本郷功次郎という男優がいる。
彼は、柔道をずっとやっていたが、偶然大映のスターになり、日本映画全盛期に多数の作品に出演した。
そして、彼は当時大映の大スターだった勝新太郎と市川雷蔵の両者に可愛がられたそうだ。勝新と雷蔵は特に仲が悪かったわけでないが、撮影所の中には自然と両者の取り巻きがあり、派閥を形成していた。だから、両者に同等に付き合っていた役者は少なく、大変珍しいのだそうだ。
あるとき本郷は、大阪歌舞伎座公演に急病で休演になった中村錦之助の代役をすることになった。それも公演初日まで数日しかないというときに。
芝居の経験が全くない彼は、歌舞伎での経験の深い勝新と雷蔵の二人に「どうしたら良いか」を聞きに行った。
すると、雷蔵は「台詞を全部憶えろ。台詞を憶えればすべて動きが出てくる」と言った。
次に、勝新太郎のところに行き、聞くと勝は、
「台詞など全く憶える必要はない。役の心だけをきちんと辿っておけば、台詞は自然に出てくるもんだ」
これは、二人の演技感の違いを現しとても興味深いが、実はどちらも正しいのだ。
「心から入るか、形から決めるか」それは役者自身のタイプの違いであり、人それぞれなのだ。
彼は、柔道をずっとやっていたが、偶然大映のスターになり、日本映画全盛期に多数の作品に出演した。
そして、彼は当時大映の大スターだった勝新太郎と市川雷蔵の両者に可愛がられたそうだ。勝新と雷蔵は特に仲が悪かったわけでないが、撮影所の中には自然と両者の取り巻きがあり、派閥を形成していた。だから、両者に同等に付き合っていた役者は少なく、大変珍しいのだそうだ。
あるとき本郷は、大阪歌舞伎座公演に急病で休演になった中村錦之助の代役をすることになった。それも公演初日まで数日しかないというときに。
芝居の経験が全くない彼は、歌舞伎での経験の深い勝新と雷蔵の二人に「どうしたら良いか」を聞きに行った。
すると、雷蔵は「台詞を全部憶えろ。台詞を憶えればすべて動きが出てくる」と言った。
次に、勝新太郎のところに行き、聞くと勝は、
「台詞など全く憶える必要はない。役の心だけをきちんと辿っておけば、台詞は自然に出てくるもんだ」
これは、二人の演技感の違いを現しとても興味深いが、実はどちらも正しいのだ。
「心から入るか、形から決めるか」それは役者自身のタイプの違いであり、人それぞれなのだ。