ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「隠居おてだま」

2024-03-17 07:26:23 | 

 

「隠居おてだま」 西條奈加 KADOKAWA 2023.5.31

 

読んでいない「隠居すごろく」の続編らしい。

 

老舗糸問屋・嶋屋元主人の徳兵衛は、還暦を機に隠居暮らしを始めた。

風雅な余生を送るはずが、巣鴨の隠居家は孫の千代太が連れてきた子供たちで大にぎわい。

子供たちとその親の面倒にまで首を突っ込むうち、新たに組紐商いも始めることとなった。

 

 ーーこのあたりまで前作かーー

 

商いに夢中の徳兵衛は、自分の家族に芽吹いた悶着の種に気が付かない。

やがて訪れた親子と夫婦の危機に、嶋屋一家はどう向き合うか。

 

幼いときに家を出た母、

「おいら、母ちゃんの顔を忘れちまって……母ちゃんを思いだそうとしても、のっぺらぼうしか出てこなくて……」

「母ちゃんが家に来るようになって、(略)目の前にいるときは、母ちゃんてわかるんだ。でも、後で思い返そうとしても、やっぱり母ちゃんの顔だけ、のっぺらぼうのままで……」

 

小さいからこそ深手を負い、消えない傷となる。

切ないーー。

 

 

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「照子と瑠衣」

2024-03-16 12:51:13 | 

 

「照子と瑠衣」 井上荒野 祥伝社 R5.10.20

 

ーーオビをそのまま引用ーー

 

「身勝手な女」と呼ばれたって一ミリも後悔なんてしないわ。

 

照子と瑠衣はともに70歳。

ふたりにはずっと我慢していたことがあった。

照子は妻を使用人のように扱う夫に、瑠衣は老人マンションでの陰湿な嫌がらせやつまらぬ派閥争いに。

我慢の限界に達したある日、瑠衣は照子に助けを求める。

親友からのSOSに、照子は車で瑠衣のもとに駆けつける。

その足で照子が向かった先は彼女の自宅ではなく、長野の山奥だった。

新天地に来て、お金の心配を除き、ストレスのない暮らしを手に入れたふたり。

照子と瑠衣は少しずつ自分の人生を取り戻していく。

照子が、(選んでいた)この地に来たのは、夫との暮らしを見限り、解放されるため、そしてもう一つ、照子には内緒の目的があったーー。

 

 

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「シェニール織とか黄肉のメロンとか」

2024-03-12 17:05:14 | 

 

「シェニール織とか黄肉のメロンとか」 江國香織 角川春樹事務所 2023.9.18

 

作家の民子は、母の薫と静かな二人暮らし。

そこに、大学からの友人・理枝が、イギリスでの仕事を辞めて帰国し、家が見つかるまで居候させてほしいとやってきた。

民子と理枝と、夫と二人の息子がいる主婦の早希は、学生時代「三人娘」と呼ばれていた大の仲良し。

会わずにいるあいだそれぞれ全然べつな生活を送っているのにーー

会うとたちまち昔の空気に戻るーー

 

彼女たち、そしてとりまく人々の楽しくも切実な日常。

 

なんでだろう……

赤毛のアンを連想した。

特に「アンの村の人々」を😓

 

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「文庫旅館で待つ本は」

2024-03-07 11:32:19 | 

 

「文庫旅館で待つ本は」 名取佐和子 筑摩書房 2023.12.15

 

戦前から続く海辺の老舗旅館・凧屋の名物は様々な古書を収めた文庫本=図書のコレクション。

少しばかり″鼻が利きすぎ″な若女将が「お客様と同じにおい」を纏った文豪たちの小説をすすめてくれる。

 

一冊目 川端康成『むすめごごろ』

 

二冊目 横光利一『春は馬車に乗って』

 

「この小説を書いた作家の分身でもある夫は、少し冷静すぎるのね。冷静を保たなければ、響き死に向かって進む妻のそばには到底いられなかったんだろうけど」

「体がつらくなる一方の妻にとって、夫の理性や知性は邪魔なのよ。だから、あれこれ難癖をつけては夫をなじるんです」

 

「夫婦どちらかが最期を迎えるとき、『お互に與えるものは與へて了った』と言い切れる関係って、羨ましいなってーー」

「まず自分への愛がないと、とても他人には与えられないーー」

 

「薄々は気づいていたと思うんです、夫を愛していないこと。すすんで夫に尽くすのは、彼を想ってではなく適当にあしらうための行動だということ。(略)長年夫婦をつづけてくれば、それが当たり前だと思ってたんです」

「それは真心あってのことなんですよね」

 

三冊目 志賀直哉『小僧の神様』

 

四冊目 芥川龍之介『藪の中』

 

「犯人はいてもいなくても関係ない。一人の男性が殺された事実を、彼をめぐる各人の証言を、読者がどう受け取るかによって成り立つ小説なんです」

 

五冊目 夏目漱石『こころ』

悪い人間といふ一種の人間が世の中ぬあると君は思ってゐるんですか。そんな鋳型に入れたやうな悪人は世の中にある筈がありませんよ。平生はみんな善人なんです、少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざといふ間際に、急に悪人に變るんだから恐ろしいのです。だから油断が出来ないんです。

 

 

小説とそれぞれの人生、思いがつながっていく。

最後にきて、登場人物たちもつながった。

 

十代の時にしか読んでない「こころ」を読み返してみようか。

 

 

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「乳と卵」

2024-03-02 15:27:04 | 

「乳と卵」 川上未映子 文藝春秋 2008.2.25

 

第138回芥川賞受賞作。

 

姉とその娘が大阪からやってきた。

39歳の姉は豊胸手術を目論んでいる。

姪は言葉を発しない。

三人の不可思議な夏の三日間。

 

あたしは勝手にお腹がへったり、勝手にせいりになったりするようなこんな体があって、その中に閉じ込め、られてるって感じる。

  ーー本文・姪がノートに書いた言葉ーー

 

大阪弁の会話を読んでると脳内で大阪弁のイントネーションに自動変換されている。

おもしろ、おかしい。

 

容れ物としての女体の中に調合された感情を描いて、滑稽にして哀切。

  ーー山田詠美氏ーー

 

 

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