1979年に植木等主演で作られた、両足を失った僧侶の話。タイトルで、植木が得度式を受けている。
この映画が東映で公開されていたことは知っていたが、封切り後はどこでも上映されることがなかったので見たことがなかった。行方不明だったが、渡辺プロの倉庫で見つかり、日本映画専門チャンネルで放映されたが、ずっと見たことがなかった。
そこから昭和20年の満州牡丹江の陸軍病院になり、ベッドの植木に、軍医の北村和夫が「膝から下を切らないと凍傷で死ぬよ」という。
「麻酔もなにもないがやるか」と言われ、麻酔ないしでメスと鋸で両足が切断される。
中国軍将校は言う「日本は、中国に何も持たずに来てひどいことをした。だから何も持たせずに日本に帰す」と5日分の食料を与えられて新京を経て、大連に向う。
だが、国共内戦の激化で列車は進めなくなり、途中で新京に戻る。植木は、少尉の中村敦夫、チンピラ風の川谷拓三らの担架に乗せられて満州の平原を行くが、ついに彼らは、植木を置き去りにして行ってしまう。
誰も自分のことで精一杯だったからだ。なんとか帰国し、国立病院に入院していると、母の原泉、弟の河原崎健三が見舞いに来る。
「死にたかった」という植木に、原は彼の切断された足に口付けして「生きて帰ってきて良かった」という。
母の言葉を得て、植木は生きる気になり、駒沢大学で仏教を学び直す。もともと寺の生まれだったのだが、植木等も真宗の寺の生まれである。
植木は、東京では、死んだ連隊長の家に居候になっていて、そこには娘の山口いずみと従妹の宇都宮雅代もいる。宇都宮は、空襲で家族と家を失ったので、親類のところに居候していたのだ。
当時は、それは普通で、私が生まれる前だが、池上の家にも、満州から引き揚げてきた父の妹一家4人がいたそうだ。
植木は、病院の一隅で貸本屋をやったりパンを売ったりするが、偶然町で川谷拓三に再会し、さらに中村敦夫にも会うことになる。
3人は、闇商売を始め、当初は朝鮮戦争の景気もあり繁盛するが、社会が平穏となるとダメになり、植木も有り金のすべてを川谷に持ち逃げされてしまう。
植木と宇都宮は、愛し合い同棲し、彼女は妊娠する。「真ん中の足」は生きていたわけだ。だが、彼女が中絶したことから二人は別れ、植木は頭を剃って托鉢僧になる。
はじめは上手くいかないが、虚無僧姿の男が尺八を吹いていると人々が進んで喜捨するのを見て、お経を唱えて歩くと人が喜捨してくれるようになる。この虚無僧は、ハナ・肇。
ここから日本の下層社会の遍歴になり、簡易宿泊所に住み、町を遍歴し歩くが、ある町で、戸浦六広をリーダーとする「乞食の集団」に遭遇する。大森義夫、大泉侃、常田富士夫、赤座美代子らで、そこは不思議なところで、好んで喜捨をし、乞食集団は楽に生きている。
だが、最後植木は、本当の僧になることを決心して終わる。
私の考えでは、最後の「乞食集団」のことを中心に描けば、小林桂樹主演、堀川弘通監督の山下清をモデルにした名作『裸の大将』のようになったと思うが、監督の降旗康男は、反俗的な視点がないので、平凡な出来になっていたと思う。
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