劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

国立小劇場の文楽「鑓の権三重帷子」

2020-09-08 14:00:54 | 文楽
9月7日(月)の昼に文楽を見る。第三部の近松の姦通物。午後1時45分開演で、終演は3時35分。4段構成の通しで、休憩なしの1時間50分。客席は千鳥格子の配列で、ほぼ満席。ただし、舞台上手側のブロックの前半分は販売していなかった。太夫の語る床があり、フェイスシールドなしで太夫が語るから、飛沫防止のために空けたのだろう。

入り口でアルコールの手消毒の上、検温があり、チケは係員が確認して自分で半券をちぎって箱に入れる。どこでも同じような対応になってきたが、ちょっとうんざりした。事前に近所の店で昼食をとったが、その時にもアルコール消毒と検温。ちょっと早く着いたので伝統芸能館の展示を見に入ると、そこでもアルコール消毒と検温、そして劇場でもアルコール消毒と検温。1時間に3回もアルコール消毒と検温をさせられた。アルコール消毒すると、手の肌が荒れる上に、それを防止するためかべたつく成分が入っていてすっきりしないので、すぐに洗面所に行って手を洗う。

今回の公演は4部制で、しかも入れ替え中に消毒作業を行うのか、入れ替え時間が長く公演の実質時間がかなり短くて、その割にはチケットが半額というわけでもないので、、コスパはあまりよくない。しかし、観客を半分以下しか入れられないので、フルフルに入っても主催側も赤字かも知れない。こんな状況がいつまで続くのかと思うと、それだけでうんざりだ。

文楽公演は、東京では3か月に1度しかなく、前回の公演はコロナで休演になってしまったため、半年ぶりの公演のような気がする。もしかしたら、2月の公演も見逃したかもしれないので、ずいぶんと久しぶりという感じ。だから、久々に浄瑠璃を聴けるだけでもありがたいと思って雨の中を出かけた。

今回の公演は、楽しみにしていた咲太夫が休演で、代わりが織大夫。織大夫がやるならよいかと思っていたら、5日(土)にメールが来て、関係者で微熱が出た人がいるので、5~6日の両日は休演で、7日にできるかどうかはPCR検査の結果次第との連絡があった。気を揉みながら待っていたが、PCR検査は陰性だったようで、7日は予定通りに公演との知らせが来た。そういうことで、7日が実質的な初日だった。

「鑓の権三重帷子」は、姦通物といっても、実際に姦通があったわけではないが、帯を盗まれて不義の証拠と訴えられて言い逃れできずに、駆け落ちしたうえで、夫の敵討ち、「妻敵討ち」(めがたきうち)というらしい、をきちんと受けて、夫の名誉を守るという話。何となく、イタリア映画の「誘惑されて捨てられて」を思い出した。何しろ名誉が大事なのだ。

最初の「馬場の段」は藤太夫と團七、メインの「留守宅の段」と「数寄屋の段」は、咲太夫の休演のため、織大夫が続けて語ったが、問題なくきちんと語り切った。最後の「敵討ちの段」は中堅がずらっと並んでの語りだが、小住大夫がなかなか良かった。敵討ちは、伏見の京橋の上でにぎやかに盆踊りが舞われている中を、手前で殺しあうという演出で、何となく「夏祭り」を思い出すが、なかなか面白かった。

昼の食事が重かったので、夜は家に帰って軽いコールドミートの食事。前菜にギリシャ産のオリーブのマリネ、サラダをタップり食べて、イタリア産の生ハムとソーセージの盛り合わせ。ワインはドイツ産のザクト。