(志摩たちは、自動人形の展示会のリハーサル前日夕に大阪入りした。新車両と旧車両に乗って。来たのは志摩、虎之介、亜有、火本、水本、海原博士、A31。なぜか土本(五香)もいたりする。大江山教授やサイボーグ研の選抜メンバーは、永田や関とともにID社のバスで本番前日夕に大阪にやってくる手はずだ。
私(奈良)たちと落ち合うつもりだったのだが、私たちは小鹿氏の家に招かれている。この有名喜劇俳優のコントと歌が加わるとの連絡を受けて、志摩たちは作戦会議をする。クラシック作曲家、猫山園太氏の懐刀、若手音楽プロデューサの加藤元理氏も合流した。)
清水。急な展開。何が何だか分からない。
加藤。喜劇俳優の高橋小鹿さんが加わっただけだよ。
清水。あなたが一番大変じゃない。港清門って、シナリオライター、知っているの?。
加藤。知らないけど、シナリオライターなる人物と打ち合わせたことは何度もある。
志摩。高橋子鹿は、ここでは有名。ゆめゆめおろそかにはできない。
(志摩はお笑いのファンで、業界に詳しいのだ。)
加藤。承知した。
志摩。港清門は劇団の専属ライター。この人の書いたものだけをやっているわけじゃないけど、9割方は書いてる。劇団率いる小鹿さんの信頼が厚いんだ。
加藤。もちろんプロだよ。それも上級の。将来は近松門左衛門に例えられるかもしれない。
清水。そんなに大変な人なの?。
加藤。知っているのは、さっきもらったプロットだけ。とてもいい。いわゆる世話物だ。独特の浪花節の人情のパンチが効いている。そう、この業界は人気がすべて。歴史に残る前に、大衆に受けないとどうしようも無い。
清水。そりゃそうか。厳しいわね。
加藤。厳しいよ。ぼくだって…。
芦屋。「ぼく」はいいから、おれたちは何をすればいいんだ。
加藤。進行はこちらに任せてくれればいい。芦屋さんはだな…。
清水。それは、明日決まってから詳しく言って。
加藤。ええと、何の話だったか。
アン。港さんのお話がとってもいいって事。
加藤。そう。こんな浪花節、関東じゃ絶対に受けない。ここ、大阪だから拍手喝采。
清水。ご当地ものなの?。
加藤。関東の人が理解できないだけだ。ぼくも。
クロ(会話装置)。「ぼく」はいいから、どんな話なんだ。
加藤。時は享保、1720年代。将軍吉宗の時代。所はもちろん、ここ大坂。船場の成金問屋の一人息子が酔って悲惨な事故を起こす。
清水。もう、どうしようもない情けない男。
加藤。よく分かる。その通り。事件に巻き込まれた側は大変な悲しみと怒り。でも、その息子は自覚が無いどころか、自分の降って湧いた災難に戸惑うだけ。
清水。そこで、大岡裁き。
加藤。それは江戸だよ。でも、そのとおり。江戸ではお上だけど、大坂では民衆が裁く。
志摩。ええと、大坂は幕府の直轄領。そんな勝手なことは…。
加藤。ちっちっち、それは大江戸の発想だよ。こちらでは、そうはならない。
清水。ええと、ねずみ小僧のようなのが出てくるとか。
加藤。それが子鹿先生の役。かっこいい。
清水。犯罪は犯罪よ。
加藤。当然。裁きが待っている。それが一層、大衆にアピールするんだ。
清水。反社会的劇。
加藤。あのね、単に音楽のネタだよ。売春宿の話と、どっちがいい?。
清水。どっちもだめ。
加藤。あなた、バイオリンが弾けるのと、弾けないのとどっちがいい。
清水。言うわね、あんた。
加藤。要は、港先生の話なんか、どうでもいいんだ。音楽さえ楽しめれば。
清水。言い切ったわね。
加藤。向こうもこっちの音楽なんか気に留めてない。何なら、確認すればいい。
芦屋。芸術はどうにも分からん。いいぜ、とことん付き合ってやる。
加藤。頼む。お願いだ。やってくれ。
清水。心配しないで。必ず成功させる。
クロ。まとまったようだな。
水本。どうなることかと思った。
火本。何となく分かる。
清水。あなたたちも音楽してるから。
火本。不思議な感覚。理性では理解できない。
水本。うん。何となく不本意。
清水。でも、確かにそれ言ってたら、クラシックなんかできない。
志摩。そんな危ないのがあるのか。
加藤。お上の逆鱗に触れて、上演禁止になった音楽は数知れず。政治的、宗教的、退廃的、なんでもござれ。
志摩。どぎついギャグといっしょだ。
加藤。その理解で良い。
清水。よくないと思うけど、まあ、いいか。
土本。ふわわー、もう寝ようよ。
加藤。それでは。
(さっさと出ていった。)
土本。変なやつ。
水本。でしょう?。芸術家ってあんなのかな。
清水。あれは作者がデフォルメしているのよ。
土本。そうとも言い切れない。学者にだって変なのいる。
火本。あれとか、それとか、あんなのとか。
海原。禁句じゃ。
水本。バカかそうでないかはすぐに分かる。こっちも眠ろう。
火本。うん。
(部屋に別れて休む。海原博士にはジロを付ける。残りのA31は亜有といっしょだ。私たちとは翌朝会うことになる。)
私(奈良)たちと落ち合うつもりだったのだが、私たちは小鹿氏の家に招かれている。この有名喜劇俳優のコントと歌が加わるとの連絡を受けて、志摩たちは作戦会議をする。クラシック作曲家、猫山園太氏の懐刀、若手音楽プロデューサの加藤元理氏も合流した。)
清水。急な展開。何が何だか分からない。
加藤。喜劇俳優の高橋小鹿さんが加わっただけだよ。
清水。あなたが一番大変じゃない。港清門って、シナリオライター、知っているの?。
加藤。知らないけど、シナリオライターなる人物と打ち合わせたことは何度もある。
志摩。高橋子鹿は、ここでは有名。ゆめゆめおろそかにはできない。
(志摩はお笑いのファンで、業界に詳しいのだ。)
加藤。承知した。
志摩。港清門は劇団の専属ライター。この人の書いたものだけをやっているわけじゃないけど、9割方は書いてる。劇団率いる小鹿さんの信頼が厚いんだ。
加藤。もちろんプロだよ。それも上級の。将来は近松門左衛門に例えられるかもしれない。
清水。そんなに大変な人なの?。
加藤。知っているのは、さっきもらったプロットだけ。とてもいい。いわゆる世話物だ。独特の浪花節の人情のパンチが効いている。そう、この業界は人気がすべて。歴史に残る前に、大衆に受けないとどうしようも無い。
清水。そりゃそうか。厳しいわね。
加藤。厳しいよ。ぼくだって…。
芦屋。「ぼく」はいいから、おれたちは何をすればいいんだ。
加藤。進行はこちらに任せてくれればいい。芦屋さんはだな…。
清水。それは、明日決まってから詳しく言って。
加藤。ええと、何の話だったか。
アン。港さんのお話がとってもいいって事。
加藤。そう。こんな浪花節、関東じゃ絶対に受けない。ここ、大阪だから拍手喝采。
清水。ご当地ものなの?。
加藤。関東の人が理解できないだけだ。ぼくも。
クロ(会話装置)。「ぼく」はいいから、どんな話なんだ。
加藤。時は享保、1720年代。将軍吉宗の時代。所はもちろん、ここ大坂。船場の成金問屋の一人息子が酔って悲惨な事故を起こす。
清水。もう、どうしようもない情けない男。
加藤。よく分かる。その通り。事件に巻き込まれた側は大変な悲しみと怒り。でも、その息子は自覚が無いどころか、自分の降って湧いた災難に戸惑うだけ。
清水。そこで、大岡裁き。
加藤。それは江戸だよ。でも、そのとおり。江戸ではお上だけど、大坂では民衆が裁く。
志摩。ええと、大坂は幕府の直轄領。そんな勝手なことは…。
加藤。ちっちっち、それは大江戸の発想だよ。こちらでは、そうはならない。
清水。ええと、ねずみ小僧のようなのが出てくるとか。
加藤。それが子鹿先生の役。かっこいい。
清水。犯罪は犯罪よ。
加藤。当然。裁きが待っている。それが一層、大衆にアピールするんだ。
清水。反社会的劇。
加藤。あのね、単に音楽のネタだよ。売春宿の話と、どっちがいい?。
清水。どっちもだめ。
加藤。あなた、バイオリンが弾けるのと、弾けないのとどっちがいい。
清水。言うわね、あんた。
加藤。要は、港先生の話なんか、どうでもいいんだ。音楽さえ楽しめれば。
清水。言い切ったわね。
加藤。向こうもこっちの音楽なんか気に留めてない。何なら、確認すればいい。
芦屋。芸術はどうにも分からん。いいぜ、とことん付き合ってやる。
加藤。頼む。お願いだ。やってくれ。
清水。心配しないで。必ず成功させる。
クロ。まとまったようだな。
水本。どうなることかと思った。
火本。何となく分かる。
清水。あなたたちも音楽してるから。
火本。不思議な感覚。理性では理解できない。
水本。うん。何となく不本意。
清水。でも、確かにそれ言ってたら、クラシックなんかできない。
志摩。そんな危ないのがあるのか。
加藤。お上の逆鱗に触れて、上演禁止になった音楽は数知れず。政治的、宗教的、退廃的、なんでもござれ。
志摩。どぎついギャグといっしょだ。
加藤。その理解で良い。
清水。よくないと思うけど、まあ、いいか。
土本。ふわわー、もう寝ようよ。
加藤。それでは。
(さっさと出ていった。)
土本。変なやつ。
水本。でしょう?。芸術家ってあんなのかな。
清水。あれは作者がデフォルメしているのよ。
土本。そうとも言い切れない。学者にだって変なのいる。
火本。あれとか、それとか、あんなのとか。
海原。禁句じゃ。
水本。バカかそうでないかはすぐに分かる。こっちも眠ろう。
火本。うん。
(部屋に別れて休む。海原博士にはジロを付ける。残りのA31は亜有といっしょだ。私たちとは翌朝会うことになる。)