真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「女弁護士 羞恥なぶり」(1996/企画・製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:佐々木乃武良/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/照明:三浦方雄/編集:金子尚樹 ㈲フィルムクラフト/助監督:阪本智考/製作担当:真弓学/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/監督助手:加藤義一/撮影助手:立川亭/照明助手:松夫一心/ヘアー・メイク:木村麗子/スチール:本田あきら/出演:水沢えりか・林由美香・扇まや・平賀勘一・久須美欽一・杉本まこと)。なかなか斬新なクレジット順は、本篇ママ。
 体育準備室的なロケーションにて杉本まことに、制服を着せおさげ髪にしてみたところで、清々しく女子高生には見えない水沢えりかが犯される。弁護士資格を得た霧島冴香(水沢)が宣誓した上、バッジを付与される。因みに、その手のプロフェッション文化にそもそも馴染の薄い我が国にあつて、さういふ光景が見られるのは弁護士会単位で限定的になくもない程度な模様。檻の中、左手を腰に当て立つたまゝ書物を紐解く杉本まことの背中にタイトル・イン。少しだけ話を戻して、冴香の宣誓。非嬌声で口を開くや早速覚束ない口跡が、エクセスライクの火蓋を華麗に切る。
 振り返つた杉本まことが自らカメラに寄る、セルフあるいはプリミティブな物理ズームを見せて、寺島法律事務所。冴香が師匠の寺島(久須美)にここまでの御礼をいふのもそこそこに、サクサクその他の面子は終始見当たらないオフィスでオッ始める。明るい屋内でよくよく映すと、表情は硬いけれど、顔立ちは整つた水沢えりかが一応美人。綺麗な体をエロく撮る初戦は、顔射完遂。即座に冴香が顔を拭ひに手洗ひに立つのは展開上必要なシークエンスながら、素知らぬ顔で戻つて来る際、バックヤードに通ずる引き戸を閉めんか。挙句寺島に冷たい飲み物を入れるのに、頑なに開けたまゝもう一往復する始末。閑話休題、寺島が華々しいデビュー戦を飾らせようと冴香に用意した初陣が、強姦容疑者の弁護。破天荒な親心も兎も角、冴香は西東京拘置所に出向き接見。最初手渡された資料に目を通した折には脊髄で折り返し担当を拒否した、教へ子に対する強姦容疑で拘置される教師の小野寺(杉本)に、冴香は、もしくは冴香も、女子高生時代に凌辱された過去があつた。圧縮陳列の店内より狭い劇中世間も最早強ひてさて措き、ところで寺島法律事務所のロケーション。最終的な判読は叶はなかつたものの、窓硝子にAOKI何とかコーポレーションの文字が透けて見える、画角選べばいいのに。
 配役残り、何気に完璧な三番手起用法を煌めかせる扇まやと平賀勘一は、小野寺に煽られた冴香の回想に登場する、淫乱な母と酒乱の父。どうしてウチのポンコツPCは、“父”と打ちたいところで一々“乳”とクソ変換しやがるのか。小野寺に会へと一喝され後半に突入する、ここも案外堅牢な構成で飛び込んで来る林由美香が、当該事件の被害者・クガアユミ。再度冴香が小野寺に促され赴く、屋号が謎なSMクラブ「もの鎖」。クラブ内では、基本全員バタフライで顔を隠す。マリ―奴隷を責める筆頭客を、平勘が兼任。ほか二名見切れる客の何れかが加藤義一かの特定には辿り着けなかつたが、プレゼンターは背格好と声とから多分乃武良。
 適当にex.DMMで何か見るかと見繕ひ下拵へ、ツイッターを触ればちやうどエクセスが津々浦々に回し始めた様子も窺へつつ、折角か面倒臭いのでそのまゝ見た坂本太1996年第二作。同じく坂本太四作後の1997年第二作「女弁護士 陵<こます>辱」(脚本:有馬仟世/主演:飛鳥ひとみ)に、助監督が相当介入してゐさうな関良平デビュー作「女弁護士 強制愛撫」(1998/主演:冴島奈緒)。公式に謳はれてゐる訳では必ずしもないにしても、エクセスの女弁護士三部作とザックリ括つたとて、さしたる問題もあるまい。
 ヒロインがミイラになるリスクを冒して、ミイラどころかミイラを統べる勢ひの魔人と相見えに行く。昨今は小市民的な造形を宛はれることが多いが、なかみつせいじに改名して久しい今なほ、思ひだした頃に健在な杉まこの大仰な声色は大風呂敷を綺麗にカッ広げ、房周りでは、安普請を苦心しそれつぽい画を幾つか見せもする。「羊たちの沈黙」(1991)を如何にもピンク映画的に翻案した節は、ひとまづ酌める。さうはいへリーガル方面に遜色のない脚本には、檻越しに接見してゐたりする時点で所詮到底遠い。いはゆる高値の花の、目新しい機軸に弁護士を持ち出したのであらうが、如何せん主演女優がさういふ才媛に女子高生以上だか以下に果てしなく遠く見えない、ジャンル上構造的かつ最大の弱点に、今作もまんまと、まんッまと力も込めたくなるほどに屈する。アユミ共々冴香が小野寺に籠絡される過程も大概大雑把で、劇映画的に素面で付き合ふには些かならず厳しい。反面、エッジの効いた絡みを叩き込み倒す、これぞエクセス本流の重戦車ピンクとしては文句ない出来映え。冴香の、劇中現在時制一度きりとなる対小野寺戦に於いては、映倫に果敢に挑んだキワッキワに際どいショットも乱打する。締めの改めてといふか、華麗に立場を逆転させた冴香が両義的に寺島に跨る騎乗位。実は唯一中完遂で終るのが狙つた趣向なのか単なるタマタマ、もとい偶々なのかまでは見極められないが、話の首は座らずとも、濡れ場の腰は据わつた裸映画。石井隆と市川崑を足して二の二乗で割つたが如き頓珍漢なクレジットが、空回りした才気を偲ばせる。


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やはり坂本太はプロフェッショナル (横浜のロマンポルノファン)
2019-01-04 22:06:20
水沢えりかはエクセスの主演にしては美人(笑)林由美香はさすがのエロさ、M奴隷役は意外と珍しいかも。扇まやはルックスを挽回するように垂れ乳をエロく見せる坂本太マジック。あれ、私のPCは「乳」と打とうとすると「父」と変換。まだまだ修行が足りんのですね。
 
 
 
幾らエクセスライク (ドロップアウト@管理人)
2019-01-04 22:20:02
 新田栄が壮絶な負け戦にも敢然と飛び込んでるだけで、流石に主演女優は美人ですよ、基本(笑
 所作なり口跡は・・・・うん、まあ、その(ゴニョゴニョ
 
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