マルクス主義経済学は21世紀なってすっかり勢いを失ってしまいました。たまにマルクス主義経済学は今だから有効だみたいな本がでることはありますが、多勢ではありませんね。マルクス主義経済学が勢いを失った最大の理由は、その原点である資本論から始まる流れが、社会主義、共産革命を目指しているからです。マルクス主義経済学は革命の基礎理論であったわけです。ソ連の崩壊や、北朝鮮、中国などを見ていると共産党支配というもの(北朝鮮は労働党ですが)の全体主義的な国民締め付けが鮮明に見えるようになったことが大きいですね。マルクス主義は宗教とイコールであるという見方もあるくらいです。そのマルクス主義経済学と一線を引いていた学者が宇野弘蔵で、自らの経済学はマルクスの思想を元にした(唯物史観)社会科学であり、それはマルクス経済学であるということです。資本論は原理であり、そこから方法分析が導き出されるのではなく、原理、段階論、現状分析の三段階を経るという主張です。資本主義の先に見えるのは社会主義であるというのはマルクス主義経済学者とおなじですが、原理(資本論)は原理にすぎないというものです。マルクス学者としては異端な部類です。しかし、資本論は現代の自由主義経済学ではできていない資本主義構造を徹底的に明らかにしたという点で評価されるべきであるという見方もあります。真摯な気持ちで資本論を読むと現代の構図が鮮明に見えるというのです。あえて宇野学派と言われるマルクス経済学の方法を今に生かすというのもありなのではとも思いましたね。
「社会科学としての経済学」宇野弘蔵 ちくま学芸文庫
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます