指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

自爆テロは、

2020年11月29日 | 政治

                  
昨日は、「映画に見る中東戦争」で、2005年の『パラダイス・ナウ』だった。
これは、自爆テロをやろうとした若者の話だそうだ。
この時期には自爆テロは、中東戦争では普通のことになっていた。
だが、実はそう古いことでなく、1973年のレバノン戦争の時に初めて行われたのだそうだ。
レバノン戦争とは、別にレバノンが戦争したのではなく、イスラエルがレバノンに侵攻し、レバノン国内の右翼と協力してPLOを掃討しようとした、非常に問題のある戦争だった。
レバノンの右翼とは、キリスト教だが、ファランヘ党といい、スペインのキリスト教右派に由来するものなのだそうだ。

さて、このレバノン戦争でPLOが使ったのが、自爆テロで、これが1945年の日本以来で他国が使用したのの初めてだった。
そのくらい、自爆テロ、特攻攻撃は、世界的には異常な戦法だったのである。
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『M』

2020年11月23日 | 演劇
Mとは言うまでもなく、三島由紀夫で、彼の作品と生涯を元に、モーリス・ベジャールが、黛敏郎の音楽を得て作った作品。
今回は、東京バレエ団の公演、元が1993年とのことで、今から見ると、悪く言えば、「アジア・エキゾチック・ショー」と見えないところもある。
まあ、20年近く前の欧米人の日本への意識などこんなものかと思う。

                 

筋は、ごく普通に、平岡公威らしい少年が、日傘の祖母に庇護されて舞台に出てくるところから始まり、海を象徴するらしい女性の群舞の中をただよう。
もちろん、褌祭もある。
『鹿鳴館』と『金閣寺』が出てきたところは笑ってしまうしかない。
「こうするしかないのだろうなあ」とは同情する。
黛も音楽もそう優れたものとは思えない。
ここで、なぜ黛が右翼化したかの原因の記述を思い出した。
黛は、三島とオペラ『喜びの琴』を作る約束をしていたが、多忙で予定どおりにはできず、まじめな黛は、それを自己の引け目に強く感じていて、それが後の黛の右翼化になったと言うのが、藤田敏雄の説で、私は正しいと思っている。作曲家黛敏郎は、元々大変なモダン・ボーイで、戦時中は神奈川県立一中で、当時からピアノを弾いていたので、「軟弱だ!」として、大分前に亡くなられたが通産大臣にもなった小此木彦三郎(この小此木の秘書が菅義偉氏である)応援団長に鉄拳制裁を受けたそうだ。そして、戦後も最初の給費留学生としてフランスに行った西欧派で、ミュージック・コンクレート等の前衛的手法を駆使するなど最先端だったが、1970年代に急速に右翼化した。これは、我々にはかなり驚きだったが、今日読んだ演出家藤田敏雄の本『音楽散歩、ミュージカル界隈』にその理由が書いてあった。それは、1960年代後半に日生劇場で、三島由紀夫の作、浅利慶太の演出、黛敏郎の音楽、小沢征璽の指揮で三島由紀夫の劇『喜びの琴』をオペラとして上演することになった。三島は、予定どおり脚本を書いたが、黛は映画音楽の仕事もあり、大変に多忙で予定どおりに仕上げることができなかった。そのことを黛は三島に対して大変済まないことをしたと思っていた。そこで、三島が自死した後、贖罪の意識があって三島の「憂国記」を積極的に応援したのではないか、とのことだ。それが、次第に彼が右翼的発言、活動をするきっかけになったのでは、と書いているが、確かにそういう気がする。

この作品でも二つだけ感動したところがあった。それは侍が弓を引き、矢を放つと、それが「聖サンゼバスチアン」の裸の惨状となるところ。
さらに、最後日傘に庇護された少年が、頻りと跳躍を繰り返すところで、「公威少年はジャンプしようとしてできなかった青年だったな」と思い至った。
神奈川県民ホール
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『五十四の瞳』

2020年11月22日 | 演劇
二十四の瞳なら、昭和期の瀬戸内の小豆島のことだが、これは瀬戸内でも採石業が唯一の産業だった小島・西島の話。
作は、鄭義信で、演出は松本祐子。

                                   
そこには、生徒27人の小学校があり、朝鮮人と日本人の子が分け隔てなく学んでいた。
神戸では、朝鮮人学校への弾圧などがあり、抗議運動も起こっていた。
そして、占領軍はついに朝鮮人学校の閉鎖を命じ、その島の小学校も最後は3人だけになり、閉鎖になる。

歴史的にみれば、文学座には「学校劇」の系譜があり、久保田万太郎の『大寺学校』は名作である。
これは、どうかと言えば、残念ながら、さして評価できるものではなかった。
少なくとも鄭義信の名作『焼肉ドランゴン』のような心に染みる感動はなかった。
紀伊國屋サザンシアター

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岡田祐介、死去

2020年11月21日 | 映画
東映の会長の岡田祐介が亡くなったそうだ、71とは若いが、大動脈解離では仕方ないだろう。私の友人にも2人、この病気で倒れたのがいる。
どちらも、回復しているので、岡田君の場合はどうだったのだろうか。
岡田祐介と言っても、もう知らないだろうが、元は青春スター、それも東映ではなく、東宝だった。
庄司薫の『赤ずきんちゃん気をつけて』の主役オーディションで合格しデビューした。
当時、東宝には加山雄三以後、若手スターがいなかったので、結構出ている。黒澤年男がいたが、内藤洋子の『伊豆の踊子』で共演したとき、「あんなガラの悪い一高生がいるか」と言われ、草刈正雄と岡田しかいなかったからだ。

             
  1. 製作
    1. 1975.03.15 吶喊  喜八プロ=ATG
    2. 1980.01.15 動乱 第1部 海峡を渡る愛 第2部 雪降り止まず  東映=シナノ企画  ... 企画
    3. 1982.10.09 この子の七つのお祝に  松竹=角川春樹事務所  ... プロデューサー
    4. 1984.06.09 天国の駅 HEAVEN STATION  東映東京  ... 企画
    5. 1985.06.08 夢千代日記  東映京都  ... プロデューサー
    6. 1986.01.15 玄海つれづれ節  東映東京  ... 企画
    7. 1988.10.01 華の乱  東映京都  ... 企画
    8. 1988.12.10 ガラスの中の少女  東映=オスカープロ  ... 企画
    9. 1989.08.12 右曲りのダンディー  東映=セントラル・アーツ  ... 企画
    10. 1989.08.12 六本木バナナ・ボーイズ  東映=セントラル・アーツ  ... 企画
    11. 1989.11.18 はぐれ刑事純情派  東映=テレビ朝日  ... 企画
    12. 1989.12.23 公園通りの猫たち  東映東京  ... 企画
    13. 1990.12.22 きんぴら  東映東京  ... 企画
    14. 1991.04.13 本気!  東映=テレビ朝日  ... 企画
    15. 1991.08.24 福沢諭吉  東映京都  ... 企画
    16. 1992.01.15 修羅の伝説  東映東京  ... 企画
    17. 1992.01.25 三国志 第一部 英雄たちの夜明け  シナノ企画
    18. 1992.10.03 天国の大罪  東映=テレビ朝日  ... 企画
    19. 1992.12.19 七人のおたく cult seven  フジテレビ  ... 企画
    20. 1992.12.19 病は気から 病院へ行こう2  フジテレビ  ... 企画
    21. 1993.03.20 三国志 長江燃ゆ!  シナノ企画
    22. 1993.10.09 眠らない街 新宿鮫  フジテレビ  ... 企画
    23. 1994.04.09 三国志 遙かなる大地 完結篇  シナノ企画
    24. 1994.06.11 超能力者 未知への旅人  東映東京撮影所  ... 企画
    25. 1995.06.03 きけ、わだつみの声 Last Friends  東映=バンダイ  ... 企画
    26. 1996.01.20 霧の子午線  東映東京撮影所  ... 企画
    27. 1997.01.15 流れ板七人  東映京都撮影所  ... 企画
    28. 1997.10.04 Lie Lie Lie  東映=ポニーキャニオン=博報堂  ... 製作統括
    29. 1997.12.20 北京原人 Who are you?  東映=テレビ朝日=バンダイ=東北新社  ... 企画
    30. 1998.07.04 ずっこけ三人組 怪盗X物語  フジテレビジョン=東映=プルミエ・インタ...
    31. 1999.10.23 ドリーム メーカー  ライジングプロ=東映=TBS
    32. 2000.05.20 ピンチランナー  アップフロントエージェンジー=東映=テレ...  ... 企画
    33. 2000.09.15 長崎ぶらぶら節  長崎ぶらぶら節」製作委員会  ... 企画
    34. 2001.12.15 千年の恋 ひかる源氏物語  東映=加賀電子=サミー=丸紅=テレビ朝日...  ... 企画
    35. 2003.01.11 T.R.Y.   「T.R.Y.」パートナーズ
    36. 2003.03.02 ワンピース デッドエンドの冒険  「2003 ワンピース」製作委員会
  2. 出演
    1. 1970.08.04 赤頭巾ちゃん気をつけて  東宝  ... 庄司薫
    2. 1971.01.09 初めての旅  東京映画
    3. 1971.04.01 二人だけの朝  三船プロ  ... 矢島啓介
    4. 1972.02.05 その人は炎のように  東宝
    5. 1972.05.25 白鳥の歌なんか聞えない  東宝  ... 庄司薫
    6. 1972.09.23 初めての愛  東宝映画
    7. 1972.10.28 にっぽん三銃士 おさらば東京の巻  東京映画  ... 風見一郎
    8. 1973.01.15 にっぽん三銃士 博多帯しめ一本どっこの巻  東京映画  ... 風見一郎
    9. 1973.11.03 しなの川  松竹大船
    10. 1974.04.06 しあわせ  東宝映画
    11. 1975.03.15 吶喊  喜八プロ=ATG  ... 万次郎
    12. 1975.11.22 実録三億円事件 時効成立  東映東京  ... 西原房夫
    13. 1976.01.17 妻と女の間  東宝映画 製作協力:芸苑社  ... 卓
    14. 1976.10.16 夜明けの旗 松本治一郎伝  東映京都  ... 葉村佑介
    15. 1977.07.02 ビューティ・ペア 真赤な青春  東映東京
    16. 1978.11.23 ブルークリスマス  東宝映画  ... 木所
    17. 1979.04.28 茗荷村見聞記  現代プロ
    18. 1981.07.11 ねらわれた学園  角川春樹事務所 製作協力:オフィス・ヘミ...  ... 須田先生
    19. 1985.01.26 魔の刻  東映セントラルフィルム
    20. 1986.01.15 玄海つれづれ節  東映東京  ... 山岡駿介

    21. こうしてみると、あまり良い作品はないようだが、個人的には『ねらわれた学園』の先生役が適役で良かったように思う。
    22. 同世代であり、ご冥福をお祈りしたい。
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「金の切れ目が、縁の切れ目」

2020年11月20日 | 政治
ジョージア州で、票の手作業での再集計が行われているとのこと。
係数器によるものではなく、全部手作業でやるらしい。
まことにご苦労さんなことだ。
ここで面白いのは、有料であることで、日本では基本的に無料である。
3億円かかったとのことで、さすが金の国アメリカである。
日本では、当確が出ると全部の票を梱包し、ガムテープで厳重に梱包して倉庫に入れてしまう。
結果はどうなるのか分からないが、体勢を崩すものではないようだ。

              
トランプは、支持者に献金を求めていて、支持者は集会で騒いでいるが金には乏しいようで、あまり集まっていないようだ。
「金の切れ目が、縁の切れ目」は、アメリカでも正しいようだ。

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「鮭はなぜ遡上するのか」

2020年11月19日 | その他
今、日本の各地で鮭の遡上が行われているが、なぜ鮭は産卵に際して遡上するのだろうか。

         
その原因は、昔々、日本海がまだ湖だった500万年前頃、そこには鮭の先祖であるマスがいた。ところが、地殻の変動で、日本海は湖から海になり、そこで淡水から海水になり、それに適応する形で、マスが鮭に変化した。そして、鮭は世界中に広がったのだそうだ。だが、鮭もその系統発生を繰り返すので、日本海が湖であった淡水の川に遡上して産卵をするのだそうだ。
生物の授業で、個体発生は系統発生を繰り返すと言うのを習ったと思うが、これがそうなのだ。個々の個体の遺伝子にどこかに残っているらしい。

この反対が、うなぎで、うなぎは産卵をマリアナ海あたりで行うが、その理由は、もともとうなぎは深海魚で、マリアナ海溝のあたりで発生したからだそうだ。
個体発生は、系統発生を繰り返すと言うのは、有名な法則で、そのために産卵の時期になると、うなぎは日本から遠く回遊してマリアナ海までに行くのだとのこと。
その後、西に行き、フィリピン近海で黒潮にのって日本の沿岸に来て、さらに河川を遡上する。
それも、うなぎが深海から次第に栄養の豊かな黒潮、さらに吃水エリア、そして河川へと生息地域を拡大し進化してきたことを繰り返すからなのだそうだ。
生物の生態は非常に面白いが、人間でもあるのだろうか。

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『マイルスデイビス・クールの誕生』

2020年11月13日 | 音楽
『ミッドウェー』の前に、『マイルスデイビス・クールの誕生』をやっていたので、見る。
1926年の誕生から1991年の死までを追ったドキュメンタリーで、丹念に取材している。
マイルスは、イリノイ州で裕福な歯医者の家に生まれ、若くしてプロになり、ニューヨークに出て、チャーリー・パーカーやデジイ・カレスピーらと交遊を結ぶ。
ジュリアード音楽院にも行き、ジャズプレイヤーとしても活躍する。
マイルスの音楽の特徴は、やはり音色が繊細なことで、編曲のギル・エバンスと知り合い、さらに上を行くようになる。
1960年代に自分のバンドを持つが、ジョン・コルトレーンのサックスの時が一番だった言うのは意外だった。
当時、コルトレーンは、日本では評価がひくく、鈍順さがソニー・ロリンズに比べて極めて低評価だった。
マイルスが、最初に日本に来たのは、1996年7月で、この頃は、ドイツ、日本等でサックスが変わっている。
非常に混迷した状況だったわけだが、われわれには分からなかった。
その後、1970年代以降は、エレクトリック化し、時代に乗るヒットを打ち出す。『ビッセス・ブルー』で、当時の大規模ロックコンサートで演奏されたようだ。
しかし、音楽的には低迷だったようで、腰痛から来る薬が手放せなくなる
最後は、1990年に新宿西口でライブをやったようだが、非常に評価は低かったようだ。
どんな天才でも、いつまでも優れた表現ができると言うものではないのだろう。
厚木映画館KIKI
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『ミッドウェイ』

2020年11月13日 | 映画
『ミッドウェイ』
前から見たいと思っていたが、横浜、東京では上映終了したので、厚木まで行く。

                        
ミュー厚木の映画館KIKIで、爆音上映。
『ミッドウェイ』には、何本もあるが、1976年のは、日本やアメリカの戦争映画を集めて再編集しものだそうだが、これはCG特撮だが、ここまでやられると日本の模型特撮は叶わないという気がしてしまう。
1941年の12月の日本軍の真珠湾攻撃から始まるが、真珠湾に停泊していた米艦船の間を日本の攻撃機がすり抜けて爆撃するところの迫力。
アメリカは、陸軍の陸上機を海軍の空母に乗せて、日本への爆撃をする。こうした発想米海軍空母の艦載機による反撃、潜水艦からの魚雷攻撃等も行われる。
ドゥリットルの日本本土爆撃で、成果は大してなかったが、米国の士気高揚には意味があった。また、これで、日本軍は、ミッドウェイ作戦を繰り上げて行うことになったのだが、そんなこんは米国には関係ないので、描かれない。の柔軟性は、日本軍の硬直した官僚制とは大きな差である。
そして、珊瑚海海戦からから日本軍の次の目標は、となり、AFの偽電報でミッドウェイ等と確定し、そこには監督のジョンフォードも記録を撮影するためにやってくる。
そして6月、日本軍のミッドウィ島攻撃から始まる。
ミッドウェー島攻撃になり、南雲忠一は、空母への攻撃のため、爆弾の陸上用から魚雷への転換等で時間をロスし艦載機が空母も甲板に並んでいるときに、米軍の攻撃を受け戦いは一瞬で決まる。
ただ、この爆装の転換は、日本の作品ではよく描かれていたが、ここではそんなことは無関係とほとんど表現されない。
放送大学の高橋和夫先生によれば、「近代戦は経済が大きく、人口の多い方が勝つとのことで、アメリカの南北戦争、第一次、第二次世界大戦もそうだった」とのことだ。






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『背後の人』

2020年11月11日 | 映画
1965年の松竹映画、原作は有馬頼義で、監督は八木美津夫。
この人監督は、特に評価されていないが、私は良いと思っている。
作家の池部良は、戦時中に妻の八木昌子を失い、自分も戦場で爆撃を受けて弾が体に入っていて、除去手術を受ける。
病院の看護婦は桑野みゆきで、互いに惚れあうようになる。
ところが、桑野と同居していて、病院で温湿布担当の岡田英次は、池部と付き合うなと言う。
だが、桑野は、「冬まで待ってくれ」という。
恋人同士かと思うとさにあらず、兄・妹なのだ。
そして、岡田は戦後の九州で、クリスマスの夜、家に乱入してきた母親を暴行しようとした米兵を刺し殺し、逃亡しているのだ。
あと、半月で時効という時なのである。
岡田は、池部が警察に通報すると誤解し病院を出て、江戸川あたりのボート小屋に潜む。彼は、風邪でひどい状況である。
桑野は、池部と共に、岡田を救い出して岡田の家に運ぶ。
だが、クリスマスイブの夜、岡田は死んでしまう。
池部と桑野は、別れるのがエンドで、この辺は松本清張と有馬の違いだろう。

松本には、同様の北九州で黒人兵に暴行された女性が、死体清浄で再会し、間接的だが「復讐」を遂げる『黒地の絵』があるが、有馬にはない。
桑野の看護婦の同僚で、路加奈子が出ているが、彼女は大ヒットのスキャンダル映画『白日夢』に出た後にこんな地味な映画にも出ていたとは驚き。

衛星劇場


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『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』

2020年11月09日 | 映画
トルーマン・カポーティについては、2009年にも映画があり、非常に良いできだった。そのとき、次のように書いた。

『カポーティ』2009年03月28日 | 映画前から見たいと思っていた映画。作家トルーマン・カポーティが主人公だが、彼が1959年末にカンザスで起きた農家の一家殺人事件に興味を持ち、詳細で膨大な取材をし、小説『冷血』を書くまでの話。面白い部分は沢山あるが、彼が殺人犯ペリー・スミスに興味と言うより、むしろ愛情を持ち、自分との共通性を見出して行くところが最高に興味深い。カポーティとペリーの関係はほとんど恋愛関係であり、それはポーティの同性愛によってさらに複雑になる。カポーティーがペリーに見出したのは、強い孤独と絶対的な絶望であり、それはアメリカ社会の最上層と最下層にあって、なぜか共通したのである。最初に現地取材を手伝う女性のミルが、日本で言えば香川京子そっくりの女優なのが好ましい。また、彼女は作家で、後に映画化された名作『アラバマ物語』の原作者であることも驚いた。小説に出ていたそうだが、全く忘れていた。カポーティーは、家庭的には不幸な子供時代を送ったが、生活は相当に裕福で、『冷血』の翻訳者龍口直太郎先生からは授業で、カポーティーの親が所有するアパートにテネシー・ウィリアムズが住んでいたと教わった。ともかくニューヨークのセレブの爛熟した生活と、地方ののんびりした自然が同居するアメリカという国の大きさ、不思議さを実感させられる優れた作品である。間違いなく近年見たアメリカ映画のベストである。

                           
それは、これはその後のことである。『冷血』は、本当にすごい小説で、これに影響されて日本では、佐木隆三が『復讐するは我にあり』を書いた。これも、殺人犯の西口浩という男の不可思議さを描いた傑作で、今村昌平の映画も素晴らしかった。
『冷血』の成功で、ニューヨークに戻ったカポーティは、社交界のスターとなり、多くのセレブと交遊する。パンフレットを見ても、ほとんど知らない人ばかりだが、女性はハリウッド女優並の美人で、男は上層のものばかり。
ただ、これで初めて知ったのは、幼少期からカポーティは、ゲイだったことで、まるで三島由紀夫のような男だったのか。
そして、アルコールと薬物の中毒になり、テレビでの醜態の映像もある。
まるで、日本で言えば、横山やすしの酔ってテレビに出たときのようだ。
そして、1984年8月に友人宅で死ぬ、60歳だった。
彼は、このセレブとの交遊と彼らの痴態を書き留めていて、後に1986年に『叶えられた祈り』として出され、題材とされた人から多くの異論が出されるのも当然だった。
いずれにしても、この2本の映画を見ると、アメリカの二つの側面、地方と都市の姿がよく分かると思う。
それは、今大統領選挙で問題となっている民主党と共和党との差異のようにも見える

黄金町シネマベティ




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『探偵はBARにいる 3』

2020年11月04日 | 映画
                           

札幌にいる探偵大泉洋と大学助手松田龍平のコンビのサスペンスものの3作目。
松田が教えている学生から、付き合っていた女性(前田敦子)が行方不明になったので、探してくれとの依頼が来る。
調べると、秘密クラブのモデルになっていることがわかり、そこの「美女オーナー」は北川景子だが、この薄ペラい女優のどこがいいのだろうかとあらためて思う。
そこに、タラバ蟹をトラックで輸送していた男が、襲われて射殺されたエピソードが入るが、これはどういう意味があるのかすぐには分からない。
当然だが、蟹の甲羅には覚醒剤が仕込まれていたことがわかり、覚醒剤をめぐる争いであることが明らかになる。
大泉は、昔に北川景子に会っていたことを思い出す。
当時、彼女は自暴自棄になって札幌の裏町で荒れていたのだ。
この映画は、意図したものかは不明だが、全体の雰囲気が1970年代ぐらいの東京の感じに似ている。
数年前、甲府に行ったとき、駅ビルには本屋と喫茶店があり、
「ここはまるで1970年代的だな」と思ったが、この映画の雰囲気も、そんな感じがする。

最後、事件は北川がやったことで、彼女は覚醒剤を隠し持っていて、それをヤクザの親分のリリー・フランキーと現金で交換しようとする。交換の場は、札幌の放送局の広場で、そこでは栗山英樹日ハム監督のトーク・ショーが行われている。この辺は、この作品が北海道の放送局と連携していることがわかる。
脚本は古沢良太で、全体に上手く運んでいるが、ラストは人情話になる。
これでこのシリーズも終わりかなと思った。

日本映画専門チャンネル




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『メイキング・オブ・モータウン』

2020年11月03日 | 映画
モータウン・レコードの創設から現在を描くドキュメンタリーである。
1950年代末に、デトロイトでベリー・ゴーディー・JRがモータウンレコードを作り、黒人音楽を積極的に売り、多数のグループを排出してゆく。
テンプテーションズ、ミラクルズなどだが、ついには『エド・サリバン・ショー』にまで出るに至る。
デトロイトからロスアンゼルス拠点を移し、さらに洗練されてゆく。
それは同時に、1960年代の公民権運動に象徴される黒人の地位向上に対応するもので、その頂点は2009年のオバマ大統領の選出だった。


           

これを見てあらためて思ったのは、モータウンにとって最大のスターは、ダイアナ・ロスであり、そこには仕草や立振舞いまでを最上に磨き上げる演出をする。
さらに、内容的に最高なのは、マービン・ゲイの曲で、『愛の行方』は思想的にも最高のレベルに達していたのだという。

黄金町シネマベティ
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『悪名一代』

2020年11月02日 | 映画
前にも書いたことがあるが、大映京都の監督で、地味だが好きだったのが安田公義で、特に有名な作品はないが、シリーズもので良いのがある。
この『悪名』は田中徳三が多く、安田は珍しい。
勝新太郎の朝吉親分のところに、田宮の朝次から手紙が来て、ケンカで人を傷つけたので、当分別かれると言ってくる。
朝吉も、旅に出て山陰地方らしいが、列車中で渡仲居の森光子と出会う。
ある所で、朝吉は浜田ゆう子と知り合い惚れてしまい、その後を追うと地方の町に行き、シルクハットの二代目の長門勇の女であることが分かる。
        
          

シルクハット親分の初代は永田靖で、この人は俳優座で共産党だったが、戦前からなぜか大映では悪いやくざ役を演じていた。また遠藤辰雄も出てきてこの辺は複雑になる。彼も、東映のやくざ映画の悪役で有名だが、皆京都の大映と東映に出ている。
その町には、強い親分の小池朝雄の組もあり、この3組が対立して複雑になる。
浜田を巡ってやくざの対立になるが、その裏には浜田の母親がアメリカから3億円を持って故郷に帰って来ることがあり、黒澤明映画で有名な本間文子であり、結構いい俳優が出ている。
もちろん、最後はやくざと勝新太郎、田宮二郎のアクションになる。

脚本は依田義賢で、テンポも良いが、全体には少し問題がある。
それは、時代設定がよくわからないことで、「3億円」と言っているので、1960年代の現在のことみたいだが、駅で本間を出迎える連中の幟は旧字で書かれている。米国に移民した者が大金を持って故郷に戻ってきたのは、戦前のことであり、この辺は混乱しているように見えた。
日本映画専門チャンネル

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クリスタル・ゲイル 『瞳のささやき』

2020年11月01日 | 音楽
先週、用があってコード棚の端の1枚を引き出すと、クリスタル・ゲイルの『瞳のささやき』だった。
たぶん、1980年頃に買ったと思う。

                 

当時、私はカントリーが結構好きで、昔六本木にあったWAVEで、その棚を見ていると偶然に音楽評論家の中村とうようさんに会い、
「指田君は、こんなものが好きなの?」と少々バカにされたこともある。
カントリーは、ブルースと同様、アメリカのルーツミュージックだと思っている。もちろん、とうようさんはブルース派だと思うが、カントリーもルーツミュージックの一つである。さらに言えば、プレスリーやハンク・ウィリアムズに象徴されるように、白人音楽はブルース等の黒人音楽と混合している。
アメリカの東部アパラチア山脈付近や南部は、黒人と白人の文化が混合してきたところであり、その結果としてブルースもカントリーもあるのだと思う。

さて、このクリスタル・ゲイルだが、彼女は言うまでもなくカントリーの女王べきロレッタ・リンの妹である。
ロレッタ・リンには、伝記映画『歌えロレッタ・愛のために』があり、『キャリー』のシシー・スペイセックが主演したが、この原題は『コールマイナーズ・ドーター』、つまり炭坑夫の娘である。アパラチア山脈付近は、炭坑地帯で、ここにはアイルランド系の人が多数いて、これがアメリカにアイルランドやスコットランドの文化を定着させたのである。

このLPを聞いて見ると、A面はポピュラー・ソングで、B面はカントリーになっている。これは、彼女の二面性を現したものだと思う。
久しぶりにカントリー的、日本で言えば演歌的響きにひたった。



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