「お気に入り」1巻作品。
ヤングキングアワーズ連載中、前シリーズ〈獅子の時代〉全15巻も面白いです。
『ナポレオン -覇道進撃-』1巻 (長谷川哲也 先生)
「男の人生に後悔は不要」 (オビ文より)
前シリーズ〈獅子の時代〉はナポレオンの少年期から始まり、
フランス革命にトドメが刺されるまでが描かれましたが、
このシリーズは、第1執政となったナポレオンの〈覇道進撃〉が描かれます。
「史実は後からついてこい!」と言わんばかりの破天荒な男たちがくりひろげる
“男の世界”を描いた作品。 男と生まれたからには熱狂に身を投じ、野望の道を往くべし!
ここで活躍したのが、警察大臣のジョゼフ・フーシェ。
徹底した現場検証と証拠収集、そこから犯人グループを割り出すという有能さ。
冷酷にして狡猾な陰謀家として知られる彼の存在は、
ナポレオンの「覇道」にとって欠かせない片翼となっていきます。
もう一方の翼は、外務大臣のタレイラン・ペリゴール。
悪徳まみれの彼は、いつもお金儲けに精を出しているのですが、その有能さは折り紙つき。
弁舌巧みな彼の外交術や人脈は、ナポレオンにとって重宝すべきものなのです。
このフーシェとタレイランという両翼は、決して油断ならない“怪物”たちではあるものの、
ナポレオンが皇帝となるためには、彼らの力がまず必要。
この両巨頭とナポレオンの関係にも、このシリーズでは注目でしょうね。
とはいえ主役は、第1執政ナポレオン・ボナパルト。
このシリーズでは彼自身はもちろんのこと、ナポレオンの部下たちの活躍も見どころで、
有能な参謀のベルティエ、勇猛なる将帥であるランヌ、守銭奴だが有能・豪胆なマッセナ、
またナポレオンの敵であるイギリスのネルソンや、オーストリアのメラスなどなど、
“戦争の天才”ナポレオンをはじめ、強烈な個性の男たちがくりひろげる物語に、
血沸き肉躍る興奮を感じざるをえません。
さらに面白いのは、ナポレオンの評価軸。
彼は、認めた相手に対して「男だな」と述べて賛辞を贈ることが多く、
そこが話の盛り上がりになっていたりして興味深いのです。
逆に、自分の意に沿わない場合は、それがたとえ相手に死を強いるようなケースでも、
「男じゃない」なんて評する狂いっぷり。 この熱狂こそが、男が仕事を成し遂げるための
大切な要素であることを語っているかのようでもあります。
一方では、貧民を気づかう政治家としての顔をのぞかせながら、
また一方では、自分は安全圏にいながら部下に死を強いる“狂気”を見せたりもする。
そんな所が、これぞ「仕事」に命を懸ける男の姿だと感じさせる、凄味なのかもしれません。
あと、連載時には気づかなかったのですが、このクロイセって・・・あのクロイセ?
だとしたら、今後も彼は復讐のためにナポレオンを狙い続けるのでしょうね。
ナポレオン率いるフランス軍に蹂躙された故郷のため戦う男。
彼もまた1人の男であり、ナポレオンとは別の視点からの物語を感じさせてくれる存在。
ナポレオンが絶対正義なわけでも無謬でもないことを示している。
こうした描き方も見事ですね。
などなど、前シリーズから大好きだった作品。 新シリーズもかなり面白く、期待大です。
タレイランとフーシェもさりながら、今回はゴーダンやカルノーもポイントですね。
「男だ」については、ポリーヌに振られた直後のジュノーが最初でしょうが、とにかく今回は良くも悪くもキーワードという感じで。
ゴーダンのキャラクターは素晴らしかったですね。 彼もまた「男」ですし。
カルノーも、フーシェやタレイランに劣らぬナポレオン体制下の重要人物。
ただ、フーシェとタレイランは、その能力もさながら、
その後のナポレオン体制に与える影響力が、そのほかの人々よりも大きなものなのですよね。
なので、ちょっとクローズアップしてみた形になりました。
なにはともあれ、かなり面白くなってきている作品ですので、
連載ともども、今後も楽しみです。