。調べるの?。

ジーン。もちろん。

 (ジーンは中をうかがう。単に人が乗っていただけのようだ。ジョーは匂いをかぐ。匂いで追跡するつもりだ。ところが…。)

聴衆31。お嬢さん、そのクルマに何か。

ジーン。迷っちゃったのよ。このあたりに、私のクルマを置いた気がするんだけど。

聴衆31。これに似たクルマか?。

ジーン。全然違うけど、このあたりだったはず。

聴衆31。おまえ、さっきの会場にいたな。追いかけてきたのか。

ジーン。何のことよ。

聴衆31。外人で、しかも美人。見間違えるわけがない。

ジーン。あら、ありがと。

聴衆31。警察か、政府のスパイか、生かしては帰さん。

 (男は、すっと拳銃を抜く。)

聴衆31。乗れ。

ジーン。どうするつもりよ。河原かどこかに行って、それで私を殺す。

聴衆31。分かっているようだな。

セイ。おじさん、暴力はいけないよ。

 (セイが背後から話しかける。一瞬の隙。ジョーが男の腕に、飛びかかって、思いっ切り噛む。)

聴衆31。うわあ、何だ、このイヌは。

 (近くのクルマが急発進。何と、ジーンに向けて発砲。当たらなかったが、物陰に隠れる。男はジョーを振り払って、クルマに駆け込む。そのまま逃走。セイが上空から追いかけ。)

ジーン。撃ってきた。何よ、この展開は。

伊勢(通信機)。とにかく、追跡しよう。関さん経由で、警察には知らせた。そこは引き払って、こちらに合流して。

ジーン。了解。

 (ビルの入り口で、ジーンを拾って、追いかける。)

ジーン。気付かれていたのか。

エド。用心しただけだろう。まんまと、引っかかった。

ジーン。少なくとも、おふざけではない。

風間。ジーンの命を狙うなんて、最低のやつら。とっちめてやる。

雷電。脅した方がいいだろう。いおり、行くぞ。

 (いおりとつよしとキネがオトヒメに入って、発進。ものすごい速度で、クルマを追いかける。)

エド。あの速度、いいのかな。

ジーン。自動車じゃないわよ。

 (オトヒメは、クルマの前に回り込み、つよしがかんしゃく玉を投げる。炎の擬装だ。さらに、ロボット腕で、クルマを横から押す。クルマは、ガードレールに激しく擦って、停車。オトヒメも停車して、いおりたちが出る。クルマからは、ふらふらになった男3人が出てきた。)

風間。ふざけやがって。

聴衆31。うう、何が起こった。

キネ。あちらの男も武器持ってる。

 (いおりとつよしが駆け寄って、拳銃を取り上げてゆく。車内では、2人気絶していて、キネがそちらからも武器を取り上げる。)

聴衆31。お前ら、何者だ。

風間。自分の心配をするんだな。もうすぐ、政府のエージェントが来る。

聴衆31。何もしゃべらんぞ。

風間。余計なことは聞きたくない。

聴衆31。ボスが誰か、知りたくないのか。

風間。がせネタなら、お断りだ。

聴衆31。がせネタなもんか。あの政治家だ。

風間。証拠は。

聴衆31。さっきのビルにある。

 (リュウグウ内。)

エド。だってさ。調査するかい?。

伊勢。罠の確率が半分。

ジーン。じゃあ、やめとくか。

伊勢。妙な罠だったら警察が危ない。こちらでやっておこう。

 (男どもは警察に引き渡す。いつものように、羽鳥から連絡があったらしく、いおりたちはすぐに開放された。オトヒメは、リュウグウに接続し、ビルに行く。)

第45話。サンダーストーム部隊、始動。20. 政治家の演説会

2011-08-30 | Weblog
 (演説会当日。午後6時から2時間の予定。会場は、バスケットボールができる体育館。観客は2000人収容できるが、使うのは舞台が見える範囲だけ。
 会は地元の議員の応援の形だ。議員と来賓が挨拶して、くだんの政治家が1時間ほど演説する。ザ・サンダーストームは前座の演奏で、そのまま警護のために壇上に残る。
 ホームページでは、ザ・サンダーストームの写真も掲載した。伊勢とエドは、近くの路上で、リュウグウに乗っている。ゴールド、シルバー、カッパーもいる。ここが司令部だ。
 壇上に乗るのは、ザ・サンダーストームと議員さんと、賓客と、政治家。レイとメイは舞台袖で待機。関とジーンは、さりげなく会場でスパイ。)

エド。観測装置は、屋外にも設置したのか。

伊勢。ええ。駐車場とか、出入り口とか。

エド。何を予想している。

伊勢。羽鳥くんは、何か組織が裏で動いていると考えている。

エド。今まで、騒いだ奴等に関係するんだな。

伊勢。それが、騒いだ奴等に互いの関係はない。

エド。じゃあ、扇動者だ。

伊勢。そういうこと。政敵の線は薄い。狙いはずばり、日本の政治態勢。

エド。悪質。許さん。

伊勢。あなたには関係ないわ。

エド。同盟国だ。遠慮するな。

 (1ブロックほど離れたところで、対立する政党の議員が街頭演説をやっているが、会場周辺にはほとんど聞こえない。もちろん、会場内は9割方が支持者。あとは、単に少し関心があって、ふらふらと入ってきた有権者。
 人が入り始めたので、演奏開始。いおりたちの演奏の間に、加藤氏のピアノソロを挟んで、間を持たせる。)

ジーン。うまいじゃない。加藤さん、演奏家としてデビューしたらいいのに。

関。あの水準でも、プロとしては通用しないらしい。ここ、東京では競争が激しいのよ。

ジーン。じゃあ、とっておきのリサイタルだ。聞けて、ラッキー。

関。そう言えばそうね。

 (適当に拍手は来るから、加藤氏、乗ってきた。演奏に力が入ってきた。いおりたちも、一生懸命。)

ジョージ。A国でも、何とか地方公演ならこなせそうだ。

ジーン。まだ、結成したてで、ほとんど練習していない。

ジョージ。もう少しあとで来た方が良かったかな。

ジーン。彼女らの本当の職業は知っているでしょ?。

ジョージ。そうだな。高級アマとして紹介するか、掘り出し物のプロとして紹介するか。

ジーン。たとえば、軍楽隊はどういう扱いなの?。

ジョージ。あれは、ある意味プロだ。下手な部分もあるけど、必死でやっている。サービス精神もある。進軍するときなんかが、とくにかっこいい。

ジーン。ここは我が軍が押さえました。もう、戦闘はありません。って。

ジョージ。そう。the thunderstormか。theは取った方がいいかも。その前のGSってなんだ?。

ジーン。なんだろ。石油スタンドのことを日本ではガソリンスタンドって言うけど、それじゃないみたい。

ジョージ。違うよ。誰に聞いたらいいかな。

 (私(奈良)に連絡が来た。そりゃ、グループサウンズだ。ベンチャーズなどを参考にした、和製ロックバンドを指す和製英語だと説明。)

ジョージ。こりゃいいや。サンダーストーム・ザ・グループサウンズ。いい感じだ。

ジーン。エスニックな感じで。

ジョージ。特殊なマニアしか、知らないよ。どんな音楽かって。日本人のロックグループなんだから、これが代表でも、いいじゃないか。

ジーン。強引。

ジョージ。プロモーションビデオを定期的に作ろう。世界中で注目されているバンドのような感じがすればいいんだろ?。

ジーン。そういうこと。旅の芸人。

 (講演会が始まった。政治に関心が無ければ、単にうるさいだけ。)

エド。話の内容はどうなんだい?。

伊勢。そりゃあ、政治家だもの。うまく演説している。支持者が聞けば、うっとりじゃないかしら。

エド。我が国と同じだ。

伊勢。妙な動きは無いわね。今回は空振りかな。

エド。その方がいい。

 (しかし、半ばころから、一部の聴衆がエキサイトしてきた。最初は、賛成の相槌みたいな感じだったが、途中から、聴衆同士で議論を始めた感じ。)

伊勢。あれかな、煽ってるやつ。

エド。(通信機)キネ、他に不穏な感じのやつらがいるか?。

キネ。会場のあちこちでひそひそ話。少しずつ、声が大きくなっている。静まればそこまでだけど。

伊勢。雰囲気を不穏にしているんだな。メイとセイを監視に当たらせよう。

 (2機は天井近くから監視。一番うるさそうなところに、関が近づいている。)

関。あんた、さっきからうるさい。演説は終わってないわよ。妨害するつもりなの?。

聴衆31。おまえっ、何だ。邪魔するな。

関。邪魔はあんたよ。静かにしないなら、出て行ってもらいます。

聴衆31。お前のようなやつがいるから、日本の政治はバカみたいになるんだ。とっとと消えな。

聴衆32。だから、聞こうと言ってるのに、こいつうるさいんだ。

関。まあ、あんたもバカは放っておくことね。

聴衆31。だれがバカだ。

関。まあ、あなたがバカでしたの?。

聴衆31。この女ー。

 (迫ってくるが、関は優秀。とぼけたふりしているのはお見通し。パンと、頬をたたく。)

関。これで、目が醒めた?。

聴衆31。こ、こいつ。ふざけやがって。

 (数席離れたところから、つかつかつかと、別の男がやってくる。)

聴衆33。すみません、こいつ、すぐかっとなる性格で。

関。あんたも、仲間か。とっとと失せろ。

聴衆33。その方が良さそうだ。おい、行くぞ。

 (2人が出て行く。セイがそっと追いかける。駐車場に行くが、何か待っているようだ。しばらくしたら、数人が集まってきた。)

聴衆31。つぶされた。優秀なのがいる。今日はここまでにしておくか。

 (男どもは、ワンボックスカーに入る。駐車場を出る。セイが上空から追跡。関からは、行く先を知らせるように要請がでた。)

伊勢。後から付いて行こう。(通信機)いおり、つよし、鳥羽、こっちに来て。怪しい人物の追跡開始。

第45話。サンダーストーム部隊、始動。19. 楽団、サンダーストーム

2011-08-29 | Weblog
 (でもって、3人は楽団としてデビューすることに。サンダーストーム基地は小改造して、音を出してもいい空間を作った。3人は猛練習開始。)

風間。にわかにうまくなるわけないぞ。

伊勢。とにかく、スパイとして役立つほどにはならないと。

雷電。トップギタリストにはあこがれたけど、難しい。

伊勢。先生が必要か…。

 (とにかく、加藤氏を呼ぶ。来てはくれた。何とか貫徹できる曲を演奏する。)

加藤。下手だ。

鳥羽。これじゃどうしようもないよ。

加藤。逆だ。味わいがあっていい。先生をつけよう。短期間で上達するコツを教えるよう、説得してみる。楽しくなって、練習したくなる。練習したら、誰でもうまくなる。これ本当。

伊勢。本当に無理言って申し訳ない。講演会は、週末。5日後。

加藤。じゃあ、こけないように、自動人形にしっかり支えてもらおう。

伊勢。それが、自動人形と分かるとまずい。私も参加できない。

加藤。一肌脱ぐよ。今回は、ぼくがピアノを演奏する。先生は、すぐに呼ぶ。なあに、10曲も弾けたら、プロと言ってごまかすことは可能。

伊勢。あんたっ、そんな商売もしているのか。

加藤。いろいろ。単なる芸人に、格好付けさせるのも仕事。

伊勢。ドラマとかで。何とか理解できる。

加藤。音楽は楽しい。弾けた気分になって、演技もよくなる。

風間。この人、天才のようだ。

伊勢。そうよ。何度も危機を救ってくれた。

加藤。魔法使いじゃない。熱意のある人にしか、教えない。

 (キネは出していいだろうということで、キーボードを演奏させる。ベースと飾り音担当だ。小型の本物のシンセサイザーを使う。
 先生は、すぐに来た。全員、男。いおりたちは器用。何とか格好は付くようになった。3人とも、スパイのプロ意識があるため、熱心。)

先生1。熱心。でも、音楽を専門にする予定はない。

加藤。その通り。あくまで演技だ。楽しそうにやらないと。

先生2。何をするんですか?。

加藤。政治家の講演会の護衛らしい。警備が手薄と見せかけて、暴徒を誘い込むための囮り。

先生2。そんな危険な。

加藤。この人たちは、それが仕事。

先生3。本当に通用したら、話の種になる。

加藤。もちろん、真剣勝負だ。

 (先生たちは音楽家。格好より、中身。互いに専門が違うためか、意外に和気あいあいと、ああしたらいい、こうしたらいいと、相談しては試してみる。)

伊勢。魔術を見ているみたいだ。旅芸人には十分なレベル。

加藤。彼らは真剣だよ。ある意味、うまい。客を喜ばせるすべを知っている。

先生2。3人とも真面目。それがいいや。うん、泣けてくる。

先生1。普通にできるところは、すべて伝授した。これでいいかな。

加藤。伊勢さんの演奏を聞いてみたい?。

先生3。たしか、有名だった。お願いできるの?。

伊勢。プロ相手に演奏なんて…。

加藤。面白いものが聞けるよ。伊勢さん、お願いします。ソロと自動人形の楽団で。

伊勢。やってみる。

 (伊勢専用の電子楽器で、ラジオ番組でやった曲をいくつか実演する。)

先生3。なんか、ものすごいものを聞いた。

先生1。ラジオと全く印象が違う。

先生2。そうなのか。

先生1。もっと冷たい音楽と思っていた。

先生2。冷たくなんかない。どこが冷たいんだ。

先生1。ラジオを聞いたら分かる。眠くならないクラシック。聞くと緊張する。

先生2。そりゃスピーカが悪いんだろう。

先生1。そういうこと。この音楽を再生できる装置はない。

先生2。不思議。今だってスピーカから音が出ている。

加藤。種明かしは簡単。伊勢さんは音響技術の技術者でもある。

先生2。音場か。

加藤。そうらしい。直感だが。

鳥羽。そうだろう。この贅沢な音。普通じゃない。

加藤。次は自動人形を操縦してください。

伊勢。んもう。この際、大サービスだ。

 (亜有の曲をいくつか演奏する。ゲーム音楽風のちょっとしょぼい感じを醸し出す曲。演奏するのは、レイ、ゴールド、シルバー、カッパーと伊勢。)

加藤。あはは。これいいだろ。感じが出ていて。

先生3。できすぎ。ロボットの演奏なのに。

加藤。そう。普通に演奏させると、もっと機械的。シーケンサに素朴に打ち込んだ感じ。お手軽キーボードの伴奏の感じ。

先生2。何となく分かる。だが、これは違う。

先生3。まるでロボットが生きているみたいだ。錯覚を引き起こす。

先生2。操縦が巧み。それでいいのか。

加藤。それでいい。タネも仕掛けも、それだけ。

先生2。操り人形に、生命が宿る。

加藤。それ。背景が消え、人形が自分で動いているように見える。

先生3。大変。あんな演奏じゃ、まるで不釣り合いだ。細部を詰めよう。

鳥羽。まだ練習するの?。

加藤。当然。

 (明確なイメージができた、ということだ。練習は、ちょっぴり厳しかったけど、みごとな伊勢サウンド、というか、ザ・サンダーストームの音ができ上がり。)

先生1。来てよかった。こりゃやりがいがある。

風間。へとへと。

雷電。もうこりごり。

先生2。その代わり、自分たちの音が出た。どこに行っても、サンダーストーム。世界に通じる。

鳥羽。そんな大げさな。

加藤。誇張じゃない。あとは練習するだけだ。

鳥羽。やっぱり。

エド。講演会に、ジョージを呼んでみる。彼からみたら、どう映るか、知りたい。

伊勢。来てくださるの?。忙しいんでしょ?。

エド。話題として面白い。彼は興味を持つと思う。

第45話。サンダーストーム部隊、始動。18. 政治家の護衛

2011-08-28 | Weblog
 (今度は、日本政府からの依頼。政治家の大演説会の護衛だと。護衛の容姿にこだわっているとのこと。)

伊勢。うさんくさい仕事。

羽鳥(通信機)。何とかやってくれないかな。ほかに回すの、面倒だし。

伊勢。関さんとあなたがいるじゃない。

羽鳥。もっとかわいいのがいいとのリクエストだ。

伊勢。あなたで満足しなけりゃ、誰もいないわよ。

羽鳥。いおりとつよし。レイとメイ。

伊勢。要するに、騒ぎを起こして、もうこりごり状態にして欲しいと。

羽鳥。そこまで言ってない。

伊勢。分かったわよ。十分にご期待に応えられそう。後始末はしてくれるんでしょうね。

羽鳥。もちろん。そのための依頼だ。

 (さて、その政治家。何度も当選している代議員だが、役職についておらず、裏で糸を操る大物。じじいで禿で太っていて脂っこくて、一物あるのを隠そうとしない顔つき。もちろん、政治家としての良心と正義感は持っている。だから、支持者がいるのだ。
 羽鳥に連れられて、伊勢、いおり、つよし、鳥羽、レイ、メイが都内の事務所に行く。)

政治家。ほお、羽鳥くんの推薦か。なるほど、アイドル風じゃな。

羽鳥。これでよろしいでしょうか。

政治家。その美人と若い男は何だ。

羽鳥。美人は、上司。若い男は、作戦指揮。

政治家。自己紹介してくれ。

羽鳥。誰から。

政治家。上司に決まっておる。

伊勢。始めまして。伊勢陽子と言います。日本ID社、情報収集部の副部長格。

政治家。知っとる。直接会っても美人だ。こりゃ儲け物。

伊勢。どこでお知りで。

政治家。ラジオ番組のファンじゃ。

伊勢。畏れ多いこと。

政治家。といいたいところだが、実は知らん。部下に調べさせたのじゃ。

伊勢。あの、私、いささか気が短い。

羽鳥。それに、攻撃手段を持っている。極めて強力な。

政治家。軍関係。

羽鳥。そうです。要約すると。

政治家。海軍。

羽鳥。形式上は、戦略統合軍に所属している。

伊勢。そうだったの?。

羽鳥。あくまで形式上だ。

伊勢。虎之介のことか。

政治家。分からぬことを、ひそひそ話するでない。そうか。あの秘蔵部隊、戦略統合軍。報復部隊だな。

羽鳥。そのとおり。たしか、先生は仕掛人の一人。

政治家。これ、めったに口走るでないぞ。

伊勢。一軍作るほどの実力。

羽鳥。そうだ。びっくりしたか。

伊勢。こんな冗談みたいな男が。

政治家。威勢がいい。気に入ったぞ。紹介を続けてくれ。

伊勢。こちらは、風間小庵。私たちは、いおりと呼んでいる。剣術使い。もちろん、通常の武器は扱える。見かけよりはるかに強く、素手でもかなりの威力。

風間。よろしく。

政治家。いい感じだ。志士の感じ。その鋭い目つきがかわいいぞ。

伊勢。ぶっきらぼうなしゃべり方は、単に恥ずかしがっているだけです。気取っている訳ではない。修正不可能。

政治家。それでいい。様になってる。そちらは、絵に描いたような美少女だ。

雷電。雷電強です。お見知りおきを。

伊勢。威嚇が得意。変則攻撃を好むが、直接攻撃も強い。

政治家。自動小銃をぶっ放すのか。

伊勢。最近も、その事例があった。

政治家。冗談を言ったつもりだったのに。

羽鳥。採用、取り消します?。

政治家。これでいい。敵を欺くには、ぴったりだ。

風間。政敵のことか。

政治家。そうありたいが、違う。阿呆の暴徒だ。

雷電。ごついお兄さんのシークレットサービスが適任。

政治家。それは暴徒に向けてはの話。有権者向けではない。そちらが有名なロボットじゃな。

羽鳥。自動人形の中でも、特にかわいいのを選びました。こちらが、レイ。空中活動に長けている、救護ロボット。小さいのがメイ。調査と緊急対応用。

レイ、メイ。よろしく。

政治家。かわいいが、頼もしくも見える。

羽鳥。うまい設計でしょう?。両機とも実績多数。全力で先生を守ります。

政治家。人間組は攻撃部隊か。

羽鳥。そうです。こちらは救護ロボットなので、逃げるのが優先。実にうまく導きます。何か起こったら、この2機の指示に従ってください。

政治家。ほかの選択はなさそうだ。レイ、メイ、命を預けるぞ。

レイ。全力でお応えします。

伊勢。この男は、鳥羽龍王。我が社の精鋭技術者。現場の指揮ができるので、連れてきました。

政治家。引っかけとかもできるのか。

伊勢。我が部隊は、そのためにある。

羽鳥。私企業の調査隊です。疑義のある企業や団体に潜入して、証拠をつかむ。

政治家。だが、それを知った先方は許してはくれまい。

羽鳥。報復を跳ね返す必要あり。場合によっては、戦闘寸前まで行く。

政治家。それで、連れてきたんだな。

伊勢。そんな可能性があるんですか?。

政治家。我が門下が被害に遭っておる。許しはせん。

伊勢。それで、先生が堂々と打って出る。

政治家。その通り。

伊勢。空振りの可能性の方が高いかと。

政治家。もちろん。だから、屈強なお兄さんではいかんのだ。付け入りやすそうに見せるのだ。

羽鳥。相手の見当は付いているんですか?。伊勢陽子と自動人形の実力は、その筋には知れ渡っている。プロなら金を積まれても手を出さない。

政治家。だから、阿呆の暴徒だ。前後の脈絡などお構いなしに、言葉尻だけで向かってくる奴等だ。

 (羽鳥が事情を聞く。背景のある可能性が捨てきれないので、伊勢陽子と自動人形抜きで、表に出すことにした。)

第45話。サンダーストーム部隊、始動。17. 楽団結成

2011-08-27 | Weblog
 (で、残りのメンバーの自己紹介を簡単に行う。)

田沼。ふーん。学生兼、営業兼、旅館業兼、調査班。よくそんなのできる

風間。営業は不成功の確率が高くて、いつもほとんど挨拶らしい。調査はめったに来ない。

田沼。メインは調査なんだろう?。

風間。情報収集部の存在理由だ。たまたま住み込んだところが、社のVIPお客様用宿泊施設。

田沼。たしかに豪華だ。これが億ション、ってやつ。

伊勢。物件は押さえていたけど、今までなかなか活用できなかった。いおりたちが来て、総務は喜んでいたわ。

田沼。パーティーの習慣があまりないからか。これなら様になる。

伊勢。よかった。気に入ってもらえて。田沼くんは何か楽器するの?。

田沼。オーケストラで、バイオリン弾いてる。

伊勢。じゃあ、清水さんと同じクラブ。

田沼。2回ほどいっしょに演奏した。でも、彼女はうまい。こちらは小さい頃にやったきりで、続かなかったから、あまりうまくない。

伊勢。復帰したんだ。

田沼。集団で弾くと、恥ずかしくない。

伊勢。あはは。合奏向き。そうなのか。こりゃ楽しみ。展示会の時などに、弾いてくれる?。

田沼。音量増強用でよければ。

伊勢。難しいの、するわけないわよ。交響曲に付いて行けるのなら十分。

田沼。いつでも声をかけてください。

伊勢。鳥羽くんはどうなんだろう。

雷電。聞いてみる。鳥羽さん、何か楽器するの?。

鳥羽。聞くのが主。ドラムスは練習している。

雷電。小さい頃から。

鳥羽。鼓笛隊でスネアたたいて面白かったから、親に買ってもらった。

伊勢。あらあ。十分よ。ドラムセットがあるから、たたいてみて。

鳥羽。ここでは演奏できないな。

伊勢。改造させる。いおりはサックス、つよしはギターが弾ける。

雷電。弾けるって、単に弾けるだけです。

伊勢。練習しないとうまくならないわよ。こりゃいい。楽団完成だ。

風間。ベースは。

伊勢。ゴールドたちにさせる。キネとランスでもいい。その部分は機械的演奏になってしまう。

風間。全国ツアーとかするのか。

伊勢。そんなのができたらいいわね。

田沼。どさ廻りの芝居小屋。隠密だ。

伊勢。安全に各地を回れる。

田沼。そう。情報収集。地方権力者の中央に対する不穏な動きを探り出す。

伊勢。地元のヤクザとかはどうするのよ。

田沼。旅芸人だ。客人に過ぎない。おとなしくならないやつには、権力を見せつけるしかない。

伊勢。今なら、各地のID社にセッティングさせるか。

田沼。仁義を切るべきところは把握しているだろう。

海原。生々しい話じゃの。お主、そんなのが好きなのか。

田沼。商品は売れなければ意味がない。いくら技術がよくても。

海原。そうじゃのう。

田沼。欲しい人に届かなければ、その人が買えなければ。

海原。もっともじゃの。楽団、ザ・サンダーストームはどうじゃ。

田沼。プロモーションしなきゃ。動画サイトに打って出る。

伊勢。プロモーションはやぶさかではないけど、私たち、素人集団。情熱が続くかしら。

田沼。知り合いのプロデューサ、いないの?。

清水。いるけど、ジョージはA国流の派手な演出、猫山さんちの加藤くんは変人。

田沼。棲み分けできないかな。日本を除く世界はジョージさん。国内は加藤さん。

伊勢。彼らに受けるかどうか、分からない。それに、商売は遊びじゃない。いろいろと大人の事情も受け入れなきゃ。

田沼。本業はスパイじゃなかったの?。

伊勢。この際、必死でやれと。

清水。ここを根拠地として、どこにでも出張する。

海原。お主、乗せるのがうまい。サイボーグ研も加勢できるかの。

田沼。前座に芸をするロボット。日本人には受ける。

ジーン。そうなの。

田沼。しかけ看板のようなもの。

海原。目標が決まった。芸人ロボじゃ。

芦屋。外見はエレキ風にしたかった。

ジーン。いいじゃない。アメリカンヒーロー風の姿の芸人。受けるわよ。

風間。傘の上で、土瓶回したりするんだぞ。

ジーン。大道芸。

風間。寄席芸だ。

志摩。身体が大きいと、目だっていい。それで行こう。

奈良。何てことだ。目標が決まった。

海原。奈良部長、エレキクローン計画を聞いて、つまらなそうな顔してたの。

奈良。思いもかけない展開。私もまだまだ修行中。

海原。わしもじゃ。

第45話。サンダーストーム部隊、始動。16. 生還パーティー

2011-08-26 | Weblog
 (巨大潜水艦の件は穏便に終わったわけだが、それにしても、自動小銃をぶっ放すなど、志摩たちでもめったにやらない。今回は、相手が素人集団なので助かったが、もう少しうまくて無謀な相手なら、死者多数。ということで、夕方、関係者全員サンダーストーム基地に集まって反省会、というか、茶話会。料理がキッチンから運ばれて来た。)

鳥羽。どう?、豪華に見える?。

ジーン。すごい。ホテルの食事みたい。これを作ったの?。

鳥羽。うん。ここはいい料理人が集まっている。

志摩。そんなことはない。手伝っただけだ。

清水。おまけに、厳しい。

ジーン。それだけのことはある。大変な人材。

奈良。いいかな。パーティーを始めるぞ。

風間。何のパーティーだ。

伊勢。あんたたちが無事に帰還できたってことよ。

風間。相手側もな。

奈良。よく自制してくれた。

風間。単に運がいいだけだ。

田沼。何の話。

伊勢。奈良さん、この人を紹介してよ。

奈良。それじゃあ、食べながら。海原博士、乾杯の音頭をお願いします。

海原。何でわしが。

伊勢。何で来たのよ。

海原。みんなの活躍を確認しに来たのだ。

伊勢。じゃあ、やってよ。

海原。困難な仕事を乗りきり、よく成功させてくれた。サンダーストーム部隊と、関係者の諸君、成功を祝って乾杯だ。

全員。乾杯。

奈良。この男は田沼善行。いおりたちと同学年の学生。自己紹介頼む。

田沼。始めまして。某巨大総合私立大学、経済学部経営学科2年生、田沼善行です。ID社東京、情報収集部のオフィスに通いつめています。顧客用端末を使うため。

清水。私といっしょ。

田沼。清水先輩。活躍のおうわさは聞きました。

清水。誰から。

田沼。数学科の森口教授から。

清水。私の主任教授。今でも。なんで知っているのよ。

田沼。経営学に必要だから、教室を訪ねた。

清水。ロジスティックスや製品の信頼性。計画法や統計を駆使する。数学としては、ちょっと特殊。

田沼。さすが天才幾何学者。

清水。普通の幾何学者なら、知らぬ存ぜぬ。けれど、森口先生は違う。

田沼。先生の本は以前から読んでいた。あの有名な森口先生が同じ大学にいるとは、大変なラッキー。

鈴鹿。話について行けない。

鳥羽。簡単だよ。品質管理と信頼性管理のことだ。ID社の製品の品質が良いのは、その数学のおかげ。

鈴鹿。お世話になっているんだ。

清水。森口教授は直接の研究者じゃない。

田沼。でも、質問すると、すらすらと答える。ただ者じゃない。

清水。当然です。希有な教授よ。

鳥羽。そりゃいい。会えるかな。

清水。あなたのような人なら、大歓迎。行こう。明日でいい?。

鳥羽。そんなことができるのか。

清水。大丈夫。何とかなる。

ジーン。それはいいけど、鳥羽くん、あなた、ただ者ではない。

鳥羽。なんのことだ。

エド。作戦の組み立て。素人じゃない。

鳥羽。プロじゃないよ。

エド。だが、自分といおりたちの命をあずかった。指示もみごとだった。

鳥羽。必死だった。当然。何の因果か、おれも投入されるらしい。装置が来たら。

海原。何の話じゃ。サイボーグか。

伊勢。隠しても無駄だから、今言います。いおり、つよし、鳥羽くんの外骨格型自動人形を発注した。

風間。かっこいいデザインのをな。

海原。お主、何者じゃ。

鳥羽。えーん、いじめないでよ。白状するから。

雷電。言っちまえ。

鳥羽。鳥羽龍王。日本ID本社の車両航空部門の技術者。飛翔体の設計と評価が仕事。

雷電。でも、軍事訓練を受けている。

伊勢。私と同程度の。

鳥羽。しかたがなかった。上位を目指すなら、必須の過程。

土本。何だか、想像を絶する世界。

海原。覚えておいた方がいい。ID社本部のあるY国は小国。周囲は列強揃い。国民が一丸にならなければ、国はたちまち侵入を許して滅びる。だから、産官学の敷居が我が国よりもはるかに低い。

土本。軍事にも近い。

田沼。外交に絡むんだから、当然。それにしても、社員だからという理由で兵役とは、激しいな。

清水。我が社が製品を売っている国は、必ずしも平和とは言えない。

田沼。だから、必須の知識か。教えてもらえるのかな。

清水。社員向けの教育プログラムなら提供できる。でも、社員になった方が円滑に事が運ぶ。よければ、社員になって。

田沼。冗談…。まだ私は学生だ。

清水。モニター。ID社の製品を評価する仕事。身分証がもらえて、社の施設が使える。ノルマはない。通常の守秘義務が発生するけど、いままでトラブルは起こったことがない。

田沼。ここまでのめり込んだんだから、手続きしておくか。

清水。やっておく。1週間以内に身分証が届くはず。持ち歩いて欲しい。

田沼。その方が良さそう。ただならぬ雰囲気。

ジーン。じゃあ、鳥羽くんの戦術の知識は十分だったってこと。

鳥羽。面白かった。不謹慎かな。

ジーン。そんなことはない。勝つためよ。時に反省すれば、それでいい。

風間。指示は的確だった。間違いはなかった。

雷電。もう1作戦成功したら、軍の地位がもらえるわよ。

鳥羽。ありがたいけど、うれしくはない。

土本。それでいい。

志摩。後生畏るべし、とはこの事だ。

伊勢。鳥羽くんは志摩よりも年上よ。

志摩。失礼しました。

鳥羽。軍事に関しては後輩。よろしく。

第45話。サンダーストーム部隊、始動。15. 制圧

2011-08-25 | Weblog
後継者。来たか。ロボットギツネについて話を聞きたいのだ。どうだ、ここは快適か。

風間。ありがとうございます。親切は忘れません。

お付き23。その衣裳、神の使いだ。奉納芝居なんかに使うやつ。いいのか。こいつら、信者じゃないぞ。

風間。この格好を勧めてくれたのは、信者だ。多分。

後継者。いいではないか。かわいい感じだ。そちも、衣裳ごときであれこれ言うでない。

お付き23。せっかくの儀式が台無し。

後継者。大切なのは信心だ。格好を気にするのは、単に神の前に出て恥ずかしくないようにするだけのこと。清潔な衣裳は心をきれいにするのに役立つからだ。

キネ。いちいち納得できる。それに比べてあんた、罰当たりもいいとこ。

お付き23。このキツネっ。

後継者。そうだった。このロボギツネを操縦しているのは誰だ。いささか口が悪いぞ。

風間。操縦者は東京にいるが、いちいち言動を指示してはいない。単に相手の言葉や仕草に反応しているだけだ。

お付き23。その言動を調整したのは誰だ。

風間。私の上司。モデルは直属の部下。直接会ってもこんな感じだ。

キネ。あんた、覚えてなさい。

後継者。どんな人物だ。

風間。女性。科学者。冷徹なマッドサイエンティスト。

後継者。悪魔の使いだな。

風間。でも、どこかに暖かさが残っている。どんなときでも。だから、部下に慕われる。

後継者。改心して人間の軍門に下った悪魔。人類の最大の庇護者だ。

エド。そーだったのかー。

伊勢。うるさい。通信機で何わめいているのよ。

ジーン。伊勢さんの正体。なぜID社が絶対に手放さないか。

伊勢。あんな新興宗教のボスの言うことを信じるっての?。

ジーン。あの人はまともよ。単に教団の設備がよくなって、喜んでいるだけ。

エド。高性能潜水艦を密輸に使う。その隠れ蓑に、教団を利用する。

ジーン。その代表は、あのとおり。人を信じて疑わない。

伊勢。いいから、どうするのよ。A国軍が攻め込むのか。

ジーン。その手もあるけど、信者に犠牲者がでる。

伊勢。間近にいるのは、いおりとつよしとキネ。

鳥羽(通信機)。芝居を打ちましょう。後継者様には悪いけど。

伊勢。武器を持っているのは、あのお付きと、作業棟にいる6人ほど。

ジーン。うまく引き離してくれたら、あとは何とかするように要請する。

伊勢。後継者を連れ出して、信者とともに対峙させる。

ジーン。それができたら、満点。

伊勢。やってみる。

 (のるかそるかだ。何と、鳥羽が指示。いおりたちには通信機経由のDTM手話で伝え、自動人形には直接に指示して配置に付ける。メイを放ち、セイといっしょに作業棟に侵入させる。自動小銃をくすねて、携帯させる。)

ジーン。メイとセイに自動小銃を扱わせるの?。

鳥羽。自動人形は、直接の被害が及ぶと評価しない限り、撃たない。いおりとつよしに渡すんだ。そちらの海軍は応援してくれるの?。

ジーン。ほんの5分ほど持たせてくれたらいい。突入するよう、要請する。

鳥羽。OKなら、作戦を開始する。

ジーン。…、すぐにボートを出すって。展開するまで、15分くらいだって。

鳥羽。作戦開始。

 (寺院の奥にて。)

雷電。ちょっと思い出した。宿舎に戻る。

風間。待て。…、行ってしまった。変なやつ。

キネ。いいわよ、放っておけば。さて、あんた。悪事にも程がある。この人のいい教祖の弟子をそそのかして、潜水艦を悪用するなど、もってのほか。

お付き23。何を言うかと思えば。

後継者。悪事とはなんだ。

キネ。潜水艦を使った、兵器に転用できる部品の密輸よ。

お付き23。でたらめを。

後継者。いや、思い当たる節がある。武器を持っているそうだな、作業棟の上にいるやつら。信者が心配していた。

お付き23。だから、数人のガードだけです。あとは技術者。

後継者。武器など持って、何をするのかと思ったら、悪事か。

お付き23。キツネの言うことをお聞きになる。

後継者。説明してもらおう。

 (一方、つよし。作業棟の1階に行って、作業員を説得して、宿泊所に避難させる。休みの時間に近いためもあって、素直に言うことを聞いた。作業棟の内部は、潜水艦の関係者だけになった。挟み撃ちにするため、ゴールドを屋上から侵入させる。
 つよしは、事務所に行って説得。)

女21。あなた何者。何が起こるんですか。

雷電。後継者を守るため。私は日本政府から要請された使者。信者を守ってください。あと半時間、外に出さないように。何が起こっても。

女21。後継者様からの指示には従いますよ。

雷電。そうしてください。

 (つよしは自動小銃と予備のカートリッジをメイから受け取り、作業棟の正面で待機。
 寺院内。)

後継者。あまり説得力はないようだ。キツネの言うことの方が、よほど信じられる。

風間。おとなしく、潜水艦と共に立ち去れ。二度と来るんじゃない。

お付き23。しかたがない。

 (銃を抜くために、懐に手を入れる。いおりは、瞬間に十手を喉元に突きつける。待機していたセイが自動小銃をいおりに渡す。)

風間。正体を現したな。ゆっくり懐のものを出すんだ。

お付き23。このあまー。

 (構わず抜こうとするので、いおりは十手で思いっ切り腕をひっぱたく。銃が落ちる。キネが拾う。)

風間。弱いやつ。マシンガンが火を吹かずに済んだ。

お付き23。どうするつもりだ。

風間。警察には知らせた。もうすぐ、第一陣がやってくる。おとなしくしてろ。

キネ。もう武器は持ってないみたい。行っていいわよ。

風間。後継者様、あとはよろしく。

後継者。ああ、ここは任せろ。そなた、楽にしろ。座ったらどうだ?。

お付き23。そうするしかないようだ。

 (作業棟。異変に気付いたガードの一人が、玄関に出てくる。自動小銃を持っているつよしに気付く。)

ガード24。お前は何だ。

雷電。政府から来た。もうすぐ、仲間が来る。おとなしくしていろ。

ガード24。かわいい顔して、何を言うかと思ったら。その小銃、本物か。

雷電。試さない方がいいぞ。

ガード24。撃てるかな。

 (すっと、銃を抜く。つよしが3発威嚇発砲。ものすごい銃声だ。)

ガード24。うわわわっ、きさま、訓練されているな。

雷電。試すなと言ってる。銃を捨てろ。

 (銃声に気付いた、ビル内のガード。一人が突撃銃をつかんで、窓から狙おうとする。来たばかりのいおりが発砲。窓ガラスが派手に割れる。)

ゴールド。そこまでだ。無駄なことをするんじゃない。銃を置け。

 (ゴールドが狙撃者の後ろから声をかける。ゴールドも小銃を持っている。狙撃者は、銃を置いた。玄関から出て来ていたガードも、銃を捨てる。)

ガード24。で、どうするんだ。このままにらみ合いを続けるのか。

雷電。すぐに分かる。

 (A国軍が作業棟を取り囲み、3人が突入した。さすがに荒っぽい。小銃の銃声がする。でも、けが人はなかったようだ。巨大潜水艦の関係者は全員投降。軍の別の数人が要領よく巨大潜水艦を奪う。出港する。
 日本の警察がボートでやってきたのは30分後。A国軍は、きれいに消えていた。その直前、羽鳥がカワセミ号でやってきた。伊勢といっしょに。羽鳥が警察に説明する。武器を持っていたガードを現行犯逮捕する。いおりたちは武装解除。)

羽鳥。やってくれるな。潜水艦が消えている。

風間。A国軍がかっさらっていったぞ。

羽鳥。こちらには戻るまい。まんまと奪われた。

伊勢。あんたたち、よくやった。

羽鳥。過剰反応だがな。

女21。どうなっているの?。

羽鳥。誰だ。

雷電。教団の事務の方。潜水艦とは関係ない。

女21。どうなるんでしょうか。この施設は政府が差し押さえ。

羽鳥。そうなるだろうな。

後継者。良いではないか。再び、質素な生活に戻ろう。華やかな一夜の夢だった。門前賑わう教団。

女21。何かの悪夢だった。ほかの人に説明してきます。

後継者。私も行く。

 (新興宗教の信者だ。何人かは即座に離脱したらしい。でも、中核の数人は教祖の弟子の後継者に従う。神の使いとギンギツネと、神の船をいつまでも待って。)

第45話。サンダーストーム部隊、始動。14. 後継者

2011-08-24 | Weblog
 (美しいギンギツネになったキネ。事務の人に連れられて、寺院に入る。大きく見える空間。周囲には人物画。神の使いのようだ。奥の正面に祭壇のようなところがあり、さらにその奥に、高位者用の宿泊施設があった。キネは使徒の後継者に謁見する。)

後継者。おお、それがロボットのギンギツネか。鋭い目つきの割には、かわいいな。

キネ。あら、ありがと。いいお方のよう。

男22。くれぐれも失礼の無いように。

キネ。了解。

後継者。こちらに来てくれ。

 (キネは後継者の膝に乗る。重さと毛の感触を確かめているようだ。)

お付き23。しゃべるキツネ。本物そっくりだ。

男22。高度なロボットらしい。メスだそうだ。

お付き23。そうか、惜しかったな。

後継者。よいではないか。オスなら本当に神の使いと勘違いする者が出るだろう。これなら、象徴としての具現化とすればいい。

お付き23。要するに、想像上の神の使いを想起するためのもの。

後継者。想像ではない。いつか現れる。このロボットの様にな。

男22。そのキツネが導いてくれる。

後継者。このロボットみたいにしゃべることはできないがな。しかし、誰が見ても分かる仕草をするという。

お付き23。どんな。

後継者。分かっているのなら、苦労はせん。それより、神船は完成したのか。

お付き23。航海は何度か成功しています。

後継者。潜水艦か。神秘的な感じでいい。まだ、信者を連れて航海はできぬのか。

お付き23。調整個所が、まだ残っています。なにせ、巨大な潜水艦ですから。

後継者。こちらは場を提供しただけだ。好きにしていい。

お付き23。はは、ありがたきお言葉。

キネ。なんで、潜水艦が神の船なのよ。

後継者。象徴だ。本物が現れる時期など知らん。だから、いつまでも待つ。しかし、信者には、それがどんなものか確かめたい者もいるのだ。

キネ。だから、捏造。

後継者。本物と言ったら捏造。私は本物とは言ってない。そなた、仏像を知っているだろう。あれは本物の仏ではない。単に仏様を想起するための、象徴だ。誰にでもすぐに分かる記号だ。

キネ。いたってまとも。

後継者。はは。おぬしが人間だったら、いい信者になる。

キネ。で、こちらが寄進者。

後継者。うまく言う。そのとおりだ。目的は知らんが。

お付き23。お疑いで。

後継者。私には選択の余地はない。なるようにしかならぬ。すべて神のお導きだ。

キネ。あんた、どうやって取り入ったのよ。それに、信者なの?、ちっとも信じてない感じ。

後継者。信者の親族だ。その信者の助言により、多大な寄付をしてくれたから、ここにいる。

キネ。潜水艦とか。

後継者。この寺院とか、宿泊施設とか。

キネ。教団には役立つ。

後継者。信者のためになっている。

キネ。今までは。おまえっ、正体を現せ。

後継者。こりゃ。言いすぎだ。気を悪くせんでくれ。

お付き23。誰が操縦しているんだ、このキツネ。

男22。さあ。連れてきた女に聞いてみます。

後継者。信者なのか?。

男22。いいえ。迷った旅行者です。最近増えている。

お付き23。会って話を聞きたい。

後継者。ここに連れてまいれ。

男22。いいんですか?。信者でも何でもない。粗相があったら、大変。

後継者。構わん。通せ。

 (呼び出された、いおりとつよし。事務所に行く。)

女21。第一使徒の後継者様に謁見してください。くれぐれも失礼の無いように。

風間。この格好が失礼だと思う。

雷電。遊びの服よ。

女21。困ったわね。衣裳を持ってくる。

 (向かいのビルに行ったようだ。すぐに帰ってきた。白い服を持っている。)

風間。何だか、高貴な雰囲気。

女21。神の使い。でも、話では男性だから、間違うわけがない。かわいくて、いいでしょ?。

 (どこがかわいいか、さっぱり分からないが、信者受けはするようだ。とにかく、着替える。ついでに、ID装備も付ける。いおりは十手を装備する。文句は言われなかった。)

第45話。サンダーストーム部隊、始動。13. 新興宗教

2011-08-23 | Weblog
 (冬の夕方、もうすぐ日がくれそうだ。オトヒメで狭い砂浜に上陸。はしけとは反対側で本州の陸が海のすぐ対岸に見える。いおりとつよし、シルバーとキネ、リュウが降りる。リュウを放って島を調査。セイも引き続き調査。シルバーは海岸を回り込む。オトヒメは、カッパーが戻す。
 島は周囲1kmほどの小島。外からも上空からも林しか見えない。入り江は人工的な岸壁になっている。その奥に小さな広場があり、左右にビルが建っている。中央奥には、別の建物が。丸くて、何か意味のある形なのだろう。林に覆われている点は同じ。)

エド。明らかに隠している。

ジーン。団体名とか分かるかな。

セイ(通信機)。正面の建物は寺院の感じ。なになに、宇宙新興教だって。

伊勢。よくそんな怪しげな団体名を名乗る。

ジーン。信者にとっては真剣よ。

 (建物正面とはしけに監視カメラはあるけど、ほかに仕掛けはない。とりあえず、いおりとつよしとキネ。事務所のありそうな建物に近づく。さっき、潜水艦の乗員が入ったのとは、別棟だ。中年少し前の女が出てきた。)

女21。あなたたち、何してるの?。宿舎に戻りなさい。

風間。迷った。ここはどこだ。

雷電。ボートで来たんだけど、ボートが行っちゃって、お手上げ。どうしようもないから、街を探していたら、ここに来た。

女21。ここは小島。歩いては帰れない。それに、もう夕方。定期船は出ちゃったし、よかったら、ここで泊まろう。明日朝、連絡船が来る。

風間。船ってあれか。

 (巨大潜水艦だ。)

女21。あれは、神聖な乗り物よ。信者専用。あなたたちは、お客様。小さな渡し船があるのよ。それに乗る。うん、ここで話していてもなんだから、事務所に入ろう。

 (建物に入る。宿泊施設らしい。1階は旅館の玄関のような作り。飾りは荘厳に見えるようにできている。一角の事務所に入る。男女8人ほどが仕事をしている。隅っこの応接用ソファに座る。)

女21。どこから来たの?。

風間。東京から見学に来た。

女21。観光地巡りか。コースから外れちゃったんだ。ここには何もない。

風間。寺院みたいなのがあったぞ。

女21。信者じゃなかったら、関係ないわよ。

男22。迷った客人か。最近、多いな。お茶をどうぞ。

風間。ありがとう。

女21。不況で手軽な旅が流行しているのよ。このあたり、島が多いから、迷うのもあたりまえ。

雷電。すみません。ご迷惑をおかけして。

女21。悪いけど、宿泊費と食事代と交通費をあとで請求する。税込み、一人当たり5千円。

雷電。今払います。

女21。帰ってから振り込んでちょうだい。そうしないと、トラブルの元。

風間。食事代込みか。安いな。

女21。修行している信者と同じ食事よ。

風間。勧誘しないのか。

女21。関心があるのなら、パンフを持ってくる。入信はよく考えてから。それでなくても、すぐに離脱する人が多い。

風間。寺院を見学できるか。お参りしたい。

女21。だから、入信してから。写真ならパンフに載っている。それで我慢して。

男22。そのキツネは人形か。

キネ。ロボットよ。

女21。うわ、しゃべった。

雷電。かわいいでしょ。キネって言うの。とても高度なロボット。

女21。こっち来て。

キネ。何のために。

女21。な、生意気。

雷電。ちょっと癖があるように調整されている。適当に相手したらいい。

女21。重さとか感触とか、試してみたい。

キネ。じゃあ、行く。

女21。きゃは。ふわふわで気持ちいい。しっぽがふさふさ。

男22。慣れてるな。

雷電。ええ。もともと救護用ロボット。人当たりはいいはず。

男22。人気者になりそうだ。

女21。ギンギツネだったら、ぴったりだったのに。

雷電。ギンギツネなら何か。

男22。神の使いだ。…、毛を染めてみるか。いいかな、お嬢さん。

雷電。アカギツネも厭きてきたし、そうね、やってみてください。

キネ。私の毛を染める。

男22。ほら、あの絵みたいになる。

 (白い服を着た人物の横に、ギンギツネが凛々しく立っている絵だ。)

雷電。オスみたいに見える。このキツネはメス。

男22。いちいち確かめるやつなんかいない。

キネ。エッチ。

男22。面白いやつだな。気に入られるぞ。

風間。だれに。

男22。第一使徒様だ。正確に言うと、その後継者。つまり、宇宙新興教の開祖の第一の使徒の後継者だ。我が教団の代表。

 (トカマク基地。)

伊勢。あらあら、大変。キネの毛って、普通の染料で染まるのかな。

清水。染まらなかったら大変。調べる。…。獣毛とは特性が違うけど、何とか染まるみたい。戻すの、大変そう。

伊勢。どうなるのか、見もの。

 (で、係の人が必死で染める。全体に白が強く、色だけはホッキョクキツネに近い感じ。でも、当然、耳とかはアカキツネと同じ大きさ。絵とそっくりになった。)

女21。うわあ、できすぎ。かっこいい。

キネ。気に入ったかしら。

男22。うん。びっくりするほどいい。お嬢さん、しばらくこのキツネロボットを借りていいかな。後継者様が気に入ったら、買い取りの話も出る。

雷電。私は構いません。でしょ、いおり。

風間。私も構わない。

キネ。行ってきます。

 (キネは男に連れられていった。)

女21。じゃあ、あなたたちは宿泊。これが部屋の鍵。2人部屋でいいでしょ?。

風間。ご親切、ありがたい。

女21。大浴場とかもよかったら使ってください。

雷電。立派な設備。こんなところにあるなんて、びっくり。

女21。つい最近のことよ。こんなに設備が充実したのは。

雷電。寄付で。

女21。そうみたい。明日朝10時に船が出る。9時30分ころには、ここに来てください。歩いてはしけに行くから。

 (部屋に案内される。都会の狭いホテルのような部屋だ。設備は質素。でも、快適。)

雷電。ご恩は忘れません。ありがとうございます。

女21。ゆっくりしていって。散歩してもいいけど、寺院と船には近づかないで。信者でもうかつに近づいてはいけない、神聖なところなのよ。

雷電。気をつけます。

 (教団のパンフレットに目を通す。ふむ、口当たりの柔らかそうな文言が連なっている。思想的には平凡だが、危険そうな文章はないのが救い。)

雷電。普通の新興宗教の感じ。なのに、金持ち。

風間。調べたいことは、それだったのか。

雷電。ほら、パンフの写真。昔のは質素よ。

風間。真面目そうだ。寄付を煽るような記述もない。

 (夕食の案内の館内放送が流れる。食堂に行く。和やかな雰囲気。修行だから、真剣だけど、この時ばかりは自由な雰囲気。いおりたちが声をかけると、気軽に答える人が多い。食事は質素だが、おいしい。)

風間。怪しいところはない。

雷電。あとで散歩するか。

 (寺院と巨大潜水艦には近づけないので、向かいの建物に行く。こちらは、工房のようで、印刷物やら、教団に必要な儀式の衣裳や道具などを作っている。ビルの上の方の階は怪しそうだが、行けるような雰囲気ではないからパス。海岸に出る。向こう岸まで泳いで行けそうな距離。)

雷電。脱出するのも簡単。信者を閉じ込めているわけではない。

風間。邪魔されずに、雰囲気を出すだけの目的のようだ。

 (リュウは、巨大潜水艦に侵入成功。メンテ作業のために開放していたらしい。中を見て行く。豪華な潜水艦だ。数カ月は潜ったままで快適な暮らしができそう。)

エド。タネも仕掛けもない。普通に原潜だ。

ジーン。武器はあるの?。

エド。魚雷と水中発射型ミサイル。大型だな。核弾頭でも装備できそう。

ジーン。冗談…。

エド。核弾頭は検出されない。ミサイルは、多分、飛び上がるだけ。魚雷も進むだけで、爆発もしないだろう。

ジーン。でも、威嚇はできる。

エド。脅しには十分。

 (リュウは原潜から脱出。次に、怪しい方のビルの上方の階に行く。天井裏から、部屋を探る。武器を持った男どもを発見。暇そうにくつろいでいる。とても信者には見えない。)

エド。総員20名ほどだ。原潜の維持要員だろう。技術者と、ガードの感じ。

ジーン。あとは、仕掛人か。

エド。純粋な新興宗教を利用して、私物化したやつ。

ジーン。許さん。

第45話。サンダーストーム部隊、始動。12. 巨大潜水艦

2011-08-22 | Weblog
 (A国海軍のヘリがやってきた。ジーン、ジョー、伊勢、バロンを回収。トカマク基地に送ってくれた。第一機動隊本部に行く。)

ジーン。どうなってる。

羽鳥。潜水艇はリュウグウが追いかけている。後方から。

ジーン。気付かれていないか。

羽鳥。相手が軍じゃなかったらな。ゆうゆうと逃げている。

 (潜水艇は適当に逃げた後、引き返し、シュノーケルと潜望鏡を出して、元の貨物船を伺う。交代で来た海上保安庁の巡視艇は、船倉から武器を発見し、しつこく荷物検査している。2時間ほど観察していたようだが、ちっとも海上保安庁が離れないので、帰艦をあきらめたらしく、潜水艇は沿岸を西に航海開始。リュウグウが付いて行く。)

風間。なんでこちらに追いかけさせるのだ。自分たちでできるだろう。

エド(通信機)。もう少しの我慢だ。そのまま追いかけてくれ。

雷電。やれやれ。暇。

鳥羽。お三時にしよう。お茶を入れるよ。

 (トカマク基地。)

志摩。お茶です。

伊勢。ありがと。なんでこちらに追いかけさせるのかな。

ジーン。準備中よ。

伊勢。妙な兵器で攻撃するとか。

鈴鹿。そんな面倒なことするのかな。

伊勢。こちらがどうやって手を出すのか探るとか。

鈴鹿。買いかぶりすぎ。

ジーン。ありうる。平時だけど、我が軍を翻弄した。

鳥羽(通信機)。眼下に巨大な物体がある。長さ300mはあるぞ。深度は約300m。

ジーン。原子力潜水艦。

伊勢。ほかに何があるのよ。

エド。そんな大きな潜水艦ってあったか。

ジーン。SFに出て来るだけよ。

伊勢。深海幽霊船がある。民間企業でも作れないことはない。

ジーン。無駄よ。そんなの作ったって。

エド。我が軍は、これを発見したかったのか。

伊勢。つながりよ。リュウグウが狙われたら、一巻の終わり。(通信機)準備してちょうだい。

エド。オトヒメで逃げるのか。

伊勢。それしかない。

ジーン。リュウグウに気付いているかな。

伊勢。当然。

 (リュウグウ内にて。)

鳥羽。やれやれ、登場したいきなりで、この状況なのか。

風間。どれくらい潜れるのだ。

鳥羽。リュウグウもオトヒメも約200m。でも危険。やらない方がいい。あ、潜水艦が浮上し始めた。こちらは完全に無視だ。

伊勢。だって、潜水艦の反射じゃないもの。戦えば、どちらが勝つか明らか。

鳥羽。なめられている、ってこと?。

伊勢。そうだけど、実際、そのとおりじゃない。あきらめなさい。

 (その巨大な潜水艦が浮上。長さだけでなく、幅がある。潜水艇も浮上。上空のチャリオから観察。3人が潜水艇から出て、潜水艦の中に入る。作業員が、荷物を潜水艇から取り出して、甲板に引き上げている。荷物は潜水艦の中に入れられた。
 潜水艇はウィンチで甲板に引き上げられ、大きなハッチから潜水艦の中に入れる。道理で、横幅があるわけだ。)

エド。何てものを作るんだ。

ジーン。水中で潜水艇が出入りできたら、軍装備と同じ。

 (作業員を回収し、潜水艦は潜航。どんどん深度を下げる。リュウグウが追いかける。)

鳥羽。A国の潜水艦がいる。巨大潜水艦を追いかけている。

ジーン。ばれたか。

エド。なんという検出能力。

 (でも、撤退命令は出ない。巨大潜水艦は伊勢湾に向かう。)

伊勢。バカじゃないの?。浅い海。攻撃されたら、逃げられない。

 (そう。巨大潜水艦は海底を這うように進んでいる。そして、小さな無人島に近づく。ゴールドに観察させる。)

ゴールド。入り江がある。覆っている林でよく見えないが。

鈴鹿。作られた入り江だ。

志摩。勝手に工事したみたい。

羽鳥。許さん。

 (潜水艦は入り江に入って浮上。林に囲まれていて、外からも上空からも見えない。セイを差し向ける。近くの木の枝に着陸して観察。
 潜水艦からは乗員が出てきて、これも周囲からは見えない位置にあるビルに入る。
 ゴールドは、上空から島に近づいてくる別の小型船を発見。小型船は外から見える小さなはしけに停泊。荷物を運んでいる。食料とか燃料とかだろう。)

エド。チャリオの燃料が少なくなってきた。

伊勢。長野本社で給油させよう。

鈴鹿。何なんだろう。私企業かな。カルト集団かな。

志摩。調査は難しそうだね。

風間。行こうか。

雷電。うん。こんな感じの時に、私たち、役立ちそう。

第45話。サンダーストーム部隊、始動。11. 貨物船の調査

2011-08-21 | Weblog
 (サンダーストーム基地。伊勢とサンダーストーム部隊のおかげで、旅館業が次第に立ち上がってきた。)

風間。評判になるのはいいが、これで作戦できるのか。

伊勢。総務に相談しなきゃ。

ジーン。臨時でいいのなら、任せて。

伊勢。あなた、海原博士の秘書はどうなってるのよ。

ジーン。こちらでできる業務も多い。

伊勢。要は、星野さん任せ。

ジーン。日本語、難しいデース。

伊勢。しようがないわね。

雷電。奈良さん経由で、星野さんに相談した。一人だったらいつでもよこせるって。

伊勢。それで行くしかないか。志摩と鈴鹿のどちらかが手の空いていることも多いだろうし。

雷電。鈴鹿さんたちは来週から、南極海に行く。

伊勢。うん。試練の時。乗りきることができたら、当面安心。

風間。その間、作戦依頼はこちらに来るのか。

伊勢。そうよ。覚悟なさい。

エド。調査依頼だ。東京湾沖に停泊中の貨物船の荷物調査に付き合って欲しい。

伊勢。A国軍の。

エド。日本政府を装う。

伊勢。って、ぬけぬけと。

エド。協定があるんだ。形式上は、協力。

伊勢。政治にはかかわりたくない。

エド。だから、調査だけ。リュウグウを出動させてくれ。

伊勢。そっちだって、大層な装備があるでしょうが。

エド。分かっているだろう?。軍が出動すると、大事になる。

伊勢。海兵隊でもまずいか。

エド。そうなんだ。

伊勢。こんなケースは初めて。やってみよう。部長に了解を取る。

 (でもって、翌日早朝、海上保安庁の巡視艇で、くだんの貨物船に乗り付ける。伊勢とバロンが同行。A国海軍のスパイは、もちろんジーン。ジョーを連れている。リュウグウは、水面下から近づく。いおりとつよしと鳥羽、シルバーとカッパーとキネ、いつものリュウ、メイ、セイ。ゴールドはチャリオに乗って、はるか上空から監視。)

鳥羽。面白いキャンピングカーだ。かわいい恐竜と妖精がいる。

メイ。気に入った?。

鳥羽。よくこんなもの作る。気に入ったよ。

エド(通信機)。観測装置を発射して、貨物船を取り囲んでくれ。

鳥羽。シリーズGのことか。2本ある。1本、発射。

 (一方の貨物船。対応したのが、思いっ切り怪しい男。)

船員1。何の用だ。

保安庁11。臨検だ。ご協力をお願いする。

船員1。断ったら。

保安庁11。手荒な真似をさせないで欲しい。形式的に検査するだけだ。

船員1。そっちは、外人女か。

 (ジーンのことだ。)

保安庁11。調査会社の社員だ。こちらも。

船員1。イヌも。

ジョー。イヌではない。ジャッカルだ。

船員1。しゃべった。…、ロボットか。

伊勢。ええ。ロボットです。この男も。

バロン。よろしく。バロンという。救護ロボットだ。

船員1。さっさと見てしまえ。どれくらいかかる。

保安庁11。何もなければ、2時間以内。

 (保安庁の係は3人ずつ2班に分かれ、船内をくまなく見て行く。伊勢とジーンは、それぞれの班に付く。それぞれの班に2人の船員が付いてくるが、どちらも強力な拳銃を所持している模様。さすがプロ、保安庁職員の1人がぴったりマークしている。)

船員2。そんなにおれが気になるのか。

保安庁12。いつものことですよ。普段通り。

保安庁13。この扉を開けてくれ。

船員3。はいよ。

 (船倉をくまなく見て行く。バロンが反応。DTM手話で伊勢にしらせる。)

バロン◎(DTM手話)。武器がある。荷物の中だ。

伊勢◎。小銃か何か。

バロン◎。そうだ。安物だ。

伊勢◎。囮りかな。

バロン◎。ほかにもありそうだ。

伊勢◎。しばらく、様子を見よう。

 (保安庁の職員が、荷物の箱を開けさせる。自転車などの部品だ。中古品も混じっている。うまく隠している。いくつか、見てみるが、同じような感じ。バロンはいくつか武器を発見したが、ありきたりのもので、数も少ない。)

風間。かえって怪しい。

鳥羽。だから、こちらに調査依頼か。おや、動きがあるようだな。

 (上空から見ていたゴールドから報告。船尾の隠し扉が開いて、まず普通の小型漁船みたいなのが進水。次いで、潜水艇が進水。逃げて行く。巡視艇からは死角だ。)

エド。これだ、仕掛けは。ゴールド、漁船を追いかけろ。鳥羽、潜水艇を追いかけてくれ。

鳥羽。了解。

 (貨物船内。バロンが船尾につかつかつかと向かって行く。)

伊勢。バロン、戻れ。

バロン。こっちだ。来い。

伊勢。行ってくる。

保安庁13。勝手に行くな。…、聞いてないな。追いかけよう。

 (ジョーも同じ。船尾に向かう。全員が追いかける。扉の前に集合。)

伊勢。ジーン。どうしたのよ。

ジーン。どうもこうも。ジョーが勝手に。ジョー、なにがあるというの?。

ジョー。この扉を開けろ。

船員4。何だこいつは。

保安庁14。興味ある。開けてくれ。

船員4。ここの鍵は無い。

バロン。開いているようだ。入るぞ。

船員2。バカヤロー、行くんじゃねえ。

 (銃を抜こうとする。さっと、ジーンが拳銃を突きつける。高性能銃であることは分かるみたいだ。船員は手を上げる。)

ジーン。武器を渡しな、ゆっくりとだ。

 (保安庁の職員が取り上げる。ほかの3人の分も。)

船員2。ちくしょう、軍の擬装か、きさまら。

伊勢。海上保安庁の臨検よ。

 (バロンが、扉を少し開けると、ジーンが機械の脚で蹴っ飛ばして中に入る。一人、気を失っていた。蹴っ飛ばしたドアにぶつかったらしい。)

バロン。気絶しただけだ。怪我の手当てをする。

船員2。お前らの思い通りにはならんぞ。

 (船の後部のドックのようなところ。もぬけのからだ。整備用の道具が置いてあるだけ。)

ジョー。逃げた直後だ。まだ、痕跡がある。

ジーン。追いかけましょう。

船員2。無駄だな。ご苦労さん。

保安庁11。引き上げろ。追いかけるぞ。

 (保安庁は応援を呼び、巡視艇は擬装漁船を追いかける。
 程なくして、擬装漁船が視野に入ってきた。追いかけてきたのをびっくりした漁船は大慌てで逃げる。)

ジーン。速い。ただの漁船じゃない。

保安庁11。なめやがって。逃すもんか。

 (小銃で撃ってくるので、こちらは機関砲で対応。しばらくの小競り合いの後、巡視艇は擬装漁船を制圧。けが人なし。さすがだ。しかし、中から発見されたのは、少量の武器のみ。)

保安庁11。またこれだ。裏をかかれた。

ジーン。こちらも引き上げます。

第45話。サンダーストーム部隊、始動。10. 五香と相談

2011-08-20 | Weblog
 (第一機動部隊本部で集合。)

土本。事情は分かった。たしかに、火本が主な計画を立ちあげ、抜けてしまったから、何となく停滞している感じ。

清水。細かいところが分からなくて、しかし、それが蓄積すると、動きが取れなくなる。

土本。新入生は入ってくるはずだから、全く新しい観点から考え直させたらいい。

清水。それはそれとして、こちらも考えなきゃ。

土本。うん。継承するか、焼き直すか、破壊するか。

鈴鹿。破壊するって?。

土本。弁証法よ。いったん否定してみると、良さが分かる。

鈴鹿。理屈の上でか。

芦屋。たとえば。

土本。モグは引っ張りだこ。いま、伊勢さんの要請でサンダーストーム基地にいる。新メカが来るまでの、あと、1週間ほど。

芦屋。モノリスとピナクスの移動メカが消えて、とても不自由な感じになった。だから、モグが来たときはとてもありがたかった。

土本。それで、リュウグウも作ったんでしょ?。

芦屋。そのとおり。実用過ぎて外見はごついが、活躍してくれる。

土本。内装もいい。

芦屋。最高峰だ。

土本。もう一つ、モグと同型機が欲しくなる?。

芦屋。もうたくさんだ。モグはモグだからいい。リュウグウもだ。

土本。じゃあ、もう一機作るとしたら?。

芦屋。そう考えるんだな。もう一度、戦隊を組むか。

清水。ロケット人間がイチとレイ。UFO型は六郎。竜型はリュウ。白鳥型はメイとセイ。

鈴鹿。騎馬隊はカワセミ号と自動人形。しっかり子孫がいる。

芦屋。一時期、エレキとマグネの空中バイクを使っていたっけ。

志摩。A31の自転車に乗せてもらったらいい。ふつうのバイクでもいい。調査部隊としては、今でも十分すぎるくらいだ。

芦屋。高出力の電動オートバイならあってよいかも。

土本。サイボーグ研の話題にはならないか。

鈴鹿。元々は、福祉ロボットだったんでしょう?。

土本。単なる目標よ。ロボットを作る、励みとしての。何でもいい。

芦屋。ID社情報収集部からサイボーグ研に装備を発注するのか?。

土本。普通の自動車の品質のものだったら作れる。

芦屋。セダンに見える装甲車とか。

土本。自動車メーカーにはノウハウのあるところがあるかも。

清水。まともに絡んでるわよ。でも、兵器を発注する感じになる。やや抵抗がある。

芦屋。じゃあ、計測器。だが、我が社が計測器メーカーだ。

清水。通信系統も我が社の得意技。

土本。あんたたち、何しに来ているのよ。

清水。この基地の維持。

芦屋。海原博士を守るため。

土本。要するに、監視か。

清水。まあね。ID社の持ち出し額は半端ではない。

土本。何を狙っている。

羽鳥。また、その話題かよ。もういいじゃないか。ID社は、サイボーグ研に価値を見いだしている。それで納得できないのか。

土本。日本の中枢に迫るため。

羽鳥。その通りだ。外資系巨大企業なら、どこでもいっしょ。

土本。先進国でもうかつに手を出せない相手。

羽鳥。国家と同じ。でないと、内部を統率できない。志摩たちはその自警団。普通の攻撃力ではない、いっぱしの軍事機構だ。弱小国が刃向かったら、簡単につぶす。

土本。何てこと。

羽鳥。気に入らないか。おまえたちも権力だ。自覚はあるんだろうな。

土本。ええ、まあ。動いてる金のことを考えたら。

羽鳥。分かっていたら、それでいい。

清水。それで、どうするの?。何かアイデアある人は?。

芦屋。エレキが作れないかな。

清水。サイボーグ研で。アメリカンヒーロー。

土本。何になるのよ。

清水。エクササイザーといっしょ。案内係。

土本。作戦に連れて行く。

清水。できるんならね、1カ月で。

土本。3カ月よ。意地になるところを探そう。

 (なんてくだらない計画と、私(奈良)は思ったのだが、海原博士の了承はやすやすと得られてしまい、パートナー企業を探すことになった。
 ただ、この研究予算、羽鳥の予想通りの1億円は、あとで思わぬ展開を見せることになる。)

第45話。サンダーストーム部隊、始動。9. トカマク基地内を歩く

2011-08-19 | Weblog
 (亜有と虎之介、トカマク基地内をくまなく調査。イチとレイが付いてきた。)

イチ。何しているの?、探し物?。

清水。そうよ。1億円の研究課題。

芦屋。インパクトがあって、目立つやつ。

レイ。月面基地とか。

清水。トカマク基地は元々そんな感じ。月面基地への応用でも探るか。

芦屋。火星でもいいぞ。少し楽だ。

 (コクウ班の1/8ジオラマに来た。)

清水。ここも難航している。5年計画だけど、すでに当てが付いていないと。

芦屋。その先があるんだろう?。

清水。うん。ずっと先。5段階以上先よ。血管に入れるんなら。

芦屋。1段階進むだけでも、インパクトは絶大だ。

清水。目標を絞らざるを得ないか。

 (モグ班。自動車の自律ロボット化だ。)

清水。ここも行き詰まっている。というか、できそうな部分は、さっさと各社に持ち帰ってしまう。

芦屋。なぜか、トースター号が売れてるしな。

清水。世の中へのインパクトになってないわよ。単にかっこいいクルマ。

芦屋。一応、水上車だ。オフロード性能があるのはユニークなはず。

清水。軍用車であるでしょ?。

芦屋。まあな。やることがないから、潜水調査船も視野に入れているんだっけ。

清水。平凡なのになりそう。

 (ケイコ班。見回り少年と牧羊犬ロボット。)

清水。形はできてる。試作品もある。

芦屋。自動人形とは大違いだ。いかにもロボット。

清水。救助に役だてるなんて、まだまだ先。

芦屋。人間に応用する時点で、難航するだろうな。

清水。せいぜい、力を貸すくらいかな。

 (三郎班。オリヅル号だ。飛ぶのは完璧になったが、障害物を避けるのは難しい。)

清水。鳥に追い付くのは容易ではない。

芦屋。三郎はよくできていた。

清水。その代わり、途方もない値段。

芦屋。ヘルメット型のディスプレイか。鳥になったつもりで、操縦するんだ。

清水。よくやる。でも、ミサイルとかと同じ。

芦屋。そうだな。

 (最後はエクササイザー班だ。トレーラータイプも完成し、微調整に入っている。)

清水。ここは完成か。元々、コクウ班から派生した班。

芦屋。大きい方のサイボーグだな。平凡な案だが、実際に作ると面白い。

清水。ディスプレイ以外の用途が見えないけどね。

芦屋。兵器にするには、途方もない開発費がかかりそうだ。

清水。うん。そんなのは、ここではできない。

 (回廊にでる。冬だから、閑散としている。こぢんまりとした電力公園は完成し、お飾りの風車と太陽電池が稼働している。小さな売店があって、簡単な食事やお土産が買える。2人は近くのベンチで、一休み。イチとレイもいる。)

清水。アドバルーン上げろって話だったけど、もう十分じゃない。地道な研究に使えないのかな。

芦屋。海原博士の野望。

清水。イチとレイがお気に入り。奈良部長のクロやアンみたいなもの。

芦屋。孫のように見えて、空を飛ぶ。

清水。人間が疲れたときや、迷ったときに助けてくれる。

芦屋。相棒なのか。

清水。人形の形をしているから、ややこしいな。

芦屋。クロやエスだったら。

清水。ペットか。同様。

芦屋。ただの箱。

清水。モノリス。ディスプレイがあって、お話しできる。ケータイみたいなものか。

芦屋。やたら複雑な機械。通り一辺の反応ではない。だから、いつまでも厭きない。

清水。うん。その域に達した機械。自分を投影しているだけなんだけど。

レイ。お二人、楽しそう。何をしゃべっているのかしら。

イチ。考えているんだ。海原博士のために。そうでしょ?。

清水。うん。よく分かってる。

イチ。よかった。

芦屋。巧妙な反応。まるで意思が通じているようだ。

清水。その効果を狙っているのよ。救護ロボットとして必要な技能。必死で分析しているはず。

イチ。寒くないの?。

清水。寒い。リュウグウに行ってみようか。

 (地下ドックにあるリュウグウに移動。)

清水。海に出るなら、こっちだな。地上を走るならモグの方が穏便だけど。

芦屋。何とかキャンピングカーには見える。

リュウグウ。ご不満ですか?。

清水。いいえ。航海するなら、これくらい贅沢な方がいい。

芦屋。一気に自動人形が増えた。

清水。サンダーストーム基地に。あわてて拡充した感じ。

芦屋。こちらは、完全に調査方法がパターン化してたからな。突破口が必要なんだろう、情報収集部としては。

清水。守りに入るのが嫌ならね。そうか。海原博士の気持ちが分からないでもない。何か突破口が必要なんだ。サイボーグ研が、急速に保守化している。

芦屋。土本と話し合った方が良さそうだな。どこにいるんだ?。

清水。連絡してみる。…、大学にいるって。こちらに向かうって。

第45話。サンダーストーム部隊、始動。8. 追加予算

2011-08-18 | Weblog
 (トカマク基地、サイボーグ研所長室。海原所長と大江山教授の会話。ジーンもいる。)

海原。来年の計画を早急に立てねば。

大江山。もう、政府には提出してますよ。

海原。お主、分かっているじゃろうが。余った研究予算がなぜか年度末ぎりぎりに来るのじゃ。

大江山。そうだった。行き場のなくなった金。税金だというのに。

海原。文句を言ってもしようがない。国民のために、有効活用するのじゃ。

ジーン。何てもったいない。来年に回せばいいのよ。

海原。会計上、制限があってな。まだここではできない。

ジーン。できることもある。

海原。財団ができればの。だが、それはそれで問題がある。

ジーン。どなたかが私腹を肥やす。

海原。大きな声で言うでない。そうじゃがの。

ジーン。どこの国もいっしょか。

海原。そちらの国はえげつなさそうじゃの。

ジーン。そりゃもう、えげつない…、何を言わせるんですか。

大江山。それで、なにか派手な計画をぶち上げろと。

海原。ぶっちゃけ、そうじゃ。

大江山。何かヒントでも。

海原。サンダーストーム戦隊。あれに対抗できんかの。

ジーン。どうしても、美少女戦隊を作りたいと。

大江山。学生なら、選り取り見取り。お好みは。

海原。ずばり、擬人化じゃ。…、乗せるでない。冗談じゃ。こりゃ、ジーン。茶化すでない。

ジーン。ノリノリだったわ。うーん、そうね。最近干上がってる第一機動部隊に考えさせるか。行ってくる。

海原。待てっ。…、行ってしまったぞ。相当、慌て者じゃの。

大江山。任せてみたらいかがですか?。アイデアだけなら、若い連中に限る。

海原。一口、乗ってみるぞ。

 (ジーン、第一機動部隊本部に行く。概要を説明する。)

芦屋。なんちゅう要請だ。国民をバカにしている。

羽鳥。おまえ、日本国民だったか。

芦屋。パスポートはあるぞ。税金もしっかり取られている。

清水。いいから、有用な使い道を考えましょ。

鈴鹿。お金から目的を決めるなんて、順序が逆よ。

羽鳥。お役所とはこういうものだ。で、予算規模は。

ジーン。知らない。

羽鳥。感じとして、1億円程度だな。

ジーン。よく分かる。

羽鳥。単なる嗅覚だ。あてにするな。

清水。でも、せいぜいそれくらいってこと。自動人形は1機も買えない。

芦屋。カワセミ号も無理か。

清水。思いっ切り値切らないと。

羽鳥。きさまら、ふつう1億円だとびっくりするものだぞ。

清水。んでも、微妙に困る金額。

羽鳥。だから、来るのだ。使いでがあるなら、有力部署がかっさらってる。

芦屋。理屈だな。燃料代ではだめなのか。

羽鳥。シリーズBとカワセミ号の。最後の手段だ。やりすぎると、それが研究かと横やりが入る。

志摩。普通は機材を買って、こんなのができました、って報告書書くんじゃないの?。

羽鳥。お定まりのパターンだ。

鈴鹿。サイボーグ・ソフトウェア株式会社に、システム一式丸投げ。

羽鳥。思いっ切り怪しまれるぞ。

鈴鹿。期限は。

ジーン。聞かなかった。

羽鳥。ふつう、こういうのは、3月初旬とかだ。

鈴鹿。たった1カ月で、1億円の研究を。

羽鳥。断ったら、他の部署に行くだけ。

清水。それも悔しいか。うまくできてる。うーん。トカマク基地を見回って、不備のありそうなところに回すか。見てくる。

芦屋。おれも行く。

ジーン。行っちゃった。

志摩。今のサイボーグ研の懸案はなんだい?。

鈴鹿。亜有がよく知っているはず。少なくともID社は大赤字のはずだから、1億円でも喜ぶと思う。

羽鳥。研究所の施設拡充はだめだ。研究に直結している予算でないと。

鈴鹿。ひも付きか。牧場部分の整備。羊飼い少年ロボと牧羊犬ロボはどうなったのかな。

志摩。難航している。火本がいないから、魂が抜けたようだ。

鈴鹿。深海幽霊船。でも、石油タンカーなんかにしないと役立たず。今回みたいな調査航海は贅沢よ。

羽鳥。だが、一つの選択肢にはなる。それもよいだろう。豪華にするなら、1億円くらいはかかりそうだ。

鈴鹿。海原博士の要望は?。

ジーン。サンダーストーム部隊に対抗できるような、かっこいい打上花火。

鈴鹿。こちらはイケメン男性騎馬軍団。

志摩。どちらかというと、あれは伊勢さんチームだよ。

鈴鹿。こっちは、亜有チームか。

志摩。実質上、そう。

鈴鹿。アイドルは、イチにレイに五郎に六郎。

志摩。リュウ、メイ、セイもいる。十分。

鈴鹿。自動人形のサイボーグ化。意味ないわね。

羽鳥。またしても、亜有頼りか。

第45話。サンダーストーム部隊、始動。7. 怪しい半導体

2011-08-17 | Weblog
 (旧車両に戻る。クロがいない。)

アン。クロがいない。

奈良。どこにいるんだ。

アン。連絡してみる。…。怪しいトラックの荷台に乗ったら、発進したって。

奈良。やれやれ。

アン。追いかける?。

奈良。しかたがないだろう。近くまで行って、回収だ。

 (地下駐車場を出て、高速に入り、西に向かう。)

田沼。どうなっているんだ。

奈良。自動人形に通信機は内蔵。時刻はもちろん、位置や向きも分かる。

田沼。GPS内蔵。

奈良。そんな感じ。独自技術だ。

田沼。少しでも軍需に関連しそうなところは、そうするんだ。

 (何か感づき始めたらしい。)

風間。どこがどう怪しいんだ。

アン。半導体の大量のサンプルがあった。工場でもないのに。

風間。営業用だろう。ほかにも、品質管理とか、いろいろ考えられる。

アン。あんなに必要ない。

田沼。見せるためだ。何かの目的で。

奈良。途中で追い付くのか。

雷電。どこかで休んでくれたら。

アン。パーキングエリアに入る。

奈良。あとどれくらいかかる。

雷電。20分はかかる。

奈良。クロに観察させるしかないか。

 (荷物をトラックから、普通の乗用車に移し替えたのだと。クロは隙を見て、乗用車に乗り込む。発進。)

田沼。怪しい。何か、隠そうとしている。

奈良。そんな感じだ。行き先を見極めよう。

 (乗用車は、高速を降り、近くの街の郊外の建物に入る。旧車両は、すぐに追い付いた。)

田沼。半導体商社。何だ、そのままじゃないか。来て損した。

雷電。怪しい。羽鳥に伝えよう。

田沼。羽鳥って誰だ。

雷電。知り合いのGメン。

 (よくやった、そこまででいいと。クロを回収する。)

田沼。で、何だって?。

雷電。帰っていいって。

田沼。それだけ?。

雷電。それだけ。

田沼。怪しいじゃないか。観察しよう。

雷電。何を?。これ以上やると、余計なことだよ。

田沼。遠巻きにするだけだ。

雷電。野次馬。

 (などと漫才している間に、警察がやってきて、商社に踏み込む。)

田沼。やっぱり何かあったんだ。

奈良。そのようだな。満足したか。

田沼。ええ。もはや手出しはできないようだ。これが調査か。

奈良。ふつうの調査だ。そのとおり。

 (例によって、その後の情報は何も入らなかった。
 いおりとつよしは、サンダーストーム基地で降ろす。田沼くんはオフィスまで付いてきて、夕方まで端末で調べ物。普通に電車で帰った。
 その後も、田沼くんはしばしば夕方にID社東京のオフィスに来て、調べ物をして行く。でも、事件がそう頻繁に起こるわけではなく、単に調べ物をして帰る日々が続いた。
 何度か話しているうちに、こちらに関心のある理由が分かってきた。彼の曾祖父は政治家で、戦争に絡む壮絶な人生を味わったらしい。祖父は地方の名士で、父親は平凡なサラリーマン。だが、血筋なのか、彼は政治に関する関心が高い。そんなとき、たまたまこちらに出会ったのだ。だから、端末があって、いおりたちのいるサンダーストーム基地ではなく、スパイ組織の部長である私のところに通っている、ということ。
 亜有に調べさせたが、特に怪しげな政治的背景などはない、とのことで、亜有と同じく、開示できる部分を開示する日々がしばらく続くのである。)