「傲慢と善良」 辻村深月 朝日新聞出版 2019.3.30
婚約者が忽然と姿を消した。
その居場所を探すため、西澤架(かける)は、
彼女の「過去」と向き合うことになる。
進学、就職、恋愛、友情、結婚、家族……
あらゆる選択を決断してきたのは、本当に「私自身」なのだろうかーー。
帯に、圧倒的な"恋愛"小説、とあるが、
それはどうかなぁ……。
結婚相談所の小野里の言葉にイチイチ納得。
「婚活でうまくいかない時、自分を傷つけない理由を用意してきおくのは大事なことなんですよ」
「自分が個性的で中味がありすぎるから引かれてしまったとか、資産家であるがゆえに、家の苦労が多そうだと敬遠されたとか、あるいは自分が女性なのに高学歴だから男性の側がきおくれしてしまった、とか」
「資産家であることも、個性的であることも、美人であることも、本当は悪いことではないはずなのに、婚活がうまくいかない理由を、そういう、本来は自分の長所であるはずの部分を相手が理解しないせいだと考えると、自分が傷つけなくてすみますよね」
「(婚活が)うまくいくのは、自分が欲しいものごちゃんとわかっている人です。自分の生活を今後こうさしていきたいかが見えている人。ビジョンのある人」
「何も考えないまま結婚して、出産して、それでいのではないか、と私は思います」
「現代の結婚がうまくいかない理由は、『傲慢さと善良さ』にあるような気がするんです」
「現代の日本は、目に見える身分差別はもうないですけれど、一人一人が自分の価値観に重きを置きすぎていて、皆さん傲慢です。その一方で、ぜに生きているひとほど、親の言い付けを守り、誰かにきめてもらうことが多すぎて、"自分がない"ということになってしまう」
「その善良さは、過ぎれば、世間知らずとか、無知ということになるかもしれないですね」
「皆さん、ご自分につけていらっしゃる値段は相当お高いですよ。ピンとくる、こないの感覚は、相手を鏡のようにして見る、皆さんご自身の自己評価額なんです」
フムフム、なるほど。
真実の親の言葉に、架は思う。
この人たちはーー世界が完結しているのだ。
自分の目に見える範囲にある情報がすべてで、その情報同士をつなぎあわせることには一生懸命だけど、そこの外に別の価値観や世界があることには気づかないし、興味もない。
真実の母は、その価値観のもと、
「親なんだから心配して当然だし、それが愛情であり、親の使命だって本気で信じてる」
のだ。
って、甘えや依存に繋がりかねないと思う。
読み終えて……
軽いような重いような、モヤモヤ、フゥ~ン、という感じ。