陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

甘いもの選 ミルフィーユ

2024年03月31日 | slow gourmet

若い頃はケーキなど甘いものに目もくれなかった。明るい喫茶店で彼女がケーキを注文しても、ブラックコーヒーで煙草をふかし、なんで女という生き物はケーキみたいな甘いものが好きなんだとうそぶいていたものだ。

70年代のあの頃の周りの男子学生たちは、紫煙に烟る仄昏いジャズ喫茶でブラックをすすりながらダンモを聴く。そんな時代であった。そこに甘いものが入り込む余地はないのであった。

それがどうだ?歳月というものは人を変貌させる。あの頃の自分はどこ行った?おはぎを買って帰る自分が今ここに確かに居るではないか。あの頃は想像だにしなかったことである。まあ、それも良し。変化を恐れてはいけないのだ。なんちゃって笑

東京へ子守に行った帰路、家人が羽田空港でミルフィーユを買って帰った。うん、なかなか美味なミルフィーユである。それで「どこのかな?」と思って包装紙に記されたクレジットを見ると、「ベルン」あった。どうやらミルフィーユで有名らしい。所在地を見ると目黒区鷹番とある。あれ?どこかで聞いた住所だなと思った。ふと嗚呼、この住所は俳句の先生の住所であった。なんかこのミルフィーユに親しみを感じた。

しかし甘いものには幸せ感がありますね。ごちそうさま。

◇ベルン 東京都目黒区鷹番3-20-6

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三月の読書 黄色い家

2024年03月30日 | slow culture

川上美映子さんの「黄色い家」を読む。ジャンルで言えば“ノワール”小説。つまり暗黒や犯罪を題材とした小説である。

一言で言えば、花という若い女性がカード犯罪に手を染めてゆく物語だ。Amazonのブックストアにはこう記されている。それをそのまま引用する。

“十七歳の夏、親もとを出て「黄色い家」に集った少女たちは、生きていくためにカード犯罪の出し子というシノギに手を染める。危ういバランスで成り立っていた共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解し……。人はなぜ罪を犯すのか。世界が注目する作家が初めて挑む、圧巻のクライム・サスペンス。”

どんどん惹きこまれて読んでゆくのであるが、主人公の花をはじめ、みんなどこか憎めないキャラなのである。とことんこいつは悪だなという、そんなやるせない気持ちを起こさせない小説なのである。ここら辺りに著者の薄幸な人への温もりと眼差しを感じるのだ。

ノワールの世界では偽造カードにも超優良カードと言うのがあるそうだ。実際のキャッシュカード情報をスキミングか何かして偽造キャッシュカードを作り、大都会のCDなどで出し子が引き出す。引き出しても当の本人は引き出されたことを気付かないという。だからそんなカードを超優良カードと称するのだそうだ。

つまり世の中には普通口座に何億、何千万と入れている層がいて、高齢者などの一部の人で細かいことに頓着しないという人間が一定層居るらしい。そんな層はとてつもない大金でない限り、いちいち通帳の項目なんかチェックしないから、偽造カードでちょこちょこ引き出されても盗まれていると気付かないのだと言う。まあ言えば犯罪者たちはそのバクを突くということか。

なるほどなあと思う。犯罪にも知見がどんどん集積されていっているのだ。世の中は善にばかりに知見が活かされるとは限らない。巨悪が富を独占するための知の集積。つまり「出し子」なんてどうでもいい駒の一つということか。そう言えばちょっと違うかもしれないが、今話題になっている日本人大リーガーO氏の口座も、ふとそんな類の一つになり得るかもしれないと思ってしまった。今回の何億となれば違うかもしれないが、もし生活口座として支出を任されていれば、何十万位くすねられてもきっと解らないかもしれない。そんなことまできっちり管理していれば野球に全集中できないだろう。

余談は別として、それにしても川上美映子さんという作家は凄い人だ。大阪の高校卒業後は、大阪・新地でアルバイトもしていたと言う。歌手としてデビューもし、芥川賞作家でもあり、詩人としても中原中也賞を受賞している。その他キネマ旬報新人女優賞も。谷崎潤一郎賞、渡辺淳一賞など数々の文学賞も総ナメである。

世の中にはこういう方が時として出現する。ある意味ギフテッドだ。何百万、何千万分の一かもしれないが。伝統俳句の世界にもこんな若い超新星が出てこないか?

◇黄色い家 川上美映子 2023年2月初版 中央公論新社

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京都御所 生け花競演

2024年03月29日 | slow culture

今年の京都御所春の一般公開の正式名称は「天皇皇后両陛下御結婚満50年記念京都御所特別公開」となってます。

この機会にしか見られない様々な宮廷文化の粋を楽しめるのですが、回廊の東側ではいつも絢爛たる生け花の競演が見られます。皇室にゆかりのある寺院に伝わる3流派の生け花です。具体的には三ヶ寺「大覚寺」「仁和寺」「泉涌寺」それぞれに伝わるいけばな流派の作品が毎回紫宸殿南庭の回廊に飾られるのです。

それぞれの写真は上から「月輪未生流」、「嵯峨御流」、「御室流」です。たぶん。はっきり記憶してないのですが順番が間違っていたらごめんなさい。

いずれにしても素晴らしいアレンジメントです。

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京都御苑 桃林

2024年03月28日 | nonoka

京都御苑には梅林もありますが桃林もあります。梅はもうほぼ終わり頃でしたが、桃は満開の時期を迎えておりました。大阪城公園にも桃が植えられてますがこちらは「桃園」と言ってますね。

桃の花は梅に比べて少し派手です。枝に密集して花をつける感じです。だから派手な感じに見えるのでしょう。梅が楚々とした感じならば、桃はちょっとバタ臭いといった感がするのは私だけでしょうか?バタ臭いといっても中国由来の樹ですが。

芝生の上に咲き満つさまは桃源郷のような趣きがありますね。インバウンドのご家族が紅い桃の花をバックに写真を撮ってました。ラテン系の方々でしょうか。しかしこういう風景は民族問わずどこの国でも同じですね。さて綺麗に撮れたかな?京都の思い出の一枚となれば嬉しいですね。

白い桃の花の樹もあります。桃もはやり紅白の設えです。

野に出れば人みなやさし桃の花 高野素十

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宮廷装束 十二単

2024年03月27日 | slow culture

紫宸殿の大臣宿所に宮廷装束の人形展示があります。ちょっとリアルすぎて少し不気味ですけれど笑

十二単(じゅうにひとえ)とは宮廷における女子の正装。パネルの説明によると始まりは平安時代とか。時代とともに様々なバリエーションが登場したとありますが、江戸時代中期には平安時代に近い形に戻ったそうです。正式には着用する各装束の名称をとって「五衣(いつぎぬ)、唐衣(からぎぬ)、裳(も)」と呼びます。

小袖の上から「単、五衣、打衣(うつぎぬ)、表着(うわぎ)、唐衣、裳」の順に重ね着します。装束を重ねていく際に襟元や袖口を少しずつずらすことで、装束の色目の重なり(グラデーション)を見せています。展示の装束は、令和の御即位の際、女官が実際に着用した十二単とありました。

「光る君」の時代、いやはや女性もさぞ大変だったことでしょう。お察し申し上げます。

ちなみに「十二単」という季題がありますが、これは植物の花で、四月は春の季題です。以下のアドレスからご覧ください。

https://blog.goo.ne.jp/estril/d/20230501

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京都御所 紫宸殿と清涼殿

2024年03月26日 | slow culture

京都御所 春の一般特別公開。久しぶりに訪れました。

特別公開の順路は清所門から入場します。御車寄、諸大夫の間(参内した公家や将軍家の使者の控えの間)、今回蹴鞠が行われた新御車寄、そして紫宸殿、清涼殿へと指定された順路に従って進みます。

紫宸殿は京都御所において最も格式の高い正殿です。即位礼など重要な儀式が執り行われた殿です。慶応四年の「五箇条の御誓文」発布の舞台でもありました。紫宸殿の御前には、シンボルである「右近の桜」「左近の橘」が植えられています。そして清涼殿へ。

清涼殿は平安時代中期以降、天皇の日常のお住まいとして定着した御殿で、重要な政事や神事もここで行われたとあります。明治二年まで約500年間、天皇のお住まいとして使用されてきました。清涼殿前には縁起物の「寒竹」と「呉竹」が植わっていました。呉竹は葉は細く、寒竹は葉は広い。縁起物の植物は「松、竹、梅」ですね。

 

紫宸殿を見学してからは、平安時代の宮廷の装束展示の人形を見て、「御池庭」の景を楽しみ、御学問所、御三間を見て清所門へと戻ります。

しばし、いにしへの宮廷文化に浸りました。つづく。

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京都御所 蹴鞠

2024年03月25日 | slow culture

今回の京都御所一般公開の一番の楽しみは「蹴鞠」見学です。この日は小雨模様でしたので屋根がある御車寄(みくるまよせ)にて行われました。初めて見る蹴鞠です。

蹴鞠保存会の方々が登場して、儀式にのっとって行われる所作は美しい。装束も緋色、浅葱、萌黄色と春らしいいで立ちです。使用する鞠は鹿の皮、馬の皮で作られているとのこと。中は空洞でまあ風船みたいなものだそうです。木靴で蹴るのかと思っていたのですが、そうではなくて蹴鞠用の沓なのだとか。これには納得。あんな木靴でどうやって蹴るのだろうと思ってました笑

緋色の衣装の高齢者が長です。この方がもういいとなれば終了するそうです。結構運動量がありますね。皆の息遣いが聞こえてきます。インバウンドのエトランゼも興味深く観覧しておりました。

声かけて蹴鞠に興ず御所の春

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京都御苑 枝垂桜

2024年03月24日 | nonoka

京都御所の春の一般公開に行って参りました。この日は春の小雨模様という日和でしたが、やはり明るい春の雨。

近衛邸跡の枝垂桜が見た感じでは四~五分咲の感じでしたが、それでも見応えはありました。紅枝垂などはソメイヨシノが終わってからの遅咲きですが、この枝垂桜は早いですね。三月下旬にはもう満開でしょう。

今年は桜の開花宣言が例年より遅れていますが、このところは雨模様の日が続く様子なので、むしろ遅い方が良かったかもしれませんね。

やはり京都の桜は格別です。

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辛夷咲く

2024年03月23日 | nonoka

いつも定点観測している公園で辛夷(こぶし)が開花しました。

木蓮と違って辛夷には花の根元に緑の小さな葉のようなものがあります。木蓮よりも少し小振りで木蓮ほどの派手さはないです。

辛夷と言えば、大方の人はあの千昌夫の「北国の春」に歌われている花だと思うでしょう。「北国の春」それほど人口に膾炙した唄ですね。お隣の中国でも人気の唄です。でも北国では辛夷の開花はこちらよりもっと遅いのではないかな。でもあの歌のお蔭で辛夷も有名になりました。そしてどこか郷愁をそそる花みたいなイメージがつきました。

木蓮が咲き、辛夷が咲き、そうしていよいよ桜の開花を迎えます。関東の句会から初花の便りも聞こえてきました。

でも春寒という言葉ではちょっとしっくりこないほど冷たく寒い日が続いています。この彼岸にはいつもの墓参に行きましたが、春の雪に見舞われて震え上がるほどでした。こんな彼岸、記憶にないほどです。でもやはり少しべちゃっとした雪でした。車の温度計は5℃。体感的には厳寒でしたがやはり淡雪、春の雪でした。

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野のいろ散歩Ⅱ

2024年03月19日 | nonoka

お彼岸も近づいてきました。“暑さ寒さも彼岸まで”と言いますが、暖かくなったり寒くなったりを繰り返して、季節は春闌(たけなわ)へと進んでいきます。

木蓮があちこちで咲き初めてきました。まだまだ蕾の所が多いようです。木蓮の蕾は大きいのでなんか蝋燭を灯したような。そして祈りのようなかたちに私は感じます。

公園に桜を見つけました。満開になってます。これは彼岸桜でしょう。寒桜に次いで咲く早咲きの桜です。3月20日頃に開花するので彼岸桜と言われるのですが、エドヒガンとマメザクラの雑種とありました。これらの種の桜が終わると真打ソメイヨシノの開花ですね。

街を歩いていると“花韮(ハナニラ)”をよく見かけます。春は四月の候に載る季題です。歳時記によるとアルゼンチン原産で鑑賞用に栽培されたとありました。あの韮とは違います。“韮の花”は秋の季題となってます。

さあこれから一気に繚乱の春を迎えます。

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