スパニッシュ・オデッセイ

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ドン・ガバチョ(Don Gabacho)

2021-02-03 14:38:52 | スペイン語
 メキシコ時代の友人が書いた作品をご紹介します。さまざまな資料を基に再構築した武蔵です。是非ご一読ください。『巌流島の決闘』はあっと驚く結末です。
   
 コスタリカの昔話にはわけのわからない単語がたくさん出てくる。辞書なしにはとても読めない。辞書があっても、掲載されていない言葉もあので、ネットで調べたり、女房に聞いたりしないと、読み進めない。そんなわけで辞書は手放せない。
 で、ふと gabacho という単語が目に入った。発音は「ガバチョ」だが、1960年代半ばのテレビ人形劇『ひょっこりひょうたん島』の大統領の名前が「ドン・ガバチョ」だった。声はインチキ外国語を操る怪優「藤村有弘」。日活アクション映画では中国人(?)の悪役が印象に残っている。
 
 「ドン・ガバチョ」という名前だが、「ドン」はスペイン語では個人名の前につける敬称 don で日本でもお馴染みである。「ガバチョ」は放映当時は「ガバガバ儲かる」のように使われていた「ガバガバ」をスペイン語風に「ガバチョ」にしたものだろうとしか思っていなかった。
 それが、スペイン語にも gabacho という語があるのである(ただし、アクセントは ba にある)。ウィキペディア「ドン・ガバチョ」にもスペイン語 gabacho について次のような記述がある。

  スペイン語でドンは男性に対する尊称であり、en:Gabacho(ガバチョ、バにアクセント)はフランス人に対する蔑称である。

 ただし、小学館『西和中辞典』には次のように書かれている。
 
 形容詞 1 ピレネー山脈に住む、ピレネー山脈の
     2 (口語)《軽蔑》フランス人の、フランス語の
     3 (ハトが)大形で足に羽毛の生えた
     4 (コロンビア)うまくいかない、逆効果の
 名詞  1 ピレネー山脈に住む人
     2 (口語)《軽蔑》フランス人、フランス野郎、フランスかぶれのスペイン人
     3(北米)《軽蔑》アングロサクソン系白人
 男性名詞 1(口語)フランス訛りのスペイン語
      2(メキシコ)外国人、よそ者

 こうしてみると、gabacho はもともとは「ピレネー山脈に住む(人)」の意味だったようだ。さらに、スペインから見れば、ピレネー山脈の向こうはフランスだから、「フランス人」の意も生じたのだろう。さらにアメリカにわたると、「アングロサクソン系白人」の意味になるのが興味深い。hispanic に対する語として、gabacho が使われるようになったのだろうか。
 「フランスかぶれ」の意味になるのはスペイン人に限られるようで、フランスで活躍したピカソなどが Don Gabacho の名にふさわしい。日本人のフランスかぶれは残念ながら、 Don Gabacho とは呼んでもらえないのである。       

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