ID物語

書きなぐりSF小説

第51話。東京サイボーグ農園、始動。3. 東京サイボーグ農園の人気者

2011-12-08 | Weblog
 (午後は、岸壁を一周してから、中を散歩する。
 北の隣の埋め立て地とは、3本の橋で結ばれているが、普段使うのは、中央の一つだけ。北の回廊には駐車場があって、入園者は東に向かう。東の岸壁のすぐには、上だけSF戦艦の格好をした双胴船の水上バスの停泊場がある。その南には、本物のA国海軍の哨戒艇が泊っている。ファミリー牧場の入り口は、ここ。南の回廊には、簡易漁港があって、一部は屋根に覆われていて、セイリュウはここに停泊している。その水面下には、深海幽霊船の接続機構が隠れている。
 その先、南回廊の中央東よりに、ID社の建物がある。私(奈良)が普段いるのはここだ。地上3階、地下2階で、観測のためのタワーが建っている。東の回廊は、飛行場だ。ここに面する農園の敷地に、工房や農園の維持のための機械や宿泊施設などがある。北東の端には、ロケットみたいな形の管制塔がある。資材などの搬入口から、農園に入る。
 農園と牧場は屋根に覆われていて、巨大な温室みたいに見える。北3分の2が農園で、ゆるやかな起伏がある。園は整地までできていて、開園してから整備を開始する。東の壁づたいの宿泊施設や会議室の建物は、建築中。空中回廊は、土台だけできていて、開演後に建設開始。
 ファミリー牧場は完成していて、中央広場の事務棟は稼働中。開園記念式典の日から、売店と食堂が開店する。月曜日が定休日で、他に、年末年始は休園する。)

ムーア。原子炉か何かを置いたら、隔絶した海のど真ん中でも生活できるわけだ。

ジーン。新鮮な牛乳や野菜が食べられる。

エド。面白い。成功したら、素敵だ。

 (若い連中は、牧場部分を思い思いに散策している。御船氏と海原博士たちは、散歩しながら、農園を今後どうするかを検討しているようだ。
 東京サイボーグ農園は、一応、株式会社なのだが、国と東京都が経営を押さえていて、ほぼ公営企業。運転資金は、基金が支えていて、出資者はたくさんの企業や団体で、A国軍まで含まれている。もちろん、それなりの発言権はある。だから御船園長は、大型船の船長のようなもので、園の運営の企画や実施はするけど、経営上の権限は限られている。要するに、サラリーマンだ。)

御船。なんか、目立つものが欲しい。

海原。これだけ目立っていてもか。

御船。どういったらいいかな。象徴みたいなものが欲しい。

大江山。トカマク基地のエクササイザーみたいなものだな。

御船。それなに。

 (教授が説明する。)

御船。そりゃいい。玄関に飾ろうか。フライドチキンのお店みたいに。

海原。いまいち、目的が分からんの。どれ、若い連中に考えさせるか。

 (海原博士、院生と三笠と四条を集める。何事かといぶかった、ジーンとキャシーがやってきて、話に加わる。結局、若い連中全員が集まってしまった。)

羽鳥。この上、何か飾るのか。

鈴鹿。目立つように、SF戦艦(連絡船)と空飛ぶ戦車(消火装置)を用意したんだけど。

土本。モニュメントよ。一言で言い表すもの。

キャシー。自由の女神。

ジーン。エッフェル塔。

ムーア。日本の美しい城も、そうじゃないのか。

土本。そうでしょう。権力の象徴。

ジーン。周囲に目立つもの、多いわね。

羽鳥。意匠に凝った橋にビル。モノレールに新交通システム。空港も近い。

キャシー。壁面を飾るとか。

芦屋。エクササイザーを持ってくる案は出なかったのか。

海原。サイボーグ研と重複する。できれば、別のを考えて欲しい。

松井。巨大ロボと対抗しうるものと言えば。

渡辺。アンドロイドだ。ここにはたくさんいる。動物型も。

松井。ええと、動物型はと。黒猫、雌ギツネ、ジャッカル、イヌワシにジャガー。

鈴鹿。他にもいっぱいいるわよ。インドニシキヘビ、ワタリガラス、ロバ、メカカメ。

志摩。トカゲに、メカ恐竜に、メカ白鳥にウマ。妖精は入るのかな。

ベル。私。

鈴鹿。うん。人間には見えないもの。

渡辺。人魚型はないんだ。

鈴鹿。なによそれ。どういう想像を…。

志摩。いるよ。メイにセイ。足はついているけど、水中活動用だ。

鈴鹿。そんなこと言ったら、クルマ型に、飛行機型に、船型。

イチ。ぼくたちは空中活動用自動人形。

松井。すさまじい。何でもある。

渡辺。人間が巨大化とか。

鈴鹿。バロンがそうかな。貴公子が超人ハルクみたいになる。質量は同じだから、大きく見せるだけだけど。

松井。何と、実績あり。

渡辺。普通の発想じゃ、まったく現実に負けている。

鈴鹿。そうよ。でも、ちょっとやりすぎ。金に糸目を付けないから、こうなった。

松井。なぜ資金が続くの?。

鈴鹿。この物語、最大の謎。量産が始まった今でも、その手の話が断られたことはない。

松井。後は、化け物系しか残ってない。

鈴鹿。ドッペルゲンガー(ケイコ)にキキーモラ。召還された悪魔に、ゴーレム。

松井。そんなところまで、手を出している。

渡辺。荒唐無稽なものしか残ってないよ。ガス人間とか、昆虫集団とか。

鈴鹿。軟体動物もない。

松井。タコにイカにカタツムリにノーチラス。

キャシー。いけてる、ノーチラス。海にプカプカ。今日はどこに行こうかな、って。

ジーン。こほん。イルカ型は。

鈴鹿。そのうち、作られるんじゃないかと予想されている。

エド。ここが一番乗りだ。

土本。海軍のイルカを利用する計画はどうなったのよ。

ジーン。秘密。

鈴鹿。うまく行くわけ、ないじゃない。普通に魚雷使ったらおしまい。

土本。救助は。

松井。自動人形だ。でも、イルカ型、使い道あるかな。

海原。もういい。話がずれ始めたぞ。アンドロイドを全面に出そう。ジョーンズと、トーキョー。様になるはずだ。

キャシー。イチとレイ、A31もいる。

雷電。こっちだって、豪華よ。ゴールドたちは出せるんじゃないかな。

海原。そういうことじゃ。

キャシー。そういうこと、って、何かアトラクションをやるの?。

海原。大道芸。この広場で。

鈴鹿。それがモニュメントの代り。

海原。大きな箱ものは、もういいじゃろ。周囲の異形の建築物に対抗しても、なんとなく迷惑をかけそうじゃ。

キャシー。子供たちに受けるやつ。

海原。親子で楽しめるやつ。

キャシー。毎日。

海原。毎日でもできるくらいの、簡単なのでいい。

キャシー。相談してみる。

鈴鹿。どこに。

キャシー。A国ID社よ。その手の展示物の専門チームがあるはず。

羽鳥。さすがと言うか、あきれると言うか。

キャシー。すばらしいんだから。

海原。園長に伝えておく。こちらの対応チームを作れ。

キャシー。がってん。

 (キャシー、こんなことには意欲がわくようで、すぐに連絡開始。何とか、最初の出し物を開園式典に間に合わせてしまった。)


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