ID物語

書きなぐりSF小説

第33話。夏立つ頃。13. 族

2010-11-29 | Weblog
 (いい天気。出かけたい人が多いようで、またもやバイクの集団に追い付かれた。でも、今度はちょっと怪しい連中。目立つ格好をしていたからか、ちょっと煽られた。相手にしなかったら、さっさと先に行ってしまった。)

エレキ。危なそうなやつら。

芦屋。相手にしない方がいい。

 (ところが、少し山道に入ったところで、さっきの集団が待っていた。道をふさがれ、止められてしまった。)

山田。何のつもりだ。

族1。珍しいバイクに乗っているな。

山田。あれか。I国からの輸入品らしい。

族1。競争してみないか。

山田。お前ら、走り屋か。遠慮する。怪我したくない。

族2。そいつ、山田司かな。

族3。こんなところに出るわけない。

山田。そんなこと、どうでもいい。通せ。ピクニックの途中だ。邪魔するな。

族1。へん、しっぽ巻いたか。

山田。ああ、その通りだ。分かったら、どいてくれ。

 (3台はゆっくり走り出す。しかし、粘着するやつら、後ろから寄ってくる。そして、鎖なんかを振り回す。当てるつもりはないようだ。威嚇しているだけ。
 山田氏、どうするのかと思ったら、するすると飛び出す。エレキとマグネはピンと来たらしい。同様に、さりげなくスピードを上げる。出力はこちらが上だ。集団をみるみる引き離す。)

清水(通信機でDTM手話)◎。虎之介、何よこれ。

芦屋◎。さあ、族どもの挨拶はよく知らん。

清水◎。後ろで怒っているみたい。無駄な警笛鳴らしている。

芦屋◎。あ、山田さん、スピード落とした。挑戦を受ける気だ。

清水◎。道路交通法違反よ。

芦屋◎。手遅れのようだ。

マグネ◎。向かってくる。しっかり掴まってください。

清水◎。やれやれ、巻き込まれたか。

 (当然、煽ってくる。逃げる。エレキもマグネも、こうした状況は自動人形として熟知している。撹乱するために、山田氏のバイクとうまく絡めて走る。
 相手方は、下手くそなやつも混じっているらしい、何台か脱落した。なので、ますます怒って絡んで来る。しばらく、追跡劇が続く。
 山田氏、この道路を熟知しているらしい、ちょっと飛び出たかと思うと、エレキとマグネに合図する。カーブしたところで、細い側道に入る。しばらく走って、停車。もちろん、相手は本道を通過してしまい、こっちには来ない。)

芦屋。撒いたのか。

山田。そのとおり。どうする、この先に絶景地がある。予定を変更して行ってみるか。

芦屋。そうしたい。

 (かなり細い道をゆっくり走る。そして、展望できる場所に出た。眼下に本道が見える。)

芦屋。バイクの音が聞こえる。

山田。さっきの集団らしい。捜索している。

清水。私たちを。

山田。そうかも。あるいは次の目標を見つけたか。

清水。このあたりが根拠地なのかな。

山田。この道路は、あの手の集団が出没するので有名だ。警察の取り締まりも頻繁に行われる。

芦屋。あっ、サイレンの音だ。確かに取り締まっている。

山田。今回は解散のはずだ。

清水。これを待ってたの?。

山田。そう言うことになる。

芦屋。戻るのか。

山田。けったくそ悪い。このまま進もう。住宅地から高速に入って、戻る。

 (途中、一部はほとんど道無き道になっている。そして、舗装道路に出た。高速道に入り、サービスエリアで停車。夕食にする。エレキとマグネはバイクの番。)

芦屋。ありがとうございました。いい訓練になった。

山田。よく付いてくる。ロボットを操縦しているのはあなた。

清水。私です。でも、前のオートバイに付いて行けとか、簡単な指令しかしていない。エレキとマグネが状況を判断して行動する。

山田。ロボットだ。だから、調整の必要があった。

清水。そうです。何だか、自信がもててきた。ありがとうございます。

山田。よかった。お役に立てたようで。それにしても、あなた、普通のお嬢さんじゃない。よかったら、どんな仕事をしているのか、教えてください。

 (亜有はID本部の名刺、虎之介は情報収集部の名刺を渡す。)

山田。何かの調査かな。

清水。虎之介の所属する情報収集部は、企業の技術動向を調査します。我が社の今後の企業戦略を決定するため。私は、たまたま本部から派遣されている。目的は、さっきのロボットたちの動きを監視するため。

山田。調査。現場の調査もある。

清水。普段は公式の発表資料から類推してますけど、本当かどうかの確認が必要。現場を調査することも多い。

山田。だから、さっきみたいな悪路を進むこともある、ということか。

清水。ええ。めったに無いけれど、仕事です。

山田。それで、度胸があるんだ。びっくりした。

清水。しがみついていただけ。

山田。はは、そんなことはない。勇敢ですよ。さて、どうしようかな。目的地はいっしょだけど、別行動で帰ります?。

清水。ええ、できれば。

山田。今日は楽しかった。いずれ機会があれば。

 (食事の続きをする。ところが、エレキから連絡あり。駐車場を探索していたら、非合法物質の雰囲気検知と。亜有と虎之介は、すっと席を立つ。山田氏に一礼して、レジで料金を払って、食堂を出る。料理は半分残したまま。怪しいと思った山田氏が、後から付ける。)