「風よ あらしよ」 村山由佳 集英社 2020.9.30
明治・大正を駆け抜けた伊藤野枝。
28年の生涯で三度〈結婚〉、7人の子を産んだ。
親や親類に仕組まれた最初の結婚からすぐに逃れ、
教師として出会った辻潤と再婚。
子も成したが、妻と恋人がいる大杉栄と結ばれる。
平塚らいてうの『青踏』、
大杉の恋人で、やがて大杉を刺した神近市子、
政治家で、内務大臣、東京市長などを歴任した後藤新平、
数多いる無政府主義者の中でも最も目立つ大杉の排除が悲願であるらしい正力松太郎、
さりげなく援助してくれた有島武郎、
賛意を示してくれた高村光太郎、
関東大震災後、大杉・野枝らを捕縛した甘糟正彦大尉
など、
名前のみ知っている歴史上の人物がゾロゾロ。
大杉の持論
一、お互いに経済上独立すること。
一、同棲しないで別居の生活を送ること。
一、お互いの自由(性的のすらも)を尊重すること
けして好色な気持ちではない、真の目的は習俗打破にある。
云々……
男にばかり都合のいい勝手でお粗末な理屈だと思いながら、言い返せない市子ーー
そして、逢えずにいる間じゅう自分に言い聞かせる。
愛してもかまわないが、必要以上に多くを求めてはいけない。二人でいる間は互いのことだけを考え、そのかわり離れている時には相手の自由意思を尊重する。正式な入籍が永続的なものとは限らないし、固く誓い合った愛情ですら醒めない保証はないのだ。今この時を一緒に過ごせて、互いを必要としていられるならそれだけで充分ではないかーー。
と。
セツナイなぁ。
惹かれる気持ちに理屈は敵わない、、、
それにしても野枝と栄の熱は凄まじい。
熱い!
因みに幸徳秋水が捕まった事件=大逆事件と思っていたが、
今は、幸徳事件となっているような……。