ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「プレデター」

2024-05-15 21:43:09 | 

 

「プレデター」 あさのあつこ 集英社 2023.7.30

 

深刻な格差社会が進んだ2032年の日本。

都市がゾーンに分断される。

行動様式も売買履歴も金融資産も、日々生きることそのものがデータ化され、数値化され、そんな現実に慣らされてしまう。

いつの間にか、知らぬ間に。

 

あさのあつこさんの、#6の世界を連想した。

 

アラフォーの雑誌記者・明海和はストリートの取材を続けるうち、謎の集団・プレデターに襲撃される。

 

プレデターとは捕食者、まさに人を狩る者。

武器の扱いに長け、戦闘術を身につけ、平気で人を殺せる。

ストリートチルドレンだけでなく、子どもを拐ったり、プレデターに仕立て上げられていた。

政府の意にそわない者や、邪魔者を抹殺するためにーー。

 

ストリートチルドレンの問題に関わって、これはおかしい、変だと思い、現実を目の当たりにしながら、その現実をいつの間にか受け入れていた。

諦めていたとも言い換えられる。

自分に現実を変えられる力などない。

どう足掻いても無駄なだけだ、とーー。

 

高い支持率を保ったまま長期政権が維持される。

影を生み出さない光はない。

 

P108

「今、大手のマスコミはほとんど機能してないでしょう。定例会見以外の取材は政府の許可がないとできないんだから(略)」

 

P272

「C、D、Eどこも、下のゾーンに比べれば自分たちは幸せだとおもっているし、F、Gの住民でさえ、ゾーン外に比べれば内側にいるだけマシだと考えている。そこに、受け入れやすい幸福論をばらまけば、満足度や現状維持を望む声は高くなる(略)身の丈に合った幸福を知り、それ以上は求めない。この国では美徳とされますもんね」

「不幸も失敗も不遇も、全部、自己責任にしてしまう。自己責任だと思ってしまう。自分で責任を取らなくちゃならないと思い込むことも美徳にされてしまうんです」

コメント
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