ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「おらおらでひとりいぐも」

2021-10-26 21:18:35 | 

 

「おらおらでひとりいぐも」 若竹千佐子 河出書房新社 2017.11.30

 

第158回芥川賞。

芥川賞作品はいつも図書館の文藝春秋で読む。

とりあえず少し読んで、そこでやめたり、一気読みしたり…

 

この作品は読まなかったのだが、

タイミング良かったのか悪かったのか(笑)

単行本を借りることになってしまった。

借りたからには読まなくてはいけない(^^;

 

因みに作者は1954年、遠野市生まれ。

岩手大学卒業、63歳デビューとのこと。

岩手といえば、柏葉幸子さんや高橋克彦さんが浮かぶ。

彼女も岩手在住なのだろうか。

 

題からわかるように、東北の方言が連発。

一つの地域だけとは思えないほど様々な方言が、味わいをそえている、かな。

 

故郷を飛び出し、身一つで上野駅に降り立ってから50年。

住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚。

二児の誕生と成長、そして夫の死。

40年住み慣れた都市近郊の新興住宅地でひとり暮らす桃子さん。

「この先一人でどやって暮らす。どうすんべぇ」

 

P51

母親は何度も自分に言い聞かせるべきなんだと思う。

自分より大事な子供などいない。

自分がやりたいことは自分がやる。子供に仮託してはいけない。仮託して、期待という名で縛ってはいけない。

 

P100

死ぬことなど何にも恐れないと普段は豪語している。だがその一歩手前の衰えが恐ろしい。自分で自分を扱えなくなるのが死ぬUり怖い、

 

P138

独りは寂しさが道連れだよ。

 

桃子さんが伝えたかった思いとはちょっと違うかもしれないが、

どこかでみた "なんくるないさー" という言葉を連想した。

 

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「52ヘルツのクジラたち」

2021-10-07 23:49:37 | 

 

「52ヘルツのクジラたち」 町田そのこ 中央公論新社 2020.4.25

 

2021年の本屋大賞受賞。

町田さんは1980年生まれ。福岡県在住。

 

52ヘルツのクジラとはーー

他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、

世界で一頭だけのクジラ。

たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。

そのため、世界で一番孤独だと言われている。

 

 

自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、

母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。

孤独ゆえに愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会ったーー

 

ちょっとだけと手にとったのだが、

引きずられて一気読み!

 

こんな身勝手な親たちは、お話の中だけと思いたいが、

昨今のニュースを思い起こせば、現実味をおびる。

まあ、娘の身売りのように、昔からあることなのだろうが。

 

「ひとというのは最初こそ貰う側やけど、いずれは与える側にならないかん。いつまでも、貰ってばかりじゃいかんのよ。親になれば、尚のこと」

 

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「曲亭の家」

2021-10-05 23:20:32 | 

 

「曲亭の家」 西條奈加 角川春樹事務所 2021.4.18

 

当代一の人気作家・曲亭(滝沢)馬琴の息子に嫁いだお路。

作家の深い業に振り回されながらも己の道切り開いていく。

 

横暴な舅、病持ち・癇癪持ちの夫と姑……

修羅の家で見つけたお路のしあわせとはーー

 

以下、本文より。

 

 相容れない人間はこの世にいるもので、不幸にもお路は、そんな一家の許に嫁いでしまった。さりとて不幸自慢は性に合わず(略)離縁するつもりもない。

ならば、馴染むより他にない。何も相手を無理に、好きになる必要はない。ただ、舅姑や夫も自分と同じ、ごくあたりまえの人間なのだと思えるようになった。

 

 (お路は)八犬伝に登場する女たちは、どうにも好感が持てない。(略)

一言でいえば、女のあつかいが雑なのだ。八犬伝の中で善とされるのは、男にとって都合の良い女の子ばかりだ。

 

 女同士であれば、まず会話を通して親睦を深める。愚にも付かない無駄話を長々とくり広げるのは、本音や論点をうまく避けているからだ。必要なだけの会話は角が立つ。笑いや愚痴や噂に紛らして互いの距離を縮める。

対して男は総じて口下手なだけに、この芸当は到底真似できない。そもそも礼儀というものが、話術の乏しさを補うために、男社会で進化した様式ではなかろうか。

(略)

才を誇り、能を示し、世間に認められることこそが甲斐性だと、馬琴ならずとも男は概ね考えている。だからこそ、それを示すための媒体が、友情においても大きな一角を担う。

 

「似たような日々のなかに、小さな楽しみを見つける、それが大事です。

今日は煮物が良くできたとか、今年は柿の木がたんと実をつけたとか……。

そうそう、お幸が今日、初めて笑ったのですよ」

 

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