「あきない世傳 金と銀12 出帆篇」 髙田郁 角川春樹事務所 2022.2.18
浅草田原町に「五十鈴屋江戸本店」を開いて十年。
藍染め浴衣地で江戸中に知られる五十鈴屋ではあるが、再び呉服も扱えるようになりたい、というのが主従の願いであった。
仲間の協力を得て道筋が見えてきたものの、決して容易くはない。
因縁の相手、幕府、そして思いがけない現実。
しかし、帆を上げて大海を目指す、という固い決心なもと、幸と奉公人、そして仲間たちは、知恵を絞って様々な困難を乗り越えて行く。
「衣装は暑さ寒さからひとを守り、そのひとらしくあるためのもの」
江戸時代、22歳で「桃園院」が崩御したさい、まだ幼い皇嗣に替わって実に120年ぶりに女帝が誕生した。
そのときの幸とお竹の会話。
「今回、即位しはったおかたは、そのぼんぼんが大きいになるまでの、『中継ぎ』やそうだすのや」
「跡目を継ぐ者にしたら、『中』も『仮』もない、あるのはほんきだけやのになぁ」
(略)
「女であることが枷とされる限り、息苦しさから逃れられないのかも知れません」
「ただ、男であれ女であれ、今の世を生きるものは皆、後世への中継ぎに過ぎないとも思います(略)」