ID物語

書きなぐりSF小説

第32話。アクロニム。10. 御影の心変わり

2010-11-02 | Weblog
 (一方、モグ内にて。)

水本。永田さんはいるの?。

芦屋。政府専用車が近くに止まっているはずだ。すぐに連絡できるし、すぐに踏み込める。

火本。あの御影っていう女、信用できるのかな。

芦屋。すぐに寝返るので有名らしい。まあ、今のところは大丈夫だろう。優遇されているようだから。

火本。内部の裏切り者が心配だ。

芦屋。そればかりは、その時にならないと分からない。イチとクロがいるから大丈夫だろう。レイも突入できるし。それより、仮眠しておけ。深夜に事が起こる可能性がある。

火本。部品が更新されたから?。

芦屋。それだけの根拠だ。

 (展望台にて。戻ってきた関はソファでくーすか眠っている。)

秘書。この女、豪傑だわ。こんな状況で、平気で眠っている。

清水。ふわあ、私も仮眠しなくちゃ。何か起こりそうだもの。

秘書。さっき、部品が運び込まれたから。

清水。そう。今夜空振りしたら、やっかい。ずっと張り込みしないといけない。

イチ。鈴木さんも仮眠してよ。活躍しなきゃ。

秘書。御影って呼ばれることの方が多い。そう呼んでくれる?。

イチ。じゃあ、御影さん、どうか休んで。何か起きそうになったら知らせるから。

 (社長も総務部長も技術部長も着の身着のまま仮眠している。今夜だけは缶詰めだ。何も起こらなかったら、部品を押収し、内部調査しておしまい。どことどう関連しているのかは、分からずじまい。ふと、御影が亜有に話しかけてきた。)

秘書。亜有さん、密輸って儲かるのかな。

清水。そりゃ儲かるでしょう。でないと、やらない。

秘書。そっちに付こうかな。

清水。今寝返ったら、政府にマークされて、しばらく身動きできなくなる。事が済んでからの方が安全。

秘書。そうするか。

清水。相手にもよる。大きな所と付き合ったら、内部抗争に巻き込まれたり、軍を相手にしたり、ろくなことはない。かといって、小さいところだったら、一人の裏切りで崩壊。

秘書。よく分かる。

清水。こっちでがんばっても、政府からは感謝状一枚。社長からはボーナスもらえるかもしれないけど。

秘書。ボーナスもらってから考えよっか。適当にがんばろう。

清水。無難な選択と思う。本日事が起こったら、相手の規模が分かる。

秘書。あなた、話が分かる。ブローカーできるんじゃない?。

清水。なんか、そんな商売になってしまった。まだデビューしてないけど。

秘書。将来さ、仕事があったら紹介してよ。がんばるわ。

清水。まだ、あなたの実力を知らない。少なくとも、世界ランキングには届いてない。

秘書。あなたの目で確かめてよ。強いんだから。

関。清水さーん、なんて相談しているのよ。

秘書。出たーっ、正義感のかたまり。

関。あんたっ、軍が恐かったら、寝返らないことね。

秘書。だから、今回は協力するって言ってるじゃない。

清水。関さん、大丈夫よ。この人、損得勘定はちゃんとできるみたい。

秘書。あんたと違って。

関。他人を安月給と思って…、真実だけど。ボーナスは出るけど、ちょっとうれしいだけ。

秘書。ほら見なさい。あなたほどの実力のある人が生かされてないのよ。さっさと親方を変えるべき。

関。それとこれとは違ーう。

清水。関さんを説得するのは無駄。特に経済的問題で。

秘書。こーむいんは安定しているものね。親方日の丸だしー。

関。言いたい放題言って。財務省をなめるんじゃない。

秘書。あらら、脱税調査時の殺し文句かしら。

清水。そういえば、脱税調査に関与したことはない。どんな感じ?。

関。やったらたっぷり教えてやる。くれぐれも、納税は確実に。

秘書。私の方が、よほど税金を払っているわ。いー暮らしさせてもらってるもの。