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◆ 『GANTZ -ガンツ- 』33巻 感想

2012年01月30日 | ◆マンガ 感想

『GANTZ -ガンツ- 』33巻 (奥浩哉 先生)

 Gantz33

 32巻感想はこちら

 私はコミックス派なので、連載を追っておりません。

 なので、見当違いのことを書いていることもあるやもしれませんが、

 ご容赦いただけると幸いです。

 

 

 

以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)

 

 

 

 

・地獄へと投げ出される絶望

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 ナゾの場所へと転送されたGANTZチーム。

 それは絶望という名の地獄の始まり。

 この巻では、今まで順調に進んでいた人類の反撃が一転して

 圧倒的絶望へと叩き落される様子が、これでもかと描かれています。

 

 玄野2号(レイカのパートナー)のチームが転送されたナゾの場所には、

 おそろしい“敵”の群れがわんさかと・・・

 今まで相手にしてきた星人と同種の正体不明っぷりが、恐怖心・不安感をあおります。

 しかも、そこにいるのは生半可なことでは倒せない強敵ばかり。

 GANTZの武器をもってしても容易に倒せない“敵”の出現に、物語は過酷さを増し、

 読者までもが絶望を感じざるをえない展開を、見せつけてくることになるのでした。

 

 

 

・“狩る者”に対する“狩られる者”としての絶望

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 巨人たちの“狩場”に誘い込まれたタエさん。

 ここでは、巨人を相手にしてしまうと人間にはもうどうしようもない、

 ということが、じっくりとリアリティをもって描かれていますね。

 

 巨人が扱うオモチャのような武器ですら、人間に食い込むと痛々しいものなのに、

 巨人たちはその人間の感じる痛みを解せずに嗤ってばかり。

 捕まえた人間を無慈悲に殺害しても、それがアリンコをコロす子供のように、

 遊んでいるようにしか見えないところが、無邪気な残酷さとなっています。

 

 “狩る者”=巨人、“狩られる者”=人間という比較が、くっきりと描かれるこの話は、

 まさにどうしようもない絶望を感じさせるものなのです。

 

 

 

・彼我の差を圧倒的に思い知らされる絶望

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 別の猛者たちによるチームと出会ったものの・・・

 地獄の中での出会いは救いとなるのか? と思いきや、そこにあったのはさらなる絶望。

 人間がゴミのように捨てられる場所で、玄野たちは巨人たちとの決定的な“差”を

 見せつけられることになります。(ゴミ捨て場にタエさんと一緒にいた自衛隊員の遺体も?)

 

 これまで、一般人がなぶりものになされることが描かれていても、

 GANTZチームであればそれなりの反撃が可能であると感じさせる展開だったのですが、

 ここではGANTZチームですら、もはや敵わない、もうダメだ、死ぬしかない・・・

 と思い知らされる本格的な絶望が、読者の前に提示されることになります。

 

 

 

・意味不明なモノと不気味すぎる“攻撃”への絶望

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 ナゾの光の球。

 別チームのおっさんは、これに触れてはいけないと怯えながら叫んでますが、

 たしかに触れると「終わり」なトンデモナイ代物でしたね。

 

 まず一般人、そしてついにチームの中から1名、犠牲者が出ることに・・・

 ここで一般人から描かれていたのは、次にチームの1人が犠牲になることへの恐怖を

 あおるのと同時に、一瞬「助かった!」と思わせてしまう巧みな演出になっていました。

 おっさんのアドバイスで危機を回避できたと安心した瞬間に、一気に絶望へ突き落される。

 そんな風に、とんでもなく意地の悪い(作品的には見事な)描かれ方でした。

 

 でも、これアレですかね。

 「ぬらりひょん」の生態を元にした生物兵器のようなものなんですかね?

 だとすると、100点ボスだったぬらりひょんですら、巨人たちのサンプルにされている

 ということになるんでしょうね・・・ まあ妄想ですが。

 

 

 

・もう死ぬしかないという絶望・・・

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 「もう死ぬ!! みんな死ぬッ」

 立て続けに襲ってくる絶望に混乱しているおっさんの叫び。

 さらなる別(ハードスーツもいる)チームですら、次々にあっさりと屠ってしまう強力な敵が、

 軍団で襲ってくるのだから、もはやなすすべなし! たたみかける絶望、絶望、絶望。

 なんの攻撃も効かない、動きも早い、そんな得体のしれない敵軍団。

 GANTZの力が通じない・・・ これは読者にとっても絶望的ですよ。

 

 

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 そんな状況の中、1人突撃していゆく者が・・・

 玄野・・・ではなく、吉川!!

 GANTZの武器のことごとくが通じない敵を相手に、無謀とも思えるその特攻。

 

 これが説得力を持つのは、吉川個人の人格もあるのでしょうが、

 122ページあたりで彼がミスを犯しているシーンがあって、それの挽回のために

 決死の特攻=状況打開のカギを自らさがす行動に出たのだと思われる点ですね。

 このあたりの流れを感じさせる描き方も見事でした。

 

 そして、この行動が、絶望の中にほんのわずかな隙間をあけることに・・・!

 この瞬間がこれまた素晴らしかった!!

 彼の行動によって切り拓かれた道を、風、メアリー、彪馬、龍二、加藤、玄野と、

 6人が動き出す瞬間の絵、その後の見開きで並んで突撃する面々の絵と、

 今まで絶望の中でたまった鬱憤を、バッサリ切り裂く痛快さがあって興奮しました!!!

 メアリー、かっこいいよ、メアリィ~!

 絶望するおっさんと、最後まであきらめない玄野の対比もよかった!

 

 

 

・どこへ向かっているのかわからない不安と、希望の萌芽

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 一方、タエさんをさがす玄野1号は・・・

 巨人女性の協力により、ついに大きな手掛かりを得たものの、

 玄野に対して巨人女性は「この先」のことについて尋ねています。

 

 戦いが続けば殺し合う関係にある巨人と人類。

 巨人女性と玄野の関係は、緊張状態にはあるけれど、

 しかし確実に互いのことを知り、それぞれの種族が「同じ」であることに気付き始めている。

 はたしてこのことが、巨人と人類にとっての希望となりうるのか?

 

 ・・・でもねえ、この作品のえげつない所は、この33巻でもさんざん描かれてきましたが、

 希望を持たせて絶望に突き落とすという、もっとも効果的な落とし方なんですよね。

 そこで忘れてはいけないのが桜井の存在で、彼の巨人に対する復讐劇が、

 どのように影響してくるか?といったことは、今後の注目点になるやもしれません。

 

 

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 そして、もう1つの希望となるのか? 西くんの行動。

 彼がさがしているのは、ブラックボールを制御している奴らでしょうかね。

 この西くんの行動も、反撃の糸口となるのかどうか・・・ 注目です。

 もしも、ブラックボールがまだ人類の制御下にあるならば、

 転送・回復が可能ですからね。 どうなることか・・・

 

 

 などなど、この巻では圧倒的な絶望と、

 そこから生じるほんのわずかな希望が描かれてきました。

 

 これでもかこれでもかと押し寄せる絶望の波。

 しかし、その中で恐怖しながらも、取り乱さず、最後の瞬間まであきらめず、

 そして戦い続けるGANTZチームの心と姿勢こそが、希望を導くきっかけとなったことは、

 なんとも爽快な気持ちにさせてくれる清々しさがありました!

 

 これがふたたび反転攻勢の、そしてこの戦争終結への道しるべとなるのか否か?

 無慈悲な両種族の争いは、どこまでの惨劇を生むのか?

 それを見下ろす“神”は存在するのか?

 

 いろいろ気になるんですけどね、いちばん驚いたのは次巻予告!

 なんですアレ・・・?

 はじめはさらなる巨人の兵器かと思ったんですけども、どうも違うっぽい?

 GANTZの兵器なんでしょうかね? う~ん、気になる。

 34巻は、5月発売予定とのことで、楽しみです!

 

 

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