Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

フランケンシュタインの誘惑

2017年07月17日 | ひとりごと
高木兼寛が出てくるので病院の一斉メールでも連絡が来た先月の「フランケンシュタインの誘惑」、録画しておいたのをやっと見た。
脚気は白米ではなく麦飯を食べれば予防できるということを高木が疫学的に突き止め、かつ実験で証明したにもかかわらず、森鴎外含む陸軍の医師団が無視し、数万人の死亡者を出した、という話。
プライドや、それまで自分がやってきたこと、信じてきたことに固執せず、科学的に判断しないといけないね、というのがメッセージだと思うのだけど、多くの人にとって、これって難しいことらしい。ごく最近でも、それって根拠に乏しいでしょ、一般的な考え方じゃないでしょ、と指摘しても、自分はずっとこうしてきたからそれでいいんだ、的な発言を、多くの人の前でする40代50代の医師に複数会った。もうこうなってくると宗教と同じで、きっとこの人たちはずっと変わらないだろうなと思ってしまい、再度指摘するのが面倒になって相手にするのをやめた。

じゃあ自分はどうか。これは判断が難しい。結局は何かを信じているわけだし。
ただ、できるかぎり情報を集めて、できるかぎり客観的に判断するようにはしているつもりではある。僕が言うほとんどのことは、そこらじゅうに同じようなことが書いてある。それを示すことはできる。

もういい歳になったら変わりはしないだろうから、40代50代の人たちのことは諦めるとして、問題は若者たちだ。
僕の周りにいる若者の多くが、人に聞いたとか、簡単な本に書いてあったとか、こんな経験をしたとか、単にそう思うからという理由で行動している。それが積み重なってしまうと、40代50代の人たちと同じになっちゃうのに。医学生になった時にはすでにEBMという言葉があったはずなのに。僕らが受けた医学教育や研修教育とは違うはずなのに。

慈恵ICUでは毎週勉強会をしている。抄読会は一つの文献を読んでおしまいだけど、あるテーマに沿ってまとめる時はそれなりの数の文献を読まないといけない。何故これをしているかというと、理由の一つは、世の中には知識というものがあって、正しい方法で能動的に集めないとヤバイことになる、ということを理解してもらいたいから。
感想を聞く限り、とりあえず一瞬は理解してもらえるようなのだけど、喉元過ぎれば何とやら、な人が少なくない。

うーん。
疲れるね。
コメント
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