指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『羊の木』

2018年04月29日 | 映画

市川崑は、「映画は、脚本と出演者がきちんと決まれば、80%は終わったものだ」と言っているが、画面に異常に凝る市川崑の言葉なので非常に意味が深い。

久しぶりに良い脚本でベストの配役の映画を見た。監督吉田大八

地方の小都市・魚深市は、市長の決断で、仮釈放の受刑者を受け入れることにした。

魚深とは、言うまでもなく魚津市で、息子を殺した犯人を捜す深水三省が駅に行くところで私は分かった。

駅の窓口の案内板に、「地鉄」とあったからだ。

ここは去年、南砺市で行われた「スキヤキ・ミィーツ・ザ・ワールド」の帰り、富山駅から富山地方鉄道で、魚津に来て、駅前のスナックでカレーを食べた。地元の叔父さんばかりが黙ってテレビを見ている店で、

「こいつは何者だ」という視線を浴びながら普通のカレーを食べ、次は在来線で、直江津、長野、松本を経て、八王子から横浜に戻ってきた。

市役所職員の錦戸亮は、仮釈放者らを空港、新幹線駅、在来線の駅で出迎え、それぞれをクリーニング屋、床屋、宅配便業者、介護施設などに送り込む。実は、彼らは全員死刑囚であることが次第にわかってくる。ここで10年間無事勤めれば刑期を終了させるというのだ。

こんな仕組みはないだろうが、仮定なので、それは良い。

この辺の筋売りのシーンは、展開が早く無駄な思いれがなくて、テンポよく進むのが快い。

そこで、「のろろ」祭りが行われ、その事前の宴会で、受刑者たちが本性を現して格闘になるところからドラマが始まる。

のろろ、とは魚の頭の神様で、豊漁を祈り、悪事が起きた時は、除去してくれるとの言い伝えがある。

宅配便に勤めた松田龍平が、ロック・バンドでギターを教えたことから錦戸の元恋人であった木村文乃と親密になる。

彼は、少年の時からの殺人者で、無慈悲に人を殺せる人間なのだ。彼は、漁師になったが、退屈な生活に飽きていて、「何か大ごとをやろうじゃないか」と持ち掛けた北村一輝を逆に車で曳き殺す。

そして、のろろが見下ろす断崖に、松田は錦戸を連れていき、言い伝えの

「二人の人間が飛び込み、一人は生き、もう一人は死んだをやってみよう」と二人で海に飛び込む。

すると松田はすぐに浮き上がり、錦戸は見えてこない。

その時、のろろが突然落ちて来て、松田に当たって海に沈めてしまい、錦戸は浮き上がる。

最後、のろろがクレーンで引き上げられるのを見る元受刑者たちは、それぞれの場で受け入れられていた。

                           

役者では、クリーニング屋で、異常な思い入れで作業をしてしまう田中泯が最高である。

この人は、私や中村とうようさん、そして4年前に亡くなった田村光男がやっていた「ウォーマッド横浜」と同時に、田中泯は山梨県白州に住み、1990年代から白州フェステイバルをやっている。

私が見に行ったのは、1993と1994年だったと思う。その後、浅草の常盤座の閉座イベントの時、田中さんも出て踊られて、終了後近くの居酒屋で一緒に飲んだこともあるのだが。

その後、山田洋治の映画『たそがれ清兵衛』で一躍有名になったのは、ご存知のことだろう。

黄金町シネマベティ

 

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『スローガン』

2018年04月26日 | 映画

題名から、政治的内容の映画かと思うと、セルジュ・ゲンスブールとジェーン・バーキンの映画なのだ。

この時に、オーディションで選ばれたジェーン・バーキンとゲンスブールは意気投合し、結ばれる。

                 

1988年に見たゲンスブールの公演は凄かった。

タバコを吸い、ワインを飲んで歌う、という不良じじいそのものだったのだから。

今では考えられないコンサートだった。

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小津先生は・・・

2018年04月25日 | 映画

4月1日から、フィルムセンターが国立映画アーカイブになった。大変結構なことである。

                 

そして、2階のホールが、長瀬記念ホール OZUになった。

長瀬は言うまでもなく、もともとはイーストマンコダックの関係会社であった。

小津安二郎先生は、イーストマン・カラーよりも、アグファ・カラーがお好きだったことを思い出した。

ライバル会社の商品が好きだった方の名をつけるとは、寛大なことだと感心した。

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緊縛好きには

2018年04月17日 | 政治

基本的にどんな映画でも見るが、苦手なのは緊縛やサド・マゾものである。

ロマンポルノは、3本立てで、1本くらいはサド・マゾ、緊縛もので、嫌だが仕方なく見ていた。

「なんでこんなものを好きな人がいるのか」と思うが、ファンは非常に多く、特に警官、自衛官、あるいは医者などに多いのだそうだ。

                      

問題の福田財務相事務次官だが、大学時代は映画監督になりたかったそうで、女性記者に「手を縛っていい?」などと聞いているので、ロマンポルノの谷ナオミの主演作が好きだったのだろうか。

高級官僚に日活の大ファンがいたとは、世の中は不思議なものである。

日活としては喜ぶべきことだろうか。

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1970年代を思い出した

2018年04月10日 | 映画

昨夜は、小島豊美さんが主催されている「よろず長屋まったりトーク」に行く。神保町駅は出口が分かりにくいうえに工事中で,地上に出るのが大変だったが、ガードマンに聞くと,

「一応、今月で終わる予定ですがね、私が言うのもなんですが、まず無理でしょうね」とのこと。

今回は、元ニッポン放送の藤原龍一郎さんで、日活ロマンポルノ。藤原さんは1972年早稲田入学とのことで、私がやっと卒業した時に入られたことになる。ただ、一浪して慶応大に1年間いた後、早稲田短歌会に憧れて再受験して入学されたとのことで私とほとんど同学年になる。

入学後は、短歌会とミステリークラブに入り、せっせとロマンポルノを見たそうだ。

日活が1971年の夏の一時の中止の後、ポルノとして再出発したのは同年11月で、以降1988年まで延々と作られたジャンルである。

藤原氏によれば、1972年ごろから1975年ごろまでが最盛期だとされ、私もそう思う。

中では、女優ベスト5が興味深く、中川梨絵、星まり子、山科ゆり、梢ひとみ、中島葵を上げられていて、美人好みだと思う。

作品では、白鳥信一監督の『団地妻・女の匂い』と言うのが文楽の「葛の葉伝説」をもとにした白鳥あかねの脚本がすごかったというのには大変参考になった。

白鳥は、東大出で、非常にまじめな人で長く西河克己監督のチーフ助監督を務めてきた人だった。『赤線最後の日』も、監督は白鳥氏だと聞き、この人は西河克己流の手堅い職人的監督でもあったのだったなとあらためて思った。

藤井克彦監督の『必殺色仕掛け』に出た薊千露につい、この日配布された1994年の『中州通信』で書かれていた。

彼女は私の高校の演劇部の後輩で日大芸術学部に行き、女優になった女性である。以前、フェイスブックでかぜ耕士と私は知り合ったことがあるが、彼女とは離婚したとのことだった。

               

ベスト作品の一つとして『OL日記・濡れた札束』を上げられていたが、滋賀の三井銀行女子行員2億円横領事件を描いたもので、私も大賛成である。

 

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一番嫌いなCMは、世界日通

2018年04月08日 | テレビ

ローラが出てくるものなど嫌いなCMはあるが、今一番不愉快なのは、「世界日通」である。

「寿司が苦手だったダンが、天草の寿司を熱く語る・・・」というもの。

        

ダンなるフランス人らしき男も髭面で汚いし、言っていることもばかばかしい。

日通は、元は国鉄の駅から目的地に荷物を運ぶ「通運業」の独占的な会社で、国鉄のイソギンチャクのような存在だった。

今は、国鉄とは無縁になったいるが、元はそうした付随的な存在である。

「偉そうなことを言うな」という気がするのは私だけだろうか。

 

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『過去を消す女』

2018年04月02日 | テレビ

日本映画専門チャンネルのテレビ映画特集、たぶんテレ朝の「土曜ワイド劇場」だろう。

原作小池真理子、脚本鴨井達比古、監督永野靖忠、主演は酒井和歌子と山内明、田村亮と山口果林。

山梨の清里のホテルに会社社長の山内と若い妻の酒井和歌子がベンツで来る。

ディナーの席で、酒井は驚く、そのすぐ近くに元恋人の田村亮がいたからだ。彼には山口果林と一緒だった。

互いにすぐに分かり、豪雪に閉じ込められたホテルの深夜、二人は田村の車の中で会う。

食い違う二人の過去。

酒井は、田村の父親北原義雄の秘書をやっていた時、その父親と息子の田村の双方とできてしまい、北原は自殺し、会社は倒産したのだった。

それを初めて知った酒井、彼女は二人の板挟みから逃げて姿を消して逃亡したからだ。

車の外に出て争ったとき、田村は倒れて草に目をつぶしてしまう。酒井は、彼を誘導して崖から突き落とす。

翌日、警察は来るが、「事故死」と判断するのは、刑事の江幡高志、彼も特異な風貌の良い俳優だった。      

山内明も、戦前からの俳優で、劇団民芸にいたが映画、テレビに多数出ていて、温厚で品の良い老年の役を演じていた。

半年後、酒井和歌子が、田村亮に続き、残された山口果林も、ヨットに呼び出してガソリンを掛けて火を付けて殺してしまう。

酒井は、「自分がタンクを倒してしまった時、山口が吸っていたタバコの火が付いてしまったのだ」と言う。

だが、江幡に追及され、弁護士にも依頼した調査の結果、山内はすべてを知り、酒井に自首を勧め、自分はスペインでいつまでも待っているからと成城の豪邸を出ていく。

酒井は、110を回す。

美しく品よく保っている酒井が、心の底では別のことを考えていることがよく表現されていたのは、鴨居の力だろう。

と同時に、鴨居も、酒井和歌子が殺人を犯しても、自分の人生の上昇を目指していたことを肯定しているように見えた。

日本映画専門チャンネル

 

 

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『悪魔が来りて笛を吹く』

2018年04月01日 | 映画

巨人・阪神戦で、3回で4点リードし、なんとか5回に藤浪が達したので、解説の桑田の言うように、ここで代えればよかったのに、もう1回とのスケベ心を出して逆転され、最後は岡本なんという三流選手にホームランされて不愉快になったので、夜はテレビで映画を見る。

横溝正史ものでは、『病院坂の首括りの家』も筋が分からなかったが、これもよくわからない。

                                

最後は、実の兄と妹の姦淫という、暗い結末になる。畜生道というのは、歌舞伎でよく出てくる筋立てで、あの『弁天小僧』も、最後はこの畜生道の悲劇なのだ。

私は、この愛し合った男女が実は兄妹だったというのは、一種の不条理劇だと思うが。

その意味では、1970年代に畜生道をドラマ化したのは時代錯誤というしかないだろう。横溝ものでは、やはり市川崑、石坂浩二のがいかに上質だったかが分かる。監督の斎藤光正は、元は日活の監督だったが、テレビで活躍した方だったが、数年前に亡くなられた。

テレビでの性だろう、脇役で中村雅俊や秋野大作の他、中村珠緒、浜木綿子、京唄子、北林早苗、村田知恵子など結構豪華な配役だったのは、角川の金の力だろうか。

金田一が西村敏行と非常にダサく、ヒロインの斎藤とも子にスターの輝きがないのが苦しい。

BSジャパン

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