(結局、さらに3日ほどかけて、アフリカ東岸のはるか沖に出る。深海幽霊船は浮上し、外に出る。美しい穏やかな海。A国軍のヘリがやってきた。回転翼を止めないまま乗り込んで、離陸。最初から乗っていたID社の技術者1人とイチとセイを残して、全員航空母艦に行く。
甲板では、B中尉とジーンが待っていた。ジョーとバロンとアンもいる。)
B中尉。少佐、ご無事で。
奈良。うまく行ったようだな。
B中尉。もちろんです。
海原。すばらしい船じゃの。
黒田。最初に来たときは、風が強くて、慌てていたから、何が何だか分からなかった。こんなに大きな船だったのか。
B中尉。世界に誇る船です。さあ、こちらにどうぞ。
(バロンとアンの肩を抱き、ねぎらう。よくやってくれた。
私たちは、会議室に案内された。中はパーティー会場になっている。)
艦隊長。奈良獣医少佐、来てくれたか。今は任務中なので、これが最大限だ。歓迎するぞ。楽しんでくれ。
艦長。活躍を見せていただきました。印象的でした。
(普通に、バイキング形式のパーティーだ。艦隊長のあいさつの後、食事。私は、大洋底の海底を模した、海水と泥と深海幽霊船のガラス模型の入った瓶を艦隊長に渡した。)
艦隊長。いい思い出になる。ありがとう。後で、記念品が大使館経由で行くはずだ。受け取ってくれ。
奈良。畏れ多いこと。護衛をしていただき、ありがとうございました。
艦隊長。上からの命令だ。君の部下は優秀だ。紹介してくれ。
(志摩、鈴鹿、虎之介を呼ぶ。簡単に紹介する。艦隊長が簡単にねぎらう。)
艦隊長。頼もしい感じだ。東京で活躍しているそうだな。
奈良。ええ。よく働いてくれます。
艦隊長。来てくれてありがとう。下がってくれ。時に奈良少佐、相談がある。
奈良。何でしょうか。
艦隊長。バロンとアンを売ってくれ。
奈良。価格はご存じ。
艦隊長。聞いた。一機につき、2000万ドル。年間維持費は別だ。
奈良。両機ともいい機体です。バロンの得意技はご存じ。
艦隊長。変身するのは見せてもらった。面白い。
奈良。アンは平凡な機体です。いいのですか?。
艦隊長。そんなことはない。実績では、世界最高峰のはず。聞くところによると、奈良部長は、絶対に売らないそうだ。
奈良。たしかに、愛着のある機体ですけど、もういいでしょう。十分に楽しいときを過ごしました。アンには、もっと広い世界で活躍して欲しい。
艦隊長。あは、あははは、私の思ったとおりだ。私の勝ちだ。
奈良。営業を紹介します。
艦隊長。アンは買わない。引き続き使ってくれ。
奈良。勝ったとおっしゃったのは?。
艦隊長。そちらの営業だよ。奈良部長は、引き渡しを拒否すると言ったのだ。私は、必ず売るはずだと言った。その通りになった。バロンとペアになる女性アンドロイドは、新規製造分をいただく。
奈良。そうですか。
艦隊長。奈良獣医少佐、何を狙っている。
奈良。アンがスパイをすると。
艦隊長。そうではない。スパイというのなら、どの自動人形も同じだ。そうではなく、ID社は自動人形を全世界に展開している。
奈良。本部の意向です。私も知らない。それに、お言葉ですが、自動人形に込められた意味は、そちらの方が良くご存じのはず。
艦隊長。我が軍が、自動人形の開発をあきらめた理由。表向きではなく、真の理由だ。
奈良。なんとなくは。想像になる。
艦隊長。君の感想を言ってみたまえ。
奈良。自動人形は危険すぎる。局所の戦術を知り尽くしている。世界最強の軍、A国軍のノウハウが惜しげもなく注ぎ込まれている。
艦隊長。そうらしい。
奈良。敵だけでなく、味方の武器も無効にしてしまう。最初は単に救護所の防衛のつもりだった。だが、最大効率の防御の武器とは…。
艦隊長。攻撃の意味をなくしてしまう。
奈良。今までは、数が少なかったから、全く価値はなかった。しかし、自動人形は外界に反応する。コントロールを切っても、自分たちで連絡してしまう。あらゆる手段を使って。コントローラの最後の1人がいなくなるまで、それは続く。
艦隊長。そして、反応した自動人形どもが、損害を最小限にしようと行動する。
奈良。恐ろしいこと。想定していなかった世界だ。軍というものが必要となった、有史はるか以前から、一度も実現しなかった世界。
艦隊長。最終兵器とは、最大限の攻撃兵器だと、誰もが思っていた。
奈良。盲点だった。気付くべきだった。だが、自動人形は、すでに存在する。
艦隊長。良かった、君に会えて。よく分かった。
奈良。ID社が用意する自動人形は、たった200機。何も起こらない。
艦隊長。何かをつぶすと言われている。その200機で。そう、何も起こらないのだ。そのための自動人形。
奈良。何か役だちましたか。
艦隊長。役だった。この最悪の事態を突破する方法が、見えてきた。
奈良。そうですか。
艦隊長。そうですかではない。鍵はお前だ。
奈良。私は自動人形計画を左右できる立場にない。
艦隊長。分かっている。だが、自動人形はあなたを慕う。例外なく。
奈良。不思議だ。
艦隊長。不思議ではない。実利上の意味があるはずだ。
奈良。自らの生存のため。自動人形は、そういう。
艦隊長。その通りだよ。それしかない。自動人形が本当に最終兵器なら、いずれ廃棄される。
奈良。まさか。私が自動人形を、自らの手で…。
艦隊長。いずれ、分かる。嫌でもな。
(バロンは、そのまま引き取られてしまった。勇敢で気品のある姿が、艦隊長のお気に入りらしい。例によって、A国ID社がコントローラを付ける。
予定通り、私と黒田氏と虎之介、クロとアンとレイは2機のシリーズBで日本に向かう。ジーンとジョーもいっしょ。南アフリカから陸づたいに、延々と回ることになった。
海原博士たちは、深海幽霊船に戻り、再び南極海を一周の旅に出た。
立ち寄ったM国では、以前、日本に来ていたダウードさんが迎えに来てくれた。とにかくしつこく誘うので、一日、観光旅行に費やす。結局、予定を倍以上超えた日程になってしまった。)
甲板では、B中尉とジーンが待っていた。ジョーとバロンとアンもいる。)
B中尉。少佐、ご無事で。
奈良。うまく行ったようだな。
B中尉。もちろんです。
海原。すばらしい船じゃの。
黒田。最初に来たときは、風が強くて、慌てていたから、何が何だか分からなかった。こんなに大きな船だったのか。
B中尉。世界に誇る船です。さあ、こちらにどうぞ。
(バロンとアンの肩を抱き、ねぎらう。よくやってくれた。
私たちは、会議室に案内された。中はパーティー会場になっている。)
艦隊長。奈良獣医少佐、来てくれたか。今は任務中なので、これが最大限だ。歓迎するぞ。楽しんでくれ。
艦長。活躍を見せていただきました。印象的でした。
(普通に、バイキング形式のパーティーだ。艦隊長のあいさつの後、食事。私は、大洋底の海底を模した、海水と泥と深海幽霊船のガラス模型の入った瓶を艦隊長に渡した。)
艦隊長。いい思い出になる。ありがとう。後で、記念品が大使館経由で行くはずだ。受け取ってくれ。
奈良。畏れ多いこと。護衛をしていただき、ありがとうございました。
艦隊長。上からの命令だ。君の部下は優秀だ。紹介してくれ。
(志摩、鈴鹿、虎之介を呼ぶ。簡単に紹介する。艦隊長が簡単にねぎらう。)
艦隊長。頼もしい感じだ。東京で活躍しているそうだな。
奈良。ええ。よく働いてくれます。
艦隊長。来てくれてありがとう。下がってくれ。時に奈良少佐、相談がある。
奈良。何でしょうか。
艦隊長。バロンとアンを売ってくれ。
奈良。価格はご存じ。
艦隊長。聞いた。一機につき、2000万ドル。年間維持費は別だ。
奈良。両機ともいい機体です。バロンの得意技はご存じ。
艦隊長。変身するのは見せてもらった。面白い。
奈良。アンは平凡な機体です。いいのですか?。
艦隊長。そんなことはない。実績では、世界最高峰のはず。聞くところによると、奈良部長は、絶対に売らないそうだ。
奈良。たしかに、愛着のある機体ですけど、もういいでしょう。十分に楽しいときを過ごしました。アンには、もっと広い世界で活躍して欲しい。
艦隊長。あは、あははは、私の思ったとおりだ。私の勝ちだ。
奈良。営業を紹介します。
艦隊長。アンは買わない。引き続き使ってくれ。
奈良。勝ったとおっしゃったのは?。
艦隊長。そちらの営業だよ。奈良部長は、引き渡しを拒否すると言ったのだ。私は、必ず売るはずだと言った。その通りになった。バロンとペアになる女性アンドロイドは、新規製造分をいただく。
奈良。そうですか。
艦隊長。奈良獣医少佐、何を狙っている。
奈良。アンがスパイをすると。
艦隊長。そうではない。スパイというのなら、どの自動人形も同じだ。そうではなく、ID社は自動人形を全世界に展開している。
奈良。本部の意向です。私も知らない。それに、お言葉ですが、自動人形に込められた意味は、そちらの方が良くご存じのはず。
艦隊長。我が軍が、自動人形の開発をあきらめた理由。表向きではなく、真の理由だ。
奈良。なんとなくは。想像になる。
艦隊長。君の感想を言ってみたまえ。
奈良。自動人形は危険すぎる。局所の戦術を知り尽くしている。世界最強の軍、A国軍のノウハウが惜しげもなく注ぎ込まれている。
艦隊長。そうらしい。
奈良。敵だけでなく、味方の武器も無効にしてしまう。最初は単に救護所の防衛のつもりだった。だが、最大効率の防御の武器とは…。
艦隊長。攻撃の意味をなくしてしまう。
奈良。今までは、数が少なかったから、全く価値はなかった。しかし、自動人形は外界に反応する。コントロールを切っても、自分たちで連絡してしまう。あらゆる手段を使って。コントローラの最後の1人がいなくなるまで、それは続く。
艦隊長。そして、反応した自動人形どもが、損害を最小限にしようと行動する。
奈良。恐ろしいこと。想定していなかった世界だ。軍というものが必要となった、有史はるか以前から、一度も実現しなかった世界。
艦隊長。最終兵器とは、最大限の攻撃兵器だと、誰もが思っていた。
奈良。盲点だった。気付くべきだった。だが、自動人形は、すでに存在する。
艦隊長。良かった、君に会えて。よく分かった。
奈良。ID社が用意する自動人形は、たった200機。何も起こらない。
艦隊長。何かをつぶすと言われている。その200機で。そう、何も起こらないのだ。そのための自動人形。
奈良。何か役だちましたか。
艦隊長。役だった。この最悪の事態を突破する方法が、見えてきた。
奈良。そうですか。
艦隊長。そうですかではない。鍵はお前だ。
奈良。私は自動人形計画を左右できる立場にない。
艦隊長。分かっている。だが、自動人形はあなたを慕う。例外なく。
奈良。不思議だ。
艦隊長。不思議ではない。実利上の意味があるはずだ。
奈良。自らの生存のため。自動人形は、そういう。
艦隊長。その通りだよ。それしかない。自動人形が本当に最終兵器なら、いずれ廃棄される。
奈良。まさか。私が自動人形を、自らの手で…。
艦隊長。いずれ、分かる。嫌でもな。
(バロンは、そのまま引き取られてしまった。勇敢で気品のある姿が、艦隊長のお気に入りらしい。例によって、A国ID社がコントローラを付ける。
予定通り、私と黒田氏と虎之介、クロとアンとレイは2機のシリーズBで日本に向かう。ジーンとジョーもいっしょ。南アフリカから陸づたいに、延々と回ることになった。
海原博士たちは、深海幽霊船に戻り、再び南極海を一周の旅に出た。
立ち寄ったM国では、以前、日本に来ていたダウードさんが迎えに来てくれた。とにかくしつこく誘うので、一日、観光旅行に費やす。結局、予定を倍以上超えた日程になってしまった。)